人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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出逢いは曖昧【戦国BASARA:小政】

フォルダを整理していたら、以前出した家政本「Fall in」の小政ver.の書きかけが出てきまして。
たぶん小政ver.でもやりたかったんだなーと当時の自分を察しつつ、尻切れトンボ状態で今に至っています(苦笑)。
そのままお蔵入りしてしまうのもアレなので、出来ている部分だけサルベージしてみました。
結構あるんですよね、途中まで書いてそのまま眠らせちゃってるの。


素材をお借りしています。
お題配布元:http://noir.sub.jp/cpr/
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もらった想いにそっと微笑む

前日の夕方から強風が吹き荒れた所為か、境内は落ちた枝葉でもの凄い惨状となっていた。
竹箒を手にさして広くもない境内を前にした小十郎は、無意識のうちに深々と溜息を吐いた。絶望的な気分である。
龍神を祀る鳴神神社は遡ること平安時代からこの土地に鎮座する小さな社である。小さな社であるので、当然のことながら宮司は小十郎一人。この社の管理も整美も全て小十郎一人で行わなければならない。
つまりは眼前に広がる強風が吹き荒れた後のこの惨状を片付けるのは小十郎の役目、というわけだ。
三十路目前とはいえ辛うじてまだ二十代の小十郎である。何が楽しくて片田舎の神社の宮司をしているのかとも思うだろうが、この年齢で自給自足上等!の隠遁者のような生活を楽しんでいる小十郎本人にとっては何の不満もない。
―――不満はないのだが、こういうときは人手不足にちょっと泣きたくはなる。
「…ったく、どっから飛んできやがるんだか」
ぶつぶつ文句を垂れながら竹箒を動かす。境内にある樹木は殆ど葉を落としてしまっていて、勿論昨夜の強風の影響によるものもあるだろうが、境内の樹木の葉ばかりではなく、どちらかといえば他所から枝葉が昨夜の強風に乗って此処に吹き溜まった感じだ。
眉間に峡谷のような深い皺を刻ませた凄みのある表情でせっせと竹箒を動かす姿は、物言わぬ落ち葉に対して喧嘩を売っているようでもあり、少しばかり滑稽に映るのだが、如何せん当人は全く気付いていなかった。
(いっそのこと風でこいつら全部他所に吹き飛ばされちまえばいいのに)
畑の堆肥になるのであればまだ使い道もあっただろうが、この種の葉は油分が多すぎて乾燥させても堆肥には向かないのだ。
掃いても掃いても一向に綺麗にならない境内――一人でやっているのだから仕方がない――にうんざりとしてきたところで、背後から「小十郎!」と声がかかった。
「政宗さま」
柔らかな笑みを浮かべ落ち葉を踏み締めて近づいてくる姿を目にすると、小十郎のやさぐれた心が不思議と鎮まった。そのまま眩しそうに瞳を細め、小十郎は竹箒を手にそのひとを迎える。
今どきの服にほっそりとした身を包んだ隻眼の青年―――名を〈政宗〉という。人の姿をしているが、実は鳴神神社の御祭神たる龍神である。
小十郎は三歳の時まで景綱という名があった。今も戸籍上は景綱という名なのだろうが、〈小十郎〉という名の方が定着している。片倉小十郎―――政宗から与えられたその名の方が最初からそうであったみたいに小十郎の中でしっくりと馴染んでいた。
〈小十郎〉というのは、元々は政宗を御祭神として祀る鳴神神社を開いた片倉の御先祖の名である。社を護る宮司は代々片倉の男子の中から御祭神たる政宗によって選ばれ、宮司の証として初代と同じ〈小十郎〉という名を与えられた。
先代は小十郎の祖父であったが、小十郎が三歳の時に名を譲っている。将来は小十郎もまた次代にこの名を譲らねばならないのだが、馴染んだこの名を片倉の血を引く人間とはいえ自分以外の者に譲るのは正直面白くない。できることならこの名を抱いたまま土に還りたいと思うけれど、同時にそれは赦されないのだということも理解していた。
〈小十郎〉という名に対する執着はおそらく自分に限ったことではない。これまでも、そしてこれからも片倉小十郎の血を引く片倉の男子である限りずっと執着するのだろう。
なぜならそれこそが政宗に選ばれた唯一無二の証となるから。
「Gee,ちっとも綺麗にならねェな」
「仕方ありません。小十郎一人でやっていますし」
「Hum,俺が手伝ってやろうか?これくらい俺の力で吹っ飛ばせるぜ」
龍神の本分は“水”ではあるが、その力を借りれば、この程度の広さの境内の落ち葉など確かに一掃できるだろう。
「竜のお力を斯様なことにお使いなされますな。政宗様のそのお気持ちだけで小十郎は充分にございます」
それまでぶつぶつと散々文句を垂れていたくせに、決して楽な方向へは流されない。根が真面目で頭が硬いのは代々の小十郎に共通したことで、最早“片倉品質”なのかもしれなかった。
「Ha,お前のことだ。そう言うと思ったぜ。まあいいさ。だが、いい加減休憩したらどうだ?そんな凄みのあるツラで境内を掃いていたって、相手が落ち葉じゃちっとも伝わらねェだろうよ」
「―――っ?!そんなに小十郎は凄んでおりました、か」
どんな形相で落ち葉を掃いていたかを政宗に指摘され、恥ずかしくて今更ながらに顔を赤くする。そんな小十郎を見、政宗は「してたしてた」と笑いながらご丁寧にも顔真似まで披露してくれた。本当に居た堪れない。
「Ha-ha!そういうお前もcuteだぜ、小十郎」
「……………、」
「ほら、もういいから少し休め」
小十郎から竹箒を取り上げて手近な幹に立てかけると、政宗は小十郎の腕に自身の腕を絡めてきた。
「そういえばもうすぐ“バレンタイン”だよな」
人の世に慣れきっている龍神様は現代のイベントごとにも勿論精通していた。正月に始まり、節分だのバレンタインデー、ホワイトデー、ハロウィンやクリスマスに至るまで和洋折衷なんでもござれな勢いでイベントがあるたびに楽しみたがる。
そういえばもうすぐバレンタインデーだった。都会であれば正月気分が抜けると、はやバレンタイン商戦に突入してデパートもチョコレート一色になるところだろうが、如何せんこのような片田舎ではのんびりとしたものだ。自分には関係ないことと興味がなかったことも手伝って、小十郎はつい最近までそのことをすっかり忘れていた。
「小十郎はチョコを貰ったのか?」
「小十郎はご覧のとおりの朴念仁ゆえ―――」
貰うわけがないだろうと暗に示す。貰う予定もない。
「Why?一個もか?」
驚いたと言わんばかりに竜眼を見開き、政宗が訊く。確認されるまでもなく、本当に一個も貰ってはいない。
一応数日前に社の近くにある女子高の生徒から調理クラブで作った試作品だというチョコレートを貰ったが――それでバレンタインデーが近いと思い出したのだ――、あれは本命にあげる前の毒見役とも呼べるものだったのでカウントするのは些か難があるだろう。
Really?と政宗にしては珍しく執拗に訊いてくる。誓って嘘は言っていないと肯くと、今度は急に不機嫌になってしまった。不機嫌、というよりも憤慨しているのだろうか。
「Shit!どいつもこいつも目を二つも揃えておきながら節穴かよっ。俺の小十郎はこんなにもイイ男だっていうのによっ」
どうやら政宗は小十郎が一個もチョコレートを貰っていないことに対して憤慨しているらしい。プリプリと怒っている竜を横目に小十郎は苦笑する。
貰わなければ怒り、貰えば貰ったで今度はヤキモチを焼くのだから可愛らしい竜である。
ちなみに政宗のヤキモチ焼きは相当なもので、初代小十郎が妻を娶ると言い出した時には嫉妬のあまり鎮座する村を丸ごと水没させようとしたらしい。本人は昔の話だがなと笑いながら言っていたが、彼の性はそういう怖ろしいものも秘めていて、本当は“可愛らしい”などと一括りにしてはいけないのかもしれない。
「All right.俺の小十郎がチョコレートを一個も貰えねェってのは沽券に拘わる。ちょうど良かった、今日のおやつにガトーショコラを作ったんだ」
えへん、と胸を張って政宗が告げた。勢いに負けて「はあ、」と肯き返してしまう。
「ブラウニーにしようか迷ったんだがな。結構美味くできたぞ」
そういえば今日の政宗はずっと台所に籠りきりだった。数日前には通販サイトで頼んでいたらしいケーキの材料が一式届いていたから何事かやらかすなとは思っていたが……そうか、その伏線だったか。
政宗が作ったガトーショコラ。間違いなく美味いだろう。
好奇心旺盛な政宗は当代になって料理に興味を示し、見よう見真似で台所に立つようになった。最初は庖丁を持たせるのも危なっかしくてヒヤヒヤしたものだが、あっという間に料理の腕が上達して今では玄人の域と言っても過言ではないほどの腕前だ。玄人はだしの龍神など聞いたこともないが。
「Hurry!」
早くしろと急かす政宗に連れられ、小十郎は母屋へと戻った。


ダイニングチェアに座らされた小十郎の前に、上品に切り分けられたガトーショコラが皿に乗せられて出てくる。
「さあ、食え」
「―――は、はあ」
当該菓子職人は対面に座って頬杖をつき、小十郎が食する様を注視している。そのようにじっくりと見つめられると舌にのせて味わうこともできないではないか。
フォークで小さく切り崩して口へと運ぶ。目の前には「どうだ?」と反応を窺う政宗の瞳。
「小十郎?」
「美味しいです。しっとりと濃厚で、でも重た過ぎねえ。甘さも然程ではないから小十郎の口によく合いますよ」
「本当か?」
「ええ、本当に美味しいです。政宗さま、此方…1ホール丸ごと小十郎がいただいてもよろしいので?」
「オ、オウ。勿論だ。お前のために作ったんだからな」
ありがとうございますと礼を述べてから、またひとくち口に運ぶ。口の中でほろりと溶ける甘さが堪らない。
本当に美味そうに食うなア…とガトーショコラを食べる小十郎を見ながら政宗は言った。
政宗が言うには代々の小十郎は皆、美味そうに物を食べるらしい。自分のことなので小十郎にはよくわからないが、どうやら小十郎もその例に洩れないようだ。美味そうに食事をする姿を見ていると俺まで胎が減る、などどいつも冗談めかして彼は言う。
彼の糧は人間と同じではない。
龍神である政宗の糧は人の気―――精気だ。それも小十郎の精気以外は受け付けない。
「食べてみますか?美味いですよ、濃厚で」
「Ah?お前、俺が人間の食いものを必要としねェことくらいわかってんだろ」
「ええ、だから―――」
またひとくち口に運んだあと立ち上がった小十郎は身を乗り出して、きょとんとしている対面の政宗の頤に手を添えて上向かせた。
こじゅうろう?と告げようとする声が唇を重ねることでそのまま飲み込まれていく。代わりにふ、と甘い吐息が零れ落ちた。
常は涼しげな政宗の目許が濡れて色香を孕む。
「Shit!甘ェ」
唇を離した途端にそんな悪態を吐かれた。自分で作ったものだろうにと苦笑するが、頬を染めているあたり照れ隠しだろう。
ああ、やはり可愛らしい。
「美味い、でしょう?」
にこりと微笑んで問いかければ、上目遣いに口を尖らせた政宗は降参とばかりに首肯した。
「―――Yeah.濃厚で甘くて………堪らねェ」
だから、と政宗の腕が小十郎の首裏に絡みつく。
「もっと寄越せ、小十郎」
「竜の―――お望みのままに」


――――――Happy Valentine!



お題配布元:color seasonさま

つぶやき掌ログまとめ

年明けから始めたTwitterで「同じお題で字数制限付きのショートストーリーを書こう!」のBSR版企画に参加中です。→Twitter企画#同題BSR【ざっくりまとめ】
普段字数制限なしで書いている人間なので、こういう風に制約があると慣れない所為か難しいですね(苦笑)。140字以内できちんとまとめるってホント難しい…。
短く纏めたつもりでも実際字数オーバーしてて削って削って…を繰り返しているので、仕上がるとなんだか物足りない感じに。
こちらにもログという形で何本かまとまったらアップすることにしました。

以下は1/14~1/21までにつぶやいたものです。小政と家政と小梵。


【小政】
梅が咲いたのか?すんと鼻をひくつかせて主が問う。
「然様ですか?」
万事に於いて主は感覚が鋭い。同じように小十郎も鼻をひくつかせるが、鼻腔を撫でるのは主が言う梅香などではなかった。
「小十郎には貴方様の馨りしか聞けませぬゆえ」
主の貌が真っ赤になった /梅

【小政】
強がりで臍曲がり。他人の前では弱さを晒さない彼が“愛がほしい”“愛してほしい”と全身で懸命に訴えてくる。
「政宗様?」
「小十郎…もう少しだけこのままでいてくれ」
愛しいひとに乞われたその手を振り解けるほど小十郎は強くはなかった/愛蘭

【家政】
何に似ているんだろう?正座で項垂れた家康の旋毛を見下し政宗はそんなことを考える。顔色を窺って上目遣いで見返してくる姿に唐突に答えが浮かんだ。ああ、犬だ。それも大型犬。
「…嫌だったのか?」
「…ッ!ずっと正座してろ!」
嫌だったと言えない己が恨めしい/せいざ

【小梵】
ぴんと背筋を伸ばして端座すれば気持ちも引き締まる。性格同様堅苦しい姿勢で書を読む小十郎の背にふと心地良い重みと温もりが広がった。
「梵天丸様?」
「小十郎はいつまで梵天をほったらかしにするつもりだ」
重みと温もりを受けつつ小十郎はひそりと相好を崩した。/せいざ



愛蘭はアイルランドのこと。
アイルランド→MOTHERのPVロケがアイルランドだったよなーというところから派生(苦笑)。

おみくじ吉凶勝負【戦国BASARA:小政】

日付が変わり新年になるのを待って、小十郎は政宗と初詣に出掛けた。普段であれば寝静まって静かな街も、新年を迎えた今日ばかりは賑わっている。電車が終夜運転をしている所為もあって人通りも多い。
近くに神社はあるのだが、二人はあえて足を延ばして参拝客の多さで一、二を争う有名な神社へ初詣に行くことにしていた。霊験あらたかなのは何処も変わりなかろうが、参拝客の多いところであればそれを理由に密着できるという―――不謹慎極まりない発想によるものだ。
実際、これだけの人間が何処から集まってくるのかと目を疑いたくなるような混雑具合で、それこそ子供のように手を繋いででもいないと、人の波に呑まれて離れ離れになりかねない。
「迷子にでもなったら大変だからな」
そんなことを嘯いて、人ごみの中、政宗が小十郎の手を握ってくる。悪戯っぽく微笑む彼と目が合って、小十郎は己の下心を見透かされたみたいで居心地が悪かったのだが、政宗の言葉を言い訳にして手を強く握り返した。
「Jesus!スゲエ人だなァ」
「政宗さま、危ない」
「Oh,」
拝殿に向かう参道でもみくちゃにされ、もはや手を繋ぐだけでは危なっかしくて、政宗が離れないようにと小十郎は肩を抱き寄せた。
「Thanks」
左眼を大きく見開いて小十郎を見上げた――新年一番にそんなかわいい驚き顔を目にできるのも小十郎の役得だろう――政宗は、抱き寄せてくる小十郎の大きな手の強い存在感にはにかんだ笑みを浮かべた。そうして自分からも擦り寄ってくる。
「………迷子になりたくねェし」
そんな言い訳もかわいらしい。つい肩を抱く手に力が入った。
漸く拝殿近くまで辿り着いた二人は、思い思い賽銭を投げて心の中で願いごとを唱えた。もちろん、小十郎のそれは決まりきっている。今年も政宗とともに健やかな一年を過ごせますように、だ。
ちらりと横目で政宗を盗み見ると、真剣な面持ちで願いごとを唱えている。どんな願いごとを…などと訊くのも野暮なので訊かないが、願わくは自分と同じであればいいと思う。
(それにしても―――神さまもこれだけの人間の願いごとを叶えるなんざ大変だな)
「Ah~,ちィと欲張っちまった。願いごと」
「新しい年を迎えた時くらいきっと神さまも気前よく聞いてくれますよ。なにしろ此処にいる人間の願いごとに耳を傾けてくれるくらいだ」
「ha-ha.違いねェ」
拝殿を離れてから再び手を繋ぐ。
「なあ、小十郎。おみくじ引いて行こうぜ」
「おみくじ…ですか?」
「Ya.年の初めの運だめしってヤツだ」
「政宗様、おみくじは運を試すものではありませんよ」
細かいことはいいんだよと口を尖らせ、政宗は繋いだ手を引っ張った。
人の波に逆らって札授所に向かうので、どんなに気を付けていてもぶつかってしまう。こればかりはお互い様なので仕方がない。ただ、ぶつかった相手が政宗を見るや、魂を抜かれたみたいに息を飲むのが面白くなかった。十人ぶつかればその十人が揃って同じ反応をするのだ。天性の人誑しであることを思えば当然なのだろうが、傍らで恋人がそういう目で見られるというのは、小十郎でなくても心穏やかではいられないだろう。いっそのこと胸許に抱き込んで、他人の目から隠してしまいたいくらいの心境だ。無論そんなことをすればかえって目立つこと間違いなしだが。
札授所でお守りと縁起物の熊手を買ったあと、二人は札授所横でおみくじをひいた。引っ張り出した木棒を巫女に渡してくじを引き換える間も、“年の初めの運だめし”と言い切った政宗はワクワクしながら瞳を輝かせていた。そんな彼に苦笑しながら、小十郎も引いた木棒を巫女に渡す。
「さァて、吉と出るか凶と出るか―――」
木棒に書かれた数字と同じ抽斗から取り出し、巫女が手渡してくれたおみくじに揃って目を落とした。
「……………、」
「小十郎、どうだ?」
眉間に深い皺が寄った小十郎には気付かずに――俯いている所為である――、政宗がひょいっと手許を覗き込んできた。
「―――――――凶………だな」
「―――ですね」
小十郎の手の中にあるおみくじは“凶”だった。
ちなみに政宗は“中吉”である。この一年のそれぞれを暗示しているみたいで、なにやら幸先悪い。よりにもよって凶を引くとは何事だろう。
こんな紙切れ一枚でこの一年を勝手に決められてたまるかと強がってみても、肩を落とした態度は素直に心の裡を物語っている。そんな小十郎を励ますように、「まあまあ」と政宗は落とした肩を叩いた。
「凶なんて引きたくて引けるモンじゃねェぞ。かえって縁起がいいじゃねェか」
「………慰めはいらねえです、政宗様」
「慰めなんかじゃねェよ。いいか、考えてもみろよ。凶ってのはこれ以上悪くなりようがねェってことじゃねェか。つまりこれから上り調子ってことだろ」
「………………、」
「大吉はその逆で、あとは転がる一方って感じだよな。だから俺はコイツで満足してるぜ」
自分の引いたくじをひらひらさせながら政宗が笑う。なるほどポジティヴな考え方だ。
「政宗さま……」
「新年早々そんなシケたツラしてんなよ。たかがおみくじだろ。そんなシケたツラ、せっかくの男前が台無しだ」
そのおみくじを“年の初めの運だめし”と言い放ったのは他ならぬ政宗だ。それに照らせば、小十郎の今年の運だめしは“最悪”ということにならないだろうか。
「小十郎、さっさと木の枝に結んじまおうぜ。それで家に帰ろう?」
気を取り直すように促され、幾重にもおみくじが結ばれた木の枝に自分達もおみくじを結びつけた。きっと何人もの人間が此処で同じような遣り取りをしているのかもしれない。
「初詣はしたし、あとは仕事始めの日まで家でのんびりできるな」
迷子になったら大変だからと言いながら、先刻と同じように政宗が手を繋いできた。人混みの所為にしているから他人の目も然程気にならない。いつもより大胆に指を絡めてくる。
きゅ、と握られた瞬間、瞳を細めた小十郎を見上げて政宗はふふと微笑んだ。
「輝宗先生のところへ挨拶に行くんでしょう?」
「Oh,そうだ。親父に新年の挨拶はしておかねェとな。すっかり忘れてた。ま、そいつを済ませちまえば水入らずだぜ、darling?」
姫はじめも控えてるしな。
「ま、政宗さまっ」
誰が耳にしているかもわからないというのに、どこまで大胆になるつもりか、そんな艶事まで口にする。聞かれてやしないかと辺りを見回したが、この人混みだ。皆自分達のことだけで精一杯らしい。決して小十郎は小心者ではないのだが、ほっと息を零す。
「Ha!No problem.誰も聞いちゃいねェって」
小十郎の心中を見透かしたように笑い飛ばされ、決まり悪い思いをした小十郎は、そんな自分を隠すために眦を吊り上げた。




お題配布元:color seasonさま


俺の負けでいいよ【戦国BASARA:小梵】

瞼が今にもくっつきそうだというのに頑なに「眠くないっ!」と言い張る梵天丸を抱き込んだまま、小十郎は途方に暮れていた。
宥めて賺して―――子供騙しにしかすぎぬ手立てが子供である梵天丸には通用しないのはわかっているが、それでも「そろそろお休みいたしましょう?」と水を向けてみても、小十郎にしがみついて、いやいやと可愛らしく首を横に振る。
「梵天丸さま、」
「眠くないと言っている!」
さてどうしたものかと小十郎は密かに溜息をついた。幼子をあやすように背中をとんとんと叩いてやる。眠くはないと当人は言い張っているが、抱き込んだ小さな躰は少しばかり体温が高い。やはり眠いのだ。
梵天丸の駄々は今に始まったことではない。が、今宵ばかりは幼児返りでもしたのか、駄々を捏ねて小十郎を困らせる。
大晦日である。大広間では年越しの酒宴が続いていて、少し前までは梵天丸も嫡男として宴に出ていた。
大晦日の伊達の酒宴は夜通し行われるのが通例なので、子供である梵天丸が最後まで付き合うことは叶わず、毎年区切りのいいところで小十郎に連れられ席を外すことになっている。小十郎は梵天丸の傅役であると同時に伊達家の禄を食む身であるため、梵天丸を寝かしつけたら酒宴に戻るよう輝宗に申し付けられていた。
輝宗にすれば、一年無事に傅役を務めあげた――なにしろ小十郎が梵天丸の傍に侍るまでは癇の強い梵天丸の傅役が三日と続く者がいなかったそうだ――小十郎を労おうというのであろう。或いは梵天丸を寝かしつけた後くらい役から離れても構わない、そういう心遣いかもしれぬ。伊達輝宗という人は懐の大きな人であるから。
だが、小十郎は朝も昼も晩も―――変わらずに梵天丸の傍で梵天丸の傅役でありたかった。梵天丸は確かに手を焼くが、駄々も我儘も苦とは思わない。だから気遣いは無用なのだが、そうは言っても若輩の身ゆえ、あまり強く主張はできない。そのために梵天丸を寝かしつけた後にいつも少しだけ酒の相伴に与っている。
梵天丸は己が寝た後で宴に戻る小十郎に気付いているのかもしれない。否、気付いている。だからこそのこの所業だ。
「梵天丸さま、我を張らずにもうお休みなさいませ」
「いや…だ。梵天は眠くな、い」
ふにゃふにゃと歯切れの悪い口調。左眼を頻りと擦るものだから、それはなりませぬと窘めて左眼から手を取り上げた。
この期に及んでも眠くないと言い張るか。やせ我慢もいいところだ。
師はへそ曲がりたれ、と常々この子供に解いているが、その教えがちゃんと浸透していることをこんなところで知ってもあまり有り難くはない。
「眠くないはずはありませぬ。常なればもうお休みになっている時間にございましょう?どうして然様に起きていようと思われる」
この年になって愚図る子供をあやすとは思わなかった。このまま言い諭すのも埒が明かないので、抱き込んでいるのをいいことに梵天丸を寝所まで強制連行することに決める。
「こじゅうろっ」
小十郎が梵天丸を抱いたまま立ち上がったので、無理やり寝所へ連れて行くつもりだと察知したのだろう。腕の中で突然暴れ出した。無論、大事な梵天丸を取り落とすような愚かな真似を小十郎がするはずもない。暴れても落とさぬようにしっかりと抱いている。
「梵天丸様は年越しの宴がお気になるので?」
「…………、」
口をへの字に曲げて、むすりと黙り込む。その態度は“気になっている”と言っているようなものだ。存外子供らしい素直な態度に思わず笑みが零れた。
「……だって、」
小十郎の首にしがみ付いた梵天丸は、不貞腐れ気味に不満を転がす。
「だって、梵天が寝たら小十郎は父上のところに戻るのだろう?」
やはり聡い子供だ。
「梵天は小十郎と一緒にいたい。だけど、梵天が寝たら小十郎はお役ご免であっちに戻ってしまうのだろ?」
だったら梵天は寝ない。梵天がこうして起きている限り、小十郎は梵天の傍にいなければならないのだからな。
「梵天丸様―――」
「小十郎と一緒にいるためだったら、梵天はいつまでも起きている、ぞ」
言っている端からふわりと小さな欠伸が解け出てくる。
「梵天丸様、今お口から欠伸が出ましたな」
「のー。欠伸じゃないっ。い、今のは…そうだ!深呼吸をしただけだ」
可愛らしい言い訳。
「然様にございますか。梵天丸様は眠くないと仰られますが、小十郎は少々眠くなってしまいました。そろそろ休みたいと思うのですが……小十郎の今年最後のお願いをひとつ、眠くなってしまった小十郎のためにどうか添い寝いただけませぬか」
「――――――っ」
弾かれたように躰を離して小十郎を見る梵天丸の眼差しが絡む。負けず嫌いな大きな瞳は『してやられた!』という悔しさを滲ませていた。抱き上げているからできなかろうが、足が床についていたら地団駄を踏んでいたかもしれない。
「し、しかたないな。小十郎がどうしてもというなら……梵天が添い寝をしてやる」
「有り難き幸せ」
途端、瞼が落ちそうにとろんとしてきた円らな瞳を見つめ、小十郎は唇に柔らかな笑みを作った。


お題配布元:color seasonさま

目覚めて最初に目にしたものは【戦国BASARA:小政+孫市】

妙にソワソワしているな、と対面に座る女が薄く笑ってみせる。切れ長の瞳を細めて小十郎の渋面を見、それから通りすがりの店員に生中を追加した。
研究員として男ばかりの研究室に籍を置く所為だろうか。気取るところがなくさばけた性格ゆえ、時々性別を忘れそうになる。
「こんな所で呑気に飲んでいる場合ではないとでも言いたげな顔だ」
「…………、」
心中を見透かされた小十郎は益々渋面になる。
女の名は雑賀孫市。小十郎は関西の私立大学に研究員として勤めている孫市と一緒に研究をしていて、昨日から打合せのために関西へ出張していた。
ちなみに今日はクリスマスイヴである。世の恋人達は今頃甘い夜を楽しんでいるだろう。一見、カップルに見えなくもない――レストランでディナーではなく、居酒屋で飲んでいるあたり場違いにおもわれるだろうが――二人ではあるけれど、実のところそんな甘い雰囲気は微塵もない。二人の関係性を言葉にすれば“戦友”が最も近しいだろうか。
小十郎には年下の可愛い恋人がいて、今この時にも心は恋人の許へと飛んでいる。ソワソワしていると見抜かれているのはそのためだ。
クリスマスを楽しみにしていただろう恋人は、その楽しみを台無しにされてとても憤っていた。大学機関に勤める人間なので大学教員が同時に研究者でもあることはよくわかっている。だから滅多なことで小十郎の研究に口を挟まないが――予定を反故にされることがあっても、だ――、今回ばかりは腹に据えかねたらしい。結局満足なフォローもできぬまま、そのことに後味の悪さを感じつつも此方に移動してきてしまった。ちなみに小十郎が恋人の許へ戻るのは、クリスマスなどとうに終わった二十六日である。
「そういえば片倉、お前恋人ができたそうだな」
「…それがどうした」
孫市とは付き合いが長く、それゆえ男でも女でもいける小十郎の性癖も理解している。だから、その小十郎の恋人が同性である可能性があることも当然承知していた。
「今回は男か?女か?」
「…………」
器用なことに孫市は小十郎の表情で察したらしい。女の勘、とでも言おうか。
「ふふ、そうか男か。今日はクリスマスイヴだというのに、出張とは災難なことだな」
「ああ、全くだ。お蔭で散々詰られた」
ちゃんとフォローはしてきたのか?と目顔で問われ、むすりと押し黙る。その沈黙は言葉にする以上に小十郎の答えとなっていて、孫市はビールジョッキを片手に長嘆した。
「……烏め。お前、“釣った魚に餌はやらん”クチか」
「そんなことはねえ。俺なりに政宗様のことを充たしているつもりだ」
「ほう、政宗というのか」
しまった、とばかりに掌で口許を塞いだ小十郎は、諦めたように小さく息を吐いた。酒の肴に他人の恋話。当人にとっては居た堪れないが、相手にしたら楽しいものだろう。
肴にされることを覚悟で仏頂面のまま、小十郎は彼女に恋人の話をする。
生中から日本酒に替えた――女ながら孫市は酒豪だった――孫市は冷酒グラスを傾けながら、小十郎の話を聞き入っていた。聴き上手でもある彼女は興味本位で突っ込みを入れたり、話の途中で茶化したりすることはしない。小十郎にとってそのことだけが幸いだった。
「その政宗とやらがヘテロであれば、尚更フォローを入れなければなるまい。自然の摂理を曲げてまでお前を選んだ。相手の覚悟は相当なものだと思うがな。そんな相手を繫ぎ止めようとするなら、生半可な努力では済まないだろうが。片倉は相手の覚悟に見合うだけの努力をしているのか?愛情に胡坐を掻いていると何れ相手に愛想を尽かされるぞ」
「…………、」
痛いところを衝かれて、小十郎は声も出なかった。全くそのとおりなことを他人に指摘されると言葉などでないものだ。
実のところ、日中空いた時間を見つけて政宗へ連絡を入れてみた。電話口の政宗は相変わらず機嫌が悪いようで、此方が話を向けても素っ気ない。挙げ句に
『今夜は元親とイタリアンレストランでクリスマスディナーだ』
とあてつけのように言われて、目の前が真っ暗になってしまった。よりにもよって、小十郎が不在の間に不届きな学生時代の後輩が入り込んできたのだ。目の前が真っ暗になると同時に、怒りと独占欲が溢れだしそうになり、うっかり自身のスマートフォンを破壊しそうになった。
おそらく今頃政宗は元親と一緒だろう。こうしている間も元親は“鬼のいぬ間に”とばかりにちょっかいをかけているに違いない。小十郎と元親の好みは学生時代から悉く被っていたから、小十郎の好みの具現が政宗であるのならば元親もまた同じなのだ。現に元親はわかりやすいくらいに政宗に秋波を送っている。幸いなのは政宗の心が小十郎に向いていることだが、孫市の言うとおりそれに胡坐を掻いていては愛想を尽かされないとも限らない。人の心など移ろいやすいものなのだ。
今すぐにでも政宗の許へ戻りたい。だが、仕事を放り投げるなど社会人としてあるまじきことだ。
「片倉、」
やれやれと孫市が肩を竦める。
「この烏が。ここで苛々しているくらいなら帰ったらどうだ。今なら充分最終の新幹線にも間に合うだろう」
「だが……、」
「打ち合わせることなど粗方済んでしまっている。一日早く帰ったところで響くことはない」
それに、その方がかえってサプライズになるのではないか?
ふふと口の端を軽く持ち上げて言う孫市に心中を見透かされ、小十郎は最早黙るしかない。
「………恩に着る」
相手の申し出に感謝する物言いではないな、と苦笑しながら孫市が揶揄ってくる。確かに憮然とした顔つきだったからそう言われても仕方がないかもしれない。
「これで貸しが一つだ、片倉。私がそちらに行った時にでも返してくれればいい」
暗に恋人を紹介しろと言っているのだ。
とんだ相手に貸しを作ってしまったものである。


孫市の有難い申し出に背を押される恰好で早々に居酒屋から撤収した小十郎は、ホテルのチェックアウトを済ませて最終の新幹線に飛び乗った。車中にいる間も生じてしまった距離がずっともどかしく、帰ったら言葉を尽くすことばかりがぐるぐると頭の中を巡る。
ターミナル駅から何度か乗り換えをして最寄駅からタクシーを使い、我が家に着いた時には既に日付が変わっていた。勿論、家は真っ暗だ。政宗に限って元親と外泊などあり得ないので――むしろあり得ないと思いたい心境だ――、おそらく寝てしまったのだろう。鍵を開けて静かに入ると、玄関の三和土に政宗の靴が揃えられていて、それを確認した時に心の底からホッとした小十郎である。
(政宗様―――、)
寝室をそっと覗き込めば、二人で使う広いベッドの真ん中で寝具に包まるようにして丸くなって政宗が眠っていた。その寝顔を見ているだけで切なくなる。
その場から離れ難く思いつつも、自身も寝る準備を整えねるために一旦寝室を離れ、手早くシャワーを浴びてから着替えを済ませてから改めて寝室へ戻る。
熟睡状態の政宗は小十郎が戻ってきたことも気付かないようだ。するりと政宗の横に身を滑り込ませても、目覚める気配はない。よほど深い眠りにあるらしい。
「ただいま戻りました、政宗様」
囁くように告げて唇で頬を撫でると、くすぐったいのかその時ばかりは小さく身じろいだ。
ふ、と息を零して横になった小十郎は傍らの温もりを感じながら瞳を閉じた。




「…………こじゅ、ろ?」
なん、で?



朝目覚めた小十郎が目にしたもの。
信じられないもしかして寝惚けてるのかオレと言わんばかりに頻りと一眼を瞬かせている可愛い恋人の顔だった。


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ハートに赤と緑のリボンをかけて【戦国BASARA:小政】

冬野菜の収穫で畑に出ていた小十郎の携帯が鳴った。今更確認するまでもない。政宗からだ。
科学技術にやたら明るく、流行に敏感な龍神様は、少し早いクリスマスプレゼントとして小十郎があげた携帯電話が目下お気に入りだ。まるで与えられたおもちゃを片時も離そうとしない子供みたいに手許に置いて、ちょっとのことでもすぐに携帯を使いたがる。
こうして小十郎が畑に出ている時ばかりではなく、母屋や祭殿にいる時も―――少しでも政宗と離れているような時には決まって携帯が鳴った。龍神様は通話料を度外視しているようである。まあ、今更のことではあるが。
腰を伸ばしながら小さな溜息をついて、小十郎は通話ボタンを押した。
「どうしました、政宗様」
『小十郎、早く帰ってこい』
返された答えは笑いを含んだ声であまりにも端的だ。早く帰ってこいと一方的に告げてブツリと切れる。これもまたいつものことである。
(やれやれ―――)
しょうがねえ。苦笑混じりのぼやきは、けれど迷惑そうな響きは微塵も含まれてはいなかった。


母屋に戻った小十郎は、食卓を飾る料理の数々に目を白黒させた。
「ま、政宗さま?」
おかえり、と出迎えてくれた政宗は台所に立っている。普段小十郎が使っているエプロンを掛けていて、その姿が妙に馴染んでいた。
近頃の政宗は料理にも目覚めたらしい。何かにつけて台所に立とうとする。それこそ当初は庖丁を持つのも危なっかしくて目を離せなかったのだが、コツを掴めば上達はあっという間だった。今では小十郎よりも料理が上手いかもしれない。
おまけに凝り性を発揮して、台所には今や得体の知れない調味料類がいろいろ置かれている。勿論、これらの入手先は専ら政宗お得意のネット通販だ。
人型をとっているものの、元々龍神の政宗は人間が食するようなもので栄養を摂取する必要はない。彼の糧は“精気”であり、その糧は小十郎が担っている。つまり、政宗が料理を作っても当人が食べることはなく、小十郎が専ら食べることになるわけだ。政宗が小十郎の精気を喰らうために小十郎には精をつけてもらわなければならない、ということでせっせと作ってあげているとも考えられ、それはそれで理に適った行為だと思うが、どうやらそれ以上に〈片倉小十郎〉という男は代々料理を美味そうに食べるらしく、これまでの小十郎達の美味そうに食べる姿を見るにつけ、自分の作ったものでそういう顔をさせてみたいという欲求に駆られたのだそうだ。とはいえ、〈小十郎〉の前であれば人型をとるというほど単純でもないようで――人型の政宗を目にすることができた〈小十郎〉は初代小十郎から片手で事足りる――、漸く当代になってその欲求が充たされたことになる。
小十郎はいろいろな意味で政宗に“選ばれた”存在となるのだが、選ばれるということは半面、財布的には厳しいことになるらしい。携帯といい、ネット通販といい、料理といい―――気の遠くなるほど長い年月を重ねてきた小十郎の龍神様は、いい加減金遣いが荒すぎる。こんなところばかり人間臭くならなくてもいいのに。ご先祖は政宗の浪費――と言ったら水が領分の彼は怒って嵐を呼ぶに違いない――癖に悩まされなかったのか。
「どうしたんですか。こんなに料理を作って」
視覚と嗅覚で美味を訴えてくる料理の数々。お菓子の家はデザートだろうか。そう言えば、少し前ネット通販で『お菓子の家手作りキット』なるものを注文していたような気が…。
「今日はクリスマスじやねェか。なんとかっていう外つ国の神の誕生日なんだろう?」
八百万いる神が当たり前という国なので、政宗は神の名前まで覚えようとはしない。それとも彼自身も神であるため、自尊心が邪魔をして余所の神の名など口にしたくはないのか。
「神に誕生日っていう概念がすげェ」
「政宗様にはないのですか?」
「Hum…自我が目覚めた時には存在していたからなァ。っていうか、普通そんなもんじゃねェ?」
「小十郎は人間ゆえわかりかねますが………」
ぱちりと瞳を瞬かせた政宗は、「それもそうだな」と小さく笑った。
「外つ国の神の誕生日を祝ってやるなんて実に寛容な国じゃねェか。たとえ当初の目的が薄れて、俗っぽいイベントになろうともな」
むしろ今は当初の敬虔さよりも政宗の言う俗っぽい―――恋人達が甘い夜を過ごすイベントに重きが置かれているのだが、政宗はそのあたりも既に承知しているようだ。
「そんな訳で俺も便乗しようと思って、気合い入れてみた」
「―――はあ、然様で。にしても気合い入れすぎですよ。いくら小十郎でもこんなには食べきれません」
「Ha-ha,全部食えとは言わねェよ。俺の作ったものを美味そうに食うお前の顔を見るのが俺の喜びなんだ」
「政宗さま…」
ああ、そんなことを言われたら。
何が何でも全部食べなければと思ってしまうではないか。
「どうした、小十郎?」
「いえ…。せっかくですから全部いただこうか、と」
全部食べろとは言わない、と言ったものの、せっかく作ったものを美味しいうちに食べてもらいたいという作り手の気持ちはよくわかる。だからこそ、小十郎の言葉を聞いた政宗の顔がパッと輝いた。彼は自分が作った料理を美味そうに食べる小十郎の顔を見るのが喜びだと言ったが、小十郎はそんな彼が嬉しそうな顔をするのを見るのが何よりの喜びなのだ。
「でも、最後に俺を喰うくらいの余力は残しておけよ?」
スペシャルはこの俺なんだからな。
囁いて鼻先をすり寄せ、時々悪戯に唇を食んでくる政宗に苦笑を浮かべつつ、小十郎は「…努力します」と告げた。




お題配布元:love is a momentさま



お子様用シャンパン【戦国BASARA:小政】

「…………、」
これは一体どうしたことか。息せき切って急いで帰ってきたために未だ呼吸が整わず肩を大きく上下させている小十郎は、目の前の光景に言葉もなかった。
ダイニングテーブルに政宗がまるで力尽きたように突っ伏している。傍らにはシャンパンやらワインやらのボトルと飲みかけのグラス。
ひと目で酔い潰れているとわかった。それこそドラマで目にする酔い潰れた親父と同じ恰好なのだ。
「ま…っ、」
政宗っ?!と叫びそうになる声を小十郎は寸前でどうにか飲み込んだ。この事態を小十郎は全く想定していなかったのだ。まさに予想外、というヤツである。
(こいつはもしや………ヤケ酒―――か?)
クリスマスということで、当然のことながら小十郎は政宗と過ごすつもりで今日は早めに仕事を切り上げようと動いていた。職場の大半が今日は家族と過ごしたり、恋人と過ごしたり―――とそれぞれ予定があるのだろう。朝からどこか浮かれ気味で、終業間際になると途端にソワソワし始め、終業チャイムが鳴ると同時に一斉に帰る用意を始めたのだ。
無論、小十郎も洩れずにその流れに乗っていた。頭の中は帰ってからのことでいっぱいで、だから先輩に呼び止められて思考の中断を余儀なくされ、小十郎はついその筋の者と疑われかねないような凄みのある表情を向けてしまったのだった。
見れば、何人か連れ立っている。皆独身の野郎どもだ。小十郎を呼び止めた先輩は何故か小十郎以上に鬼気迫る顔で「おい、飲みに行くぞ」と誘ってきた。断るのは許さないという勢いである。
組織とは悲しいものだ。加えて小十郎の職場はどこか体育会系の雰囲気があるため、年長者のお達しには従う風潮がある。
そんな訳で見事に捕まってしまった小十郎は、泣く泣く――勿論内心であるが――政宗に少しばかり遅くなる旨のメールを打ったのだった。
「政宗、」
少し遅くなる、どころかだいぶ遅くなってしまった。小十郎は酔い潰れた政宗を介抱しながら小さく舌打ちした。
クリスマスの夜に野郎どもばかりのむさ苦しい飲み会。それは、クリスマスを過ごすパートナーがいないということだ。
小十郎は政宗という相手がいるのだが、表沙汰になってはいろいろ困る点が満載であるため、表立っては『独身、恋人なし』を貫いている。形の上ではフリーであるので、それはそれで厄介なことも多いが――例えば女性に言い寄られるだとか――、今回はその極め付けとも言えた。いっそカミングアウトしてやろうかとも考えたが、己の衝動で政宗を巻き込みたくないと何とか思い止まったのである。
「…ったく、目を離すととんでもねえことをしやがる」
一体何本ボトルを空けたのだろう。アルコールは強くないというのに。
明日は間違いなく二日酔いだ。詰られることも併せれば、考えるだけで思い遣られる。思い遣られるが、その原因を招いたのが自分だと思うと嘆いてばかりもいられまい。きっちり介抱する義務を果たさねば、後々恨まれそうだ。
「やれやれ………」
転がり落ちてくるのは溜息ばかり。
くったりと重い――意識がないから本当に重い――躰を抱き上げて寝室へ向かいながら、小十郎の頭の中は恋人が目覚めた後の算段で忙しかった。


案の定、というか。
小十郎の朝は、やはり恋人の介抱から始まった。
「うぅぅぅっ。頭痛ェ」
翌朝目覚めた政宗はベッドの中で呻き声を上げていた。「頭が痛い」と「気持ちが悪い」の二つの台詞しか認めないとばかりに、交互に繰り返す。
「弱いクセにあんなに飲むからだ」
「………だって、お前が悪いんだろっ」
吐き捨てるように答えた政宗は、その声が頭に響いたのか、吐き捨てた端から呻き声を発した。
「確かに昨夜は全面的に俺の非を認める。悪かった」
「そうだ、全部小十郎が悪い。俺が二日酔いで苦しいのも」
「ああ、そうだな」
恨みがましい視線を向けられて、苦笑を浮かべる。
二日酔いの件は自業自得という感が否めないが、ここは彼の非難を甘んじて受け止めることにした。たぶんこういうところが彼に対して自分は甘いのだろう。
「二日酔いが治まったら昨夜の仕切り直しをしよう、政宗」



但し。
アルコールは抜きで。



お題配布元:love is a momentさま



蜂蜜味のリップクリーム【戦国BASARA:小政】

アトベント挑戦も残すところ今日を含めてあと4日となりました。
本日はにょた宗仕様となります。
なので、本編は折り畳みです。お手間をとらせます。

唇フェチなリーマンこじゅと女子高生政宗です。
…小十郎がちょっとオカシイです(苦笑)。

先生も走る【戦国BASARA:家政】

家康が政宗と付き合い始めて、そろそろ片手では足りない年数となってきた。
付き合い始めたのは、家康がまだ青臭さの抜けない高校生の頃だ。政宗は高校の先輩で、十人が十人振り向くような―――とにかくいい意味でも悪い意味でも目を惹く容姿の持ち主だった。
どう考えても子供扱いの家康に靡くとは考えられず、だからこそ押して押して押し捲った挙げ句、漸く手に入れた高嶺の花だった。家康の粘り勝ちと言ってもいい。
彼が家康のどこに惚れたのか今を以てわからないが――恥ずかしがりやなのだ――、とにかく今も変わらずに恋人としてのポジションを維持している。
が、ここのところ少しばかり倦怠期に片足を突っ込んでいるようだ。
お互い社会人となって休みがなかなか合わない――政宗は基本土日休みの教師で、家康は火水が休みの住宅メーカーの営業である――ということもあるのかもしれないが、最近はすれ違いが多くなっていた。
付き合いも長くなればマンネリ気味になるのも当然で、これが男女であれば“そろそろ結婚しようか?”になろうものを如何せん家康も政宗も男である。結婚という逃げ道を使えない以上、ダラダラと膠着した不毛な関係が続いていて。
無論、このままがいいとは思っていない。このままでは物理的距離感がそのまま心の距離となりそうで怖い。確たるものがないからこそ自分達のような関係は不安がつきものなのかもしれなかった。
政宗はこの現状をどう思っているのだろう。自分はあの頃と変わらずに政宗を想っているが、それは政宗も同じなのだろうか。
悶々と自問自答を繰り返していたある日、突然降って湧いたかのように実家から家康に見合い話があった。
相手は母親の知り合いの娘だという。どうやら母親同士が盛り上がって段取りを決めてしまったらしい。盛り上がりで決められた方は豪い迷惑な話である。
勿論、家康は即お断りの返事を入れた。自分には政宗がいる。余人が入る余地は全くない。
だが、先述のとおり政宗との仲は倦怠期に入りかけていて、正直不安ばかりが募っている時期だった。また、クリスマスシーズンという恋人達にとっては一番のイベントが近づいていたこともあって、いつもであれば決して考えないことを―――政宗の心を試してみようと思ってしまったのだ。


師も走るというように、十二月はとかく忙しい。普段から家康とは休みが合わないのだが、政宗は合わないなりにもなんとか時間の遣り繰りをして逢う時間を作っていた。ところが十二月の声を聞いた途端、忙しさに流されて全く逢えずじまいの日々が続いた。
十二月だから仕方がねェよな、と政宗は言い訳じみた言葉を自身に言い聞かせる。忙しいのはお互い様、きっと家康もわかってくれていると年下の恋人の優しさに甘えきった部分があったのは確かである。
けれど。久しぶりの逢瀬で告げられたそれは、政宗にとっては青天の霹靂に等しいものだった。
今度見合いをすることになったんだ、とまるで時候の挨拶を告げるような軽さで家康に告げられた。家康とは高校の頃から付き合い始め、交際期間もそろそろ十年になろうかという長さだ。愛し愛されという自覚はあるが、勿論それは世間には秘したものである。世間一般的に言えば、政宗も家康も結婚適齢期に突入していながら未だ独身を貫く男であり、そうした話が舞い込むのも仕方ないことではある。
ふうん、それで?と特段興味を示さぬ返事をしてしまったのが悪かったのか。家康は少しばかり傷ついた表情で政宗を見、「止めろとは言ってくれんのか?」と訊いた。
「Why?」
「だって、政宗はワシの恋人だろう?恋人がいながら見合いをするんだぞ」
面白くないのではないかと此方の心中を量る家康に、政宗は気のない素振りをとってしまう。素直になれない政宗の性格が災いしたのだが、さりとてそんな自分の性格を家康は知り尽くしている筈だ。
ここで見合いなんか止めてくれと家康に縋るのは、coolではなかった。だから。
「すればいいんじゃねェの、見合い」
「おい…。本気で言っているのか?」
本気ではない。強がりが邪魔をして本心を言えずにいるだけだ。そんな政宗の性格ぐらいわかっているだろう?
「…そうか。止めろとは言ってくれんのだな、お前は」
「家康?」
「見合いの日、クリスマスなんだ。お前が止めろとひと言言ってくれれば、お前と過ごすつもりだったんだがな」
明朗が取り柄といっていい家康が見せた淋しそうな貌。それを見過ごしてしまったのは、間違いなく政宗の失態だった。
結局、その日を最後に家康とは連絡がとれなくなってしまった。
見合いをすればいいとあの時は素っ気なく言ったものの、気が気ではない。あの男は政宗の贔屓目を抜きにしても伴侶と定めるに相応しい。優しい夫として幸せな家庭が築けるだろう。そう思えば思うほど、自分の方が分が悪くて日増しに焦りの色が濃くなっていった。
「Shit!」
そんな政宗だから物事に集中できるわけもない。見合いの当日など、朝から惨憺たるものだった。それでも何とか一日の業務をこなし、職場を飛び出す。
見合いの場所と時間は家康から聞かされていた。名の知れた高級ホテルだ。覆水盆に返らずという諺のとおり、今から向かったとしても最早どうにもならないかもしれない。もし運良く家康が捉まったとして、一体何を言うつもりか。今更「俺のものだ」と相手の女に主張するつもりか。そんなみっともないことを本気でするつもりか。
師走の街を夢中で走る。走りながら、
(まさに“先生も走る”とはこのことだな)
と考えた自分がひどく可笑しかった。
目的のホテルに辿り着き、息を切らせたままラウンジで家康を探す。あの男は目立つから、まだいればすぐに見つけられるはずだ。
果たして、家康はいた。一人だ。
「家康っ」
「政宗。来てくれたのか」
あれほどcoolではないと思ったのに。家康の顔を見たら、みっともなく愁嘆場を演じてしまいそうだ。
「み、見合い、は?」
呼吸が乱れたまま、言葉を紡ぐ。そんな政宗に苦笑を浮かべて、家康は落ち着けと告げてくる。恋人が見合いをしたのだ。これが落ち着いていられるか。
ところが、家康は突然政宗に向かって頭を下げたのだ。
「すまんっっ」
政宗の一眼が何事かと丸く瞠られる。
「スマン、政宗。お前を試した」
「―――は?」
試す?
「見合い話があったのは本当のことだが、今日見合いをしたのは嘘なんだ」
「嘘、だと………?」
「ああ。最近ずっとすれ違いが続いてばかりだっただろう?それでこう…このまま離れてしまうのではないかと不安になってしまってなあ。見合い話があった時、本当は即断ったんだ。でも、お前には見合いをするって言ってしまった。お前が止めてくれって言ってくれるか、此処に来てくれるかどうか…試したんだ。お前の心は変わらずワシに在るのか、賭けた」
「家康………、」
事の顛末を聞かされて一気に力が抜けてしまった。ふらりとよろめいたところを家康の手が支えてくれる。
焦って仕事も手が付かず、それこそ見栄もかなぐり捨てて走ってきたのに――汗だくで最悪だ――、そんな種明かしをされてしまってどう反応を返せばいいというのか。
「政宗?大丈夫か」
政宗の反応を窺うように恐る恐る家康が一眼を覗き込んでくる。政宗の気性を考えれば、嘘をついてまで試したことを怒りこそすれ、揶揄われたと笑って終わりにしてくれるとはとても思えなかったからだろう。
(なんだ…お前も不安だったのかよ)
どっちもどっちだったのか。お互いに吐き出せばすぐにも解決できることに、素直になれなかったものだから吐き出すどころか不安ばかりを抱え込んで。
(Ha!バカみてェ)
空回りしている自分達がなんとも滑稽だ。家康の手を借りて体を支えたまま、政宗は笑った。まさかそんな反応を返されるとは思っていなかっただろうから、逆に家康が慌てる。
そんな余裕のない家康を見て更に笑いが止まらず、左眼の目尻に涙を滲ませて「怒らねェよ」と告げれば、あからさまにホッとした顔をされた。
「なア、家康」
「うん?」
「もっと素直になってりゃ良かったな、お互いに」
政宗の言葉に相槌を打った家康がそっと背を撫でてくれる。
「あのな、政宗。今夜一緒に過ごそうと思ってその……部屋を取っているんだが」
「Ha!抜け目ねェな、アンタ。もし俺が此処に来なかったらどうするつもりだったんだよ」
「そうだなあ。クリスマスで奮発した広い部屋に一人淋しく泊まって、お前の姿を目蓋に思い浮かべながら慰めていただろうな。まあ、そうならなくて良かったよ」
早く二人きりの世界に浸りたいと耳許で家康に甘く囁かれ、政宗はくすぐったげに首を竦めた。



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