人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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355.蝙蝠【戦国BASARA2:チカダテ】

「西海の鬼の機嫌は大時化だって聞いていたが…成程、随分と荒んでんじゃねェか」
元親が自室兼作業場としている部屋の惨憺たる有様に、訪れた政宗は軽く左眼を瞠り、ヒュウと口笛を吹いた。そんな竜に対して表情一つ動かさず胡乱な眼だけを向けて、元親は「どうしてアンタがここにいるんだ?」と低く問う。無論、その程度のことで怯むほど独眼竜は殊勝な性格をしていない。
「俺がアンタに逢いにきちゃいけねェってのかよ」
そんな可愛いことを云われれば喜んでもいいところなのだが、如何せん今の元親の荒んだ心根には響かない。
「Ha!情けねェツラしやがって」
「何しに来た?」
「だからアンタに逢いに来たって云ってるだろ。それとも、派手なpartyをおっ始めようとしているアンタのために同盟国の誼で援軍を率いて来てやったとでも云い換えるか?」
フンと鼻を鳴らした政宗は口角を吊り上げてニヤリと不敵に笑ってみせた。竜は長曾我部軍の現状をちゃんと把握していて、御大将自らが援軍として出向いたというのだ。関東まで勢力を伸ばしつつあるとはいえ伊達の本拠は奥州、そして対する長曾我部の本拠は四国である。陸続きであればいざ知らず、間に海まで隔ててはおいそれと移動できる距離ではない。それ以前に、隙さえあらば天下統一を狙わんとする武将達が治める領国が奥州と四国の間には幾つもあって、下手に軍を動かそうものなら道々戦に発展しかねない。しかし、政宗はそれでもここまでやってきた。聞けば、少しでも時間を稼ぐために海路をとったのだという。日の本の海の制海権を握る者は正確に云えばまだいないから、邪魔がないのだ。進路を阻む者と云えば海賊ぐらいだろうが、伊達軍からすれば敵にもならないだろう。毛利や豊臣も屈強の水軍を持っているが、今はどちらも自国のことで手一杯で仕掛けるほどの余裕はない筈だ。
「仔細は香曾我部から聞いたぜ」
「親泰から?」
「いいねェ。魔王のオッサン相手にpartyたァ、なかなかcoolじゃねェか。元親」
好戦的な性格の政宗は俺も交ぜろと一頻り楽しそうに笑って、不意に表情を改めた。
政宗の左眼がきつく元親を見据える。
「それで?オッサンに…なに云われて挑発された?」
魔王・織田信長が四国に食指を動かしているという情報は、政宗も放った忍からの報せで早々に掴んでいた。だからこその援軍なのであるが、いざ元親の居城に辿り着いててみれば、いつでも帆を揚げて出陣できるほどの戦準備が整っているようにも見えない。確かに部下達が忙しなく戦仕度を進めてはいるが、大将たる元親はどうだ。自室に籠って酒を呑んで暴れているというではないか。
相手は瀬戸内を荒らす海賊風情などではない。魔王なのだ。魔王相手の戦を前に大将であるアニキがそんな状態では士気に関わる。そう香曾我部親泰に頼み込まれて、政宗は元親の自室を訪ねたのだった。
「元親」
「…無鳥島の蝙蝠」
「What?」
「無鳥島の蝙蝠。つまりは有力武将もいねえ四国で大将気取ってイキがってんじゃねえってよ」
そう吐き捨てるように告げた元親は、拳を握り怒りに身を震わせていた。それは武将としての彼の自尊心をひどく傷つけたことだろう。政宗と元親は性根が良く似ている。己に置き換えれば、やはり元親と同じように政宗も武将としての自尊心を傷つけられ、怒りのままに魔王に合戦を仕掛けた筈だ。容易に想像できる。そして、その心中も。
「…許せねェな」
政宗は険しい表情を浮かべ、ギリと歯を軋らせた。全身から怒りが噴き出すかのような錯覚を与えるほど、彼の硬質の面に凄みが増す。戦を仕掛けるには、或いは死合うには充分な口実だ。
魔王、織田信長。
「Daringを虚仮にされた。…俺にとっちゃあ、戦をおっ始める理由はそれだけで充分だ」
どちらにせよ、いずれは激突する相手である。それが早いか遅いかのことで、今更臆することはない。
「政宗…」
「アンタは蝙蝠なんかじゃねェよ、元親。アンタは竜も認める───いや、竜も惚れた西海の鬼、だ」
売られた喧嘩は買う。それが伊達の流儀だと告げる政宗を暫し見つめていた元親だったが、そんな元親にも本来の彼らしさが戻ってきつつあった。きっかけさえ掴めば、気持ちの切り替えは素早いのが元親だ。
「おう。頼もしいなあ、俺の竜は」
パンと膝を打つ。鬼に竜、魔王相手でも負ける気がしねえと元親が云うと、それに応えるように政宗の貌に不敵な笑みが浮かんだ。
「こうしちゃいられねえな。戦仕度だ」
「派手なpartyを楽しもうぜ」
おうよ、と顔を見合わせた二人は軍議を開くべく颯爽と部屋を出て行った。



365題 お題配布元:capriccio



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93.こうやっていると【幻水Ⅴ:ゲオ王】

背中越しに伝わってくる温もり。そういえば子供というのは体温が高い生き物だ。
背負うその温もりを心地良く、と同時にほんの少しばかり擽ったく感じているゲオルグの耳に「ごめんね」とすまなそうに謝る声音が届いた。
「別に謝るほどのことではないさ。構わないから、お前はおとなしく背負われていろ」
「でも…」
「イサギ」
控え目に云い募ろうとする少年をそうやって制して、ゲオルグはやれやれと溜息を吐いた。
まだまだ我儘を云っても許される年頃である。実際に自分が彼と同じ年の頃は、甘ったれで我儘でやんちゃで───とにかく相棒の手を焼かせていたものだ。王族しかも女王の息子という身分、けれど代々世継は女子と定められた国ゆえに生まれながらにして王位継承権のない男子という微妙な立場がそうさせているのか。
「稽古熱心なのは良い心掛けだがな、無茶をしては意味がないだろう?」
神器の一つとされる三烈棍を女王から譲られたイサギは、クセのあるというその武器を己が手足の如く自由に操るべく、日々熱心に稽古に勤しんでいた。どちらの親に似ようと筋は良いのだから、すぐに要領を飲み込んで自分の武器としてしまったが、貪欲なもので更に強くなろうとしているのだった。
強くなろう、強くなりたい。そういう想いは自分にも覚えがある。ほんの少しでも立ち止まろうものなら、そこで終わってしまうのではないかという焦り。正に今イサギはそうした想いに捕らわれているのかもしれない。
今日の稽古の相手はゲオルグだった。近頃イサギはめきめき腕を上げ、成程あと数年もすれば彼の稽古の相手ができる人間は数えるほどしかいなくなるだろうとイサギの父フェリドが目尻を下げて語ったのも判る。親バカの贔屓目を差し引いても、だ。
しかし、今日の稽古は張り切りすぎたのかそれとも空回りしたのか、あまり良い内容のものではなかった。それで早めに切り上げようとゲオルグは考えたのだが、その矢先受身をとり損ねたイサギが足を酷く捻挫してしまったのだ。本人は大丈夫だと云い張って稽古を続行しようとしたのだが、次第に腫れてくる足を見れば大丈夫な筈もない。結局、稽古は取り止めになった。
「腫れが引くまで暫く稽古はできないからな」
安静にしていろと釘を刺すゲオルグの言葉に、背負われたイサギは「えー」っと不満そうな声を上げた。その反応で察するに、今より少しでも痛みが和らいだら、即稽古を再開しようと無謀にも考えていたらしい。意外なほど頑固者である。
強くなりたいと願うイサギにとって、このアクシデントは歓迎しがたいものなのだ。稽古熱心なのは褒められるべきたが、いよいよ腫れ上がって満足に歩けないような現状では無茶な行為に等しく、下手をすれば悪化しかねない。流石に年長者として、或いは導き手としてそれを許す訳には行かなかった。
「やれやれ…これはリオンにも張り付いて貰わないとな。目を離した隙にどんな無茶をやられるか判ったもんじゃない」
「ゲオルグ!」
「少しでも早く稽古を再開したいのなら、無茶はせずおとなしくしているんだ。それもまたある意味<強さ>だと思うぞ?」
背後から飛んでくる非難めいたイサギの声に苦笑を浮かべて、ゲオルグは彼を背負い直す。拗ねてもこればかりは譲れないと思う一方で、愛息の捻挫の報せを聞きつけてそれこそ血相を変えてすっ飛んでくるであろうフェリドにどう云ったものか、寧ろあの親バカぶりはどうにかして欲しいと頭を悩ませるゲオルグだった。





365題 お題配布元:capriccio




ポリスライヴ

13日にポリスのライヴに行ってきた訳ですが。実に27年ぶりの来日(ポリスとしては)だそうで、盛り上がる盛り上がる。
ポリスの公演は7時30分からでしたが、その前のオープニングアクトでスティングJr.のバンドが。まだ粗削りですが、なかなか上手い。Jr.声質がパパに似ていて、もう少し年を重ねればパパのような声になるかも…と期待大。>流石彼のDNAを継いでるな。
サービスで日本語も披露してくれましたが…意味不明(苦笑)。Jr.の日本語ワカリマセン。寧ろ母国語話してくれた方が判りやすかったよ。
ちなみにJr.のバンドは今年の10月に来日するそうです。

今回のライヴでどんなミラクルがあったかというと。
人生初の東京ドームアリーナ最前列!
元々1Fスタンド席だったんですが、ステージセットの関係で見切れちゃって私の席一帯がごっそりと振替られちゃったんですね。で、振替のお席をご用意していますということで連れて行かれたのが、アリーナ最前。
わあ、どんなミラクル(苦笑)。
凄い良いお席に振替えて貰えました。結果的に。別に元々の席も悪くなかったんですがね。見にくいって程のものでもなかったし。
いつものライヴならまず間違いなく卒倒しています。が、ナイスミドルなオヤジ達のバンドなので…彼らステージの中央から殆ど動かねェ(苦笑)。でも、流石は最前。肉眼でちゃんと観ることができました。

もう一つ。この日嬉しかったこと、というか。
そんな訳でアリーナ最前だったので席案内とかのスタッフさんがずっと立ちんぼで張り付いているんですが、会場から開演までの時間があまりに長いのでスタッフのお兄さんと仲良くなってしまいました。
日頃いろんなライヴで会場整理とか頑張っているスタッフさんを見ているので、「こういう人達がいて円滑にライヴができるんですよね。感謝してます」と云ったらもの凄く喜んで貰えて。「そう云って貰えると凄く嬉しいです!」って。>イヤ、本当にいつもそう思っているもん。
開演が遅かったので必然的に終演も遅く、おまけにアリーナ席のため帰りはまんまと規制退場に引っ掛かったんですが、お兄さんが最終の新幹線の時間をずっと気にしてくれていて、規制退場なのに上手く逃がしてくれました。ありがとう!お兄さん!
今回のライヴは2Daysだったんですが、彼は両日ともスタッフで頑張るんだそうです。そして、その数日後にあったBSBのライヴも。いやー頑張るなぁ。
逃がしてくれる時に、「お疲れさまです。明日も頑張ってくださいね」と声を掛けたら、「また何処かのライヴで逢えるといいですね」って云ってくれました。
うん、本当に。
また何処かで本当に逢えるといいな、と思います。>それこそどんなミラクル?!ですか。


ちなみに。
スティング先生の曲はかなり古いのから知っていますが。
ポリスの曲って「ロクサーヌ」と「見つめていたい」ぐらいしかしらない超初心者の安曇サンでした。


365題小政更新

GARDEN:TEXT 365題「344:dolce vita」(小政)アップ。


本日バレンタインデーにつき。
バレンタイン仕様で書いてみました。現代パロです。
またもやチョコレート風呂を話題に持ち出してます(苦笑)。



昨日のライヴはどんなミラクルよ?!って目を疑うほどいい思いをしたんですが。
それはまた後日、ということで。

ちょっくらポリスに行ってきます

ポリスのジャパンツアー東京公演に行ってきます。
そういう訳で明日は休暇を取りますよ、と昨日職場の面々に宣言したら、行くのがポリスということで半ば驚かれました(苦笑)。
よっぽど偏った音楽しか聴かないと思われている模様です。ヴィジュ系とか、そういうヤツばっかりしか聴かない人だと。あとはガクちゃんしか聴かない人だと(苦笑)。
そ、そんなコトはないッスよ!
これでも中・高は洋楽しか聴いていなかった子ですよ。
その頃からスティングが好きなんですよ。あの渋いオッサン具合が。そして、あの声が!
そんな訳で、本日一路東京ドームへ。
ドームといえば…最近とみに41ゲートと仲良しでしたが、今日は違う(苦笑)!
久しぶりに良い席でスティング先生のご尊顔を拝せそうです。

小十郎プラザですってよ

7日付の河北新報で白石駅前に新観光拠点小十郎プラザ建設へというニュースが。
曰く、ゲームのお蔭で小十郎が今静かな(?)ブームだそうで。白石市に訪れる観光客も増え、グッズ販売も好調。市としては小十郎を前面に観光戦略を展開する考えだそうで、そのための拠点に小十郎プラザを!
今年の4月に着工して7月に開所予定らしいです。
グッズ販売とか甲冑展示とかするらしいです。もちろん、観光案内も。



…スゲーな、腐女子のパワーは(苦笑)。>当然私も含まれるが。



今年の夏頃には「ちょっと小十郎プラザまで…」なーんて云っていやがるかもしれませんよ、この人。>とりあえず、今年の夏の逃避行は再び白石に決定だな。
ありがとう、白石市!!!!


100題更新【小政】

GARDEN:TEXT 題名&台詞100題「028:穏やかな狂気」(小政)アップ。


1日快晴だったお蔭で、雪はすっかり溶けました。明日は動けるぞ。
それにしても今年は雪がよく降るなぁ。昨年は一度も積もらなかったのに。
スタッドレス大活躍(笑)。

365題ログ格納

GARDEN:365題ログ格納。

今回格納したお題は、

「186.ただ何時でもずっと傍にいて」、「18.右手と、左手」、「229.魂を焦がす→小政
「319.諸手を上げて降参」→チカダテ
「327.どんな恐怖よりも鮮明に」→カイ王

でした。

あ~あ…

天気予報どおりに午後からまたもや雪が降り出しました。
…ヨカッタ、今日から3連休で。とりあえず明日まで雪が降っても、明後日晴れれば1日で溶ける…ハズ(苦笑)。
前回の雪が漸く溶けたところなので、また積もるのはゴメン被りたいです。
いくらスタッドレス履いていても、雪道の運転は疲れます。>必要以上に力が入って。


昨日、業務改善の打合せに出席したんですが…何だ、何だあの花も実もない無駄な会議は!
個人的に2時間も無駄な時間を費やしてしまって、ガッカリですわ。
もうちょっと建設的な意見の応酬かと思っていたのに、仕事の押し付け合いっこに終始して、あれの何処が業務改善に繋がるというのか…。
というか、寧ろ子供の云い合いの次元。幼稚すぎて失笑。
同じ土台と背景を持たない人間が一つのことをやろうとすると、どうにも其々のエゴが目立ってしまうらしい。それが殊、自分の仕事に関わることだから余計に。
提言書作って経営陣に『若手はこう思ってんだゼ!』って突きつけるのが最終形態だというのにねェ…。
イヤイヤ、ムリだから!>鼻先で笑われる
これが毎週続くかと思うと、先が思い遣られるなァ。

269.老人と僕【幻水Ⅱ:赤青】

「お待たせして申し訳ありません」
どんな理由があるにせよ、マイクロトフはまず年長の者を待たせてしまった非礼を詫びた。こういうところにもマイクロトフの育ちの良さが滲み出ている。たとえ苦手な相手であっても礼儀は礼儀だ。対するジュリアス卿は厳しい面持ちで「いや」と答えただけだった。
とりあえず対面に腰を下ろす。どうにも和やかな会談になりそうな雰囲気ではなかった。運ばれてきたお茶に口をつけて、改めてマイクロトフが水を向けた。
「本日はどのようなご用件で足をお運びなのでしょう?」
まさか孫息子に逢いに来た訳でもあるまい。さもなくば、マイクロトフが屋敷に乗り込んだあの一件に対する意趣返しか。
「単刀直入に訊く。貴殿のような者が何故<あれ>に肩入れする?<あれ>に誑かされでもしたか」
「誑かされるとは…如何に卿のお言葉といえど聞き捨てなりません」
「では何故だ?貴殿ほどの人物であれば、あのような小物に入れ揚げる必要もあるまい?血統も申し分ないというのに」
「卿は…血を重んじますか」
血などよりも遥かに誇れるものが彼にはある、というのに。それに目を向けようともせず、ただ血の濃さのみで異端扱いをする。
「彼は…カミューは好ましい人物です。俺はカミューの父君がどのような方だったのか残念ながら知りませんが、きっと彼のような好人物だったのだろうと思います」
「それは盲目ゆえの弁ではないか。<あれ>が好ましい人物だと?世迷言を云いおって」
そう切り返されたマイクロトフは。いいえと静かに首を振った。
「俺だけではない。騎士団の者は皆そう思っている筈です。だからこそ、彼は赤騎士団長なのだ」
彼が現在の地位にあるのは、そこに推し上げられ得るべき『何か』があったからだ。そうでなければ、人は動かない。そのことを何故この老人は判らないのだろう。頑なになり過ぎて、何も見えないのだ。それはとても残念なこと。
「卿は…お可哀想な方だ」
「黙れ!」
愚弄されたと激昂する老人を怯みもせずに見つめる。
「何を云おうと俺の言葉は卿の耳には届かないでしょうが。俺は血だの家柄だの…そんなことはどうでもいいんです。寧ろ些末だ。俺は、カミューだからこそ彼を選んだ。<彼>という存在に触れて、<彼>という一個の人間を選んだ。そのことを恥ずべきとは思っていない」
そう。一度たりとも思ったことはない。
「彼は。カミューは俺の総てだ。それが───俺の答えです」
単身屋敷に乗り込んだあの時と同じように。
マイクロトフは凛とした声音でそう告げたのだった。

嵐が去った後、マイクロトフはぐったりとソファに凭れて暫く動けずにいた。今日一日分の精神力を使い果たしてしまったような気分だ。まだ朝なのに、である。
「お疲れ様でした」
そこへリュウイが換えの茶を持って入ってきた。疲労困憊といった体の上官を労わって気を鎮める効果のあるお茶を淹れてきたというリュウイは、苦笑を浮かべながらマイクロトフを労った。
「あのジュリアス卿を前に少しも怯まないとは、流石は我等の団長と感心しておりました」
「ただの強がりに過ぎん。お蔭でもうクタクタだ。まだ一日の始まりに等しい時間帯だというのにな」
やれやれと溜息を吐く。しかし、クタクタだから今日の執務は止めにするという訳にもいかない。騎士団長の職務は一個人の我儘が許されるほど軽いものではないのだ。執務室に戻れば、裁可を待つ書類が積まれていることだろう。
「さて、せっかく淹れてくれた茶だ。ありがたくご馳走になってから今日の執務を始めよう」
「そうしていただけると助かります…と云いたいところでしたが。もう少しお休みいただいても宜しいですよ」
「リュウイ?」
訝しげに首を傾げたマイクロトフに彼は。
「どうやらカミュー様がお見えになったようです。何処からか今朝の一件を聞きつけたのかもしれませんね」
もう一人分のお茶を用意して参りましょうと云って出て行くリュウイと入れ替わるようにして、彼の言どおりカミューが───こちらは慌てた様子で入ってきた。
「マイク!」
ぐったりとソファに身を沈ませたマイクロトフに目を留めるや、カミューは顔色を変えた。
「あの爺が殴り込みに来たって…」
殊、反目し合っている実の祖父についてカミューは口汚い。あのカミューの口から『爺』である。常ならば、たとえ反目し合う仲とはいっても敬意を払うべきだと窘めるところだが、今は流石にそんな気力もない。
「大丈夫か?何か酷いことは云われなかった?」
「ああ…大丈夫だ」
「あいつ…マイクにダメージを与えれば俺にそれ以上のダメージが与えられるからって、今度はマイクに揺さぶりを掛けてきたな」
狡猾な奴だ!と口汚く罵ると、ぎゅうとマイクロトフを抱きしめてきた。何か仕掛けられたのか、余程心配したのだろう。大丈夫だと何度云って聞かせても離れようとしない。
「本当に大丈夫だと云っているだろう?ただ、朝からジュリアス卿と一対一という重圧に流石に疲れただけだ。だから、そんな表情をしてくれるな」
「でも…ッ」
「考えてみれば俺も卿の屋敷に単身乗り込んで行っている訳だし、ある意味お相子かもしれん」
「マイク!」
冗談じゃない!と眦を吊り上げたカミューだったが、疲れを残したマイクロトフの表情が予想外に穏やかだったので怒りを向ける先を失ってしまったらしい。深い深い溜息を吐いて、肩を落とした。
「お前ってヤツは…」
「俺に揺さぶりを掛けてくるというなら、この先何度だって追い返してやるさ」
だから心配するな、と笑って依然として抱きしめる腕を解こうとしないカミューの頭を軽く叩いた。
「…マイクには本当に敵わないなあ」
それで?今回は何と云って追い返したんだい?と訊ねてくるカミューの顔を見上げ、マイクロトフは。
「秘密だ」
小さく笑って、そう答えた。




365題 お題配布元:capriccio


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269.老人と僕【幻水Ⅱ:赤青】

青騎士団恒例となっている朝の鍛錬を終え、マイクロトフが心地良い疲労とともに掻いた汗をタオルで拭っていたところへ「大変です、団長!」と慌てふためき転げるようにして若い騎士が駆けてきた。どうしたんだ?と傍らの騎士にタオルを預けながら訊くと、彼はあわあわとしながらそれでも必死に言葉を紡ごうとした。
「とにかく、まずは落ち着け。そんな状態での伝令は使い物にならないぞ?」
「は、はい!申し訳ありません!至急執務室までお戻りを、と副団長が…」
「リュウイが?」
何事か起きたのだろうか。副官の急な呼び出しにマイクロトフは首を傾げる。
「お客人がお見えだとかで…」
客という言葉にマイクロトフは益々首を傾げた。確かに騎士団の朝は早い。今は客が訪ねるに無礼な時間帯ではないが、それにしても世間一般ではまだ充分に<早い>と呼べる範疇の時間だ。余程火急の用件でもあるのだろうか。
「団長?」
「判った。すぐに戻るとリュウイに伝えてくれ」
青騎士団長の言葉を伝えるべく、再び駆け出す部下を見送ってから鍛錬に参加していた騎士達に終了の号令を掛け、マイクロトフも自らの執務室へと急ぐのだった。

仮にも客人と会うのだ。鍛錬の後そのままの状態では礼を失するだろうと、途中浴場に寄って軽く汗を流し──それでなくともマイクロトフは鴉の行水だ──こざっぱりと身形を整えてから己の執務室へ向かった。
執務室へ入るといつになく神妙な表情をした副官がマイクロトフを出迎えた。
「俺に客人だということだが?」
はいと頷いたリュウイは来客の名を耳打ちした。途端、マイクロトフの顔色が驚きに変わる。
「なっ…?!」
取り乱して声を上げそうになったマイクロトフだったが、片手で口を塞ぎ辛うじて声を呑み込む。
「ジュリアス卿、だと?」
「こちらでは憚るかと思われましたので、奥の方にお通ししております」
そう云ってリュウイはチラリと執務室から続く部屋の扉へと瞳を遣った。
「…助かる」
団長執務室の奥に続く部屋は応接室だ。基本的に執務室は客を迎える機能が整っていないので、客人が来訪した際は執務室に続く奥の部屋を使うようにしている。尤も、普段は赤騎士団長専用の茶飲み部屋だ。
「団長…」
気遣わしげに見つめる副官に応えるようにマイクロトフは肩を竦めた。成程、客人がご老人であるならばこのような朝早い訪いも苦とはしないだろう───などと感心している場合ではない。
「まあ…逃げる訳にもいくまい?相手が相手だ」
知らず全身が謂われない緊張感に包まれる。
ジュリアス卿。騎士団を退いて久しいが、今尚騎士団に影響力を持つ重鎮の一人である。そして、赤騎士団長カミューの父方の祖父、今となっては唯一の肉親でもあった。だが、唯一の肉親であるのに彼等の関係は冷ややかなものだ。ジュリアス卿は生粋のロックアックスの血ではない、半分はグラスランドの血を引くカミューを異端扱いしているし、カミューは一族の体面やら面子ばかりを保つために一人息子の忘れ形見である自分を渋々引き取ったような祖父から逃げるために騎士団へ入団したほど徹底的に彼を毛嫌いしていた。
そんなジュリアス卿にマイクロトフは以前喧嘩を売ったことがある。今思えば、頭に血が上っていて冷静ではなかったのだろう。重鎮相手になんとも無謀なことをしたものだと思う。しかし、カミューを盾に取られていたのだ。冷静でいられよう筈もなかった。
卿の手の者に拉致されたカミューを取り戻すために、マイクロトフは単身ジュリアス邸へ乗り込んだ。無礼は承知だが、白昼堂々目の前でいきなり拉致するような相手に無礼を非難される筋合いもない。そして、乗り込んだ館で卿と一族の者を向こうに回し、マイクロトフは
『カミューは俺のものです。だから返してください』
と啖呵を切ったのだった。
あの場の雰囲気を顧みれば、彼等には自分達の関係を知られていたのだろう。けれど、そのようなことはどうでも良かった。元々認められるとも思ってはいない。それ以前にあの一族は封建的だ。
とはいえ。
「逃げる訳にはいかんと鼓舞してみても…気が重いことには変わらんな」
いよいよ諦め気味に独りごちたマイクロトフは、リュウイに茶の用意を頼み、奥の間に続く扉のノブに手を掛けたのだった。


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112.外国語が歌う【幻水Ⅱ:赤青】

何の前触れもなく唐突に目が覚めた。いつもなら深い眠りに落ちて目覚めれば朝だというのに、況して血肉を交わらせる行為の後は意識すらもドロドロに溶けきって、深く深くそれこそ奈落の底まで落ちてしまうのではないかというそんな眠りに陥るのに。目が覚めてしまえば、神経が昂っている所為だろうか。おかしなもので逆に意識が冴えてしまう。マイクロトフはそっと寝返りを打った。
室内は未だ暗い。だが、そんな暗闇を遮るように仄かな月明かりが室内に射し込んでいるのは、きっとカミューがカーテンを完全に閉めなかった所為だ。表情が見えないのは心許無いとかなんとか云っていたから。
布団を肩まで引き上げて小さく身動いだマイクロトフの耳に微かな歌声か聴こえてきた。
(カミュー?)
歌声の主はカミューだ。ゆったりとした、けれどどこか物悲しい旋律に乗って異国の言葉が舞う。それはマイクロトフが一度として聴いたことのない曲だった。
ロックアックスではない、異国の言葉───カミューの故郷グラスランドの言葉だろうか。そうであるとして、彼は何を想い口ずさんでいるのだろう。遠く離れた故郷に想いを馳せているのだろうか。
考えてみれば、自分はどれだけカミューのことを知っているのだろう。普段気にも留めなかったことだが、カミューについてマイクロトフが知っていることは存外少ない。時間的にも距離的にも彼の一番傍近くにいるのは自分で、だから勿論他の連中よりも知り得る情報が多いことも確かだ。それだってどんぐりの背比べに等しいだろうに、他者に擢んでて知っているのだと錯覚している自分がどこか滑稽で可笑しい。
カミューについてマイクロトフが知っていることといえば、故郷がグラスランドであること、両親は既に他界していること、父親の血を辿れば代々騎士団長を輩出するロックアックスの名門でありながら、母がグラスランド人ゆえに父方の一族から異端視されていること、またその所為か肉親の情が薄いこと。
誰にでも踏み込まれたくない領域というものはあるだろう。マイクロトフとてそれが如何に心を許したカミューであっても、踏み込まれたくない一線がある。相手の何もかもを知りたいと願うのは、人として自然な感情なのかもしれない。けれど、その一方でそうした踏み込まれたくない領域を抱えているのも確かなのだ。
歌声はまだ続いている。
その声を聴いていると次第に切なくなる。何を想い、何を考えているのか。マイクロトフは布団の中で己の胸許をぎゅっと掴んだ。
「マイク?」
不意に歌声が止む。マイクロトフが身動いだから、起こしてしまったのではないかと思ったのだろう。小声で窺うように名を呼ばれた。だが、マイクロトフは背中越しにじっと寝たふりを決め込んだ。するとカミューはホッと安堵したように「良かった」と呟いて、再び異国の言葉を紡ぎ始める。
(カミュー…)
お前が今何を想い、何を考えているのか。触れてみたいと思うけれど。
その歌声に耳を傾けつつ、マイクロトフは冴えた意識を遮断しようときつく瞳を閉じたのだった。





365題 お題配布元:capriccio


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降雪、その後。

昨日は天気予報どおりに朝から雪。目が覚めた時点で既に外は銀世界になっていて、考えてみたら雪が積もるのも久しぶり。お蔭で昨日は一歩も家から出ませんでした。>やれることを全部土曜日のうちにやっといてヨカッタ。
そして…問題は今日。
午後まで降った雪は案の定今朝にはガッチガチに固まり、素敵なアイスバーン状態。
リアを振りながら(愛車がFRなので)雪道を運転するのは慣れているといえば慣れていますが、路面が派手にバリバリいってる音を聴いて流石に怖気づいて、車で出勤するのは諦めました(苦笑)。>結局送ってもらう。
結構、スリップ事故が多いようで。
職場に着くまでに、派手にやっちゃった現場に何度も遭遇しました。
救急車のサイレンも多かったな。
昨日の荒天とは打って変わって今日は良いお天気なので。
これで路面の雪が溶ければいいと思います。
まあ、建物の陰とかの道は暫く先までバリバリなんだろうけど。


明日から、赤青連続更新企画に再度参戦予定です。
どうにか3日連続更新の目途がたちました(苦笑)。ここのところパソに触る機会が減っているので(パソを置いている自分の部屋がエラク寒いので)、せめてブログ上でどうにかね。
プロフィール

安曇

  • Author:安曇
  • 今日も元気に生きてます。
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