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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

束縛【戦国BASARA2:成政】

(抜・け・ね・ェ!!!)

政宗の機嫌は最高に悪かった。
今日が週に一度、極端に朝に弱い政宗がカリキュラムの関係で──最早教務の陰謀なのではないかとさえ思っている──どうしても入れざるを得なかった一時限目の講義の日であることに加えて、なんの悪戯か左薬指にしっかり嵌った銀細工のリングの存在の所為だ。
誰の仕業かなどわざわざ省みずとも判っている。
(成、あの野郎…ッ)
帰ったら絶対シメる!と、至極物騒なことを心に誓う政宗である。
道理で。
今朝の成実は随分そそくさと出勤していった筈だ。
いつもなら完全に政宗が目覚めて食卓に着くのをちゃんと見届けてから出掛けるのだが、今日に限っては何故か政宗がまだ半分寝惚けた状態のうちに出勤してしまった。
確か───今日は朝から忙しいんだ…とかなんとか言い訳していたのを微かに記憶している。
よくよく考えてみれば、成実は自分のこの寝起きの悪さのために、朝の商談は極力入れないようにしていた筈だ。
もちろん、あくまでも『極力』なので、例えば重要度が増した商談が飛び込んできた場合は仕方ない話なのだろうが、予め一日のタイムスケジュールを自身で組む余裕がある位置にある彼だから、そういう話は必ず事前に政宗の耳に入れておくだろう。
まして、今日は朝イチで講義を設定している、政宗にとっては『地獄』の日なのだから。
(なるほどなァ…こういうワケかよッ)
成実は。
政宗が寝起きの悪いことを逆手にとって、政宗が目覚めないうちにご丁寧にこのリングを──しかも、何の主張をしたいのか。狙ったように左薬指に──嵌めさせて、かつ、完全に覚醒した政宗がリングの存在に気づいて怒り出す前に逃げたのだ。
憎たらしいのは、まるで測ったように指輪のサイズがぴったりなことである。
否、少しきつめに設定しているようだ。
おそらく、嵌めたらそう簡単に外せないように計算してのことだろう。
こういう時ばかり妙に頭が回るのだ。
ああ、忌々しい。
忌々しいことこの上ない。
「Shit!不覚だったぜ」
おまけに不覚の上塗りで、あろうことか政宗は気がつかなかったのである。
自分の研究室に所属している女子学生に指摘されるまで。

『伊達先生、どうしたんですか!それッ!』
『…What?』
いつもニコニコして人懐こい彼女が珍しくもの凄い形相で政宗の左手を掴んで云ったのだ。
こういう時、女性というのは目敏い生き物である。
なに云ってるんだ?と不思議そうに政宗が学生に訊き返すと、彼女はじれったそうに『これ!』と答えて、掴んだ政宗の左手を目線の高さまで持ち上げた。
『な───っ?!』
なんだ、コイツはッッッ!!!
あの時の自分はとんでもなく間抜けた表情をしたと思う。
ふり返って、政宗は忌々しげに舌打ちした。
あの時の動揺ぶりをなんと表現したらいいか。
───全く以てcoolではない。それだけは確実に云える。
『先生、そんな素振りちっともみせなかったけど…結婚するんですかッ』
左の薬指に嵌めるリングといったら、普通そういう連想しかないだろう。
『あ…いや、違うって。これは…だな、』
『ウソ。ちょっといつの間に!しかも、このブランドの指輪ってファッションリングでさえ人気があって、なかなか手に入らないんですよォ』
『だから、ちょっと待てって…』
学生の──それも女子である──好奇心に根づいた追及ほど容赦のないものはない。相手が敬うべき准教授サマであろうが何だろうが、その勢いは半端ではない。
そして、流石の政宗もその恐るべきパワーには太刀打ちできなかった。
だから。
『こ、小十郎…じゃねェ、片倉先生!片倉先生、助けてくれッ…!オイってばー』
思わず小十郎に助けを求めたとしても───それは仕方がなかったのだ。



ぶすりと不貞腐れている政宗を前にして、小十郎は「それは成実にしてやられましたね」と笑った。
「他人事だと思って。コレ、抜けねェんだぞ!Shit!こんなのやったまま講義なんかできるかよ!」
ゼッテー学生の好奇心の餌食だ!
語気荒く主張する政宗に、小十郎も内心「それはそうだ」と同意する。
それだけ学内における政宗の、特に学生からの注目度は高いのだ。
(まぁ…成実もそのあたりを牽制してのことだろうがな)
小十郎は政宗の薬指にリングを嵌めさせた成実の心中を慮り、小さく嘆息した。
成実にしてみれば。
俺のモノだ!と言外に主張したいのだろう。
なにしろ相手が政宗である。
小十郎とは違うベクトルで心配性の成実のことだ。牽制に牽制を重ねても、きっとまだ心配だろう。
そのあたり、政宗は本当に意識していないのだ。
「成実も存外ロマンチストですね。給料三ヵ月分ですか?」
「小十郎!」
「冗談ですよ。ファッションリングだと思えばどうです?」
「邪魔なだけだ!」
実のところ政宗はアクセサリーをゴチャゴチャ身に付けるのが好きではないのだ。
「姉さんに相談してみてもいいですが…あの人のことだから、きっと『今はこれくらい奇抜にやったってちっともバチ当たらないわよ』と、この時とばかりに貴方を一層飾りたてるでしょうしね」
「…いっとくが、喜多の『着せ替え人形』も勘弁だ」
心底うんざりと政宗が溜息をつく。
「成実の真心だと思って、諦めたら如何です?」
「心の示し方なら他にも方法があるだろうが。別にこんな…」
「成実らしいとは思いますけどね、俺は」
「小十郎!」
フフと口許に笑みを湛える小十郎を政宗は面白くなさそうに見つめた。
普段はとりたてて感じることもないが、十歳の差というものは『余裕』となってこういうところに現れてくるのだ。
「貴方に『一生傍にいてください』って云っているようなものでしょう?」
「な…っ、」
べ、別にそんなこと…と歯切れ悪そうに呟いた政宗は、ぎゅっと無意識に左手を握り締めた。
滅多に表情に表さない政宗が、珍しく顔を赤くしている。
そんな政宗を小十郎は微笑ましく思った。
「…ああ、なるほどそうか。やっぱり成実はロマンチストな奴ですね」
「小十郎?」
何に思い至ったのか、更に笑みを深めた小十郎を「なんだよ…」不審そうに見つめた。
小十郎は一人したり顔だ。
「貴方、今日誕生日じゃないですか」
「あ?」
今日は政宗の誕生日だった。
もちろん、そのことを成実が忘れる筈がない。
「記念日を…わざわざ選んだんですよ。貴方の誕生日に合わせて、ね」
「───?!」
益々政宗の顔が赤くなる。
最早これは自分では如何ともし難かった。
充分愛されてるんじゃないですか、と微笑む小十郎に政宗は二の句も継げない。
確かに。
愛されている確信はある、が。
だからといって。


(成実ーッ!)


アイツ絶対にシメる。
絶対にだ。
こんな…こんな見世物よろしく、居た堪れない想いをするのは誰の所為だと思っている!




誕生日の夜───二人にとっては蕩けるほど甘くはなさそうだ。


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