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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

白い闇【戦国BASARA:家政】

流れるように走らせていた筆先が突然止まる。
諦念したような溜息が唇から転げ落ちたのは、ある程度覚悟していたことだからに過ぎない。
(Shit!きやがったか…)
政宗は左眼を頻りに瞬かせた。
隻眼の所為で狭まった視界には慣れている。しかし、狭まった視界を補うための唯一残された視覚が次第に使いものにならなくなっているのだ。
何度瞬いても霞む視界は変わりない。
左眼を使いすぎている自覚はある。
隻眼ゆえにそれは仕方がないことだった。
失った右眼の役割をも左眼ひとつで担うのだから、どうしたって使いすぎてしまう。ならば使いすぎないように、とセーブすればいいのだが、如何せん集中すると周囲が見えなくなる性質なので、気が付いたら“使いすぎていた”という具合で。
筆を置いた政宗は瞼を下ろすと、指先でゆっくりと揉んだ。ただ眼が疲れたというのならば、いい。少し眼を休ませればいいだけの話だ。
怖いのはこのまま左眼まで見えなくなっていくのではないか、ということ。
たったひとつの視覚まで失ってしまったら、政宗に残されるのは闇だけだ。そして、そのことを政宗の周囲の者達───特に自他ともに〈竜の右目〉と認める片倉小十郎は怖れていた。
ゆえに。
小十郎にだけは知られてはならない。〈右目〉は何よりもそれを怖れているのだから。
瞼を落としたまま、政宗はきゅっと口を引き結んだ。
無論、この状況が左眼の視力を奪うことに繋がると即断するのは些か急すぎる話だ。
「仕方ねェな」
左眼を酷使したための症状だ、と考えた方が今は幾分気が紛れる。無為に時間を過ごすことは性格上好まないのだが、この場合は回復のために少し休んだ方がいいのかもしれなかった。
「闇、か…」
一面が黒に──或いはこの際白でも大した違いはあるまい──塗り潰された世界に立つ己を想像してみる。
なにも、見えない。
なに、も───?
覚えずふるりと背が震えた。
戦場に立ったとて武者震いはあっても、恐怖に震えるといった覚えは一度だってなかったのに。
(Ha…捕らわれたか、恐怖ってヤツに)
独眼竜ともあろう者が情けねェ、と自嘲気味に呟くと苦く笑ってみせた。

「独眼竜、」

例えるならば。
なにも見えない世界に突然光が射し込んだかのような心地だった。
閉じた瞼をゆっくりと引き上げるが、ぼやけた視界はしかとその姿を結ぶことができなかった。けれど、それでもこのタイミングで己の前に現れてくれたことに安堵する。
いえやす、と頑是ない子供のように政宗はその名を口にした。
「お前………さては根を詰めすぎたな?」
「An?」
瞬き返す──のはその姿をよく捉えようとしてでもあるのだが──政宗を見つめ、やれやれと肩を竦めた家康は、ずんずんと大股で政宗の傍までやってくると、ストンと腰を下ろした。
ぬっと腕が伸びる気配がするや、その手が政宗の後頭部に回り、引き寄せられる。その流れるような行為に政宗は一瞬居を衝かれたため、抗議の声を発するのが一拍遅れてしまった。そこへ畳み掛けるように、だ。
「眼、」
見えにくくなっているのだろう?
「竜の性格はワシもよく知っているからな。気取らせぬつもりだったかもしれんが、そうはいかんよ」
「───ッッッ」
「図星か」
ふふ、と笑う気配がする。
頭を撫でているのは機嫌をとるためだろうか。そういう動作も子供扱いされているみたいで心底面白くない。そもそも政宗の方が家康よりも年上なのだ。
尤も、今更そんなところに拘っても詮無いのだが。
「独眼竜?」
「………Shit!」
忌々しげに舌を打ち、もういいと低く唸ってみせる。
どうせここで喚いてみたとて、家康のことだ。にこりと笑うばかりでちっとも堪えはしないだろう。だったら、やるだけ無駄なことだ。
とはいえ腹の裡がどうにも収まりそうにないので、せめてもの反抗にどんと背中を叩いてやった。
「おいおい、痛いぞ」
「Shut up!」
痛い、と言っているくせに笑っている。その余裕が憎たらしい。
「…なあ、機嫌を直してくれんか」
「………」
不思議だった。
家康がこの場に現れるまで、確かに捕らわれた筈の恐怖。それが今では微塵もないのだ。
いっそ清々しいほどに。
やはりこの男には闇を払拭する陽の力が宿っているのかもしれない。不安も恐怖も───諸共に消し去る陽光の如き力が。
顔を上げる。
間近に家康の顔を捉えた。今度はぼやけることなく、ちゃんと輪郭を結んでいる。
「……そういう力を備えてるってコトか」
「うん?」
「Ha!俺にはお前が必要だってことさ」
それは、家康にとって思ってもみない告白だったのだろう。
驚いて大きく見開いた瞳を白黒させている家康を見上げ、政宗は左眼を撓めて綺麗な笑みを浮かべた。


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