朝陽に溶ける
青年とは夜だけしか逢えなかった。
小十郎は青年のことを何ひとつ知らない。
どこに住んでいるのか。
昼間は何をしているのか。
「ミステリアスだろ?そういう方が」
ほら、またはぐらかした。
小十郎が一歩踏み込んで青年のことを知ろうとすれば、彼は即座に見えない壁を作るのだ。
知られたくないと背中を丸めて防御するかのように。
「お前のことをもっと知りたいと思うのは……そんなに欲深いことか?」
「Ha!金で買った相手のことを知りたいだなんて…酔狂だな、小十郎は」
「政宗!」
確かに。
出逢いは青年の言うとおりだ。
青年を一晩買った――――――金で。
あの日は何もかも上手くいかなくて、むしゃくしゃしていて、それで繁華街で声を掛けられた青年と一晩を過ごしたのだ。
まさか玄人だとは思わなかったが。
玄人だと思わなかったのは、特有の匂いを感じられなかった所為だ。
相手の寵を得ようと媚びたりしない。抱いても清廉な気は変わらず、醜い慾に穢れることもない。
不思議な青年だった。
―――だから、魅せられた。
行きずりのつもりで共にしたのに、次を望んでしまった。
そうして今に至る。
「なあ、小十郎。俺は朝になったら消えるんだよ」
青年が笑う。
「だから逢えるのは夜だけだ。You see?」
目が覚めれば。
この手に残るのは、貴方がいないという現実のみ。
小十郎は青年のことを何ひとつ知らない。
どこに住んでいるのか。
昼間は何をしているのか。
「ミステリアスだろ?そういう方が」
ほら、またはぐらかした。
小十郎が一歩踏み込んで青年のことを知ろうとすれば、彼は即座に見えない壁を作るのだ。
知られたくないと背中を丸めて防御するかのように。
「お前のことをもっと知りたいと思うのは……そんなに欲深いことか?」
「Ha!金で買った相手のことを知りたいだなんて…酔狂だな、小十郎は」
「政宗!」
確かに。
出逢いは青年の言うとおりだ。
青年を一晩買った――――――金で。
あの日は何もかも上手くいかなくて、むしゃくしゃしていて、それで繁華街で声を掛けられた青年と一晩を過ごしたのだ。
まさか玄人だとは思わなかったが。
玄人だと思わなかったのは、特有の匂いを感じられなかった所為だ。
相手の寵を得ようと媚びたりしない。抱いても清廉な気は変わらず、醜い慾に穢れることもない。
不思議な青年だった。
―――だから、魅せられた。
行きずりのつもりで共にしたのに、次を望んでしまった。
そうして今に至る。
「なあ、小十郎。俺は朝になったら消えるんだよ」
青年が笑う。
「だから逢えるのは夜だけだ。You see?」
目が覚めれば。
この手に残るのは、貴方がいないという現実のみ。
[More...]
スポンサーサイト