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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

暴け、サンタクロースの正体【戦国BASARA:小政】

「ねえ、小十郎」
台所に立つ小十郎の未だにぎこちない包丁捌きを横で背伸びをしながらもの珍しそうに見つめていた政宗にエプロンの裾を引っ張られ、手を止める。少し首を巡らせて見下ろすと、此方を見上げている大きな瞳とぶつかった。
「どうしたんです?」
「学校はもう冬休みなのに、なんでお父さんは忙しいの?」
「学校の先生は夏休みや冬休みも忙しいんですよ」
生徒が休みだから教師も休み、というわけではない。むしろ生徒がいない夏休みや冬休みの方がいろいろと忙しいのかもしれなかった。小十郎も社会人となり、図らずも大学という教育機関の教員として籍を置くようになってそれを肌身で思い知るのだが、この時点ではまだ高校生である彼は、政宗にそう言い諭したものの、半分は推測の域を脱していない。
それでも政宗は神妙な顔をして「ふうん」と肯いた。
「…お父さん、せっかくのクリスマスなのに遅いのかな?」
小十郎と一緒に料理を作って待っているのにね、と残念そうな声が続いて、小十郎は空いた右手で宥めるように頭を撫でてやる。料理と言っても小十郎が作れるものは限られていて、本当に簡単なものでしかない。
「どれくらいで帰れそうか、あとで輝宗先生の携帯に電話してみましょうか?」
小十郎の提案に小さな顔がパッと輝く。
政宗は小十郎の担任である伊達輝宗の息子だ。事情があって小十郎は輝宗の庇護を受け、伊達家に住まわせてもらっている。
気兼ねしなくてもいいと輝宗は言ってくれたが、育った家庭環境から大人に甘えることが苦手な小十郎にとってはそういうわけにもいかず、結果、忙しい輝宗に代わって政宗の面倒をみるということで漸く折り合いがついたのだ。
輝宗が言うには、政宗もまた大人に甘えることを知らないらしい。そういう意味では似た者同士なのだが、敏感な子供はそれをすぐに感じ取ったらしく、あっという間に懐かれてしまった。小十郎には年の離れた兄姉はいるが弟妹はおらず、それゆえ子供の扱いに不安を感じていたのだが、蓋を開ければそんな不安も無用だったということだ。
「お父さん、早く帰ってくればいいな」
「そうですね」
「せっかくのクリスマスだもんな。でも、お父さんの帰りが遅くても、小十郎とクリスマスができるからちっとも淋しくない」
「政宗さま……」
少しばかり興奮気味に笑う政宗に小十郎の胸がきゅっとなった。


結局輝宗はこの日も遅くに帰宅した。携帯に一度連絡を入れた際は、そう遅くはならないと言っていたものの、仕事の都合なのだから仕方がない。
お疲れさまですと玄関先で労う小十郎を見、眉をはの字に下げた輝宗は「済まなかったなあ」と謝った。
「政宗は?」
「先生が帰ってくるまで起きてるって頑張っていたんですが…ついさっき寝ちゃいました」
「そうか、それは残念。惜しかったなあ」
期せずしてサンタさんのプレゼントになってしまったか。
手にしていた鞄の中からごそごそと取り出したのは―――間違いなく政宗へのクリスマスプレゼントだ。枕許にこっそり置くつもりだろう。
なかなか相手をすることができなくても、きちんと息子に愛情を向けている。そんな輝宗の想いが端々に見て取れて、なんだか小十郎の心も温かくなった。
「そうだ、片倉にもあるぞ」
は?と目を丸くした小十郎の前に、リボンのかかった包みが差し出された。突然のことに包みと輝宗の顔との間を視線が行ったり来たりしてしまう。そんな小十郎に向かって輝宗は「クリスマスプレゼントに決まっているだろう?」と笑って告げた。
「いや、でも俺は………」
「遠慮なんかするな。中身は参考書だから、しっかり勉学に励めよ?」
「はあ―――その……どうもありがとうごさざいま、す」
よしよしと満足げに肯いて小十郎の肩を叩くと、輝宗は忍び足で政宗の寝室へと向かう。
「そうそう、明日はクリスマスパーティをやろうな」
政宗の部屋の手前でふり向いた輝宗が声を潜めてそんなことを言って寄越した。
明日―――は二十五日。普通クリスマスイヴの方が断然盛り上がるのだが、明日もクリスマスにはかわりないのだし、まあいいか。
了承の意味で肯き返した小十郎に微笑んで、俄か仕立てのサンタクロースはいそいそと息子が眠る部屋へ消えていった。


お題配布元:love is a momentさま




自家通販終了しました&発送状況

今回の自家通販は終了しました。
たくさんの方にご利用いただき、本当にどうもありがとうございました。


昨日正午までに入金確認(銀行振込、ゆうちょ送金とも)ができた方で「クロネコメール便」を選択された方へ、本日ご注文いただいた本を発送しました。
(発送済の方へは個別にその旨のメールを送信しております。)
お手元に届くまで今しばしお待ちください。



在庫について、
「契情の檻」と司書ムネシリーズ「物語みたいな恋をしよう」の在庫が僅少となっています。
「夏の庭-契情の檻-」と「キラキラデイズ」の在庫が少なくなりました。


春コミの申込みを済ませました。
春コミの受付締切ってセンター試験近くなので、まだまだなんて余裕をかましていると間際で大慌てするんですよね(苦笑)。なので今年は早めに済ませてしまいました。
春は家政ぷちもあるので、新刊を頑張ろうと思います!在庫も少なくなってるしな…。

冬の匂いがする【戦国BASARA:家政】

四季を通じて温暖な三河ではあまり感じることのない、キンと冷えた空気が頬を撫でる。衾の下で身震いをした家康は、冷気ですっかり冴えてしまった瞳を申し訳程度に擦り、むくりと起き上がった。薄い夜着一枚では、やはり寒さが堪える。羽織に袖を通してみたものの、奥州の冬の寒さには敵わないようだ。
吐く息の白さに子供みたいに感動する自分がいて、家康は笑みを浮かべた。
「さすがに寒いなあ………だが、悪くない」
凛と冷えた空気に背筋がしゃんと伸びる思いがする。なるほどこういう空気の下で育った竜が強いわけだ。ほんの数日ではあるが、冬の奥州に滞在して性根を叩き直されたような気がしてならない。
ぶるりと小さく身を震わせて床から立ち上がると、庭に面した障子戸を開け放ってみた。たった一枚隔てたものを取り去るだけで、更に冷たい空気が室内に入り込んでくる。それこそ冷気の手に全身を撫でられて、家康は無意識に首を竦めた。
「―――奥州の冬か。北の地の冬とはこんなにも厳しいものなのだな」
日ノ本の広さを改めて思う。
「だが、厳しい反面……美しい」
ふ、と口の端を緩めた家康は、桟に軽く背を凭れて庭を眺めた。冷気に体が慣れてくれば、これもまた心地良い。
一応は客人待遇の家康に宛がわれた部屋は、伊達屋敷で二番目に眺めの良い部屋とされている。勿論、一番は伊達屋敷の主であり、奥州筆頭であり、更には家康の竜と公言して憚らない政宗の私室だろう。伊達の者の政宗に対する心酔ぶりは半端ではない。それがわかる待遇である。
(まあ、客人待遇にしてくれただけでもありがたいと思わねばならんだろうな)
なにしろ伊達の者が心酔する竜を――本人の同意がそこにあったとはいえ――家康が奪ったようなものである。特に〈竜の右目〉の自分に対する心証は最悪で、正直なところ身の危険を未だに感じることがあった。
尤も、障害が多いほど恋情とは燃え上がるものと相場が決まっている。政宗も自分もどこかそんな現状を楽しんでいた。
「アンタ………こんなところで何をしている?!」
「ああ、独眼竜か」
驚いて目を丸くしている――こんな竜を見ることができるのは滅多にない――政宗に「おはよう」と返すと、途端に呆れたような溜息を吐かれてしまった。
「Well, I'll be damned!アンタ、奥州の冬をナメてんのか?」
「別にナメているつもりはないぞ?」
夜着に一枚引っ掛けただけのそんな薄着で、障子を開け放って早朝から呑気に庭なんざ眺めているヤツのどこがナメていないって?
右目並みの小言を繰られ、家康の顔に苦笑が浮かんだ。
「いや、ほら…こういう凛と澄んだ空気に満ちた朝の庭も美しいと思ってな」
そうかよ、と答えた政宗に腕を取られ、引っ張りあげられる。
よくよく見れば、政宗もまだ夜着姿だ。尤も、出歩いても寒さを感じないように此方は上に何枚も羽織っている。
朝を告げに来るのは滞在中家康の世話を言いつかっている小姓の役目だし、このような早朝の時分に政宗本人が此処にいるのは不自然だと思った。
「それよりお前は何故?」
「Ah?」
今まで自分が突いていたのに急に矛先を自分に向けられて、政宗は言葉を詰まらせた。寒さの所為ばかりではないだろう、頬が紅潮している。
「夜這い、しようと思ったんだよ」
「夜這いって………もう朝だぞ?いや、ワシはどんな時間だってお前に忍んで来られるのは嬉しいが」
「Shut up!」
頬の紅潮どころか、目許までほんのりと桜色に染めてそっぽを向き「寒いっ」と吐き捨てるので、きっと人肌が恋しかったのだろう。奥州の寒さは確かに人の温もりが恋しくなる。
なるほどそういうことかと察して、立ち上がった家康は竜の細い体を抱き寄せた。途端、「冷てェ!」と腕の中で抗議の声が上がる。
「アンタ、一体どれだけ此処にいたんだよ」
「さて、なあ」
「お前のところで暖をとろうと思ったのに、とんだ計算違いだった…って、冷てェって言ってんだろ!触んなっ」
首筋に鼻先を押し当てたら、冷たいと散々に悪態を吐かれてしまった。全く以てつれない。
「こんなところでいつまでも突っ立ってたら凍えちまうだろっ!ほら、寝直すぞ!」
ぐいぐいと室内に引っ張られ、衾の中に抛り込まれる。褥はすっかり冷えてしまっていたが、政宗は隣に潜り込んできた。暫く落ち着く位置を求めてごそごそしていたが、漸く居心地の良い位置を見つけたのか、おとなしくなる。
「まだ朝早ェからな」
吐息がくすぐったいと思いながら、政宗に促されて目を閉じる。どうやら竜は本格的に二度寝を決め込むらしい。となれば、二度目の目覚めは此処になる。
(起こしにきた小姓が卒倒するかもしれんなあ………)
のんびり思ったが、それ以上に右目の殺気への対処方法を考えねばなるまい。寝所ががら空きだと右目が知れば、間違いなくその殺気は此方に向く筈だ。
頭が痛いな、と考えながらも「まあ、なんとかなるだろう」と思い直し、家康はゆっくりと訪れた二度目の眠りに身を委ねた。



お題配布元:love is a momentさま

枕もとにこっそり内緒で【戦国BASARA:小政】

冬に雷―――はそう珍しくもない。日本海側では『雪起こし』や『雪雷』などと言って、雪が降る前兆や激しい雪が降る時の合図と言われている。
だが此処は冬でも比較的雪が少ない土地で、乾燥した晴天の日が続く。だというのに、空を仰げば降っているのは雪どころか雨、である。さながら夏場の雷雨のようだ。
ともすれば季節外れの荒天の原因などわかりきっている。水を司る龍神様の機嫌が悪いのだ。そして、龍神様のご機嫌を損ねた原因といえば小十郎にある。乱暴な言い方をすれば、この荒天の遠因は小十郎にあるというわけだ。
「やれやれ…政宗様の影響が及ぶ範囲にまで戻った途端この天候か。まだ機嫌が直ってねえようだな」
怒りの度合いが推して量れるというものだ。
ステアリングを操りながら、小十郎は小さな溜息をついた。
ちらりとナビシートに視線を投げる。そこには紙袋が鎮座していた。貢物というわけではないのだが、これで少しは機嫌を直してくれるだろうか。さすがにこれ以上龍神様のお怒りのとばっちりを町の人間に喰らわせるわけにもいくまい。
雷鳴が轟き、大きな雨粒がフロントガラスを激しく叩く。これで事故ったら目も当てられないが、とにかく急いで帰らねば。


「What?実家に戻る、だと?」
政宗の声にあからさまに険が籠った。何の用で?と矢継ぎ早に問われたが、小十郎自身満足な答えを持ち合わせてはいない。なにしろ急に実家から『帰ってこい』と電話――社務所兼母屋にある今どき珍しい黒電話である――があったのだ。
田んぼと畑が延々と広がる、人も時間も豪いのんびりとした田舎にある『鳴神神社』の宮司である小十郎の実家は、神社が鎮座する町から少し離れたそこそこ大きい市にある。実家は八幡社で、此方は現在長兄が跡を取っていた。
小十郎が鳴神神社に住むようになったのは年齢的には幼児といっていい頃だ。親許から離され、当時鳴神神社の宮司であった祖父に育てられた。なぜそのようなことが許されたのかといえば、小十郎の家―――片倉家が少しばかり特殊だったからだ。
鳴神神社は別名『竜の宮』とも呼ばれ、文字どおり竜を祭神として祀っていた。この地に竜を降ろし、土地神として祀ったのが小十郎の先祖―――初代〈片倉小十郎〉である。
小十郎という名は、諱として代々鳴神神社の宮司を継ぐ片倉の男子に与えられるものだ。そして、宮司は祭神である竜―――政宗によって選ばれる。政宗に選ばれることで〈小十郎〉となるのだ。
小十郎は幼いうちに政宗に選ばれた。片倉の歴史を辿る限り、政宗が選んだ最年少の〈小十郎〉だった。そんな事情があって親許から離され祖父に育てられた――辛うじてまだ二十代だというのに妙に老成しているのは祖父の影響があるのかもしれない――わけだが、実際は政宗に育てられたと言ってもいい。
それはさておき。
鳴神神社の宮司として竜を護る役目を担う小十郎を呼び出すのだから、どんな大事が起こったとさしもの小十郎も構えたのは確かだ。
「小十郎っ」
焦れた政宗に吼えられたが、「何が何だか……」と答えることしかできず。
「すぐに戻ってきますので…暫し堪えてやってください」
「No!」
「政宗様!」
恨みがましく小十郎を睨んで不貞腐れている。それはそうだろう。竜を護るべき〈小十郎〉が実家を優先して一時的とはいえ竜の傍から離れるのだ。
土地神である政宗は、此処から離れることができない。だから、単純に離れたくないなら連れて行けばいい―――というわけにはいかないのだ。片倉の人間であれば〈政宗〉に選ばれた〈小十郎〉が担う役目が重要かわかっているので実家に長く拘束されることはないだろうし、社自体結界を巡らせて護っているため悪意は及ぶまい。それ以前に、政宗自身が強い竜気を持つ高位の竜であるので余程のことがない限り自身で害を撥ね退けてしまうだろう。
なので、ほんの少し離れることくらい心配ないのだが。
「お前は俺をおいていくのかよっ。俺より実家が大事かっ」
「政宗さまっ、」
俺が此処から動けないことを知っていて…と口惜しそうに唇を噛んで俯く政宗を見ていると、「そうじゃねえと何度言ったらわかるんです!」と言えなくなってしまった。
小さく嘆息する。そっと手を伸ばし、宥めるように頬を撫でてやるが、政宗の躰は怒りに強張ったままだ。
「小十郎………お前、携帯持て」
「―――は?」
「今どき携帯も持ってねェなんてありえねェだろ」
ぶすりと不貞腐れたまま突然何を言い出すのかと思えば。
「必要ありません」
固定電話が今どき黒電話という有様である。そんな小十郎が携帯電話を持っている筈もない。まだ二十代の一応若者でありながら仙人みたいな生活を地でいっている小十郎である。携帯電話など無用の長物だ。
「そもそも圏外でしょう?このあたりは」
「そんなわけあるかよっ!いつの話をしてるんだ、テメエは!とっくの昔に電波が届くようになってる。これだから時流についていけねェヤツは!」
「―――っ。とにかく携帯など俺には必要ありません」
だいたい持ち歩く必要性を感じない。そう告げたら、政宗の全身から怒気が迸った。
「必要性がない、だと?どの口をして抜かしやがるっ。俺をおい、て―――今、がその必要な……」
怒りのあまりだろうか。政宗の左眼に涙が滲んでいるようにも見えた。
「もういいっ!」
「政宗様っ」
どんっと力任せに小十郎を突き飛ばした政宗は、身を翻すと母屋を飛び出して祭殿に閉じ籠ってしまった。


ゴロゴロと雷鳴が鳴り響く。
思い返してみれば、あの諍いの直後から天候が急変したのだ。そして、今も進行中である。竜の機嫌もそれに引きずられた天候も一向に回復しない。帰宅してからのことを考えるだけで頭が痛い。
帰ってこいとの連絡で何事かと――政宗と諍ってまで――実家に戻った小十郎だったが、蓋を開ければたいした話ではなかった。年に一度社殿を清める――早い話が大掃除だ――のだが、今年は父がぎっくり腰をやって身動きが取れないので手伝え、というだけのことだった。つまり、人手が足りないので駆り出されたのだ。そうならそうと電話口で告げてくれたら政宗と拗れることもなかったのに、と心の中で散々身内に恨み言をぶつける。
母はこんな時ぐらいゆっくりしていきなさいと小十郎を引き留めたのだが、そういうわけにはいかない。先代宮司である祖父の「政宗様の“気に入り”をそう長く引き留めるものではない」という口添えがあって漸く解放され、早々に愛車に乗り込んだ。
途中繁華街を通ったが、街並みはすっかりクリスマス仕様で、この時初めて小十郎は
(ああ…そろそろクリスマスなのか)
と思った。政宗の言葉ではないが、時流に乗り遅れるのも甚だしい。
些か特殊な環境で育ったためクリスマスに特別感慨があるわけではないが、やはり“クリスマス”という響きは人の心を浮き立たせる効力がある。見れば街も人もどこか幸せそうだ。知らず、小十郎の口許も柔らかく綻ぶ。
(早く政宗様の許へ帰らねえとな)
不意に小十郎の眼に携帯ショップの看板が留まった。
『小十郎………お前、携帯持て』
携帯を持てと言った政宗の声が脳裏に甦る。あの時は突然何を言い出すのだと思ったが、あれは今のように離れてしまった時に連絡が取れないからという不安の現れだったのではないか。
不遜なところがある龍神様だが、彼は『おいていかれる』ということに対してひどく怯えた部分がある。初代〈小十郎〉との間で何かあったためだと薄々感じているが、今日小十郎が実家に戻るという話に過剰に反応したのもおそらくその所為だ。冷静になって慮ればすぐに気が付くことだったのに。
「携帯、か―――」
口の中で呟いた小十郎は何を思ったか、ステアリングを切った。


ただいま戻りました、と告げても返る言葉はない。母屋は真っ暗で、さてはまだ祭殿に籠っているのかと小十郎は溜息をついた。政宗は一度臍を曲げるとなかなか元に戻らないから厄介だ。
悪天候だが祭殿に出向かなければならないだろう。そう思って踵を返そうとした小十郎は手荷物を持っていたことに気が付いた。
携帯ショップの紙袋である。中には携帯電話が二台。自分と―――政宗に持たせるものだ。携帯ショップの看板を見つけた小十郎は店先の駐車場に車を停めると、その足で携帯を二台購入した。互いの電話番号は店員に登録してもらっている。
「これで機嫌を直してくれりゃあいいが………」
物で吊られるような単純な神さまではないが、少しは助けになってくれればいいと思いつつ寝室へ向かう。せっかく買ってきたのに雨に濡らすわけにはいかないと、とりあえず寝室に置いて来ようと考えたのだ。
「――――――?」
寝室の電気を点けようとした手が思わず止まった。廊下の灯りで薄明るく照らされた寝室のベッド、布団が不自然に盛り上がっているのを見つけたのだ。
小十郎は苦笑を浮かべて小さく肩を竦めてみせた。どうやら祭殿には出向かずに済みそうだ。
「まさむねさま」
布団を被って不貞寝を決め込んでいる。絹の如き手触りの黒髪が少しばかり覗いていて、小十郎の表情が綻んだ。
「……今日は申し訳ありませんでした」
布団越しに唇を寄せる。そして枕許にそっと紙袋を置いた。

明日、愛しい竜はどんなカオをするだろう?


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