人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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俺の負けでいいよ【戦国BASARA:小梵】

瞼が今にもくっつきそうだというのに頑なに「眠くないっ!」と言い張る梵天丸を抱き込んだまま、小十郎は途方に暮れていた。
宥めて賺して―――子供騙しにしかすぎぬ手立てが子供である梵天丸には通用しないのはわかっているが、それでも「そろそろお休みいたしましょう?」と水を向けてみても、小十郎にしがみついて、いやいやと可愛らしく首を横に振る。
「梵天丸さま、」
「眠くないと言っている!」
さてどうしたものかと小十郎は密かに溜息をついた。幼子をあやすように背中をとんとんと叩いてやる。眠くはないと当人は言い張っているが、抱き込んだ小さな躰は少しばかり体温が高い。やはり眠いのだ。
梵天丸の駄々は今に始まったことではない。が、今宵ばかりは幼児返りでもしたのか、駄々を捏ねて小十郎を困らせる。
大晦日である。大広間では年越しの酒宴が続いていて、少し前までは梵天丸も嫡男として宴に出ていた。
大晦日の伊達の酒宴は夜通し行われるのが通例なので、子供である梵天丸が最後まで付き合うことは叶わず、毎年区切りのいいところで小十郎に連れられ席を外すことになっている。小十郎は梵天丸の傅役であると同時に伊達家の禄を食む身であるため、梵天丸を寝かしつけたら酒宴に戻るよう輝宗に申し付けられていた。
輝宗にすれば、一年無事に傅役を務めあげた――なにしろ小十郎が梵天丸の傍に侍るまでは癇の強い梵天丸の傅役が三日と続く者がいなかったそうだ――小十郎を労おうというのであろう。或いは梵天丸を寝かしつけた後くらい役から離れても構わない、そういう心遣いかもしれぬ。伊達輝宗という人は懐の大きな人であるから。
だが、小十郎は朝も昼も晩も―――変わらずに梵天丸の傍で梵天丸の傅役でありたかった。梵天丸は確かに手を焼くが、駄々も我儘も苦とは思わない。だから気遣いは無用なのだが、そうは言っても若輩の身ゆえ、あまり強く主張はできない。そのために梵天丸を寝かしつけた後にいつも少しだけ酒の相伴に与っている。
梵天丸は己が寝た後で宴に戻る小十郎に気付いているのかもしれない。否、気付いている。だからこそのこの所業だ。
「梵天丸さま、我を張らずにもうお休みなさいませ」
「いや…だ。梵天は眠くな、い」
ふにゃふにゃと歯切れの悪い口調。左眼を頻りと擦るものだから、それはなりませぬと窘めて左眼から手を取り上げた。
この期に及んでも眠くないと言い張るか。やせ我慢もいいところだ。
師はへそ曲がりたれ、と常々この子供に解いているが、その教えがちゃんと浸透していることをこんなところで知ってもあまり有り難くはない。
「眠くないはずはありませぬ。常なればもうお休みになっている時間にございましょう?どうして然様に起きていようと思われる」
この年になって愚図る子供をあやすとは思わなかった。このまま言い諭すのも埒が明かないので、抱き込んでいるのをいいことに梵天丸を寝所まで強制連行することに決める。
「こじゅうろっ」
小十郎が梵天丸を抱いたまま立ち上がったので、無理やり寝所へ連れて行くつもりだと察知したのだろう。腕の中で突然暴れ出した。無論、大事な梵天丸を取り落とすような愚かな真似を小十郎がするはずもない。暴れても落とさぬようにしっかりと抱いている。
「梵天丸様は年越しの宴がお気になるので?」
「…………、」
口をへの字に曲げて、むすりと黙り込む。その態度は“気になっている”と言っているようなものだ。存外子供らしい素直な態度に思わず笑みが零れた。
「……だって、」
小十郎の首にしがみ付いた梵天丸は、不貞腐れ気味に不満を転がす。
「だって、梵天が寝たら小十郎は父上のところに戻るのだろう?」
やはり聡い子供だ。
「梵天は小十郎と一緒にいたい。だけど、梵天が寝たら小十郎はお役ご免であっちに戻ってしまうのだろ?」
だったら梵天は寝ない。梵天がこうして起きている限り、小十郎は梵天の傍にいなければならないのだからな。
「梵天丸様―――」
「小十郎と一緒にいるためだったら、梵天はいつまでも起きている、ぞ」
言っている端からふわりと小さな欠伸が解け出てくる。
「梵天丸様、今お口から欠伸が出ましたな」
「のー。欠伸じゃないっ。い、今のは…そうだ!深呼吸をしただけだ」
可愛らしい言い訳。
「然様にございますか。梵天丸様は眠くないと仰られますが、小十郎は少々眠くなってしまいました。そろそろ休みたいと思うのですが……小十郎の今年最後のお願いをひとつ、眠くなってしまった小十郎のためにどうか添い寝いただけませぬか」
「――――――っ」
弾かれたように躰を離して小十郎を見る梵天丸の眼差しが絡む。負けず嫌いな大きな瞳は『してやられた!』という悔しさを滲ませていた。抱き上げているからできなかろうが、足が床についていたら地団駄を踏んでいたかもしれない。
「し、しかたないな。小十郎がどうしてもというなら……梵天が添い寝をしてやる」
「有り難き幸せ」
途端、瞼が落ちそうにとろんとしてきた円らな瞳を見つめ、小十郎は唇に柔らかな笑みを作った。


お題配布元:color seasonさま

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そんな訳で今年も終わった!


…いやあ、グリーン車って快適だね。
狩猟本能全開にした後の疲れた体にあの心地よさは堪らなくて、


…つい仙台まで連れて行かれるところだったよ(苦笑)。←案の定ギリギリまでうつらうつらしていた人。


明日は傘の出番ですって

…明日は9時くらいから雨とか言ってますよ。←信頼のおけるウェ●ーニュース情報によれば。
*ちなみにどうして『信頼のおける』と冠がつくかというと、昨年のセンター試験の日に雪予報を的中させたからです。以来ウチの課の連中はこう言うようになりました(苦笑)。超どうでもいい話。
先週くらいの予報では気温は高めでしたが、どうやら冷たい雨になりそうですってよ。
これは温かくして参戦せねば!


お買い物リストを作っているんですが、なんでですかね。
昨夜リストを固めたハズなのに、どんどん鉛筆書き追加されています(苦笑)。

トラックバックテーマ 第1580回「年内断捨離宣言!」

断捨離…思えば昨年引っ越した時が断捨離の最大チャンスだったんですけど。
イヤ、確かに引っ越しを機にいろいろ整理してだいぶいらないものを棄ててきたんですけどね。
どうしたことか、この一年でまた増えてしまいました(苦笑)。
まあ、生きているんだから仕方ないことですけど。

これだけは年内に断捨離してやる!という宣言―――といっても年内あと3日ですが、とりあえずは本棚を整理しようかと思います(苦笑)。
…できそうなところからコツコツと(苦笑)。
ああ、山ほど古本屋に売らなくっちゃ。


大散財の予感

気が付いたら冬コミまであと3日になっていて、慌ててサークルチェック中(苦笑)。
……なんだか宝探しの地図がいろいろ大変なことになっています。まあ、わりといつものことなんですけど。
帰省ラッシュもあるのに、当日無事に帰れるだろーか…。


夏にしろ冬にしろ日程的に帰省ラッシュは免れない訳で、でも昔に比べたら「自由席なんかじゃとても帰れなーい!」という根性なしになってしまったので(何年か前までは「宇都宮で降りられなかったら、いっそ白石まで行っちゃうよ。じゃなければ仙台まででもいいよ」な心意気でした。ちなみに宇都宮と白石の間には郡山だの福島だのありますが/苦笑)、今年は早めに帰りの指定席を押さえてしまおうと思ったんですけど。
…………帰省ラッシュって凄いね。
希望時間の指定席が押さえられませんでした。とほー。
かろうじてグリーン席が…。
グリーン席……。
いや、もう背に腹は代えられねェっ!

12月30日。
セレブぶってグリーン車で帰ることにしました(苦笑)。

……………更に散財して正月をどう乗り切るつもりなのかと己に問いたい今日この頃。

ありがとうございました!

12/1~24まで毎日更新していたアドベントカレンダー企画も無事に終了しました!
お読みくださった方、毎日お付き合い下さった方、本当にどうもありがとうございました。
久しぶりの設定や滅多に書かなくなったCPや新たな設定や…いろいろなことに挑戦できて楽しかったです!
時間が許せば年末か年明けか…そんなあたりにまた何か更新できればいいなーと考えています。ホント時間が許せばなんですが…。

以下、拍手等レスになります。
毎日拍手をどうもありがとうございました!メッセージくださる方も空ぱちの方も本当に励みになりました。


大河終わりました…ね。

低視聴率もなんのその…で、我が家は今年一年大河「清盛」を見ていました!
一年通しでちゃんと見るのって大河でも本当に気に入ったものしかなくて、ここ最近は風林火山だったかなあ。あとは新選組!。
清盛はキャストどうこうではなくて、『平家物語』自体が好きなので見ていたこともあります。
あとは平家好きなので。
北条家好きでもあるので、ドラマ見ながらわあわあしていました(苦笑)。

残念だったのは、中盤がだらりと間延びしてしまった所為か終盤がエラク駆け足になってしまったこと。
いくらなんでも最終回で壇ノ浦はないだろうよ…。


…ついでに言えば、教経も出てこなかった、ね。
一年通しで楽しみにしていたのにキャスト化さえされなかった。くすん。
そういえば義経の八艘飛びもなかったよな………教経いなかったから。


教経つながりで、昨年日程が合わなくて行けなかった舞台「美しの水」。
久保田教経だったことを今更ながらに思い出して悔し涙……。
広瀬維盛と併せて…本当に行きたかった!

目覚めて最初に目にしたものは【戦国BASARA:小政+孫市】

妙にソワソワしているな、と対面に座る女が薄く笑ってみせる。切れ長の瞳を細めて小十郎の渋面を見、それから通りすがりの店員に生中を追加した。
研究員として男ばかりの研究室に籍を置く所為だろうか。気取るところがなくさばけた性格ゆえ、時々性別を忘れそうになる。
「こんな所で呑気に飲んでいる場合ではないとでも言いたげな顔だ」
「…………、」
心中を見透かされた小十郎は益々渋面になる。
女の名は雑賀孫市。小十郎は関西の私立大学に研究員として勤めている孫市と一緒に研究をしていて、昨日から打合せのために関西へ出張していた。
ちなみに今日はクリスマスイヴである。世の恋人達は今頃甘い夜を楽しんでいるだろう。一見、カップルに見えなくもない――レストランでディナーではなく、居酒屋で飲んでいるあたり場違いにおもわれるだろうが――二人ではあるけれど、実のところそんな甘い雰囲気は微塵もない。二人の関係性を言葉にすれば“戦友”が最も近しいだろうか。
小十郎には年下の可愛い恋人がいて、今この時にも心は恋人の許へと飛んでいる。ソワソワしていると見抜かれているのはそのためだ。
クリスマスを楽しみにしていただろう恋人は、その楽しみを台無しにされてとても憤っていた。大学機関に勤める人間なので大学教員が同時に研究者でもあることはよくわかっている。だから滅多なことで小十郎の研究に口を挟まないが――予定を反故にされることがあっても、だ――、今回ばかりは腹に据えかねたらしい。結局満足なフォローもできぬまま、そのことに後味の悪さを感じつつも此方に移動してきてしまった。ちなみに小十郎が恋人の許へ戻るのは、クリスマスなどとうに終わった二十六日である。
「そういえば片倉、お前恋人ができたそうだな」
「…それがどうした」
孫市とは付き合いが長く、それゆえ男でも女でもいける小十郎の性癖も理解している。だから、その小十郎の恋人が同性である可能性があることも当然承知していた。
「今回は男か?女か?」
「…………」
器用なことに孫市は小十郎の表情で察したらしい。女の勘、とでも言おうか。
「ふふ、そうか男か。今日はクリスマスイヴだというのに、出張とは災難なことだな」
「ああ、全くだ。お蔭で散々詰られた」
ちゃんとフォローはしてきたのか?と目顔で問われ、むすりと押し黙る。その沈黙は言葉にする以上に小十郎の答えとなっていて、孫市はビールジョッキを片手に長嘆した。
「……烏め。お前、“釣った魚に餌はやらん”クチか」
「そんなことはねえ。俺なりに政宗様のことを充たしているつもりだ」
「ほう、政宗というのか」
しまった、とばかりに掌で口許を塞いだ小十郎は、諦めたように小さく息を吐いた。酒の肴に他人の恋話。当人にとっては居た堪れないが、相手にしたら楽しいものだろう。
肴にされることを覚悟で仏頂面のまま、小十郎は彼女に恋人の話をする。
生中から日本酒に替えた――女ながら孫市は酒豪だった――孫市は冷酒グラスを傾けながら、小十郎の話を聞き入っていた。聴き上手でもある彼女は興味本位で突っ込みを入れたり、話の途中で茶化したりすることはしない。小十郎にとってそのことだけが幸いだった。
「その政宗とやらがヘテロであれば、尚更フォローを入れなければなるまい。自然の摂理を曲げてまでお前を選んだ。相手の覚悟は相当なものだと思うがな。そんな相手を繫ぎ止めようとするなら、生半可な努力では済まないだろうが。片倉は相手の覚悟に見合うだけの努力をしているのか?愛情に胡坐を掻いていると何れ相手に愛想を尽かされるぞ」
「…………、」
痛いところを衝かれて、小十郎は声も出なかった。全くそのとおりなことを他人に指摘されると言葉などでないものだ。
実のところ、日中空いた時間を見つけて政宗へ連絡を入れてみた。電話口の政宗は相変わらず機嫌が悪いようで、此方が話を向けても素っ気ない。挙げ句に
『今夜は元親とイタリアンレストランでクリスマスディナーだ』
とあてつけのように言われて、目の前が真っ暗になってしまった。よりにもよって、小十郎が不在の間に不届きな学生時代の後輩が入り込んできたのだ。目の前が真っ暗になると同時に、怒りと独占欲が溢れだしそうになり、うっかり自身のスマートフォンを破壊しそうになった。
おそらく今頃政宗は元親と一緒だろう。こうしている間も元親は“鬼のいぬ間に”とばかりにちょっかいをかけているに違いない。小十郎と元親の好みは学生時代から悉く被っていたから、小十郎の好みの具現が政宗であるのならば元親もまた同じなのだ。現に元親はわかりやすいくらいに政宗に秋波を送っている。幸いなのは政宗の心が小十郎に向いていることだが、孫市の言うとおりそれに胡坐を掻いていては愛想を尽かされないとも限らない。人の心など移ろいやすいものなのだ。
今すぐにでも政宗の許へ戻りたい。だが、仕事を放り投げるなど社会人としてあるまじきことだ。
「片倉、」
やれやれと孫市が肩を竦める。
「この烏が。ここで苛々しているくらいなら帰ったらどうだ。今なら充分最終の新幹線にも間に合うだろう」
「だが……、」
「打ち合わせることなど粗方済んでしまっている。一日早く帰ったところで響くことはない」
それに、その方がかえってサプライズになるのではないか?
ふふと口の端を軽く持ち上げて言う孫市に心中を見透かされ、小十郎は最早黙るしかない。
「………恩に着る」
相手の申し出に感謝する物言いではないな、と苦笑しながら孫市が揶揄ってくる。確かに憮然とした顔つきだったからそう言われても仕方がないかもしれない。
「これで貸しが一つだ、片倉。私がそちらに行った時にでも返してくれればいい」
暗に恋人を紹介しろと言っているのだ。
とんだ相手に貸しを作ってしまったものである。


孫市の有難い申し出に背を押される恰好で早々に居酒屋から撤収した小十郎は、ホテルのチェックアウトを済ませて最終の新幹線に飛び乗った。車中にいる間も生じてしまった距離がずっともどかしく、帰ったら言葉を尽くすことばかりがぐるぐると頭の中を巡る。
ターミナル駅から何度か乗り換えをして最寄駅からタクシーを使い、我が家に着いた時には既に日付が変わっていた。勿論、家は真っ暗だ。政宗に限って元親と外泊などあり得ないので――むしろあり得ないと思いたい心境だ――、おそらく寝てしまったのだろう。鍵を開けて静かに入ると、玄関の三和土に政宗の靴が揃えられていて、それを確認した時に心の底からホッとした小十郎である。
(政宗様―――、)
寝室をそっと覗き込めば、二人で使う広いベッドの真ん中で寝具に包まるようにして丸くなって政宗が眠っていた。その寝顔を見ているだけで切なくなる。
その場から離れ難く思いつつも、自身も寝る準備を整えねるために一旦寝室を離れ、手早くシャワーを浴びてから着替えを済ませてから改めて寝室へ戻る。
熟睡状態の政宗は小十郎が戻ってきたことも気付かないようだ。するりと政宗の横に身を滑り込ませても、目覚める気配はない。よほど深い眠りにあるらしい。
「ただいま戻りました、政宗様」
囁くように告げて唇で頬を撫でると、くすぐったいのかその時ばかりは小さく身じろいだ。
ふ、と息を零して横になった小十郎は傍らの温もりを感じながら瞳を閉じた。




「…………こじゅ、ろ?」
なん、で?



朝目覚めた小十郎が目にしたもの。
信じられないもしかして寝惚けてるのかオレと言わんばかりに頻りと一眼を瞬かせている可愛い恋人の顔だった。


お題配布元:love is a momentさま




ハートに赤と緑のリボンをかけて【戦国BASARA:小政】

冬野菜の収穫で畑に出ていた小十郎の携帯が鳴った。今更確認するまでもない。政宗からだ。
科学技術にやたら明るく、流行に敏感な龍神様は、少し早いクリスマスプレゼントとして小十郎があげた携帯電話が目下お気に入りだ。まるで与えられたおもちゃを片時も離そうとしない子供みたいに手許に置いて、ちょっとのことでもすぐに携帯を使いたがる。
こうして小十郎が畑に出ている時ばかりではなく、母屋や祭殿にいる時も―――少しでも政宗と離れているような時には決まって携帯が鳴った。龍神様は通話料を度外視しているようである。まあ、今更のことではあるが。
腰を伸ばしながら小さな溜息をついて、小十郎は通話ボタンを押した。
「どうしました、政宗様」
『小十郎、早く帰ってこい』
返された答えは笑いを含んだ声であまりにも端的だ。早く帰ってこいと一方的に告げてブツリと切れる。これもまたいつものことである。
(やれやれ―――)
しょうがねえ。苦笑混じりのぼやきは、けれど迷惑そうな響きは微塵も含まれてはいなかった。


母屋に戻った小十郎は、食卓を飾る料理の数々に目を白黒させた。
「ま、政宗さま?」
おかえり、と出迎えてくれた政宗は台所に立っている。普段小十郎が使っているエプロンを掛けていて、その姿が妙に馴染んでいた。
近頃の政宗は料理にも目覚めたらしい。何かにつけて台所に立とうとする。それこそ当初は庖丁を持つのも危なっかしくて目を離せなかったのだが、コツを掴めば上達はあっという間だった。今では小十郎よりも料理が上手いかもしれない。
おまけに凝り性を発揮して、台所には今や得体の知れない調味料類がいろいろ置かれている。勿論、これらの入手先は専ら政宗お得意のネット通販だ。
人型をとっているものの、元々龍神の政宗は人間が食するようなもので栄養を摂取する必要はない。彼の糧は“精気”であり、その糧は小十郎が担っている。つまり、政宗が料理を作っても当人が食べることはなく、小十郎が専ら食べることになるわけだ。政宗が小十郎の精気を喰らうために小十郎には精をつけてもらわなければならない、ということでせっせと作ってあげているとも考えられ、それはそれで理に適った行為だと思うが、どうやらそれ以上に〈片倉小十郎〉という男は代々料理を美味そうに食べるらしく、これまでの小十郎達の美味そうに食べる姿を見るにつけ、自分の作ったものでそういう顔をさせてみたいという欲求に駆られたのだそうだ。とはいえ、〈小十郎〉の前であれば人型をとるというほど単純でもないようで――人型の政宗を目にすることができた〈小十郎〉は初代小十郎から片手で事足りる――、漸く当代になってその欲求が充たされたことになる。
小十郎はいろいろな意味で政宗に“選ばれた”存在となるのだが、選ばれるということは半面、財布的には厳しいことになるらしい。携帯といい、ネット通販といい、料理といい―――気の遠くなるほど長い年月を重ねてきた小十郎の龍神様は、いい加減金遣いが荒すぎる。こんなところばかり人間臭くならなくてもいいのに。ご先祖は政宗の浪費――と言ったら水が領分の彼は怒って嵐を呼ぶに違いない――癖に悩まされなかったのか。
「どうしたんですか。こんなに料理を作って」
視覚と嗅覚で美味を訴えてくる料理の数々。お菓子の家はデザートだろうか。そう言えば、少し前ネット通販で『お菓子の家手作りキット』なるものを注文していたような気が…。
「今日はクリスマスじやねェか。なんとかっていう外つ国の神の誕生日なんだろう?」
八百万いる神が当たり前という国なので、政宗は神の名前まで覚えようとはしない。それとも彼自身も神であるため、自尊心が邪魔をして余所の神の名など口にしたくはないのか。
「神に誕生日っていう概念がすげェ」
「政宗様にはないのですか?」
「Hum…自我が目覚めた時には存在していたからなァ。っていうか、普通そんなもんじゃねェ?」
「小十郎は人間ゆえわかりかねますが………」
ぱちりと瞳を瞬かせた政宗は、「それもそうだな」と小さく笑った。
「外つ国の神の誕生日を祝ってやるなんて実に寛容な国じゃねェか。たとえ当初の目的が薄れて、俗っぽいイベントになろうともな」
むしろ今は当初の敬虔さよりも政宗の言う俗っぽい―――恋人達が甘い夜を過ごすイベントに重きが置かれているのだが、政宗はそのあたりも既に承知しているようだ。
「そんな訳で俺も便乗しようと思って、気合い入れてみた」
「―――はあ、然様で。にしても気合い入れすぎですよ。いくら小十郎でもこんなには食べきれません」
「Ha-ha,全部食えとは言わねェよ。俺の作ったものを美味そうに食うお前の顔を見るのが俺の喜びなんだ」
「政宗さま…」
ああ、そんなことを言われたら。
何が何でも全部食べなければと思ってしまうではないか。
「どうした、小十郎?」
「いえ…。せっかくですから全部いただこうか、と」
全部食べろとは言わない、と言ったものの、せっかく作ったものを美味しいうちに食べてもらいたいという作り手の気持ちはよくわかる。だからこそ、小十郎の言葉を聞いた政宗の顔がパッと輝いた。彼は自分が作った料理を美味そうに食べる小十郎の顔を見るのが喜びだと言ったが、小十郎はそんな彼が嬉しそうな顔をするのを見るのが何よりの喜びなのだ。
「でも、最後に俺を喰うくらいの余力は残しておけよ?」
スペシャルはこの俺なんだからな。
囁いて鼻先をすり寄せ、時々悪戯に唇を食んでくる政宗に苦笑を浮かべつつ、小十郎は「…努力します」と告げた。




お題配布元:love is a momentさま



お誕生日月間企画2012リク更新

お誕生日月間企画2012小政まつり「極上Honey」アップ。


…日々クリスマスお題を消化する傍ら、頑張って書いていました(苦笑)。
お久しぶりです。お誕生日月間リクの更新になります。
今回は司書ムネ。
老若男女に大人気、超絶美人司書様にやきもきする小十郎のお話になります。
元親といい関ヶ原組といい…無自覚にいろいろ引っ掛けてくる政宗なので、もういっそのこと惹き寄せないように閉じ込めてしまおうか…などと考えています。
今回お馴染みのメンツは出ていませんが、新メンバー(たち)を登場させてみました(苦笑)。
リクエスト、どうもありがとうございました!


また、クリスマスお題にぱちぱち拍手をありがとうございます。
コメントもありがとうございます!
後日改めてお返事させてくださいませ。

以下、リクエストいただいた方にお礼です。

お子様用シャンパン【戦国BASARA:小政】

「…………、」
これは一体どうしたことか。息せき切って急いで帰ってきたために未だ呼吸が整わず肩を大きく上下させている小十郎は、目の前の光景に言葉もなかった。
ダイニングテーブルに政宗がまるで力尽きたように突っ伏している。傍らにはシャンパンやらワインやらのボトルと飲みかけのグラス。
ひと目で酔い潰れているとわかった。それこそドラマで目にする酔い潰れた親父と同じ恰好なのだ。
「ま…っ、」
政宗っ?!と叫びそうになる声を小十郎は寸前でどうにか飲み込んだ。この事態を小十郎は全く想定していなかったのだ。まさに予想外、というヤツである。
(こいつはもしや………ヤケ酒―――か?)
クリスマスということで、当然のことながら小十郎は政宗と過ごすつもりで今日は早めに仕事を切り上げようと動いていた。職場の大半が今日は家族と過ごしたり、恋人と過ごしたり―――とそれぞれ予定があるのだろう。朝からどこか浮かれ気味で、終業間際になると途端にソワソワし始め、終業チャイムが鳴ると同時に一斉に帰る用意を始めたのだ。
無論、小十郎も洩れずにその流れに乗っていた。頭の中は帰ってからのことでいっぱいで、だから先輩に呼び止められて思考の中断を余儀なくされ、小十郎はついその筋の者と疑われかねないような凄みのある表情を向けてしまったのだった。
見れば、何人か連れ立っている。皆独身の野郎どもだ。小十郎を呼び止めた先輩は何故か小十郎以上に鬼気迫る顔で「おい、飲みに行くぞ」と誘ってきた。断るのは許さないという勢いである。
組織とは悲しいものだ。加えて小十郎の職場はどこか体育会系の雰囲気があるため、年長者のお達しには従う風潮がある。
そんな訳で見事に捕まってしまった小十郎は、泣く泣く――勿論内心であるが――政宗に少しばかり遅くなる旨のメールを打ったのだった。
「政宗、」
少し遅くなる、どころかだいぶ遅くなってしまった。小十郎は酔い潰れた政宗を介抱しながら小さく舌打ちした。
クリスマスの夜に野郎どもばかりのむさ苦しい飲み会。それは、クリスマスを過ごすパートナーがいないということだ。
小十郎は政宗という相手がいるのだが、表沙汰になってはいろいろ困る点が満載であるため、表立っては『独身、恋人なし』を貫いている。形の上ではフリーであるので、それはそれで厄介なことも多いが――例えば女性に言い寄られるだとか――、今回はその極め付けとも言えた。いっそカミングアウトしてやろうかとも考えたが、己の衝動で政宗を巻き込みたくないと何とか思い止まったのである。
「…ったく、目を離すととんでもねえことをしやがる」
一体何本ボトルを空けたのだろう。アルコールは強くないというのに。
明日は間違いなく二日酔いだ。詰られることも併せれば、考えるだけで思い遣られる。思い遣られるが、その原因を招いたのが自分だと思うと嘆いてばかりもいられまい。きっちり介抱する義務を果たさねば、後々恨まれそうだ。
「やれやれ………」
転がり落ちてくるのは溜息ばかり。
くったりと重い――意識がないから本当に重い――躰を抱き上げて寝室へ向かいながら、小十郎の頭の中は恋人が目覚めた後の算段で忙しかった。


案の定、というか。
小十郎の朝は、やはり恋人の介抱から始まった。
「うぅぅぅっ。頭痛ェ」
翌朝目覚めた政宗はベッドの中で呻き声を上げていた。「頭が痛い」と「気持ちが悪い」の二つの台詞しか認めないとばかりに、交互に繰り返す。
「弱いクセにあんなに飲むからだ」
「………だって、お前が悪いんだろっ」
吐き捨てるように答えた政宗は、その声が頭に響いたのか、吐き捨てた端から呻き声を発した。
「確かに昨夜は全面的に俺の非を認める。悪かった」
「そうだ、全部小十郎が悪い。俺が二日酔いで苦しいのも」
「ああ、そうだな」
恨みがましい視線を向けられて、苦笑を浮かべる。
二日酔いの件は自業自得という感が否めないが、ここは彼の非難を甘んじて受け止めることにした。たぶんこういうところが彼に対して自分は甘いのだろう。
「二日酔いが治まったら昨夜の仕切り直しをしよう、政宗」



但し。
アルコールは抜きで。



お題配布元:love is a momentさま



蜂蜜味のリップクリーム【戦国BASARA:小政】

アトベント挑戦も残すところ今日を含めてあと4日となりました。
本日はにょた宗仕様となります。
なので、本編は折り畳みです。お手間をとらせます。

唇フェチなリーマンこじゅと女子高生政宗です。
…小十郎がちょっとオカシイです(苦笑)。

先生も走る【戦国BASARA:家政】

家康が政宗と付き合い始めて、そろそろ片手では足りない年数となってきた。
付き合い始めたのは、家康がまだ青臭さの抜けない高校生の頃だ。政宗は高校の先輩で、十人が十人振り向くような―――とにかくいい意味でも悪い意味でも目を惹く容姿の持ち主だった。
どう考えても子供扱いの家康に靡くとは考えられず、だからこそ押して押して押し捲った挙げ句、漸く手に入れた高嶺の花だった。家康の粘り勝ちと言ってもいい。
彼が家康のどこに惚れたのか今を以てわからないが――恥ずかしがりやなのだ――、とにかく今も変わらずに恋人としてのポジションを維持している。
が、ここのところ少しばかり倦怠期に片足を突っ込んでいるようだ。
お互い社会人となって休みがなかなか合わない――政宗は基本土日休みの教師で、家康は火水が休みの住宅メーカーの営業である――ということもあるのかもしれないが、最近はすれ違いが多くなっていた。
付き合いも長くなればマンネリ気味になるのも当然で、これが男女であれば“そろそろ結婚しようか?”になろうものを如何せん家康も政宗も男である。結婚という逃げ道を使えない以上、ダラダラと膠着した不毛な関係が続いていて。
無論、このままがいいとは思っていない。このままでは物理的距離感がそのまま心の距離となりそうで怖い。確たるものがないからこそ自分達のような関係は不安がつきものなのかもしれなかった。
政宗はこの現状をどう思っているのだろう。自分はあの頃と変わらずに政宗を想っているが、それは政宗も同じなのだろうか。
悶々と自問自答を繰り返していたある日、突然降って湧いたかのように実家から家康に見合い話があった。
相手は母親の知り合いの娘だという。どうやら母親同士が盛り上がって段取りを決めてしまったらしい。盛り上がりで決められた方は豪い迷惑な話である。
勿論、家康は即お断りの返事を入れた。自分には政宗がいる。余人が入る余地は全くない。
だが、先述のとおり政宗との仲は倦怠期に入りかけていて、正直不安ばかりが募っている時期だった。また、クリスマスシーズンという恋人達にとっては一番のイベントが近づいていたこともあって、いつもであれば決して考えないことを―――政宗の心を試してみようと思ってしまったのだ。


師も走るというように、十二月はとかく忙しい。普段から家康とは休みが合わないのだが、政宗は合わないなりにもなんとか時間の遣り繰りをして逢う時間を作っていた。ところが十二月の声を聞いた途端、忙しさに流されて全く逢えずじまいの日々が続いた。
十二月だから仕方がねェよな、と政宗は言い訳じみた言葉を自身に言い聞かせる。忙しいのはお互い様、きっと家康もわかってくれていると年下の恋人の優しさに甘えきった部分があったのは確かである。
けれど。久しぶりの逢瀬で告げられたそれは、政宗にとっては青天の霹靂に等しいものだった。
今度見合いをすることになったんだ、とまるで時候の挨拶を告げるような軽さで家康に告げられた。家康とは高校の頃から付き合い始め、交際期間もそろそろ十年になろうかという長さだ。愛し愛されという自覚はあるが、勿論それは世間には秘したものである。世間一般的に言えば、政宗も家康も結婚適齢期に突入していながら未だ独身を貫く男であり、そうした話が舞い込むのも仕方ないことではある。
ふうん、それで?と特段興味を示さぬ返事をしてしまったのが悪かったのか。家康は少しばかり傷ついた表情で政宗を見、「止めろとは言ってくれんのか?」と訊いた。
「Why?」
「だって、政宗はワシの恋人だろう?恋人がいながら見合いをするんだぞ」
面白くないのではないかと此方の心中を量る家康に、政宗は気のない素振りをとってしまう。素直になれない政宗の性格が災いしたのだが、さりとてそんな自分の性格を家康は知り尽くしている筈だ。
ここで見合いなんか止めてくれと家康に縋るのは、coolではなかった。だから。
「すればいいんじゃねェの、見合い」
「おい…。本気で言っているのか?」
本気ではない。強がりが邪魔をして本心を言えずにいるだけだ。そんな政宗の性格ぐらいわかっているだろう?
「…そうか。止めろとは言ってくれんのだな、お前は」
「家康?」
「見合いの日、クリスマスなんだ。お前が止めろとひと言言ってくれれば、お前と過ごすつもりだったんだがな」
明朗が取り柄といっていい家康が見せた淋しそうな貌。それを見過ごしてしまったのは、間違いなく政宗の失態だった。
結局、その日を最後に家康とは連絡がとれなくなってしまった。
見合いをすればいいとあの時は素っ気なく言ったものの、気が気ではない。あの男は政宗の贔屓目を抜きにしても伴侶と定めるに相応しい。優しい夫として幸せな家庭が築けるだろう。そう思えば思うほど、自分の方が分が悪くて日増しに焦りの色が濃くなっていった。
「Shit!」
そんな政宗だから物事に集中できるわけもない。見合いの当日など、朝から惨憺たるものだった。それでも何とか一日の業務をこなし、職場を飛び出す。
見合いの場所と時間は家康から聞かされていた。名の知れた高級ホテルだ。覆水盆に返らずという諺のとおり、今から向かったとしても最早どうにもならないかもしれない。もし運良く家康が捉まったとして、一体何を言うつもりか。今更「俺のものだ」と相手の女に主張するつもりか。そんなみっともないことを本気でするつもりか。
師走の街を夢中で走る。走りながら、
(まさに“先生も走る”とはこのことだな)
と考えた自分がひどく可笑しかった。
目的のホテルに辿り着き、息を切らせたままラウンジで家康を探す。あの男は目立つから、まだいればすぐに見つけられるはずだ。
果たして、家康はいた。一人だ。
「家康っ」
「政宗。来てくれたのか」
あれほどcoolではないと思ったのに。家康の顔を見たら、みっともなく愁嘆場を演じてしまいそうだ。
「み、見合い、は?」
呼吸が乱れたまま、言葉を紡ぐ。そんな政宗に苦笑を浮かべて、家康は落ち着けと告げてくる。恋人が見合いをしたのだ。これが落ち着いていられるか。
ところが、家康は突然政宗に向かって頭を下げたのだ。
「すまんっっ」
政宗の一眼が何事かと丸く瞠られる。
「スマン、政宗。お前を試した」
「―――は?」
試す?
「見合い話があったのは本当のことだが、今日見合いをしたのは嘘なんだ」
「嘘、だと………?」
「ああ。最近ずっとすれ違いが続いてばかりだっただろう?それでこう…このまま離れてしまうのではないかと不安になってしまってなあ。見合い話があった時、本当は即断ったんだ。でも、お前には見合いをするって言ってしまった。お前が止めてくれって言ってくれるか、此処に来てくれるかどうか…試したんだ。お前の心は変わらずワシに在るのか、賭けた」
「家康………、」
事の顛末を聞かされて一気に力が抜けてしまった。ふらりとよろめいたところを家康の手が支えてくれる。
焦って仕事も手が付かず、それこそ見栄もかなぐり捨てて走ってきたのに――汗だくで最悪だ――、そんな種明かしをされてしまってどう反応を返せばいいというのか。
「政宗?大丈夫か」
政宗の反応を窺うように恐る恐る家康が一眼を覗き込んでくる。政宗の気性を考えれば、嘘をついてまで試したことを怒りこそすれ、揶揄われたと笑って終わりにしてくれるとはとても思えなかったからだろう。
(なんだ…お前も不安だったのかよ)
どっちもどっちだったのか。お互いに吐き出せばすぐにも解決できることに、素直になれなかったものだから吐き出すどころか不安ばかりを抱え込んで。
(Ha!バカみてェ)
空回りしている自分達がなんとも滑稽だ。家康の手を借りて体を支えたまま、政宗は笑った。まさかそんな反応を返されるとは思っていなかっただろうから、逆に家康が慌てる。
そんな余裕のない家康を見て更に笑いが止まらず、左眼の目尻に涙を滲ませて「怒らねェよ」と告げれば、あからさまにホッとした顔をされた。
「なア、家康」
「うん?」
「もっと素直になってりゃ良かったな、お互いに」
政宗の言葉に相槌を打った家康がそっと背を撫でてくれる。
「あのな、政宗。今夜一緒に過ごそうと思ってその……部屋を取っているんだが」
「Ha!抜け目ねェな、アンタ。もし俺が此処に来なかったらどうするつもりだったんだよ」
「そうだなあ。クリスマスで奮発した広い部屋に一人淋しく泊まって、お前の姿を目蓋に思い浮かべながら慰めていただろうな。まあ、そうならなくて良かったよ」
早く二人きりの世界に浸りたいと耳許で家康に甘く囁かれ、政宗はくすぐったげに首を竦めた。



お題配布元:love is a momentさま



月の凍てつく夜に【戦国BASARA:小政】

ジジジと灯明油を浸した芯が燃える音ばかりがしんと静まり返った室内に響く。
ふ、と息を零した小十郎は書状から目を上げると、丁寧に折り畳んで文箱へそっと戻し、それから立ち上がって静かに障子戸を開けた。
たった一枚でも冷気を遮断する効果はあるようだ。開けた途端、奥州の凍てついた空気が肌を撫でてゆく。
中天にかかるのは冴え冴えとした弦月。爪で引っ掻いたような細い月は、今は離れた主の姿を強く思い出させる。
小十郎は仙臺を拠とする主、政宗の許を離れて白石にいる。政宗は支城を多く持っているが、中でも先頃得た白石の城は、伊達が奥州を統治する上で重要な城だ。一度戦ともなれば主の本拠を背にし、南から攻め上がってくる敵方を防ぐ最前線となる、伊達の要であるこの城を任せられる者は伊達軍の中でも限られてくる。
伊達軍を構成する兵達はいずれも猛者だが、中でもこの城の重要性を理解し、且つ援護を頼めぬ状況に陥っても自力で活路を開ける豪胆さ、すわ戦となり其処が死地と化した時、己が命を預けられるに足る相手―――そうした諸々を勘案した時に政宗が導き出した答えは一つしかなかった。
己が右目を据える―――その一点のみ、である。
こうして白石の城は小十郎に下賜された。
政宗は気前のいい主で、褒美としてこれまでも小十郎に様々なものを与えてくれたのだが、その悉くを小十郎は固辞していた。小十郎にとって何よりの褒美は、政宗の傍に在ることだったから。
けれど、此度ばかりは我儘も言えなかった。一城の主という喜びよりも付随して担うべき大きな役目を思えば、敢えてそこに自身を据えた主の心がわかるというものだ。元より、小十郎の身は政宗に捧げたもの。それが彼のためとなるのではあれば、何をも厭わない。
日ノ本を統一するとなれば、この先こうしたことが多くなっていくのだろう。いくら傍に在りたいと願おうと、情勢がそれを許さずに離れ離れとなってしまう。
共に在ることが息をするように当たり前で、これからもずっとそうだと――そうであるとは限らないのに――思っていたから、頭ではその理由も意義も理解はできても、心が未だに追いついて行かない。手を伸ばしても届かぬもどかしさに、ごっそりと己の中から何かが抜け落ちたみたいな喪失感に、今も心が哭いている。
「政宗様――――」
弦月は変わらず冴えた光を纏わせ、己を見下ろしている。主も凍てついた夜空の下、仙臺の城から見上げているのだろうか。
遠く遠く、離れてはいても心は寄り添わんとでも言うように。
どんなに遠く離れていようと心だけはいつでも傍に。

政宗様。


―――貴方に逢いたい。





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特大サイズの手編みの靴下【戦国BASARA:小梵】

小十郎の膝にちょこんと乗って幼い主―――梵天丸が書物を読んでいる。膝を提供している小十郎はお蔭で全く仕事にならないのだが、一心に書物を読み耽る――この日は南蛮の習慣に関するものらしい――梵天丸の可愛らしい姿を間近で眺めることができるので構わないかと我ながら現金なことを思う小十郎である。
梵天丸は読書が好きだ。右目のことがあって一時期内向的な性格であった頃に慰めてくれるのは書物だけだったということもあるが、元々好奇心旺盛で知識欲に貪欲なところがあるので、健やかな心を取り戻した現在も、稽古に励む一方でこうして書物に親しむことを忘れない。それこそ書庫に籠って一心不乱に読み漁っていたり、若君らしく書見台に向かってということもあるが、たいていの場合はこうして小十郎の膝に乗って読むことが多かった。
「小十郎!」
書物から目を上げた梵天丸に突然名を呼ばれる。仰視してくる幼い主に向かって「どうしました?」と柔らかな笑みを浮かべて問いかけると、梵天丸は弾けんばかりの笑顔を見せて言った。花のように可愛らしい笑顔だ。
「小十郎っ、大きな足袋を用意しろ」
「足袋…ですか?」
「そうだ。うんと大きいヤツだぞ」
突然何を言い出すのかと思えば、足袋など一体何に使うのだろうかと小十郎は首を捻った。しかも大きな足袋、ときた。
梵天丸の足にというのであれば、ちょうどぴったりなものを所望する筈だ。皆目用途がわからない。
「急に“うんと大きいヤツ”と申されましても……困りましたな。一体何にお使いになるのです?」
さり気なく問うてみると、梵天丸はそれまで滑らかだった口を急に噤んでしまった。もどかしげに小さな体を揺らしている。
「サンタがな」
「はあ…三太、ですか」
三太、という言葉は昨年も耳にした。ちょうど今時分の頃ではなかったか。確か天主教で師走の二十五日、神の子が生まれたことを祝う日に、それまでの一年間良い行いをして過ごした子供の許に贈り物を届けてくれるという白髭の爺のことだ。
良い子にしていれば梵天にもプレゼントをくれるだろうかと健気に言う梵天丸を見て、いっそ自分が三太の代わりに彼の望みに副うてやりたいと思ったものだが、彼の傅役でありながら結局梵天丸の欲しいものとやらはわからずじまいで一年が経ってしまったのだった。
昨年は梵天丸の望みを汲み取れなかったが、今年こそはと心なしか気合いが入る。そんな小十郎を些か訝しげに見上げ、梵天丸は手にしていた書物をパタンと閉じた。
「枕許に足袋を置いておくと、サンタがその中にプレゼントを仕込んでくれるらしい」
これに書いてあった、と今しがた閉じたばかりの書物を小十郎に向かって掲げてみせる。
「然様ですか。それでは早速梵天丸様のために足袋を用意いたしましょう」
「ぐっど。普通の足袋じゃだめだぞ?うんと大きなヤツでないと」
梵天丸はやけに“うんと大きな”足袋に拘っているようだ。さて、一体どれくらいのものを欲しているのだろう。憚りながら、上背のある小十郎は鋼の如きその体つきに見合うべく足も大きい。ならば小十郎のものくらいだろうか。物を浪費するのを潔しとはしない小十郎ではあるが、だとすれば真新しい足袋をひと揃え、幼い主のために下ろすのは吝かでない。
「梵天丸様。小十郎は暫しお傍を離れまするが、どうかお許しあれ」
梵天丸の両脇に手を差し込み立たせてやる。今日ばかりはごねずにおとなしく従ってくれた。梵天丸は小十郎の膝に乗っかった恰好で書を読むのが好きなのだ。好きなことを邪魔されてなお機嫌を損ねない者はいないだろう。梵天丸の場合は生来激しい気性の持ち主だからか、その損ね方が些か激しいというだけだ。
許す、と神妙に肯いた幼い主に再度微笑みかけ、頭を垂れると課せられた使命を果たすべく主の前を辞した。
四半刻ののち、真新しい足袋を携えて小十郎は梵天丸の元へ戻った。
廊下の板敷から「梵天丸様、」と声を掛けただけなのに、梵天丸は待ちきれなかったのか自ら障子戸を引いて、勢い小十郎の懐へと飛び込んできた。突然のことに驚いたが、なんとか小さな体を抱き留めることに成功する。まあ、勢い良すぎて尻餅をついてしまったけれど。
「ぼ、梵天丸様!」
「小十郎っ、用意してくれたか?うんと大きな足袋」
「はい。こちらに」
梵天丸の喜ぶ顔を想像するだけで頬が弛む思いをしつつ、小十郎は恭しく真新しい足袋をひと揃え差し出した。
途端。
「のー」
南蛮に興味を持ち始めた梵天丸は会話の端々に南蛮語を散りばめる。小十郎はなかなか意味が掴めずに戸惑うことばかりだが、頻繁に聞く言葉はニュアンスでなんとなく語意を察することができるようになりつつあった。確か「のー」とは「違う」とかいう感じではなかったか。
つまり―――ダメ出しだ。
「梵天は“うんと大きな”と言ったんだぞ。これじゃあちっちゃい」
「な―――っ?!」
ふくれっ面で文句を言われ、小十郎は驚きに目を見開いた。充分大きなものだと思っていたのだが、梵天丸が所望する物はまだ大きいのか。いや、更に大きな足袋、梵天丸の望みに見合う大きさのそれが城内にそもそもあるのか。
むむむと眉宇を寄せて必死に考えを巡らせる小十郎などお構いなしに梵天丸は「違う!」とダメ出し判定を下す。
「………違う、のですか?」
「普通の足袋じゃだめだって言ったじゃないか」
「―――はあ」
「梵天の欲しいものは、こんなちっちゃな足袋じゃ入りきらんっ」
「――――――っ、」
梵天丸の欲しいものとは、どれほど大きなものなのだろう。
(く…っ、わからねえ!傅役失格じゃねえかっ)
今年もまた幼い主の望みを汲み取ることができなかった。
まるで飼い主に怒られた犬のように、小十郎はしゅんと項垂れた。





お題配布元:love is a momentさま


ジングルベルが聞こえる【戦国BASARA:家政】

数日前から喉が痛いと思っていたのだが―――どうやら本格的に風邪をひいたようだ。全国的に風邪が流行っているらしいというから、どこかでうつされたのかもしれない。
身体だけは頑丈で、これまでも病気らしい病気はしたことがなく、凡そ風邪とは無縁だった筈の家康が風邪をひいた。
「なんでこんな時に限って……」
「Ah?そりゃあ、お前の日頃の行いが悪いからだろうよ」
体温計を口に咥え、もごもごと掠れた声を発する家康の頭上から辛辣な言葉が降ってくる。
「…ハハ、病人だというのに容赦ないなあ独眼竜は」
暗にもっと優しくしてくれてもいいのに、という想いを滲ませたが、ベッドの端に腰掛けて脚を組んでいる政宗は優しくしてくれるどころかツンとした顔つきで「今更、」と素っ気ない答えを返された。
咥えていた体温計が引き抜かれる。デジタル表示を見た政宗が左眼を眇め、はあああとあからさまな溜息をついた。その態度で熱が下がっていないことが知れる。
「ま、今日はベッドでおとなしくているんだな」
「クリスマスなのに?」
「そうだな。世の中、どいつもこいつもクリスマスで浮かれまくってるな。そんな日に風邪ひいてぶっ倒れているバカもいやがるが」
「―――面目ない」
毛布も鼻頭まで引き上げ、家康はしゅんとなる。
これまでも友人として政宗とはクリスマスを共に過ごしたが、今年は念願叶って友人から恋人に昇格して初めて迎えるクリスマスということで家康としても気合いが入っていた。記念日にも等しいイベントになるのだ。それはもう気合いの入り方が常とは違った。
なのに、見事にその気合いが空回る結果となってしまった。念入りに組み立てた予定も丸ごとパアである。
(これが減点でひょっとして降格もアリだろうか………)
仮にも恋人が寝込んでいるのに、この素っ気ない態度。もしかして、と家康は不安になる。
やっとの思いで恋人に昇格したというのに、またもや“その他友人”に降格―――政宗にはこの“その他友人”が多いので、余程努力をしないと次の昇格が見込めなくなる。一度彼が醸す甘さを知ったら腑抜けになってしまうという訳ではないけれど、困難を伴うのは事実だ。
「………その、スマン」
「謝る暇があるんだったら、さっさと治せ。治ったら今日の分をきっちり返して貰うからよ」
「もちろんだ」
ツンとしていた政宗の表情が柔らかくなる。
「しかたねェから今日は俺が完全看護してやるよ」
額に政宗の唇が触れる。
その日、家康の熱が上がったのは、決して具合が思わしくない所為ばかりではなかった。





お題配布元:love is a momentさま


あの子が一番欲しい物【戦国BASARA:小政】

そろそろ文机に向かっているのが厭きる頃合いではあった。
それまで単調に走らせていた筆を硯箱に置いた政宗は、大きく伸びをしてそれまで我慢していた欠伸をぶわりと大きくしてみせた。
小十郎は若い衆を連れて畑に出ていて、すっかり緊張の糸が切れてしまった政宗を見咎める者は誰もいない。今ならばいくらでも小十郎の目を盗むことができそうだ。
「さて―――、」
ずっと同じ姿勢だった所為か躰の動きが鈍い。成実を呼びつけて道場で稽古でもしようか。
それとも様子を見に畑へ行ってみようか。否、それだと小十郎の目を盗んだことにならないではないか。かえって藪蛇になりそうな気さえしてならない。
「ひ、ひひひひひ筆頭ぉぉぉぅ」
どうしたものかと政宗が腕を組んだその時、庭先に転がるようにして小十郎と共に畑に出ていた筈の良直が駆け込んできた。リーゼントをばっちり決めてはいるが、如何せん野良着姿である。
「どうした良直。そんな血相を変えやがって」
「か、片倉様が」
「小十郎がどうした」
鷹揚に答えた政宗は立ち上がると縁側に移動した。良直の顔つきは鬼気迫っていて、小十郎に何事かあったのだと知れる。問題は何が起こったのか、だ。奥州筆頭たる者、迂闊に取り乱してはならない。
(何が起こったって言うんだ。まァた畑を荒らしに来た猪を素手で仕留めたとか言うんじゃねェだろうな)
以前、政宗の次に愛している畑――そもそも畑と比べられるのってどうだろう。そのあたり未だに不満が残る――を荒らし回っていた猪を極殺状態の小十郎が素手で仕留めたことがあって、それは今なお村人と伊達の若い衆に語り継がれている小十郎の武勇伝の一つである。仕留めた猪を担いで意気揚々と帰ってきた小十郎の、その時の“ドヤ顔”を政宗は今も鮮明に思い出せた。確かその日の政宗の夕餉は『ぼたん鍋』だった。あれは豊かな食卓だったが―――それにしても、戦場ならばいざ知らず、畑でも小十郎の極殺が発動するとは。
あの勢いなら熊が畑で暴れ回れば、熊を素手で仕留めるような気がする。そうしたら夕餉は熊鍋か。
「良直?」
「か、片倉様が止まっちまいましたっ」
「―――What?」
小十郎が止まった?
意味がわからない。
首を傾げる政宗に良直は己が見た有様をどう伝えればいいかと必死に言葉を探した。探したものの巧い言葉が見つからなかったようである。
「そ、その。か、片倉様が畑で別嬪を見つけたと言ってそのまま…っ」
「別嬪―――だと?」
政宗の表情が強張った。
別嬪とはいわゆる美人のことを言うのではなかったか。女に対しての褒め言葉である。
つまりは女、だ。畑で美しい女を見つけて、それで固まったと―――そういうことか。
「Hey,そいつは聞き捨てならねェな」
政宗の隻眼にゆらりと炎が点る。口許を彩る笑みは美しくも迫力があって、敬愛する奥州筆頭のその変貌を目の当たりにした良直は「ひっ」と喉を引き攣らせた。
美人は怒ると夜叉になる―――政宗はまさに地でいっていた。
般若顔のまま「行くぜ」と良直に鋭い一声を浴びせ、ひらりと縁側から飛び降りる。双竜は互いのこととなると反応が素早すぎるのだ。
「良直!モタモタすんじゃねェっ」
思わぬ竜の一喝を受けた良直は、慌てて政宗の背を追った。


畑へ着いた政宗の目に飛び込んできたのは、良直の言葉どおりに畑の中央で固まっている小十郎の姿だった。まるで雷に打たれたようにその場に凍り付いている。一緒に畑仕事をしていた若い衆は、そんな小十郎の有様を遠巻きにして「どうしよう」とオロオロしていた。彼等は畑に姿を現した政宗の姿を見るなり、一様に泣きそうな目で縋ってくる。
筆頭、筆頭と厳つい野郎どものいつもとは異なる悲愴な大合唱を右手で制し、畑へと降りた。
ぐるりと辺りを見渡すが、別嬪と言われた女らしき者は見当たらない。さては姿を隠したか。
「小十郎!」
一度呼んだくらいでは呪縛は解けぬらしい。俺の声も耳に届かねェほど腑抜けちまってるのか、と政宗は苛立ちを露わにした。
小十郎、と今度はやや強い口調で――しかも非難めいた――呼びかけると、漸く解凍を果たしたらしい小十郎がぎこちない動作で政宗の声がした方向へ躰を向けた。
「まさむね、さ、ま?」
「Hey,一体どういうことだ。あア?」
ズカズカと小十郎の許まで歩み寄る。足許が汚れると通常であれば諌められるところだが、たとえそうなったところで今回ばかりはまるっと無視だ。
「如何為されました」
どうやら政宗が怒っているらしいということは認識したようだが、何故怒っているのか理由までは思い至らないらしい。
「小十郎、テメエがイカレたっていう女は何処だ?」
「女―――?然様な者はおりませんが…そんなことより、」
(そんなことより、だとォ?コイツ、あっさり俺の追及を躱しやがったっ)
「そんなことより、政宗様。これをご覧くださいませ。小十郎の畑にて斯様に美しい葱が」
小十郎は陶然とした面持ちで――恭しく――政宗に葱を差し出してきた。美しいかどうか、政宗には判別できない。葱は葱である。
「この白さ、柔らかさ、瑞々しさ…どれをとりましても正しく“美人”にございます」
「び、じん………だと?」
はい、と実に男臭い笑顔――こんな時ではあるが惚れ惚れする――で小十郎は首肯した。
「そいつは……別嬪、ってことか?」
「然様にございます。小十郎も収穫の際に俄かには信じられず、お恥ずかしながら場を弁えずに『別嬪がいやがるっ!』と叫んでしまいまして………」
「Oh………」
全てが結びついた。今までの焦りも怒りも一気に解けて脱力する。
つまり、別嬪は人ではなくて葱ということか。
小十郎の頭の中ではその構図が成立しているだろうが、他の連中が共有しているわけではないのだ。そこで“別嬪!”という叫びを聞いた周囲が誤解をするのである。
そうして根本から誤解をされたまま政宗の許まで届いてしまった、ということだ。まあ、普通誰が考えても別嬪とは女の褒め言葉であり、それを葱には結びつけないだろう。
(まア…なんだ。誤解した良直達を責める筋合いはねェな)
「政宗様?」
「いや………なんでもねェ。今日の夕餉はその色白美人でネギ汁にしてくれ」
怪訝そうに首を傾げる小十郎を見、政宗は長嘆した。




お題配布元:love is a momentさま


トナカイのストライキ【戦国BASARA:小梵】

資福寺から戻った梵天丸が部屋に閉じ籠ってしまったと輝宗の許を辞して戻ってきたばかりの小十郎の首根っこを引っ掴んで異父姉の喜多が困り顔で訴えた。
聞けば、夕餉も「要らぬっ」と臍を曲げられたらしい。これは南蛮語で言うところの―――すとらいき、というヤツか。
「小十郎。お前、何ぞ梵天丸様の気に障るようなことをしたのではないでしょうね」
そう問い詰められたところで、小十郎に思い当たる節はない。
「然様なことは、とんと覚えがなく―――」
資福寺へは小十郎も同行したが、向こうにいる間はいつもどおり元気だった。あまりに元気が良すぎて、逆に此方が草臥れたくらいだ。確かに屋敷に戻る途上、少し元気のなさそうにも見受けられたが、それはひとつ年下の時宗丸と揃って暴れ回ったために疲れたのだとそれくらいに思っていた。
現に眠たい子供が愚図るのと似たような素振りをしていたから、屋敷に戻ったらまずは寝かしつけねえと、と小十郎は考えていた。ところが屋敷に戻って早々に輝宗に呼ばれ、小十郎は梵天丸の傍から離れざるを得なくなってしまったのだ。
梵天丸の傅役である小十郎の直接の主は、もちろん梵天丸である。しかし伊達軍の頭である十六代当主伊達輝宗は、当然のことながら伊達家の禄を食む小十郎にとって首を垂れるべき主である。その輝宗に呼ばれたのだ。一介の臣―――しかも嫡男の傅役にしか過ぎぬ小十郎が拒否することはできない。
ということは、梵天丸の“すとらいき”は小十郎が彼の傍を離れたことが原因か。
小十郎がそういう立場にあることをわからない梵天丸ではない。だが梵天丸という子供は感情の起伏が激しく、なかなか難しいところがある。頭では理解していても感情の制御が効かぬということはありそうだ。
何れにせよ、夕餉を召し上がらないのは困りものだ。
「天岩戸を抉じ開けるのはそなたの役目ですよ、小十郎」
異父姉の言葉に俺は天細女命じゃねえんだが…と内心長嘆しつつ、小十郎は臍を曲げてしまった小さな主の部屋へと向かった。


(さて、)
天岩戸はなかなか手強そうである。
何者も拒むかのようにぴったりと閉じられた障子戸を前に、小十郎は小さな溜息をついた。
気を取り直した――というより、気合いを入れたという方が正しい――小十郎はその場に跪き、梵天丸を呼んでみた。無論、戸が開く気配は全くない。
(これは相当臍を曲げていやがる)
「梵天丸様。聞こえておるのでございましょう?小十郎にございます」
当然返される答えはない。いい度胸だ。あとで『呼ばれた時はきちんと返事を』と教え諭さねば。こんな時であっても小十郎は傅役の顔を見せる。子供を―――しかも嫡男を教え導くなど、と不安だらけだった拝命当時の己からすれば、大層進歩したものである。
ここで小十郎が退いてしまっては、何の解決にも至らない。小十郎は天照大神が岩戸を開くまでおとなしく待てるほど殊勝ではないし、岩戸へ隠れてしまった小十郎の小さな神もそんな殊勝さを心の底から望んではいまい。
「梵天丸様、」
実力行使だとばかりに障子戸を開け放つ。
不貞腐れていた梵天丸は小十郎と目が合うや、ふいっとそっぽを向いた。口も利きたくないと言わんばかりの頑なな態度である。
「なにゆえ臍を曲げておられるのです。夕餉も要らぬとは一体如何したのですか」
「フン。小十郎自身の胸に問うてみろ」
傲然と言い放たれても、小十郎の胸に答えは宿ってはいない。なので「わかりませぬな」と平然と答えると、利発な面差しがむっと歪んだ。
小さな口がへの字に曲がる。癇癪が爆発する一歩手前、今にも地団駄を踏みそうだ。
「こじゅうろうが……っ」
「小十郎が如何しました?」
怖気ずに睨んでくる大きな左目の縁にいつの間にか水膜が張っている。零さぬように堪えているのが手に取るようにわかった。彼は負けず嫌いなのだ。
「小十郎が悪いんだっ。小十郎の主は梵天なのに、時宗や父上の言うことなんか聞きやがって」
「―――は?」
ぽかぽかと叩いてくる梵天丸の拳を受けながら、小十郎は些か間の抜けた声を発してしまった。
「梵天丸様?」
「小十郎なんか知らぬっ。知らぬ、知らぬ、知らぬっ!」
―――思い当たった。
小十郎は梵天丸の一つ下の従弟である時宗丸にも懐かれていた。梵天丸が疲れて昼寝をしてしまっても、時宗丸は元気玉で小十郎にやれ剣の稽古だ、やれ相撲の相手だと暇なくねだってくる。梵天丸にとってはそれが面白くないのだ。確か今日もそうではなかったか。
更には屋敷に戻って早々に輝宗に呼び出された。梵天丸にすれば、主は自分なのにという思いだろう。
そんな梵天丸を思い遣れば、立場云々など小十郎の言い訳でしかなかった。
「梵天丸様、」
知らぬ知らぬと頑なになって首を振る梵天丸の許へにじり寄ると両手を小さな肩へ置いて、宥めるように撫でた。
「今更申されるまでもなく、小十郎は他ならぬ梵天丸様のものにございます。輝宗様でも時宗丸殿でもありませぬ」
「そ、そうだ。それなのに―――っ」
「元より梵天丸様のものであるという小十郎の言葉を信じられませぬか?」
「――――――っ、」
「梵天丸様はいずれ伊達家をお継ぎになられるお方。そのお方が小十郎如きで然様な狭量を見せてはなりませぬ。梵天丸様は聡いお子ゆえ、おわかりいただけますね?」
「わかっている。わかっているがでも…」
「小十郎はこの先も梵天丸様のものにございます…なれど、それを案ずるというのであればこの小十郎、何ぞ証立てをいたしましょう」
「証立て?」
「然様にございます。梵天丸様のものであるという証立てを」
そこで暫し考えた梵天丸は、徐に小指を伸ばしてきた。
「指きりだ。嘘をついたら、梵天が針を千本飲ませるからなっ」
「嘘などつきませぬよ」
ふふ、と口許を綻ばせ、梵天丸の小指に自身の小指を絡める。
「ほんとう、本当だからな!」
「ええ」
力強く小十郎が肯くと、漸く安心したのか小さな躰が飛び込んできた。と同時に、ぐるぐると梵天丸の腹の虫が空腹を訴えてくる。
「―――うっ、」
「すとらいきは終いにしましょうか」
バツ悪く顔を真っ赤にした梵天丸の鼻先に自分の鼻先を擦り合わせ、小十郎は優しく微笑んだ。




お題配布元:love is a momentさま


生クリームかチョコレートか、それが問題だ【戦国BASARA:小政】

誰にでも苦手なものの一つや二つあるだろう。苦手なものなど何ひとつないと豪語する完璧な者よりも、その方がよほど人間味溢れている。
だが、恋人の政宗の苦手とするものは、和菓子職人である小十郎にとって致命的としか他に言葉が見つからなかった。政宗は甘いものが駄目なのである。
本を辿れば殿様と殿様の許へ出入りする御用菓子匠という政宗の家と小十郎の家は、時代が下ってもその繋がりは深く、殿様から伎芸の家となった政宗の家へ今も変わらず出入りをしている。それゆえ小十郎と政宗は、それこそ政宗が物心つくかつかないかの頃からの付き合いだ。年の離れた幼なじみ、もっと言えば兄弟みたいなものか。
そんな二人の関係に変化が起きたのは、ごく最近のこと。
政宗が小学生だった頃に小十郎は彼と賭けをした。交わした賭けに期限はなく、随分と気の長い賭けだった。小十郎としては一生を賭してのそれであったから、勝負が決するまで気長に構えるつもりだったのだ。
政宗と交わした賭け―――己が作った和菓子を彼が食べられるか、否か。食べられれば小十郎の勝ち。いつまでも食べられなければ小十郎の負け、ということになる。そして勝った暁には、その願いごとを聞いてもらう。
成長とともに味覚も変わるものだが、政宗のそれはなかなか変わらなかった。小十郎は修行の傍ら毎日のように彼のために和菓子を作り、試食をしてもらっていたが、彼は申し訳なさそうにひと口齧るだけで、高校生になってもその味覚をずっと変えられずにいた。
それが最近、少しではあるが食べられるようになったのだ。賭けは小十郎の勝ちである。その時、初めて小十郎は己が願いを口にした―――どうか小十郎のものになっていただきたい、と。
小十郎にはずっと政宗が総てだったのだ。そうでなければ子供相手にあんな賭けはしない。
そんな熱烈な小十郎の告白を政宗が受け入れ――政宗もまた同じ想いだった――、そうして今に至る。


政宗が甘いものをなんでも食べられるようになったのかと言えば決してそうでもなく、小十郎が作った和菓子以外は相変わらず今でも駄目であった。己の作った和菓子だけ食べられれば充分で、それ以外のものならずっと苦手でいてくれて構わない―――存外独占欲の強い小十郎が言った言葉どおり、小十郎は政宗の舌に日々自身の味を教えている。
そんな十二月のある日のことだった。
政宗が買いたいものがあるというので、足代わりにすっかりクリスマス仕様に様変わりした街へと出掛けた。華やかな街並みは何処も彼処もうんざりするほどクリスマス一色である。
わあ、と眼を輝かせて政宗が足を止めた、其処は洋菓子店だった。クリスマスに向けてケーキの予約を受けているのだろう。ホールケーキの写真が何枚かウィンドウに飾られている。和菓子屋はこういうイベントものにあまり縁はない。
「政宗さま?」
甘くて食べられないことは端から承知しているのだが、それでも興味をそそられるらしい。政宗は生来好奇心旺盛だからそれも仕方ないことかもしれない。
キラキラと眼を輝かせてウィンドウに見入っている政宗に小十郎は苦笑を浮かべた。そうして思いついた言葉を口にする。
「作って差し上げましょうか?クリスマスケーキ」
「Really?」
不意に降ってきた言葉に政宗の眼が丸くなり、それからゆっくりとした瞬きを繰り返した。
「でもケーキだぞ?小十郎、作れるのか?」
「作ったことはありませんが……菓子であることに違いはないですからね。貴方のために挑戦しますよ」
その時の政宗の笑顔と言ったら。往来の場であるというのに思わず抱きしめたくなったほどだ。全く以て恋する男は盲目である。
あの笑顔を堪能できるのであれば、何でも作ってあげたいと思う。たとえそれが畑違いの洋菓子であってもだ。
とは言ったものの、自分の領分ではないのでやはり勝手が違う。例えば甘さ一つとってもそうだ。政宗が耐えられる甘さに抑えるにはどの程度まで砂糖を使えばいいのか。チョコレートは大丈夫か、生クリームは大丈夫か。加減が今イチよくわからない。
小十郎の作った菓子に限って食べられるようになった政宗だが、それは和菓子であって洋菓子は未知数だ。作ってもまた昔のように食べてくれない事態となってしまったら、さすがにこの歳でも凹んでしまう。かつて子供の政宗がジレンマに苦しんだように、小十郎も苦しみそうだ。
あの後何件かケーキ屋を廻って味を研究した。道具も密かに買い揃え、試作品も幾つか作ってみた。だが、小十郎自身まだまだ味どころか形も満足しない。
(こんなもんじゃねえ…っ。こんな程度じゃ政宗様の前には出せねえ。作るからには完璧を目指す!)
「洋菓子如きに負けねえぞ」

老舗和菓子屋の若旦那、片倉小十郎の奮闘は今日も続くのだった。




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街は聖夜の装いを【戦国BASARA:小政】

十二月に入って最初の日曜日。朝から天気も上々で、出掛けるにはもってこいだ。
久しぶりに肩を並べて本屋巡りができるとあって、隣の政宗は終始ご機嫌だ。街中に流れているクリスマスソングをメロディに合わせて口ずさんでいる。子供のようにはしゃいでいるとまでは言わないが、楽しそうなのが傍から見てもよくわかる。普段の凛とした顔つきが少しばかり幼く見えて可愛い。
「いつの間にか街はすっかりクリスマス仕様ですね」
「Ah~お前、最近買い物とか来てないもんな。十一月の終わりにはすっかりクリスマスだったぜ?」
気合いの入ったイルミネーションの数々も、クリスマスが終わればあっという間に正月仕様へ様変わりだ。その立ち回りの早さと言ったら―――器用というか何というか。
「この時季になると自分が浦島太郎になったような気がしますよ」
「.しょうがねェよな。何て言っても“師が走る”月だからよ」
「まあ…忙しいのは“師”ばかりではないですがね」
「Ha-ha.違いない」
この時期の小十郎は忙しく、いつも街中の風景の目まぐるしい移り変わりに驚かされる。大概において、それでクリスマスなのかと漸く気付くほどだ。
小十郎も政宗も本が好きで、休みの日はこうして本屋巡りをする。もちろん一人で気ままに巡ることも多いが、時間が合えば二人で巡る。相手の選んだ本に今まで知らなかった一面を知ったり、新たな発見があったり―――何よりも一緒に同じことをしているのが楽しい。ちょっとしたデートである。
ちなみに、当時助教だった小十郎が本屋でアルバイトをしていた政宗を見初めた――二人の正確な出逢いはこの時ではなかったのだが――のも本屋巡りだった。偶々立ち寄った本屋で政宗がアルバイトをしていたのだ。
そういう縁もあって、二人にとって本屋巡りというのは趣味と実益以上に大切な時間であった。
「ひととおり書評に目を通したんだが…結構面白そうな本が出ているんだよな。良ければ図書館にも置こうと思うんだ」
「政宗様の推薦となれば、また学生達が群がりますね」
「もちろんウチの“図書館”にも置くぜ?」
大学附属図書館の超絶美人司書として学生達――ばかりでは決してないのが小十郎の頭痛の種である――の人気が高い政宗の選書はそれだけでプレミアらしく、書架に並んだ途端に貸し出されてしまって、なかなか戻ってこない。小十郎の場合は、政宗が気を利かせて――それを職務上の特権とも言う――配架する前に貸出手続を済ませてくれるのだが、さすがに何度もその手法をとるのは悪いような気がして、一緒に暮らしている現在は自宅の書庫に別に置くようにしている。
政宗が言った“ウチの図書館”とは自宅の書庫を意味している。二人で住むには些か部屋数が多すぎる自宅の一室を丸ごと書庫にしていて、ちょっとした図書館なのだ。
小十郎の蔵書数も凄かったのだが、二人で暮らすにあたって元々凄いところに政宗の分も加わったため、すっかり図書館と化してしまったのだった。ついでに言えば、政宗という専属の司書もいる。
「それは楽しみです」
「楽しみと言えば………久しぶりに今日は小十郎に読み聞かせしてもらおうかなア」
「政宗様?」
見上げてくる政宗の一眼がゆるりと細まる。
高校生だった一時期、小十郎は政宗と一緒に暮らしていて、当時小学生だった彼によく本を読んでくれとねだられたものだ。小十郎の本好きの原点はここにあるのだが、当の本人が気付いているかどうか。
膝にちょこんと乗っかって、ゆっくりとした調子で小十郎が読み上げてくれる手許の本を興味津々といった眼差しで見つめてくる幼い政宗の姿が、今でも瞼の裏に鮮明に浮かべられる。あの頃から政宗は本当に可愛かった。
「子供の頃のようにですか?貴方を膝に乗せて?」
今も彼を乗せることは間々あるが、あの頃とは少々―――というか、かなり趣が異なっている。
「さて、昔から堪え性のない貴方がおとなしく我慢できますかね」
「そいつはお前次第だと思うぜ?お前が余計な悪戯を仕掛けてこなければ、俺はいつだっておとなしくできるぞ」
「おや、言いますね。では今夜試してみましょうか?」
途中で我慢できずに泣き出しても知りませんよ?という小十郎の挑発に対して、政宗は艶やかに笑ってみせた。






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キャンドルライト【戦国BASARA:サスダテ】

滅多に雪が降らない地方では、少しでも雪が積もると大混乱である。まさに今夜はそうだった。
朝方から降り出した雪は止む気配はなく、お蔭で交通網はズタズタだ。高速道路は早々に封鎖されているし、幹線道路も渋滞している。電車は架線に雪が積もったとかで軒並み運転見合わせ。
更にひどいことに、数時間前から政宗の住む地区は雪による停電に見舞われていた。冬の夜に電気を全く使えない、なんて最悪である。オール電化にしていないことだけが救いだった。少なくともガスで暖をとることができるからだ。
とはいえ、いくら着込んでも凍えそうな寒さである。そろそろ世話役の男の許へ緊急避難をするべきか―――そんなことを真剣に政宗が検討し始めた、その矢先のことだった。
来客を知らせるチャイムが鳴る。
こんな夜に誰だ?と物好きな来客に胸中で文句を垂れつつ触れたドアノブのヒヤリとした冷たさに一瞬身を竦め、渋々とドアを開けた。
「ど、どうもー」
「………………、」
ガチガチと歯を鳴らしながら、愛想良い笑みを貼り付けている男―――猿飛佐助の予期せぬ来訪に、政宗は軽く目を瞠った。
「出先から帰ろうとしたんだけど、この雪で電車が運行中止になっちゃってさ。途中まで―――えーと、三、四駅くらい?頑張って歩いてみたんだけど、もうムリで。とりあえず一番近くにいる知り合いって考えたら…伊達ちゃんだったんだよねえ」
「アンタ、雪中行軍よろしくこの雪の中此処まで歩いてきたのか?」
傘すら持っていないのか――コンビニにでも寄って買えば良かったのだ――、佐助は全身雪塗れだった。なるほど雪中行軍だ。申し訳程度に肩に積もった雪を払い落として、佐助は「いやあ、ホント参ったよ」と答えた。その姿を目にしているだけでも寒気を催してくる。寒々しさに政宗の方がぶるりと躰を震わせてしまった。
そんなことより。政宗は佐助が政宗の自宅を把握していたことに驚いていた。少なくとも、互いの家を行き来するほど仲が良い認識は政宗になかった。現に政宗は佐助の自宅が何処にあるかなど知らない。それこそ知り合いというには余所余所しいが、かといって友人というには親しくも馴れ合ってもいなくて、なんとも微妙な関係をこれまで保ち続けていたのだ。
そんな佐助が事情はともかく、こんな雪の日に政宗を頼ってきた。ここで関係性を盾に追い返してしまうのは些か酷である。少なくとも、政宗はそういうことができる性格ではない。
「言っとくが、この辺りは雪の所為で停電だぜ?」
「あーなるほどね。道理でこの辺りが真っ暗なわけだ」
「いつ復旧するかもわからねェが、寒くても我慢できるっていうなら構わねェ。入りな」
「助かるよ。この際休めるなら、少々寒くたって我慢するし」
「…いや、かなり寒いレベルだと思うぜ。マジで」
拝み手でそう答えた佐助の発言を、白い息を吐き零しながらうんざりと政宗は訂正した。

暖房器具がエアコン、というのも考えものである。停電の日には全く使いものにならないのだ。電気ストーブも然り。今後のことを考えたら石油ストーブを買った方がいいかもしれないと政宗は思う。
濡れた衣服は体温を奪うばかりなので、佐助には自分の服を貸してやった。体格はそう変わらないから、たぶん大丈夫だろう。これが自分より遥かに体格のいい相手だったりしたら、コンプレックスを容赦なく刺激されて面白くないだけだ。
エアコンはそういう理由で使えないため、何枚も着込ませて、唯一使えるガスコンロでお湯を沸かしてインスタントのスープを飲ませてやる。
「はあ、この温かさ沁みるわー」
佐助はほっとしたように告げた。
ゆらゆらと揺れる蝋燭の頼りない灯り。目下室内を照らす光源となっている蝋燭は、昨年のクリスマスの時の残りものだ。確か懐中電灯が物置に転がっていた筈だが―――こういう時に限って見つからない。物置を大捜索するのも面倒で、結局食器棚の抽斗の中に仕舞われていた蝋燭の出番となった。これがなかなかの活躍をみせている。
「手なんか悴んじゃって、指先の感覚なかったもんねえ…ほら、」
両手で包み込むようにマグカップを持っていた佐助の手が、突然ぺたりと政宗の頬に触れてくる。突然触れてきた手のあまりの冷たさに――手の冷たさはなかなか戻らないようだ――政宗は「ぎゃっ」とらしからぬ悲鳴を上げた。悲鳴を上げてオーバーに飛び退く。
「テ、テメエ!冷たい手で触るんじゃねェっ」
「へー、思ったよりも伊達ちゃんって温かいねえ。なんだか暖がとれそう」
蝋燭の炎に照らされた佐助の顔に悪戯な笑みが浮かぶ。身の危険を感じた政宗は思わず後ずさった。あの冷たい手でべたべた触られたら、体温が一気に低下しそうな気がしてならない。
「伊達ちゃん、いっそのこと仲良くしない?」
「No!いきなり仲良くしようなんて胡散臭いこと言いやがって。テメエの魂胆が透けて見える」
「えー、わりと本気なんだけどね。俺さまこれでもさ」
此処に来た時から。
おどけたように告げたあと、瞳を細めてじっと政宗のことを見つめてくる。
蝋燭の灯りの向こうに見える佐助の顔が、この時の政宗にはなぜだか知らない人間のそれのように思えた。





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手袋を半分こ【戦国BASARA:関ヶ原組+政宗】

「家康。貴様、いつまで此処にいるつもりだ」
寒いのなら我慢をすることなど少しもない。とっとと帰れ!
カチカチと歯を鳴らしながら三成が言う。勿論、そんな強がりを言う三成も、足許から這い上がってくる寒さを前に心なしか涙目だ。
「なあにこれしきワシはなんともないぞ。ワシよりも三成は大丈夫なのか?歯の根が噛み合っていないようだが」
「う、うるさいっ」
寒さで鼻頭を真っ赤にしながら、肩を並べた家康が「ははは」と朗らかに笑う。息は白くて、吐き出した端から冬空に昇ってゆく。
「顔色も良くないし、三成こそ我慢せずに帰った方がいいんじゃないか?政宗だっていつ仕事が終わるかもわからんし。風邪などひいたら困るだろう?」
「私は惑わされんぞ、家康!貴様、そのような心にもないことを並べ立てて…私を追い返し、その隙に伊達を独り占めするつもりだろうっ」
「人聞きの悪いことを言うなあ三成は。お前の眼にはそのように映るのか?」
「それ以外に映りようがないっ」
二人は帝都大学附属中学に在籍している。中学校は既に冬休みに入っていて、時間を持て余し気味の二人は冬休みに入ると同時に毎日のように帝都大学へ通っていた。
中学生の彼らが大学に出向いても何があるというわけでもない。勉強は自分達の習う範囲のことで手いっぱいだ。別に大学で学ぶことを前倒しで学びたいわけではない。
三成も家康もお互いを牽制しながら――普通ならば通う必要などない――大学に足繁く通っているのは、共通の目的があったからだ。
家康は三成を友人と思っているようだが三成にとっては片腹痛い話で、そのために常に二人はこれが通常運転である。決して仲良しではないと三成は自負しているのに、大学に通う目的がまんまと被っているあたり周囲からは仲が良いと思われているらしい。勿論、冗談ではない。先を競うというのであれば、三成の方が先に目的として設定したのだ。家康は二番煎じ、三成の模倣ではないか。
二人の共通目的―――それは帝都大学附属図書館で働く超絶美人司書様に逢うことだった。
美人司書様の名を伊達政宗という。思春期只中の中学生二人の憧れの人だ。家康は運命の人と憚ることなく公言し、三成にとっては初恋の人にも等しい。だが、どちらをとったとしても同性という時点で残念な結果ではあったが。
「そもそも私だけであれば附属図書館で勉強しながら待っていられるのだ。貴様が伊達の仕事の邪魔をするからだろうっ」
「だがな、三成。お前一人では迷子になるじゃないか」
「―――っ」
極度の方向音痴である三成は一人だと未だに大学構内で遭難しそうになるのだ。そのため、しれっと放たれた家康の言葉にぐうの音も出ない。
「お、おのれぇぇぇ。いぃぃぃえぇぇぇやぁぁぁすぅぅぅぅ」
「ははははは」
館内は暖かいというのにこうして外にいなければならない、そもそもその原因を作ったのは隣で満面の笑みを浮かべた家康だ。
仔犬のように政宗に纏わりつくこの同級生を最初の頃こそ微笑ましく思ってくれた政宗と附属図書館の人達だったが、さすがにそれが毎日となると笑顔も引き攣ってくる。結局、堪忍袋の緒が切れた政宗に邪魔だと追い出されてしまったのだ。
尤も、そんなことでへこたれる家康ではない。三成としてはへこたれてさっさと戦線離脱をして欲しかったが、家康という男の神経は無駄に図太かったのだ。
お蔭で三成もまた甚だ不本意ながら仲良く――断じて言うが本当に仲が良いわけではない――肩を並べてこうして館外で政宗を待っているのである。
この健気さ、一途さを少しは汲んで欲しいものだ。
ちなみに家康など見捨ててしまっても三成的には全く構わないのだが、なんとなく自分だけ暖かな館内に身を置くのも後ろめたい気がするのだった。
「お前ら……いい加減なところで帰らねェと本気で風邪をひくぞ」
「政宗!」
「伊達!」
寒空の下、外でじゃれ合う――三成的にはいがみ合っている――二人が心配で様子を見に出てきた政宗が呆れたように口を開いた。
「政宗の仕事が終わるのを待っているんだ。なあ、仕事は終わったのか?」
「阿呆、終わるかよ。今日は夜間開館のカウンター業務があるから残業なんだよ。ほら、いいから今日はもう帰れ」
「「えーっ」」
「えーっ、じゃねェよ」
伸びてきた手に二人の頭はぐしゃぐしゃと撫でられる。
「ったく、全身冷え冷えになりやがって」
長嘆した政宗は二人の前に自身のものと思しき手袋を差し出した。右手を家康に左手を三成に―――片方ずつを渡す。
「それを嵌めて今日のところは帰れ。ちなみにくれてはやらねェからな、あとで返せよ」
「ちぇっ、ワシの宝にしようと思ったのに。こう頬ずりをしたりな、時々はこれで慰めたりな」
「家康。テメエ、それ本気でやらかしたら図書館出入り禁止にするぞ」
手袋を渡された時に見せた嬉々とした表情で企みを察したらしい政宗に釘を刺された――そうでなければ本気でやっていただろう――家康はぶーと頬を膨らませた。そんな同級生を三成は冷ややかな目で見る。ざまあみろ。
「伊達、片方の手袋など全く以て用を為さんではないか。私の右手はどうするのだ!」
「Ah?」
ぱちりと切れ長の左眼が瞬く。
「そんなの、素手の方は仲良く手ェ繋げば互いの手の温もりであったけェだろうが」
「――――――っ!?」
本気か。本気で言っているのか。
「じょ、冗談ではない。私がなぜ家康と手を繋がねばならんのだ!おのれ、家康ぅぅぅぅ」
「ははは、それが政宗の望みならば男として叶えんとなあ。三成、さあワシと手を繋ごう!」
有無を言わさず家康が手袋を嵌めていない方の手を掴む。
「だ、伊達っ」
三成の一途さも健気さも―――政宗には届かない。
「Okey, boys.気を付けて帰れよ」
「伊達ぇぇぇぇぇ」

悲愴な三成の声だけが寒空に響いた。




お題配布元:love is a momentさま


賛美歌なんて歌えない【戦国BASARA:小政】

途切れ途切れに主の歌声が聞こえてくる。細い歌声は凍てついた冬の夜空に向かって昇ってゆき、やがて澄んだ空気と混ざり合って端から消えていった。
寒かろうと暖をとるための火鉢を持った小十郎が拾い上げたそれは主の部屋から遠かったゆえに細部までよく聞き取ることができなかったが、今まで耳にしたこともない旋律で、おそらく南蛮渡来のものだろうと思われた。良くも悪くも好奇心旺盛な主は南蛮文化に興味を示している。そんな主だから南蛮の歌など、まるで乾いた土が水を吸収するように覚えてしまうことだろう。
(―――にしても、)
主の部屋から離れた場所にいる――主の許に向かう途中ではあるが――小十郎の耳にまで歌声が届くのだ。障子戸を開けきってのことか、それとも部屋から臨める庭へと出ているのか―――いずれにせよ、おとなしく室内に籠っているとは到底思えない。冬の冷気は身体に障る。風邪でもひいたらどうするつもりか。まずはそのあたりを諌めなければなるまい。
気持ち早足になるのは決して寒さのためだけではない。
眉宇を顰めてやれやれと嘆息した小十郎は、急ぎ主の許へと向かった。


案の定、主はこの寒さのなか障子戸を開け放って夜空を眺めていた。この日は前日まで降っていた雪が止み、珍しく夜になっても晴れていて、空気が澄んでいる所為か夜空には無数の星々が散らばっていた。
「―――政宗様、」
火鉢を抱えた顰め面で主の名を口にすれば、小十郎の心中など与り知らぬといった体で主の瞳が向けられる。その一眼は今宵の空よりも美しく澄んでいて、思わず魅入られる。
「よお、小十郎」
「お寒いかと思いまして火鉢をお持ちしたのですが………」
長く連れ添った者の勘とでもいおうか、続く言葉を素早く察知した主―――政宗はそれらを飲み込ませるために機先を制して艶やかな笑みを向ける。最近はこうした手管を覚えてしまったものだから頭が痛い。
「いい夜だ。閉じ籠るのが勿体ねェだろ」
傍らには徳利が転がっている。内側から温めるつもりで酒を飲んでいたのだろう。一応の“防寒対策”は頭にあったようだ。
「斯様な寒い夜に……風邪でも召したら如何なさるおつもりか」
「Ha!この程度でダウンするほど竜は鈍っちゃいねェよ」
また根拠のないことを、と小十郎はこれ見よがしに溜息をついた。
「そういう者に限って風邪をひいて寝床でうんうん唸るのです。風邪は万病の元と申します。ひいてからでは遅いのですぞ!」
「All right,all right」
小十郎の忠告を聞いているのかいないのか、肩を竦めて小さく笑う。小言を繰られても不貞腐れないところをみると、酒が入って気分がいいのだろう。
困ったお方だ。小十郎は政宗の傍に持参した火鉢を置くと、部屋の奥に仕舞われている厚手の羽織を探し出し、政宗に着せかけた。小十郎が傍にいながら主に風邪をひかせては、それこそ竜の右目の名折れである。
ふわふわと微笑む政宗を横目に小十郎は「先ほどの…」と切り出した。
「What?」
「先ほど政宗様の歌声が聞こえましたが、あれはどのような歌なのですか?」
「ああ、あれか。あれはな、外つ国の神を讃える歌だ。賛美歌っていうらしいぜ」
ふふ、と口許綻ばせて政宗が答える。
「日ノ本で言えば…祝詞みてェなもんか」
「はあ、然様にございますか」
国が変われば、なるほど神を讃える歌も異なるものだ。小十郎が耳にしたそれは節回しも全く違っていた。
「お前も本を辿れば神職の家の出だ。興味はあるんじゃねェ?」
どうだ、お前も覚えてみるか?と言われたが、小十郎は「いいえ」と答えて首を横に振った。たとえそれが政宗の命令であったとしても、小十郎は否と答えるだろう。無論、それは日ノ本の神に殉じてのためではない。
政宗が口にしたとおり、小十郎は神職の家の出で武家出身ではない。伊達家は出自にこだわることなく使える者を取り立てる御家であったため、小十郎のような身分でも取り立てられ、政宗が幼少の時分は傅役として、長じてからは竜の右目として片時も傍を離れぬ身となったわけだが、当時としては発展的だった伊達家にあってもやはり武家の出自という、ともすれば選民思想めいたこだわりは保守層――といえば聞こえはいいが、早い話が老臣どもである――を中心に根強く残っていて、小十郎も認められるまでは人知れず泣かされたものだ。
神職の出自ではある。だが、不謹慎なことながら小十郎は神というものを一切信じていなかった。神などこの世にはいないと割と早い時期に見切りをつけてしまっている。それは育ってきた境遇の所為もあるかもしれない。神事に携わることもあるので祝詞はひと通り上げられるが、それは形だけである。
とにかく。そんな小十郎であるので、神を讃美するなどあり得ぬことだった。讃える歌など覚える気もない。
「神など信じていない小十郎に、神を讃美する歌など歌えますまい」
「Ha,お前らしい。だが、神さまってヤツは懐深いから、信心が足りなくとも案外許してくれるかもしれねェぜ」
政宗は気にすることなく上機嫌で手酌酒を進めている。
「いいえ。神を讃美する歌などやはり小十郎には歌えませぬ。小十郎が唯一信じ、讃美するのは貴方様のみでございますれば」
「――――――っ!?」
途端。
それまで旨そうに飲んでいた酒を喉に詰まらせ、政宗がひどく噎せ込んでしまった。





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お星さまのオーナメント【戦国BASARA:家政】

十二月に入った途端、街はクリスマス一色に様変わりする。ディスプレイはクリスマス仕様となり、クリスマスソングが流れ、そんな周囲に追い立てられるようにして、家庭でもクリスマスの準備を始める。
「竹千代、今日はクリスマスツリーを飾るぞ!」
朝から家康はクリスマスツリーの飾り付けで張り切っている。ひとり息子に「となりの佐吉のところよりも大きいツリーがいい」と注文をつけられ、「よーしっ、」と無駄に張り切っていた。子供ながらも他者と張り合う心を忘れていない、我が子ながらその心意気は頼もしいぜと政宗も頬を弛める。家康はどうか知らないが、少なくとも政宗が子供の頃はやはり何をするにも周りの子供と張り合っていた憶えがある。おそらく竹千代のあれは、政宗の血に因るものだろう。
ツリーの飾り付けは家康と竹千代に任せて、政宗はキッチンに立った。どうせツリーが完成したら、竹千代は隣家の佐吉――同じ幼稚園に通う仲が良いのだか悪いのだかよくわからない間柄の友達である――を家に呼ぶのだろう。となれば、おやつの一つでも作ってやらねば体面が悪い。
「クッキーでも作るか」
子供好みの甘い政宗手製クッキーは竹千代のお気に入りだ。というより、竹千代は政宗の手製ならば何でもお気に入りである。ゆえに偏食もないので大助かりだ。家康も全く同じなので、本当に似た者親子だった。
出来上がった時の竹千代のほわほわした笑顔を想像しながら政宗がクッキー作りに取り掛かって暫く経った頃、突然リビングから火がついたような泣き声がした。
「What?」
尋常ではない泣きっぷりに、何が起こったと政宗が血相を変えてキッチンを飛び出す。家康と竹千代がツリーを飾っているところはキッチンからは死角になっていて見えないのだ。
「竹千代?!」
はしゃぎ過ぎてよもや怪我でもしたのではないか。それにしては一緒にいる家康の声がしない。仮に怪我をしたのであれば、家康が慌てている筈だ。
どうしたっ?と現場に――さして広くもない家の中だからすぐだ――行けば、完成間近のツリーを背にぺたんと座り込んだ竹千代がわんわん泣いていた。家康はというと、息子がわんわん大声で泣いているというのに全く顧みることもなく、それどころか鼻歌混じりで呑気にオーナメントを飾りつけている。
おい、と大人に詰め寄るのはひとまず後回しにして、政宗は竹千代の傍に寄って宥めるように小さな背を撫で擦ってやった。
「Don’t cry ,my sweet babe.何があったんだ?」
しゃくりあげながら泣き顔を向けてくる竹千代に優しく微笑みかける。クルリとした大きな目――顔の造作は政宗よりも家康似である――は泣き濡れて真っ赤だ。こんな時ではあったが、「ウサギみてェ」と思ってしまった。
「泣いてちゃわかんねェだろ。何があった?」
指先で涙を拭ってあげる。竹千代は尚もえぐえぐとしゃくりあげながら、「いえやすが………」と言った。
「家康が?家康がどうした?」
「いえ…っ、いえやすが竹千代のおほしさまをとったぁぁぁぁ」
「――――――っ?」
治まりかけていたのが、“竹千代のお星さまをとった”で口惜しさがまたぶり返したのだろう。再び火がついたように泣き出す。それをまた宥めながら、政宗は眦を吊り上げてぐりっと家康に顔を向けた。
「Hey,どういうこった?竹千代がそう言っているが」
「知らんなあ。ワシ、竹千代が泣くような悪さをした覚えはないぞ」
しらんぷりである。
「それより見てくれ、独眼竜。ほら、ツリーが完成したんだ。夜になったら電飾をつけような」
家康は両手を腰に当てて満面の笑みを浮かべた。
そんな家康とは対照的なのが竹千代である。恨めしそうにツリーを見上げ、涙に濡れたその目で家康を見、しゃくりあげる。
「竹千代、」
ああもう、と小さく息を吐いた政宗は泣き止まない幼子を抱き上げると「泣くな」と柔らかな頬にキスをした。涙の味がする。
「おほ…おほ、しさま…竹千代、の」
「お星さま?ああ、ツリーの天辺のか。Ok,あれをお前が飾りたかったんだな?」
こくり、と小さな頭が上下する。なるほど、自分が飾ろうとしていたものを家康が飾ってしまった―――というところか。ここで問題なのは不注意かそれとも確信犯か、である。前者ならば「ごめん」と謝って済むことだが、後者の場合は家康が幼子相手に大人げない真似を本気でやらかしたことになる。
そして大変面倒なことであるが、こういう時は往々にして後者であることが多い。
「竹千代の背では届かんだろうが。っていうか、お前なにワシの独眼竜に抱きついているんだ。子供だからって許さんぞ」
「のー。まさむねは竹千代の」
ぎゅうと首にしがみつく姿を目の当たりにした家康の笑顔が微妙に引き攣った。笑みは貼り付いているが、目は笑っていない。見かけ好青年である家康は、決して見かけどおりではないことを政宗は伴侶であるがゆえに思い知っている。
「ははは、愚かなことを言いおって。独眼竜はワシのものだというのはお前が生まれる前から決まっていることだぞ。第一、ワシの竜だからこそお前が生ま―――」
「家康っ!」
無駄に滑らかに滑る家康の口に手を押しつけ――竹千代は片腕で抱き直した――思いっきり塞いでやった。むぐぐとくぐもった声が洩れる。
「照れることないだろう?」
「照れてねェっ!そんなことより子供相手に大人げねェ真似すんな!」
「何を言うんだ、独眼竜。ワシは竹千代を一人の人間として扱っているんだ。ワシからお前を奪うという気概を見せているのだから、ワシも全力で相手しなくてはな」
全力で相手している結果が―――これ、なのか。
「いえやすのじゃない!竹千代の!」
「いいや、ワシのだっ。言っておくがなあ、お前なんかこれっぽっちも入る余地はないぞ!」
「……………」
呆れて全身から力が抜けていくようだ。言葉も出てこない。
「お前ら…………」
自分を挟んで尚も繰り広げられる度の過ぎたコミュニケーションに、政宗は「いい加減にしてくれ」とばかりに大きな溜息をついたのだった。





お題配布元:love is a momentさま


気を引き締めて

金曜日に久しぶりに大きな地震が来てびっくり!
一年経って、いろいろな意味で忘れかけてるなあ…と思い知りました。
震度5弱だった宮城方面は大丈夫だったでしょうか。
宮城にはBASARAを通じてお知り合いになった方も多いので、大きい地震とか来ると心配です。


それはさておき。
毎日拍手等々どうもありがとうございます!
最近はアドベント用の話を書き溜める毎日ですが、本当に励みになっています!今日以降も小政、小梵、家政そして関ヶ原組などなど更新予定です。今年は久しぶりにサスダテなんぞも書いてみようかな、などと思っています。←これも予定。
以下は、遅まきながらいただいていたメッセージへのお礼です。
いつもありがとうございます!

チキン忘れるべからず【戦国BASARA:小政】

両手にクリスマスケーキの箱と某ファストフード店の袋を持ったサングラス姿の男の図―――というのは明らかに違和感があった。
片倉小十郎。東日本の極道の頂点に立つ伊達組、その直系の若頭補佐である。極道同士の抗争で得た勲章か、顎のあたりから左の目許近くにまで届く刀傷を残した面構えは精悍で、サングラスの下に隠された鋭い双眸は獲物を狙う肉食獣のように獰猛な光を湛えている。上等な黒のスーツに包まれた均整のとれた逞しい肉体は宛ら鋼の如く。
小十郎に惚れてこの世界に入った者も多いという、そんな男惚れをされるような極道者がクリスマスケーキの箱と某ファストフード店の袋――中身は十中八九“チキン”だろう――を持っているのだ。最早似合う、似合わない以前の問題である。
「か、片倉様っ?!」
ミスマッチも極まった若頭補佐の姿を目の当たりにし、目を剥いて素っ頓狂な声を上げたのは舎弟の良直だった。尋常ではない良直の声に他の舎弟もぞろぞろと顔を出し、続いて同じような反応をみせる。
「ど、どどどどうしたんスかっ。その………」
「あア?クリスマスにはケーキとチキンがつきもんだろうが」
「いや、それはそうッスけど…その、もしや片倉様ご自身で買いに行かれたので?」
恐る恐る良直が訊ねる。小十郎は「なに当たり前のことを言っていやがる」とばかりに舎弟の間抜け面を睥睨した。当然のことながら、ケーキもチキンも小十郎が自ら店に出向き並んで――掻き入れ時の店は行列を作っていたのだ――買い求めたものである。
どちらの店の店員も、外見からして如何にもその筋の人間である小十郎が現れても慄くどころか、最後までにこやかに応対をしてみせた。見上げたプロ根性だと密かに感心したものだ。
伊達の竜、或いは伊達の鬼として極道に名を知られた片倉様がそんな一般人みてぇなことを…と良直は嘆いた。その心情がありありと表情に表れ出ている。小十郎にしてみれば、舎弟達は自分に何を夢見ているのだろうと文句の一つも言いたいところだ。小十郎とて何も選ばれた特別な人間ではない。一般人と同じなのだから。
と言っても、こいつらには届かねえんだろうなと思う。慕われることに悪い気はしないが、どうにも小十郎の舎弟達は己に極道者の理想を重ねている節がある。
「そんなこと俺達に言い付けてくれれば良かったんスよ。わざわざ片倉様が出張らずとも……」
「いや、俺が頼まれたことだしな」
伊達組のNo.3であり、公には実子がいないとされている組長の跡を継いでいずれは伊達組を率いていくものと目されている小十郎を顎で使える者は限られている。オヤジである伊達輝宗、その右腕の遠藤、そして―――。
「政宗、さま…ッスか?」
政宗、という言葉に小十郎のポーカーフェイスが崩れた。まるで悪戯を目撃されてしまった子供のようなバツの悪そうな表情で押し黙る。
舎弟達には小十郎にとって政宗が特別な存在であることを割と早い段階で知られてしまっていた。それはそうだろう。逢引用に使っているホテルへの送迎や身辺の警護一切は、彼ら舎弟に任せているのだ。当然、急用が入って情事の最中に迎えに来られることもあるし、蕩けた肌を無防備に晒し――或いは常習性のある甘い毒を撒き散らして――一糸纏わぬ状態でベッドに寝そべる姿を何度も目にしている。硬派を自負する舎弟達には強烈な色香、過ぎた毒に違いない。
一見、擦り寄ってくる女に些か食傷気味になった小十郎が年若い情夫を囲っているようにも映るが、小十郎にとっての政宗は“情夫”などというそんな低俗な括りで片付けられるものではなかった。確かに躰の関係があり、互いの利で以て共存関係を築いている。けれど、互いの利だけでは決して動かされることのない―――もっと深い部分で繋がっている自覚はあった。言葉を換えれば、心を寄り添わせているのだ。
そして。
政宗は本来小十郎が傅くべき相手であった。
彼は最上政宗という。最上義光といえば、小十郎達日陰者と対極の立場にある―――警察組織の中枢に在る人間だ。政宗はその最上義光の妹の子、義光にとっては甥にあたる。自身も小十郎を取り締まる側の人間で組織犯罪対策部、昔でいえばマル暴に属していた。つまりは敵同士、普通であれば絶対に相容れぬ仲だったのだ。
けれど、政宗には隠された秘密があった。最上姓を名乗る彼の実の父こそ、伊達組の頂点に立つ伊達輝宗その人なのである。公には実子がいないとされている輝宗の血を引く唯一の人間。
無論互いに互いの立場があって、名乗り合うことはしていない。おそらくこの先もないのだろう。だが、言葉にはせずとも互いの存在を認めていた。
輝宗の血を引く者に相応しく、政宗は人を惹きつける独特の魅力を有していた。野性味を帯びた鋭い眼差しなど、向けられるだけでゾクゾクする。もし―――など仮定話をしても詮無いことだが、もし彼が小十郎と同じ側の人間であったならば、きっと平伏さずにはいられない、そんな怖ろしい存在となるだろうに。
政宗が輝宗の実子であることを知る者は限られている。一時期に比べて血腥い抗争は鳴りを潜めたが、西日本を拠点とする豊臣組が東に勢力を広げんとしている最中なので、抗争の道具となりかねない、ある意味伊達の弱点となり得るそれを最小限の範囲に留めるために徹底して秘匿しようとするのは当然のことだ。と同時に、それは彼の身を護るためでもある。
何にせよ、政宗が伊達の血を引くという事実を知る者は限られているのだが、どういうわけか小十郎の舎弟達はその事実を知る限られた者のうちに入っていた。まあ、確かにいざという時に政宗の身を護る人間が多いに越したことはないのだが。
「さすが政宗さまッスね。怖いものなしだ」
彼らは小十郎に男惚れしているように、政宗にも惚れている。おそらく――それを政宗は喜びはしないだろうが――彼に何事かあれば、平気で盾になることぐらいはするだろう。
「左馬助、今夜の予定は入っていないな?」
今夜は政宗と過ごすために予定を一切入れていない。スケジュール管理を任せている舎弟の左馬助に再度確認した。お互い忙しい身の上、漸く時間の工面ができたのだ。ここで失態を犯してしまっては怒り狂うだけでは済まない。
「はい。行き先はいつものホテルですか?」
「いいや。マンションに戻る。この荷物を見りゃあわかるだろう?」
今夜の逢瀬の舞台は小十郎のマンションだ。セキュリティも折り紙つきなら個人情報の守秘も徹底している。こんな日にホテルでの逢瀬だと如何にも狙っていたみたいで恰好悪いではないか。尤もそれは単なる小十郎の主観であり、見栄と言ってしまえばそれまでだが。
小十郎的にはケーキやチキンを買うために並ぶことやそれらをテイクアウトしてくることについては恰好悪いとは思わないらしい。政宗のために動いているからだろう。
「しかしこの時期、政宗様はお忙しいんじゃあ………」
年末にかけて夜の繁華街は忘年会などに繰り出す多くの人で賑わう。比例して警察沙汰になるような喧嘩も多く、この時期の警察は大忙しだ。
「テメエらがおとなしくしていてくれりゃあ、今夜は呼び出しがかかることはねえってよ。いいか、今夜は羽目を外して悪さするんじゃねえぞ。政宗様を煩わせるな」
情事の最中であろうと政宗が呼び出されればその時点で夢は醒めてしまう。お互いに次を約束できない身の上だけに、それが何よりも切ないのだ。
逢瀬に水を差してくれるな、と低い声で小十郎は凄む。勿論、舎弟達は首を縦に動かすことしかできなかった。


「Wow!マジで買ってきたのか?」
先にマンションに着いていた政宗は、予め小十郎から渡されていたカードキーを使って室内に入り、夕食のセッティングをしていた。料理好きな彼は、マンションで逢瀬を楽しむ時はこうして料理を作ってくれる。曰く、“運動”すると腹が減るのだそうだ。
ケーキの箱とチキンの入った袋を下げて帰った偉丈夫を見るなり、政宗もまた舎弟達と同じように瞳を丸くした。
「食べたいと仰ったのは貴方でしょう?ちゃんと並んで買いましたよ」
「並んで買ったって………誰が?まさかお前がなんて言わねェよな?」
「俺以外に誰が並んで買うというんです」
「いや、普通舎弟達に買いに行かせるだろうがよ。お前のポジションからすれば」
「貴方と楽しむためのものを余人に買いに行かせるなんざありえねえですよ」
当然のことだと小十郎が断言すると、突然堰を切ったように政宗が笑いだした。
「政宗様!」
「Sorry.な、なんだか可笑しくてよ。お前が……ケーキやらチキンやらを買うためにクリスマス一色の街に出向いて並んでる姿を想像すると…っ」
ごめんと謝っているクセに、尚も笑いが止まらないのか笑い続けている。笑い過ぎて呼吸するのが苦しそうだ。
「政宗さま………まあ、いくら笑ってくれても構いませんがね」
「Oh,my sweet dear.そう拗ねんなよ」
目尻に溜まった涙を指先で拭いながら、政宗が宥める。それでも眉宇を顰めて拗ねた――政宗以外の人間が見たら威圧しているとしか言えない態度でも、政宗の一眼には拗ねていると映っているのだ――フリをしていると、機嫌を直せと困ったように笑って今度は唇を塞いできた。
ぴったりと重ね合わせていた唇を僅かに開けば歯列を縫って舌先が入り込んでくる。性格そのままにその悪戯な舌先を追いかけてしっとりと絡ませた。
料理も買ってきたチキンもケーキも。その存在すら忘れてじゃれ合う。
「…なあ、小十郎。まずはメシにするか?」
「貴方の手料理もソソりますが、先に貴方の方を食べてぇ。明日は非番でしたよね?」
「Ya.お前ンとこの若い連中がやんちゃをしでかさなければ、呼び出されることはねェだろうよ」
「でしたらご心配なく。俺達の邪魔をするんじゃねえと厳しく言い置いてきましたんで」
「Ha-ha.伊達組の鬼小十郎に脅されちゃあビビッてやんちゃなんかできねェな」
政宗は可笑しそうにそう言って口許を緩めた。
「せっかく腕を揮って作った料理だが…そう美味そうに舌舐めずりされちまうと期待に応えてやりたくなる。いいぜ、まずはコッチを満たしてくれても、な」
「またそのように煽って…どうなっても知らねえですよ?覚悟してください」
「Ha,上等だ」
不敵な笑みで極道者を容赦なく挑発する。
最高の男と過ごす最高の熱い夜が幕を上げる―――――。





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日常までがイルミネーション【戦国BASARA:小政+元親】

編集担当から思いがけずにクリスマスプレゼントを貰ってしまった。高級ホテルに入っているイタリアンレストランのディナー券である。手に入れるの大変なんですよ、と当人は力説していた。確かにこの時季は予約を入れるのも大変そうだ。
とはいえ、それは元親のためにわざわざ取ってくれたものではない。何らかの理由があって使い道がなくなってしまったところにたまたま元親が現れた―――そんなところだろう。どうせ接待か何かに使うつもりだったに違いない。
そんなチケットが今、元親の手にある。
長く元親の担当を務めてくれているだけあって、気心も知れた相手である。
『せっかくのクリスマスなんですから、彼女さんと過ごしてくださいねー』
などと余計な言葉とともに押し付けられてしまった。
長く担当を務めているのだ。元親に女の影がないことぐらい知っているだろうに。というか元親の性格上、一つのことに没頭してしまうと脇目も振らず邁進してしまうので、目下彼女を作る暇がない。今は執筆活動でいっぱいいっぱいなのだ。
それともあれか。この歳になっても女の影が一つもない自分をかえって不憫に思って恵んでくれたのか。
「………カノジョ、ねえ」
余計なお世話だと口の中で毒づく。
自分で言うと虚しくなってくるのだが、一緒にクリスマスを過ごすような彼女はいない。彼女はいないが、一緒に過ごしたいと思う相手は元親にもいた。
ただ―――誘うのがいろいろな意味で難しいだけで。
「クリスマスだもんなあ。間違いなく予定が入っているよな」
世の中にここまで自分の好みのど真ん中を衝いた相手が存在するとは思わなかった元親は、当然の如くその相手に恋をしていた。
ただ些か乗り越えるべき障壁があったのだ。

一、その相手が同性である。

ノーマルな元親は勿論女の方が好きである。だが、もし自分の好みのど真ん中を衝いた相手が哀しいかなたまたま同性であった場合、まあ同性でもいいかと思う程度には寛容だった。世の中男と女、二分の一の確率なのだ。仮に同性だからと涙を呑んでも、次にそこまで好みに副った異性が現れる保障はない。それならば今を受け入れるべきだ。また、自分自身性に然程固執しないのは大学時代の先輩の影響があるためと思われる。それゆえ、この壁はクリアだ。

一、その相手に既に恋人がいる。

実のところ、これが乗り越えられない壁だった。元親が「あ、好みのど真ん中」と思った時には、その相手は既に他人のものだったのだ。しかも、元親が多々影響を受けた件の先輩のものだったという泣きたくなるオマケ付きである。初めから見込みがないと言われているようなものではないか。
確かにその先輩とは人に限った話ではなく、何から何まで好みが被っていた。だからこそ好きになった相手も被ってしまったというわけだ。先輩の恋愛の対象は男だというのに―――同じ相手に惚れてしまったというこの確率は一体どうしたことだろう。
そんなわけで。
クリスマスなどという恋人達が盛り上がるイベントの日にその人がフリーでいるとはとてもではないが思えなかった。クールで硬派な先輩であったが、恋人のこととなるとまるで人が変わったように独占欲丸出しなので――これがまた可笑しい――、余人を排除して心置きなくイチャつくつもりでいる筈だ。端からそれがわかっているのに誘うなど徒労もいいところである。
それでも。ダメ元で誘ってみるのが元親であった。


「あア?」
書架整理に勤しんでいた政宗の手が止まる。上目遣いに左眼を向けられた元親はひどくバツの悪そうな顔になった。
「いや、その…な。担当からクリスマスディナー券を貰っちまってよ。もし良ければ一緒にどうかなーと思って」
「Ha,他に誘うヤツはいねェのかよ。例えば彼女とかさ」
「…いねぇからお前を誘ってんだろうが」
可哀想なヤツ、と憐れむような目で見られたらたぶん立ち直れないような気がする。今の言い方はまるっきり“いないから仕方なくお前を誘った”だけれども、本音は“最初からお前を誘いたかった”なのである。そんな元親の本音など伝わる筈もない。
「いや…急な話だし、勿論予定が入っていなければの話だけど、よ」
小さく息を吐いた政宗は手にした本を書架に片付けると――彼は元親の母校の大学の図書館司書である。ちなみに彼の恋人である元親の先輩は研究室にそのまま残って、今では准教授様だ――、今度は正面から元親と眼を合わせて「いいぜ」と答えた。
「え?」
思わず元親の右眼が丸くなる。予期せぬ回答を貰ってしまったからだ。
「だから、構わねェって言ってる。それってクリスマスイヴの日だろ」
「お、おう」
まさかそんな二つ返事であっさりとくるとは夢にもも思わなかった。ドッキリか何かだろうか。それともやっぱり憐れまれている?
「いやでも、片倉さん…は?」
「小十郎?知るかよ、あんなヤツ。薄情にもほどがあるってんだ!」
館内はお静かに、という張り紙が目に入っているだろうに、勢い政宗の声が大きくなった。慌てて声を潜める。
「小十郎はその日、泊りがけの出張だ。何もわざわざクリスマスを選んで研究打合せに行くことはねェのによ」
訊けば、先輩―――片倉小十郎は、よりにもよってクリスマスイヴから研究打合せと称して関西方面に出張だという。戻りは二十六日だというから、見事に恋人達の一大イベントを無視した恰好だ。それで蔑ろにされたと政宗は拗ねているらしい。どうやらそれが原因で数日前から喧嘩もしているようだ。
(この場合、ラッキーって思えばいいのか?)
元親にしてみれば、思わぬ幸運が転がり込んできた感じである。
どんな経緯があるにせよ、政宗とクリスマスデートだ。気合いが入らない筈がない。ディナー券をくれた編集担当には感謝してもしきれないくらいだ。
世の中神も仏もねぇと思うことが多いが、この時ばかりは神も仏もいるんだな………と思う現金な元親だった。





お題配布元:love is a momentさま



初雪【戦国BASARA:小政】


アドベントカレンダー挑戦中なのですが、今日はクリスマスから離れて小十郎追悼話です。
旧暦命日に追悼話を書けなかったので、じゃあ新暦の命日こそは!と思っていたんですが、12/4は普通に小政をアップしていました。(だってアドベント挑戦中…)
そんな訳で出遅れましたが、今日は(アドベントのお題で)追悼話です。
小十郎喪失につき、苦手な方もいると思うので昨日に引き続き本編は折り畳みです。
明日からはまた幸せ仕様に戻りますよ。


真っ赤なお鼻のあなた様【戦国BASARA:家政】

お久しぶりです。家政、許婚シリーズ。
にょた宗仕様なので、本編は一応折り畳みです。スイマセン、お手間をとらせます。
喧嘩をしたので仲直り、という構図の話が現在私の中で大フィーバーっぽいです(苦笑)。
喧嘩している話の比率が多すぎる。*1日目の龍神さまもその系列。
この二人の場合は喧嘩をすると洩れなく鬼の小舅殿が参戦して、血の雨が降るものと思われます。




きんいろの、ぎんいろの【戦国BASARA:小政】

出陣前―――戦支度をしているときが一番緊張する。かの独眼竜も戦を前にして緊張するのか、と笑われるのも癪だから決して表面には出さずに余裕の振舞いをしているけれど。
初陣を果たして暫くは子供だった所為もあるが、血気に逸っていた憶えがある。それが原因で痛い目に遭ったことも数知れずだ。戦が何たるか頭では理解していても本当の意味でわかっていなかった子供の己を思い出すにつけ、苦い笑いがこみ上げてくる。あの頃だって全く緊張していなかったといえば嘘になる。血気に逸っていたのは、緊張の裏返しだ。
生来好戦的で闘争心に溢れた独眼竜である。無論、戦を前にした緊張感とは対極の、全身の血が沸騰するかのような恍惚感に充たされるのも事実だ。前者ばかりに傾倒しては軍を率いる大将としてはあまりにも弱く、後者にばかり傾倒してはただの命知らずでしかない。己の中にある弱さと強さ、両方を知ってこそ戦人である。
「政宗様、きつくはありませんか?」
「No problem.ちょうどいいぜ」
政宗の戦支度は小十郎が務めている。本来は小姓に任せるものだが、小十郎が頑として譲ろうとしないのと政宗がそれを許しているのとで今日まで伊達軍では当たり前のように為されていた。
余人を遠ざけて二人で行うそれは、戦を臨む前の一種儀式のようでもあった。竜が天をその手で掴む日まで、ずっと続けられるのだろう。
(いつまで―――?)
いつまで。
その先、続けようとした言葉が見つけられず、政宗は微かに息を零した。
いつまで、の先どう続けようとしたのか。

いつまで戦が続くのか――――――か。
いつまでこの大きく武骨な、政宗の愛おしい手が戦装束を着付けてくれるのか―――か。
いつまで喪わずに、いつまで傍に、いつまで―――………。

「―――政宗様?政宗さまっ」
拾い上げた小十郎の声。思考の淵に沈みかけていた政宗はその声でハッと我に返った。目の前に心配そうな表情を浮かべた小十郎が立っている。
「政宗様、如何為された」
「いや……なんでもねェ」
ふるりと首を左右に振って口許を緩めても、長年己が右目を務めるこの男の表情が晴れることはない。小十郎は政宗がこの歳になっても心配性なのだ。傅役気質が未だに残っているのかもしれない。
だとすれば、この心の裡もとうに見透かされているのかもしれないな。そう思えば、知らず苦笑が浮かんだ。思えば幼い時分より政宗は小十郎に隠し事ができなかったのだ。
「政宗様、」
労わるように頬を撫でられる。その仕種で「やっぱりお見通しか」と政宗の苦笑がい一層深まった。
「敵わねェな、お前には」
「―――はい?」
思わずといった体で目を丸くした小十郎に戦装束のまま抱きつく。抱きついてきた主君を無碍に突き飛ばすわけにもいかず、結果として小十郎は政宗を抱き留める形になった。
政宗様、と諌める色合いが濃くなった声が耳許を掠める。小十郎は表情よりもその声により感情が出易い。
「なあ、小十郎。もっと呼んでくれよ」
俺の名前をもっと呼んで。
そうねだると、「どうしました?」と言いながらも名を小十郎は呼んでくれた。
もっと。もっと。
「政宗さま、」
戦を前に昂ぶった心を落ち着かせるため、とでも思っているのかもしれない。或いは、身の裡に潜んでいる不安と緊張を拭い去るためか。

政宗様。政宗様。政宗様―――。

愛を語る抱擁には些か殺伐としすぎる場で、それでも政宗はそんな抱擁と何ら変わることなくうっとりと瞳を閉じ、微かに開いた唇からゆるゆると息を零した。
「不思議なモンだな。お前に名を呼ばれると落ち着く。こう…力が入っていても、すとんと抜けるみてェだ」
「然様にございますか」
政宗を抱き留めた小十郎の手がゆっくりと背を撫でている。小十郎、と瞳を合わせれば、揺るぎない強さを秘めた男の眼差しと絡み合った。
刹那、ふ、と短く息を吐き、小十郎の腕の中から飛び出す。まるでそれを心得ていたように、腕の中から逃した小十郎は一拍置いて仕上げとなる蒼の陣羽織を差し出した。
「政宗様」
「Ok,」
陣羽織に腕を通し、身を翻す。
「楽しいpartyにしようじゃねェか。俺の背は任せたぜ、小十郎」
「御意。御身の背はこの小十郎がお護り致しますゆえ、どうぞご存分に」
小十郎の言葉に不敵に微笑む。
「政宗様、」
出陣を前にした一連の密やかな儀式の最後の仕上げとばかりに、二人は短い抱擁とくちづけを交わすのだった。



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