人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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1.入学(出会い)

この世の中、偶然と必然とどちらが多く転がっているものなのだろう──────


年度が変わり、閑散としていた寮内にまた賑やかさが戻った。短い休暇を利用して帰省していた連中と明日の入学式を控えた新寮生が入れ替わり立ち代わりで、なんとなく落ち着かない。
まあ、毎年のことなんだがなぁ・・・と、この春士官学校の最高学年となったヒューズは、少しばかり醒めた瞳で毎年この時期恒例の慌しさを眺めていた。
「おぅ、ヒューズ」
目敏くその姿を見つけて声を掛けてきた同じ情報科専攻の友人に、返事代わりに軽く右手を挙げる。
「どうしたよ、どことなくブルーだけど?」
憂鬱そうな面構えと指摘する友人に対し、ヒューズは頭を掻きながら、とりあえず口先だけは「そんなことねえけどなあ」と牽制してみせた。
「まあ・・・強いて云えば、アレだ。折角シングルライフを楽しめるかと思ったのに、水の泡と化しましたってコトで軽くブルー入ってるかもしんねぇけど」
士官学校の寮は、通常二人部屋である。但し、寮生の総意プラス成績と素行の総合点で選出される寮監生には一人部屋が宛がわれることが常だった。尤も、一人部屋といっても元々の二人部屋を一人で使える程度のものだったが。何にせよ、プライベートもへったくれもない寮内で、唯一自分だけのプライベートスペースが確保される訳である。
寮生の代表であり、また模範でもある寮監生は、寮生活全般を取り仕切ると同時に寮生の監督───というか寧ろ面倒を見るという一般の学校で云えば学級委員長のような豪く厄介な仕事を請け負っている。無論信頼があってこそ任される役なのだが、ただでさえ厳しい訓練と厳しい課題をクリアしなければならない日々の中で、その片手間にやれるという代物では到底なく、寮監生になるということは相当の重責を覚悟しなければならないのだ。その半端な覚悟では両立できない役回りに対する対価として、寮監生には特別に一人部屋待遇が約束されていた。
従前の例に倣えば、寮監生となったヒューズには自動的に一人部屋が宛がわれる。
ところが、である。
「・・・サラバ、有意義な一人部屋生活」
溜息とともに出てくる愚痴ともつかない言葉が、現在のヒューズの心境を端的に表現していた。
世の中には特例というものが確かに存在していて、まさにその特例がヒューズの身に降りかかってしまったのだった。数日前に教官に呼ばれたヒューズは、約束されていた一人部屋待遇を反故にされ、新入生との同部屋を云い渡されたのだ。曰く、「扱いが難しい子供だが、非常に優秀なので良く面倒をみてやって欲しい」。教官にしてみればヒューズの面倒見の良さを買っての指名だろうが、要は面倒且つ厄介な仕事がまた一つ増えただけのことだ。
「新入生のお守りねぇ・・・・・・ご愁傷サマなことで」
「おおっ、同情してくれる?」
「ま、とりあえずはな。それはそうと。新入生っていやぁ、今年はスゲーのが入ってくるって?」
今年は余程の当たり年なのか、とんでもなく優秀な新入生が入ってくるらしいという噂は随分早くに掴んでいた。優秀な軍人を育てることが至上命題である士官学校にとっては、非常に育て甲斐のある逸材が入学してくると云えよう。
「考課に加えて口頭試問を満点で通ったって云うじゃん」
「ああ、らしいな」
戦術論も完璧。教官も舌を巻くほどだったという話も耳にした。
おまけに。
「おまけに・・・・・史上最年少で国家錬金術師の資格を取得済みだとか」
「国家錬金術師、ねぇ」
何とも末恐ろしい───と溜息混じりにヒューズは思う。そもそも錬金術というものがどういうものなのか凡人である自分にはよく判らないが、この国の最高統率者たる大総統直属である国家錬金術師の資格を持ちながら、尚且つ軍人になろうと云うか。
名前はなんて云ったっけ?と記憶を辿って思い出そうとしている友人の傍らで、生憎とそこまで興味を示さなかったヒューズは、優秀だろうが扱いが難しかろうがどんなに凄かろうが、ただ問題児ではなければ良い───と寮監生としてそれだけを祈っていた。


───で、一体これは何なんだ?
自室に戻ったヒューズは、ドアを開けると同時に思わずそんな言葉を洩らした。殺風景だった筈の部屋が、得体の知れない本の山で文字どおり足の踏み場もない状態になっている。とりあえず、足許に無造作に置かれていた分厚い本を拾い上げてパラパラと目を通してみたが、どうにも得体の知れない記号やらの羅列ばかりで、さっぱり理解できず、すぐに解読を断念した。
「・・・よく判らねぇ」
この本総てが同室者の所有物だとすると、些か頭の痛い話ではある。というよりも、これから寮で世話になろうという新入生の荷物らしい荷物がこの本の山というのは、如何なものだろう。確かに、これは教官から云われたとおり<扱いが難しい>かもしれない。
おまけに、肝心の所有者の姿が見当たらねえし?
やれやれと肩を竦めつつ、辺りを見回す。すると、積まれた本の山と山の間から黒髪の頭が覗いているのが目に留まった。どうやら件の同室者のようだ。こちらの気配に気付こうともせず、一心不乱に広げた書物を読み耽っている。
「おーい」
こちらの気配に気付こうともしないのだから、無論返事を望むべくもない。返事どころか、ブツブツと理解不能な語彙が返ってきて、流石のヒューズも対応に困ってしまった。
「この集中力は評価すべきか否か・・・・・もし俺が敵だったりしたら、フツーはアウトだよなぁ?」
そもそも気配に敏感でない軍人など───致命的だろう。
試しに目の前でヒラヒラと手を振ってみる。勿論、気付かない。まったく、たいした集中力だよと半ば感心しつつ、ヒューズは新たに同室者となる目の前の少年を凝視した。
俯いていても幼さが抜け切れていないとすぐに見て取れるその面差しは、少年というよりも少女のようだ。ほっそりとした手足といい華奢な体つきといい、成長期の真っ只中にあることを差し引いたとしても、この先待っている厳しい訓練に耐えていけるのだろうかと思ってしまう。
「ま、非常に優秀な子供だって教官のお墨付きだしな」
そう一人ごちて、ニッと唇の端を吊り上げると。
ヒューズは、少年の手から分厚い書物を取り上げた。
「──────!?」
初めて少年の瞳がヒューズを捉える。髪と同じ綺麗な漆黒の瞳だ。
「何をする!」
返せと咄嗟に手を伸ばされ、ヒューズは少年が手を伸ばしても届かない程度の高さまで本を持ち上げる。
「これから寝食を共にする同室者に挨拶なしってのは、流石に失礼だと思うんだがなぁ。坊主。フツー挨拶ってのは、こんなモン読んでちゃできんだろ?」
挨拶というものは、普通面と向かってするものだ。しかし。
「いいから、返せ!」
可愛らしい面構えに一瞬騙されそうになるが、思った以上に我が強そうだ。少年はヒューズをキッと睨みつけた。まるで毛を逆立てて威嚇する黒猫のようだとヒューズは思った。
「挨拶の方が先だ、坊主」
「私は坊主ではない!」
少しも物怖じしない口調だ。同室者に対してどう接すればいいだろうとか、そういう不安など微塵も感じられない。だから、萎縮もしない。ちゃんと<自分>というものが確立している。
面白い、と思った。
確かに扱い難そうだが、退屈はしないかもしれない。
「じゃあ、名前は?」
そう優しく云って、ヒューズは瞳を眇めた。少年はその優しい声音に一瞬戸惑ったのか言葉を詰らせ、それからつっけんどんに。
「ロイ───ロイ・マスタングだ」
「ロイか。いい名だな。うん、呼び易い。なあ、ロイ?」
「気安く呼ぶな!マスタングだ!」
「えー、いいじゃん。別に減るモンでもないし。じゃあ、俺のこともファースト・ネームで呼んでいいから」
「呼んでいいからも何も・・・お前はまだ名乗ってもいないだろうが!」
「マースだよ。マース・ヒューズ。よろしくな、ロイ」
にっこりと愛想良く笑い、ついでのようにヒューズはグシャグシャとロイの頭を撫で回す。
「マスタングだ!」
面白いヤツ。
頑なに云い張るロイの抗議を笑顔で聞き流し、ヒューズはこれから送るであろう面倒且つ厄介だけれど退屈しない日々に思いを馳せた。

士官学校寮100室巡り by同室同盟
同室同盟presents士官学校100室巡りに挑戦。
オフィシャルな設定を蹴っ飛ばして、ヒューズとロイは3つ違いでお届けです(苦笑)。
とりあえず、気が向いた時にここでぽちぽちアップの予定。

・・・しかし、ここにアップするには無駄に長い(苦笑)。
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