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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

日溜りで待ち合わせ

小十郎は畑へ出向いている。
百姓もそうだが、木々が一斉に芽吹くこの時期は畑の耕作で忙しいようだ。
手間隙かけて愛情を込めて育てる農作物が美味しいのは当然で、少しでも主に美味しいものを口にして貰えるように、とこの時期から余念がない小十郎である。
戦人が戦を忘れて他事に目を向けることができるのは、世の中が平和な証拠だ。少なくとも、ここ奥州一帯は〈独眼竜〉の手腕によって安定している。今はほんの一握りの、己の足許だけの平和でしかないが、いずれは日の本全土に拡げてやるつもりだ。
「All right.上出来だ」
会心の出来に満足げな笑みを浮かべた政宗は、漆塗りの重箱の蓋を閉めるといそいそと出掛ける仕度を始めた。
今から出向けば、中食の頃合いに丁度良い筈だ。
驚いたような、困ったような───目を離した隙に政務はどうしたのだと咎めたいような、そんな複雑な表情を見せて小十郎は己を迎えるだろう。小言を云ってくるのは間違いないだろうが、そうしたらどんとこの重箱を前に置いて「お前のために作ったんだぜ」と云ってやろう。流石の小十郎もそれ以上は小言をくれまい。
それくらい政宗には自信があった。
献立を一から考えて、〈小十郎のために〉作ったのは本当だ。そのために政務もそこそこに厨へ籠ったのである。
自ら料理を嗜む政宗は、居城に自分専用の厨を設えていた。此処に籠るのは気分転換を図るためでもあるということは、周知の事実だ。
小十郎が畑を耕すのと似たようなものである。
「おっと、水も必要だよな」
口ン中に詰め込みすぎて、うっかり喉でも詰まらせたら大変だからな。
清水を詰めた竹筒を二本用意して、準備万端。
風呂敷包を抱え持って、よし、と頷いた政宗は、春の匂いがする穏やかな陽だまりの中へと飛び出した。


通い慣れた畦道を歩く、その足取りは軽快で。
時々農作業をしている百姓達が、自分達の生活をその力で以て護ってくれる若い殿様の姿を認めて声を掛けてきて、それらに気軽に応えるために歩みが止まる。
他国では知らないが、施政者と民百姓との垣根を作らないこうした気さくな遣り取りは伊達では当たり前で、それが伊達軍の結束の強さのひとつともなっていた。
「おう、今年の土の塩梅はどうだ?よォく耕せたか?」
「へい。今年は雪解けも早かったので…きっと良い米に野菜ができますよ」
そしたら真っ先に殿様に美味い野菜を献上する、と笑う彼らに「Thanks,楽しみにしてるぜ」とにこやかに答えた。
つくづく自分達戦人は彼らのような百姓達の支えがあって生かされているのだと思う。
決して勘違いしてはならない。彼らが生み出すものを摂取して初めて自分達は生かされ、そして戦えるのだ。
だから彼らのささやかな生活を無為な戦から護るのは、自分達の務めだ。そう政宗は思っている。
百姓達に別れを告げて更に進むと、いよいよ小十郎の畑が見えてくる。
遠目からでもそうと判る小十郎は、黙々と鍬を振るっていた。
「Hey,小十郎!」
「政宗さま、」
すぐに政宗に気付いた小十郎は、思わずこちらが見惚れるような男臭い笑みを浮かべると、鍬を休めて額から流れ落ちる汗を手拭いで拭った。
「そろそろ飯にしねェか?ちょうどいい頃合いだろ」
飯を作ってきたぜと持参した風呂敷包みを小十郎に向かって掲げると、更に笑みが深まる。
「ご政務はどうなされたのです?」
「Ha!心配すんな、ちゃあんと片付けてきたぜ。まァ、一部は成実に任せてきたが」
任せてきたとは物は云いようで、早い話が押し付けてきただけのことだ。そのあたりは小十郎も察したのだろう。困ったお人だ、と苦笑しながら呟いた。
「小言はno thank youだぜ、小十郎。せっかくお前のために作ってきたんだ。食べてくれよ」
「それは身に余る光栄。有難くいただきましょう」
「Ya,そうしてくれ」
いそいそと風呂敷包みを広げ、重箱を並べた。
手拭いで軽く汚れを拭き取った小十郎が政宗の傍らに腰を下ろす。労いを込めて小十郎に竹筒を渡してやると、ありがとうございますと礼を云ってまず清水で喉を潤した。
手ずからの品々に箸を付けて口へと運ぼうとする小十郎を政宗は期待に満ちた瞳で見つめた。
さて、どんな感想を述べてくれるだろう。美味いと云ってくれるだろうか。
小十郎のために作ったのだ。美味いと感じてもらわなければ、美味いと喜んでくれなければ、全く意味がない。
「政宗様、」
「なんだ、小十郎」
軽く首を傾げた政宗に小十郎は苦笑を浮かべる。
「そのように瞬きもせずじっと見つめられては…些か困りますな」
「緊張して喉も通らねェって?小十郎にしては可笑しなことを云いやがる」
「つい目の前の〈甘露〉に目移りしてしまい、せっかく拵えていただいた料理の味が判らなくなりそうですよ」
「───っ?!」
何を〈甘露〉に譬えたか。今更聞き返すまでもない。
「小十郎、テメエ…」
凛とした政宗の面差しにサッと朱が走った。
結局。
小十郎が重箱を片付け、ふたり連れ立って城へと戻るまで、鮮やかに染めた朱が政宗の貌から消えることはなかった。



お題提供元:群青三メートル手前さま




今年も開設日カウントダウンに合わせて「連続更新に挑戦してみよう!inブログ」と一念発起してみました(苦笑)。>だって、こういうイベント事に託けて尻叩かないと、毎日更新なんてできないし。
お借りしたお題が「六題;漢字一字連想編【陽】」なので、おひさまを連想させるほのぼのとしたものを目指せればいいなーと思っています。
一応今年は総て小政の予定です。

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