人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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恋しくて、息が止まりそう~side小十郎~

バタバタと板目を踏み鳴らす慌しい足音を耳で拾った小十郎は、蓑を脱ぎ、ぐっしょりと濡れそぼった髪からボタボタと滴り落ちる水滴を手渡された手拭いで拭い取りながら、僅かに顔を顰めた。
「小十郎っ」
「政宗さま?!」
騒々しい足音の主は政宗のものだった。
今宵は伊達軍恒例の七夕の酒宴で、政宗も当然そちらへ顔を出しているものだと思っていたのだが。
人目も憚らず──まあ、奔放な主の所為か周囲もすっかり馴染んでいる──抱きつきそうな勢いだったので、小十郎は慌てて彼を制しようとした。
が、勢いは止められず小十郎のそれは失敗に終わる。
「政宗様、お召し物が濡れてしまいます」
「構うな」
滴る水滴が小十郎を見上げた政宗の頬に落ちる。すぐに手にしていた手拭いで拭ってやったが、頓着しない彼は無邪気に笑うばかりで、離れていて久しく見ていなかった笑顔を見せられると流石に小言を繰る気力も失せてしまった。
「おかえり、小十郎」
「は。───ただいま戻りました」

半刻後。
身支度を整えた小十郎は、改めて政宗の私室を訪れた。
政宗もまた先ほどの着物から着替えている。夜着に一枚羽織っている恰好だ。
「帰城が遅くなりまして申し訳ありません。雨が小康状態になったのを見計らって出発したのですが、道が泥濘で馬が思うように進めず」
「無事に戻ったのならそれでいい。なんなら今から酒宴の方に顔を出してくるか?まあ、アイツらのことだから既に出来上がっちまってるかもしれねェが」
政宗らしい心遣いだったが、小十郎は首を横に振った。
それを見て聡い竜は察したのか、ふっと目許を撓める。
「お前がいない間…恋しくて仕方がなかった」
「政宗様、」
恋しくて仕方がなかった、と政宗は云う。
それは己も同じだ。
ほんの僅かなといえばそれまでなのだが、離れている間も心は添うていると自信はあっても、それでも恋しくて仕方がなかった。
とんだ有様だと政宗のいる本城の方角を眺めては苦く笑ったものだ。
「恋しくて恋しくて…息が上手くできねェんだ。お前があっちに足止めを喰らう日々がまだまだ続けば、我慢できずに俺の方から出迎えに行くところだったぜ」
「なんと無謀な真似を」
愛しい存在であるが、少々無鉄砲すぎる。この雨の中を飛び出して、〈奥州筆頭〉でもある彼に万が一のことがあったらどうするのだ。
生来堪え性のない──しかも行動力は無駄にある──政宗が抑止力も持たぬまま無謀な真似を実行に移す前に帰城できて良かった、と小十郎は密かに胸を撫で下ろした。
「まったく…とんでもない織姫様ですな」
「An?」
恋しくて、恋しくて。
息もできないほど恋しくて。
「自らお渡りになろうとなさるなど…危なっかしくて見ちゃいられねぇ」
「Ha!そういう織姫がいいんだろ?俺の彦星サンはよ」
だから諦めろ、と笑う政宗につられて、小十郎も苦笑を浮かべた。
「しようのねぇ…」
折からの雨で叶わぬ逢瀬に、天上の彦星と織姫はふたりを隔てる天の川の両岸で袖を濡らしているに違いない。
けれど、地上のふたりは叶わぬ逢瀬に泣き濡れるなど性に合わないのだ。
「…恋しくて息が止まりそうだ。なァ小十郎、はやく息をさせてくれ…よ」
「政宗様…」
漸く、だ。
漸く、焦がれていたこの温もりに満たされる。
「…恋しゅうございました」
憂鬱なばかりの雨音はずっと耳に届いているが。
それすらもすぐに気にならなくなるのだろう。


お題配布元:color seasonさま

七夕小政後半部。
本日は小十郎視点です。
離れていた間、竜が恋しいと啼くように。
右目もまた竜を恋しく思っていました。
互いに欠いてはならない存在です。

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