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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

306.「…………趣味、です」【戦国BASARA:小政】

気配を完全に消して、夜陰に紛れて城の外へ出ていく小十郎の後姿をつけながら、渋面の政宗は形良く切り揃えられている爪をギリッと噛んだ。
右目の人目を忍んでの外出は、ほぼ毎晩のことである。それもほぼ決まって今頃の刻限だ。
右目の───小十郎のことは誰よりも己が一番よく知っている、と自負していた政宗だが、その自信が根底から覆されたような気分だった。
本当は知っているようでいて、その実何も知らないのではないか。
主に行き先も告げず、夜陰に紛れて城の外へ出る、その行き先となれば、主に知られるのは憚るようなところ───例えば女のところかもしれない。
小十郎とて男である。
柔らかな女を抱きたいと思うときもあるだろう。
ただでさえ、色街に懇ろにしている女の一人や二人いてもなんの不思議もないほどの男ぶりなのだ。
あの男が己ではない〈誰か〉を抱く様を無意識のうちに想像───否、妄想して政宗は益々気分が悪くなった。
(Damn it!小十郎のヤツ…っ、そういうことかよっ)
次第に苛立ってくるのが判る。
もし、このまま行き先が女のところであったりしたら…現場を押さえて、竜に不実を働いた報いをきっちりと受けさせねば気がすまない。
例え己が右目であっても、赦せることと赦せぬことはあるのだ。
(ム・カ・つ・くッ!)
ともすれば激情のままに吼えたてそうになるのを瀬戸際で止めて、政宗は先を急ぐ小十郎の背中を睨みつける。
「小十郎のヤツ…タダじゃおかねェ」
夜の尾行はまだまだ続くのだった。


おかしなことに、小十郎の足は色街のある城下とは逆方向に向いていた。
目下、月明かりが頼りのこの道は、政宗もよく知っている。このまま行けば、小十郎が丹精込めて育てている野菜たちの畑がある。
「………畑?」
こんな時間にかよ、と無意識に呟いてしまう。
だが、小十郎は畑へと繋がる道を手前で折れた。
進むに従って両側に木立が現れ、頼りだった月明かりすら伸びた枝に遮られてしまって慣れぬ道程に足許が急に覚束なくなる。しかし、先を進む小十郎はこの薄暗がりでも終始歩みに変化がないので、通い慣れた道なのだろうと察せられた。
畑ルートをとったことで一旦は終息した筈の嫌な想像が、またもやむくむくと頭の中に拡がり始める。
この先に何があるというのか。
秘密裏に女を囲っているというのもあり得ない話ではない。案外こういう淋しい場所の方が人目にもつかないし、一夜の儚い逢瀬には最適だろう。
確かめるべきか否か。
そうだとして、確かめれば間違いなく己は平静ではいられないだろう。たとえどんなに強がったとしても、だ。
逆にここで確かめることを怖れて止めてしまえば、この先ずっと小十郎を疑い続けなければならない。
そんな政宗の迷いを余所に小十郎はどんどん先へと進んでいく。
政宗にとっては見知らぬ道だ。確かめるべきか否かと悶々としている間に小十郎の背を見失っては、元も子もない。
ええい、ままよ。と腹を括った政宗は、見失わないように慌てて後姿を追った。
暫く緩やかな上り坂を行くと、突如視界が開けた。
視界が開けてみれば、見晴らしの良い小高い丘のようだ。己の目線が一段高くなっている。
迷いなく小十郎が向かうその先、月明かりに照らされた其処には畑があった。
いつの間にこんなところに畑を作ったのだろう。
怪訝に思いながら政宗が木の陰に身を潜めていると、背を向けたままで小十郎が鋭い声を発した。
「其処にいるのは誰だっ!」
同時に小十郎の背に殺気が漲る。黒龍の柄に手をかけているのは武人としての習性だろう。背後にいるのが敵であれば、己の間合いとなったと同時に即戦闘態勢に入る───そんな構えだ。
そんな小十郎にこんな時でありながら惚れ惚れとしてしまった政宗だったが、慌てて首を横に振ると、ふぅと息を洩らしてから殺気に晒される覚悟を決めた。
「俺だ───小十郎」
「ま、政宗さま?!」
小十郎の呆けた、顔。
両手を挙げて降参のポーズを取りながら姿をみせた政宗は、相変わらず呆けたままの小十郎を見てくすりと笑った。
「こんな場所に…いつの間に畑なんか作ったんだ?」
「政宗様、まさか…城から此処まで小十郎の後をつけてきたので?」
政宗の問いに小十郎が更に問いを上塗りしてくる。アン?と首を傾げると、小十郎は語気を強めて『〈奥州筆頭〉ともあろうお方が、この暗がりを供も連れずおひとりで?』と云った。
「Jesus…」
どうやら小十郎の体内のどこかにあるらしい説教のスイッチが入ってしまったらしい。
(こちとら尾行してんだ。尾行にゾロゾロ供なんざ連れて行けるかよっ)
と思っても、決して口にはしない政宗である。
火に油を注ぐ真似だけは避けたい。
「政宗様、」
まるで悪戯を咎められた子供のように首を竦める政宗を見下ろし、自身の額に手を当てた小十郎は呆れたように溜息を零した。
「まったく貴方という人は…」
その後に続く『仕方のない』という言葉は、彼がこれ以上の小言を云うのを諦めた証拠である。
「もう少し整備してからお連れしようと思ったんですがね」
「What?」
「どうにもあっちの畑が手狭になりまして…まあ、ウチの若い連中があっちの手入れをやってますし。さてどうしたもんかと思っているところに、村の爺さんが此処の畑を」
「ふうん」
「此処は見晴らしも良いですし…お好きだと思いましてね」
だから、もう少し周囲を整備してから連れてこようと思ったのだ、と小十郎は続けた。
流石は〈右目〉。政宗の好みを熟知している。
「ンだよ、そうだったのかよ。…安心したぜ」
「───は?安心?」
ほっと安堵してつい口を衝いて出てしまった政宗の言葉に、小十郎が緩く瞳を瞬かせた。慌てて「なんでもねェ」と首を振って誤魔化す。
まさか、女の許へ通っているのではなかろうかと疑って尾行していたとは云えない政宗である。
尤も、相手が野菜に代わっても政宗がやきもきするのは、似たようなものかもしれない。
なにしろこの男、丹精込めて育てている野菜と向き合っている時は、これがあの〈鬼の小十郎〉かと驚くほど柔和な表情をしているのだ。
「政宗様?」
わざとらしく咳払いをしてみせてその場を取り繕った政宗は、辺りを見回して「確かに…好きだぜ」と答えた。
良かったといわんばかりに小十郎が嬉しそうな表情をする。
「人気もねェし…逢引きするにはもってこいだな」
「政宗様っ」
眉間に皺を寄せて窘める小十郎を笑い飛ばして。

言葉どおりに、新たに政宗のお気に入りとなったこの場所は。
政宗の口へと運ばれる野菜を育てるという表の顔のほかに、時々人目を忍んで逢瀬を重ねる裏の顔を持つこととなったのは、また別の話である。

日曜日の放送を見て、突然に書きたくなった話(苦笑)。
あの畑はこういう風に使われていればいい、なってね。
(たまには『人目を忍んで…』というシチュエーションも楽しみたい)


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