人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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181.純情の欠片【戦国BASARA:小政】

重厚な造りの大学図書館。
最高学府の知的集積所とも呼べるそのカウンターに気まぐれに座っている超絶美人司書に出逢えたらその日はラッキーなことがある───などという噂が学生達の間で実しやかに流れているという。

研究費で注文していた専門書が届いたというので受け取りに小十郎が附属図書館のカウンターへ出向くと、其処には噂の美人司書ではなく、少し年配の女性司書が鎮座していた。
「あら、片倉先生」
愛想の良い女性司書に「どうも」と挨拶をする。
噂のひとは滅多にカウンターに座らないから出逢えること自体が稀少で、だからこそ『ラッキー』という…まあ、一種のジンクスなのだろう。
カウンターにこそ座らないが、館内にはちゃんといて普通に配架業務等もこなしているから、館内を歩いていれば何処かで見かけることもあるだろうに、忙しい学生達は館内を隈なく探すほどの根性を持ち合わせていないらしい。
お蔭で──もちろん、教員だって忙しい──己は助かっているのだが。
「注文していた本ね。届いていますよ」
そう云い置いた彼女はカウンターの奥に移動し、貸出用の本が並べられた棚とは別の棚から目当ての専門書を取り出して戻って来る。
研究費での書籍購入は基本的に図書館へ依頼することになっている。納品されると図書館から研究室に連絡があって、こうしてカウンターに受け取りに来るシステムだ。
強面の見てくれに反して本好きなこともあって、小十郎は図書館へ顔を出すことが多い。その所為か、図書館の職員は殆ど顔見知りでもあった。
だから。
「伊達君なら今日は3階で配架作業よ?」
「はあ…どうも」
(まるっきり俺もそこいらのガキどもと同列に扱われているみてぇだな、これじゃあ)
此方が催促した訳でなし、親切心からか。彼女はにっこりと笑ってそう教えてくれる。
様々な意味合いを以てとりあえずは彼女に礼を云い、小十郎は穏やかな陽光が頭上から射し込むアトリウムの脇の階段から3階へ向かった。
禁持出の貴重な書籍や専門書が配架されている2階に比べ、3階は万人受けするようなものが多く置かれている。大学図書館だが、この階を見る限りは所蔵されている本に関して県立や市立の図書館と然程変わりない。
4階も似たような造りだが、此処には自習用に個室スペースがあって、レポートの時期ともなれば常時満員御礼である。
試験期間でもないこの時期、フロアにいる学生の姿は疎らだ。精々が空き時間を利用して自習をしている者か、休講か何かで時間潰しをしている者くらいだろうか。
広いフロアの端から端までズラッと背の高い本棚が並び、宛ら林のようではあるが、その中で目的のひとを見つけるのは存外容易かった。
カラカラと配架用のカートを押している彼は、背表紙に貼られたシールの番号を確かめながら、順番にカートの本を本棚へ仕舞っていく。
あまりに真剣に作業をしているので──そういえば何事にも没頭するタイプだ──、つい声をかけるタイミングを計りかねてしまう。
どうしたものか躊躇っていると、彼がカートから厚みのある本を引き抜いた。どうやら眼前の本棚の最上段に収納するつもりらしい。
(危なっかしいな)
片手でぶ厚い本を持ち、手が届きそうで届かない───そんなもどかしい位置へ仕舞おうと背伸びをする。
だが、厚みがあるためにそれに比例して重さもあるその本の所為でバランスを取るのが大変で。
ぐらり、と重心が後ろに傾いでバランスが崩れる。うわっ、と小さいながらも声を発してしまったのは、本能的だろう。
「大丈夫、ですか?政宗様」
「こじゅうろう?」
間一髪。
慌てて駆け寄った──消音効果のあるフロアカーペットで助かった──小十郎は、バランスを崩して後ろに倒れ込む前に抱きとめる恰好で背中を支えてやることに成功した。
ホッと安堵していると、彼───超絶美人司書と学生達に評されているところの伊達政宗が緩く瞬きながら小十郎を仰ぎ見た。
「Thanks.助かったぜ」
当たり前のようにその背を支えながら、政宗に代わってぶ厚いその本を本棚の最上段に仕舞う。小十郎は彼よりも頭ひとつ分背が高いので、労することはない。
「今日はカウンター業務じゃなかったんですね」
「うん?ああ…この前選書したヤツの配架準備が整ったからな、さっさと配架しちまおうと思ってさ」
でも、なんでだ?
自分がカウンター業務じゃなかったことを残念がるような物言いに聞こえたのだろう。政宗は怪訝そうに首を傾げて、小十郎を見た。彼は観察力に長けているが、殊自分自身に関しては疎いところがある。
「俺が購入依頼を出している本が納品になる日は、いつもカウンターにいるでしょう?」
「───っ?!」
政宗を政宗足らしめる強い光を湛えた瞳が狼狽えたように見開かれ、それから目許にサッと朱が走ったのを小十郎は決して見逃さない。
「そ、そ、そ、そんな…べ、別にそういう訳じゃねェ…よ」
ひどく狼狽えるのを取り繕うようにわざとらしくそっぽを向いて、やや乱暴にカートを押す。
そんな様を可愛らしいと思って、つい小十郎がくすりと小さな笑みを零すと、すぐに見咎めてキッと睨みつけられた。
政宗は気まぐれにカウンターに座っているように見えるが、注意深く観察すればちゃんと法則に則っている。
その法則が、『小十郎が購入依頼を出した本の納品日』である。
納品されたという連絡を貰った小十郎が受け取りにカウンターへ来る日。その日は必ず政宗がカウンターに座っているのだ。
なので、当然今日もそうだろうと思っていたのだが、当の本人はどうやら配架業務に夢中だったようだ。
「まあ…いいですけどね」
「Shit!」
負けん気の強いところがある政宗だ。やり込められてしまったことが面白くないのだろう。
「お前が好きそうなヤツを選書してやったけど…もう知らねェっ!」
「政宗様?」
「配架準備ができたら一番にお前に貸し出してやろうって思って避けといたけど…もう知らねェっ。選書コーナーに置いてくる!」
政宗は小十郎の好みをよく知っている。その彼が『小十郎の好きそうな本』と云うのだから、間違いなくそれは己の琴線に触れるものだろう。
その本が小十郎の手に渡らず選書コーナーに配架されるとなれば。その本はかの〈美人司書〉サマが選書したということでプレミアとなり、常に学生達へ貸出中となってしまう。小十郎の手許にやってくるのは果たしていつになることやら。
流石に少々意地悪が過ぎたか。匙加減が微妙なのだ。
小十郎は反省する。
「政宗様、」
「ンだよ」
「せっかくの貴方の心遣いだ。是非俺に貸して貰えませんかね?貴方が俺のために選書してくださった本、を」
「Hum…どうするかなァ、」
此方が下手に出ると、形勢逆転と見て取ったか政宗は先ほどまでのむくれっ面をくるりと変えて、思案顔を作ってみせる。
暫し「うーん、」とわざとらしく唸った彼は、やがて好からぬことを思いついたのか、悪童のようにニイッと口の端を引き上げた。
「そこでちょっと待ってろ」
「───は?」
命令口調で突然そう云われ、小十郎は目を瞬かせた。不思議そうに見下ろす小十郎の眼前にびしっと人指し指を突きつけて、もう一度「いいから待ってろっ!」と強い口調で命ずると、彼はカートを曳いてその場を離れてしまった。
(一体どうしたんだ…?)
気まぐれな性分はいつものことなのだが。
一旦その場を離れた政宗は、すぐに戻ってきた。今度は配架カートを曳いていない。
「政宗様…?」
カートはどうしたのだ?と問えば、上の階で同じように配架作業をしていた同僚が配架を終えて下りてきたので、そこを捉まえてカートごと押し付けてきた、と悪びれずに答えた。
その答えに呆れる小十郎の二の腕を掴み、ぐいと引っ張る。
「政宗さま、」
「貸して貰いてェんだろ?だったら、ちいと付き合え」
「付き合え…って、ちょ…っ」
ぐいぐいと引き摺られ、連れて行かれたのはフロアの奥、スタッフエリアだった。
いくつかの個室に分かれた其処は、それぞれが書庫となっている。突き当たりは非常階段だ。
政宗はその一番奥の部屋のドアを乱暴に開けると、小十郎を引き摺り込んだ。
「な…っ、政宗様?!」
くるりと反転して、今度はドアを背中に政宗が立ち塞がる。
「此処は一番使用頻度が少ねェから安心しろ」
ふふ、と嗤う。
緩く撓む瞳は───どうやら悪戯を企んでいるようだ。
彼の瞳は饒舌である。
「小十郎、さっきの話の続きだ。俺の機嫌を直してくれたら…貸してやってもいいぜ?お前好みの本」
「やれやれ、そいつは面倒な…。さて、どうすれば貴方の機嫌を直せますかね、司書さん?」
「Ha!そんなの自分の頭使って考えろ。………なあ、片倉センセイ?」
優秀なのは伊達じゃねェんだろ?
クスクス笑いながら鼻先が触れるくらいに顔を近づけた政宗は、煽るように囁いた。
「どうしますかねえ?機嫌を直す方法といっても……俺は生憎と恋人の機嫌を直す方法しか知らないんですよ」
司書さんの機嫌を直す方法までは…と嘯けば、間近に迫った政宗の顔がみるみる赤くなった。
「政宗さま?どうしました?」
「テメエ…っ、楽しんでるだろっ」
「楽しんでるなどとは…また人聞きの悪いことを仰る」
整った顔がすぐ目の前にあるのをいいことに、小十郎はちゅっ、と秀でた額にキスをした。
すると、政宗の顔がますます真っ赤になる。
「Damn it!好きにしやがれっ!テメエの<恋人>が機嫌損ねてんだっ、直すのは得意だろっ」
「…ええ、得意ですよ?」
焦れったそうに吼えた政宗に苦笑で応えた小十郎は、彼の腰に腕を廻してそっと引き寄せた。



現パロの…いつものシチュエーションではないふたりに挑戦です。
大学教員(准教授)小十郎×大学附属図書館司書政宗。
ちなみに、この大学の図書館は私の母校のものと職場の図書館がイメージです。
確かこういう構造していたよなーと思い出しつつ。
一応司書免許を持っているんですけど、持っているだけで知識は殆ど忘却の彼方なので(苦笑)、司書のお仕事については深く掘り下げておりません。
このふたりの設定を考えるのは楽しかったです。

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