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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

斬~闇を継ぐ者~

僅かに顔を上げれば、切なげな瞳を揺らして此方をじっと見つめる小十郎がいて。
せっかくのnice guyが台無しだな…とやや困ったように苦笑を浮かべた政宗は傷の這う彼の左頬を愛おしげに撫でる。
言葉にせずとも離れ難く思ってくれているのだ。共に添える時間を政宗が少しでも引き延ばそうとしているように、小十郎もまた。
そう考えると、政宗の胸にもまた切ないものが溢れてくる。
「Hey,なんてぇツラしてんだ。いつもの…男臭くて不遜なツラの方が俺は好みなんだがな」
「政宗様…、」
茶化すように告げた政宗の言葉に、小十郎はやっと切なげな表情を解いた。
東日本の極道の頂点に立つ伊達組、その直系の若頭補佐である小十郎と警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第四課、通称『マル暴』に属する警官の政宗。決して相容れない〈世界〉に棲む者同士が、比翼の鳥、連理の枝の如く互いを対の者と認め、身も心も結びつく関係となって久しい。
其々の〈世界〉に戻れば立場のある者ゆえ、ひとときの逢瀬は二人にとって得難く、そして濃密なものだった。
だからこそ、こうして再び其々の〈世界〉に戻らなければならない時間を迎えると、まるで子供が駄々を捏ねるみたいに『このままずっと離れたくない』と思ってしまうのかもしれない。
「どうかくれぐれもお気をつけください、政宗様。何処に豊臣の者が潜んでいるやもしれません。本来ならば、今暫くはこうして共に一夜を過ごすことも控えるべきなのでしょうが…」
東日本最大の勢力を誇る組織は伊達だが、対して西日本を制しているのは豊臣秀吉率いる豊臣組である。長年続いていた織田信長との西の覇権争いに織田が敗れる形で終止符が打たれ、西日本は豊臣が掌握した。
現在、裏社会の勢力図は『東の伊達、西の豊臣』となっているが、それに飽き足らず豊臣は東へと版図を伸ばしてきたのだ。
西の足場を固め、いよいよ東へと進出を図る豊臣の意図はただひとつ。伊達を潰し、名実ともに裏社会の天下統一を為すためである。
豊臣秀吉が東へ目を転じた、という情報は大阪府警に属する同僚を通じて政宗も早くから掴んでいた。
蛇の道は蛇、というが、小十郎もまた己の情報網を使って豊臣の動向を探っている。
幸いまだ戦端は開かれておらず、鉄砲玉が送り込まれた気配もない。しかし、おそらくそれも時間の問題だろう。
日々緊張だけが強いられるそんな中で。
政宗が掴む情報と小十郎が掴む情報、それらを基にして豊臣に対する伊達の備えは着々と進められていた。
「オイオイ、本気で云っているワケじゃねェよなァ?この俺に一人寝を強いる気か?…お前仕込みのこの躰が淋しがって泣くぞ?」
「政宗さま、」
半ば冗談めいた婀娜な言葉を小十郎に窘められ、政宗は小さく首を竦めた。
豊臣のやり口は汚いうえに狡猾と聞き及んでいる。おそらく、彼らは伊達の一番弱いとされる部分を衝いてくるだろう。
伊達にとっての弱点は『政宗の存在』だ。公にされていない伊達輝宗の実子。
戸籍から辿るにしても別な方向から辿るにしても、伊達と政宗の真の関係を露見させるのは簡単なことではない。普通ならば、まずあり得ないだろう。
それほど〈伊達政宗〉という存在は、様々な者の手によって巧妙に隠されているのだ。
だが、小十郎が情報網を駆使して政宗を探し当てたように、豊臣もまた己が情報網を使って政宗に辿り着くとも限らない。その時に狙われるのは、間違いなく政宗だ。
だからこそ、小十郎は政宗を護るために敢えて逢瀬を控えるべきと苦言したのだろう。
政宗を護るために政宗に伊達の匂いを纏わせてはならない。ほんの僅かでも小十郎と繋がっていると、まして恋人なのだと匂わせてはならない。
それは小十郎の気遣いだ。
「No problem.俺の方は心配すんな。それより…お前の方こそ気をつけろよ?」
「判っております」
頷いた小十郎は、政宗の腕を掴むとぐいと引き寄せた。
難なく小十郎の広い胸に落ちる。
「小十郎…」
優しいキス。
そうして二人は、名残を惜しむかのようにいつまでも抱き合った。


まるで───そう、此岸と彼岸。
隔てる扉ひとつで、眼下に眺める〈世界〉とは全く異なる〈世界〉。其処に在る間だけは、立場も柵も何もかも忘れて唯人であれる。唯の政宗として小十郎に寄り添うことができるのだ。
人目を避け、制限された一瞬の逢瀬を窮屈だと思わないといえば嘘になる。
惚れ抜いた男と終生番うためならば何もかも捨ててやる───そうできればいっそどれだけ良かったかしれない。しかし、それは政宗の複雑な立場が許さなかった。
〈世界〉を隔てる扉。なんの変哲もないそれを潜って此岸に戻ってしまえば、惚れた男の手練手管でどれほど乱され、何度極楽を見ようと、その扉を開いて一歩踏み出してしまえば、それまでの甘い空気など微塵も身に纏わせない。
小十郎もまた同じだろう。彼もまた自身が背負う立場に従い、この街に巣喰う〈闇〉へと戻っていく。
(だが…それでいい、)
2日ぶりにホテルのエントランスに立った政宗は、朝日の眩しさに軽い眩暈を覚えた。
前日は非番だったので前々日の夜にチェックインしたのだが、昨日は二人して日がな一日ベッドに籠っていたので、考えてみれば陽光を浴びるのも2日ぶりだ。
不健康な生活だな、と思わず苦笑いをしてしまった。
だが、充分に愛された所為か気力は充実している。
「一旦戻ってシャワー浴びてからでも登庁時間に間に合うな」
欠伸を噛み殺しつつ、ジャケットの内ポケットから携帯を取り出す。
職務上、非番であっても常時携帯の電源は入れておかなければならない。非番であってもいつ呼び出されるか判らないからだ。せっかくの逢瀬も、過去何度かそれで潰れたことがある。
小十郎は勿論それを承知の上で『無粋だ』といって時々拗ねるのだが、その度に警察官を恋人に持ったのだから諦めろ、と笑って言ってやった。
幸い『無粋な着信』はなかったが、メールが何件か入っていた。懇意にしている情報屋からのものだ。
(豊臣が…?)
文字を追いかけるにつれ、次第に表情が険しくなる。

───豊臣組の先発が既に都内に潜行した模様───

「Shit!」
いよいよ来たか。
(小十郎にも知らせねェと…)
と思った瞬間。
「───っ?!」
一片の気配すら感じとれなかった。殺気ひとつ。
気配にひと一倍鋭い政宗が察することができなかったのだ。
背後にも一人。
背中に何か押し当てられている。拳銃か、それとも短刀か。
「朝から随分物騒なモンを衝きつけやがって…テメエら何モンだ?」
眼前の男──綺麗な造作をしている──に向かって低く誰何する。
「最上───いや、伊達政宗君だね?」
(コイツ…何故「伊達」の名を…)
それは秘されているものなのに。
「何故「伊達政宗」の名を知っている…っていう顔だね?」
───まさか?
「豊臣、の者か?」
「察しが良くて実に助かるよ、政宗君。」
ふふ、と笑みを浮かべて、男は自らが豊臣の者だと肯定した。
「僕の名は竹中半兵衛。秀吉の片腕を務めている」
豊臣秀吉の片腕。ということは、実質NO.2が乗り込んできたということか。
「で?その豊臣の片腕が何用だ?」
ギッと睨みつける。すると、呼応するかのように背後から殺気が立ち上った。
「三成君、」
背後で拳銃か短刀を衝きつけている三成という男は竹中の命には服従なのか、再びスッと気配を引っ込めてしまった。
「そう警戒しないで欲しい。今回はただ挨拶にきたまでのことだから」
「Ha!西の人間は挨拶代わりに物騒なモンを衝きつけるのか?」
「相手が丸腰とは限らないだろう?一応此方としても用心しないとね」
なるほど、竹中半兵衛は慎重な男でもあるようだ。
「何もしないよ、今回は。本当に挨拶に出向いたまでだからね」
東の〈伊達〉が頑なに隠し通すことで護ろうとする〈伊達政宗〉という存在を、一度この目で見てみたいと思っていたんだよ。
クスクスと竹中が嗤う。耳障りな笑い声だ。
「云っておくが、竹中半兵衛。俺は〈伊達政宗〉じゃねェ。〈最上政宗〉だ」
だが、竹中は嗤うばかりで政宗の言葉を聞こうとはしない。否、端から拾おうとはしていなかった。
「また、逢おう。〈伊達〉政宗君」
「テメエっ!」
政宗の眼前で竹中はヒラリ、と身を翻した。

(───小十郎、)

ギリ、と唇を噛む。
その時。
突然手にしていた携帯が鳴りだした。
のろのろとディスプレイに目を遣れば、小十郎の名前が表示されている。
「小十郎…?」
なんというタイミングだろう。
「政宗様?政宗様、どうしました?」
「小十郎───」
それまで己がどれだけ緊張していたのか。
小十郎の声を聞いた瞬間に政宗の全身からどっと力が抜けた。
らしくもなく、ほうと安堵の吐息が唇から洩れる。
「政宗様?」
「No problem.なんでもねェ、お前の声を聞いたらなんか…ホッとした」
豊臣の二人が去った方向を睨みながら。
「小十郎…、」


あれが〈伊達〉の敵、なのだ。







お盆休暇中に何ひとつ書き終わらなかった人なんですが。
休暇明けで仕事が始まったものの…電話もなくメールもなく、なんか手持ち無沙汰な時間ができてしまったので、じゃあと思いついていたネタを起こしてみました。
先日お誕生日月間リクで書いた「闇を継ぐ者」の続きです。
この二人の話はまだいくつかネタがあるので、また折をみてアップしていきたいと思います。
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