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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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325.沈みゆく夏【戦国BASARA:小政】

耳にする、ただそれだけでも体感温度が上がりそうな五月蠅いほどの蝉時雨。
照りつける真夏の太陽に晒されて、緑は目にも鮮やかに生き生きとしているけれど、その緑の間を吹き抜けてゆく風は肌に纏わりつくように温く、お世辞にも心地よいとは云えない。
それがまたこの不快な暑さを倍増させるのだ。
(暑ちィ…、)
襟の袷を大きく寛げて忙しなく扇子で風を送り込むのだが、如何せん温い空気だから少しも涼しい心地にならない。それどころか、ますます暑くなって汗が吹き出る始末で。
チッ、と行儀悪く舌打ちをした政宗は、少しでも涼しくしようと開け放った室内をぐるりと見渡し、何処かに僅かでも涼しいポイントはないものかと考えた。もちろん、その間も気休めに扇子を扇ぎ続けている。
(今日は賄いに云って、夕餉に精のつくものを出すか…)
この暑さである。政宗に限らず、城内の者達は軒並みバテているだろう。
暑さ負けしていないのは小十郎ぐらいだろうか。彼は今、伊達軍の若い衆を数人連れて炎天下の畑へ作業に出掛けている。
この天候で夏野菜の育ちが良く、収穫を疎かにしているとすぐに大きくなりすぎてしまうのだという。大きくなりすぎた野菜は味も大味になってしまい、かえって美味しくないと云っていた。だから、この暑さでも畑に出向いているのだ。
小十郎の目が光っていないため、政宗もこうして着物を着崩し、あられもない恰好をしていられる。もし今此処に小十郎がいたら、伊達の当主らしからぬ恰好を『いくら暑いからと申せ、斯様なはしたない恰好で!』と目くじらを立て、懇々と説教されるだろう。となれば、否応なしに暑さも倍増だ。
「あー、暑ちィ…」
いっそ川へ水浴びにでも行こうか。そうすれば、多少は涼しくなるかもしれない。単身で出掛けるのは小十郎に知れた場合にまた説教されそうなので、この暑さの中でも比較的まだ元気そうな成実あたりを誘えばいいだろう。似通った性格の従弟のことだ。誘えば、一も二もなくノッてくる筈。
そうとなったら善は急げで。
パチン、と膝上で扇子を閉じた政宗は。
「成ー、いるかー?」
まずは従弟の姿を探そうと立ち上がった。


どんなに暑くても、やはり水辺は涼しいものだ。
「お、小十兄だ。おーい、小十兄」
浅瀬で膝まで水に浸かっていた成実が小十郎の姿を目に留めるや、大きく両手を振ってみせた。
「政宗様が涼みに来ていると訊いたが?」
「うん、梵も一緒。というか、梵が言い出しっぺだからねぇ」
とはいえ、ぐるりと辺りを見回しても政宗の姿が見えない。
「成実?」
「大丈夫だよ、小十兄」
小十郎の表情で察したのだろう成実はそんな小十郎を笑い飛ばして、あそこにいるからと少し下った辺りの川岸を指差した。
「ちょっと前まで派手に遊んでたんだけどさ、疲れたっていうんで今はあそこで寝そべってるよ」
よほどはしゃいだのだろう。
(まあ、この暑さだ。無理もねぇ、か)
やれやれと肩を竦めた小十郎は成実の許を離れ、彼が指差した川岸へと向かった。

ぱしゃんと時折気まぐれに水面を蹴り上げながら、政宗は少しばかり疲れた半身を水中に沈めていた。
あれほど不快だった体内に籠った熱は、全部水が奪ってくれたため今は感じられない。このままずっと此処でこうしていたいという心地にさえなった。
政宗がいる川岸は浅瀬で、立てば膝下ぐらいまでしか水深がない。そんな場所で下半身を水中に置いて、仰向きで寝そべっていた。
(気持ち、いい…)
ふう、と息を吐いて更に身を水中へ滑らせようとする。
流れに身を任せてずるずると身を滑らせたので、肩のあたりまですっかり水に浸かっている。
いっそのこと潜ったらもっと気持ちいいんじゃないか?
ふとそんなことを考えた政宗は、思い浮かんだ考えにクスリと笑みを浮かべると、そのままちゃぷんと頭まで水中に沈めてしまった。
水中から仰ぎ見ると、水面が陽光を反射してキラキラと眩しい。
綺麗だなと左眼を細め、それからゆっくりと瞼を下ろす。不思議と心が鎮まって、このまま身を任せているのも悪くないと政宗は思った。
(だって、気持ちいい───)
水の中。
キラキラ、と。
その時だった。
突然水面が揺れ、割って入るように逞しい二本の腕が伸びたかと思えば、もの凄い勢いで躰を水上へ引っ張り上げられた。
「政宗様っ」
「…こじゅう、ろう?」
こんな浅瀬で政宗のような酔狂をした訳でもあるまいに、ずぶ濡れになって大層慌てた表情で己を支えてくれている小十郎の姿を政宗はきょとんとした面持ちで見上げた。
「政宗様、大事ありませんかっ」
「Hey.どうした、小十郎?」
「どうしたではありません!突然水中に沈んでしまわれたので…もしや御身に異変がと」
緩く目を瞬かせた政宗は、だからこんなに焦った表情をしているのかと苦笑を浮かべて。
「別にそんなんじゃねェよ。ちィとばかり水中が気持ち良かったからな」
途端、「政宗様っ」と強く窘める声が降ってきて、反射的に首を竦めた。
己のとった行動にかなり腹を立てているらしい。
「小十郎の肝を何処まで冷やすおつもりか!」
「悪かっ、た」
「悪かったではありませんっ!」
頭上に雷を落とされた政宗は更に小言を繰られるかと身構えたのだが、意外にも小十郎はそんな己を抱き寄せると強く抱きしめてきた。
「小十郎…?」
良かった、と吐息とともに密やかに吐き出された小十郎の言葉を耳に留めた政宗は小さく笑むと、小十郎の広い背中に緩やかに腕を廻して宥めるように優しく撫で上げた。
小十郎のことだ。かなり腹を立て、同じくらいに心配したのだろう。
「なんだよ、小十郎。お前、ずぶ濡れになっちまってるぞ?」
水も滴るなんとやら、だと軽口を叩いてやる。
「構いません。どうせこの暑さだ。すぐに乾きましょう」
「Ha!違いねェ」
なら、二人してとことんずぶ濡れになってみるか?
にやりと口の端を引き上げて提案してみたが、流石にこれには顔を顰められた。せっかく手にした手綱を放すつもりはないらしい。
だが、すぐに「まあ、いいか」と思い直した政宗である。
「これも負けねェくらい気持ちいいし…」
「政宗様?」
怪訝そうに覗き込んでくる小十郎。
水底に沈んだ時も気持ち良かったけれど。
小十郎の温もりと匂いに包まれている今は───ずっと、ずっと気持ちが良いのだ。


そんな二人の遣り取りをやや離れたところから眺めていた成実は。
「あーあ、暑いったりゃありゃしない」
と半ばうんざり気味に呟いたのだった。



暑いですね。
連日の猛暑で溶けそうなんですが…(苦笑)。
せめて気分だけは涼しくいきたいよなぁという思いから浮かんだお話です。


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