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人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

長寿を願う【戦国BASARA:小梵】

「こじゅろ…?」
梵天丸は庇護者である──庇護とはいえども決して優しいばかりではないのが少々難点だが──傅役の姿を探していた。
子供である梵天丸から見れば大きくて逞しい小十郎は、傅役ゆえに常に梵天丸の傍に在って、その所為か時として鬱陶しく感じることもあったのだが、傍にいなければいないでその姿を探してしまう。
天邪鬼な梵天丸はその天邪鬼な性質が邪魔をして小十郎の前では素直になれないのだが、彼のことが好きだった。
「こじゅろ?」
実のところ、梵天丸は小十郎が立ち寄りそうな場所をあまりよく知らない。考えてみれば、己の傅役なのに知らないことばかりだ。おそらく向こうは己のことを短期間で知り尽くしているのかもしれないが。
小十郎はどこだろう?
彼が己の傍にいないという事実に勢いだけで探しに出てしまったが、広い城内では見当もつかない。子供の足で闇雲に探すのでは、流石に疲れてしまうだろう。
こんなことなら喜多に小十郎が立ち寄りそうな場所を訊いておけば良かっただろうか。
「…どこにいるんだ」
ぱたぱたと方々を歩きまわった梵天丸は、偶然に台所の前を通りかかった。どうやら探し回っているうちに、いつの間にか賄い方まで来てしまったらしい。
伊達家の嫡男である梵天丸は、賄い方に立ち入ったことはない。料理好きが高じて、後年自分専用の台所を城内に作ってしまう彼だが、流石にこの頃は台所など眼中になかった。
ただ、『城内で立ち入ったことがない場』としての興味はあったが。
戸口からひょこりと顔を覗かせる。
無論、此処にも小十郎はいなかった。小十郎はいないが、代わりに賄い方の女が複数いて。
一人の若い女を取り囲むようにして談笑している。どうやら中央にいる若い女が宿下がりをするようだ。
『じいさまにお酒を買って帰るの』
『お酒は長寿の薬というものねえ。お宿下がりの間にたんと孝行しなさいな』
『ええ。大好きなじいさまには元気で長生きしてもらいたいもの』
(───長寿の薬?)
彼女たちの会話を耳にしながら、梵天丸はどんぐりのような左眼をぱちぱちと瞬かせた。
(ふうん。父上が夕餉の時にお飲みになっている〈お酒〉とは長生きの薬なのか)
あれを飲めば、長生きできるというのだろうか。
だったら。
「梵天にも酒を分けてくれんかっ」
「まあ、若様」
突然現れた嫡男である若君に彼女達は一様に驚いた顔をした。
「酒は長生きの薬なのだろう?ならば、梵天も酒が欲しい」
隻眼という異相のために、一時期は城内の者から腫れもののように扱われていた梵天丸だが、小十郎を傅役に据え、梵天丸が世界を閉じる元凶となった潰れた右眼を抉り取ったことで、生来備えていた利発さが戻り、今では周囲が手を焼くような少々やんちゃな子供に育っている。
その様を微笑ましく見守る者はあっても、腫れもののように扱う者などいない。
現に彼女たちは主筋の若君を温かく迎え入れてくれた。
「若様にはまだお早いですよ?殿がお召しでございますか?」
「父上ではない」
「では、どなたが?」
「小十郎だ!酒は長生きの薬なのだろ。梵天は小十郎に長生きして欲しいっ!」
思いの丈を吐き出したような梵天丸の言葉を聞かされ、彼女たちは一瞬目を丸くした。が、すぐにさざめくような笑い声に包まれる。
「まあ、片倉様にですか」
確認するように問われて、梵天丸は強く頷いた。
にこにこと微笑む彼女たちは、それならばと徳利を用意してくれた。天邪鬼な梵天丸の傅役に対する想いを汲んでのことだろう。
「どうぞ、若様。こちらを片倉様に」
「ありがとう」
パッと幼い顔をいっぱいに輝かせた梵天丸は徳利を受け取ると、大切そうに両手で懐へ抱え込んで再び傅役を探しに戻ったのだった。
それから何処をどう探し歩いたのか。
「小十郎っ!」
漸く梵天丸は目当ての人物を探しあてた。
梵天丸の姿を認めた小十郎は「梵天丸さま?!」とやや慌てた表情で走り寄ってくる。どうしたのだと問えば、小十郎も急に姿の見えなくなった梵天丸を探していたのだという。
梵天丸にすれば先に己の傍からいなくなった小十郎の方が悪いのだが、それを口にすればせっかく心配顔の小十郎が鬼に変わりそうな気がしたので、敢えて噤んでおくことに決めた。
なににせよ、お互いにお互いを探してすれ違っていたということだ。
「そうだ。小十郎、これ」
「これ…とは?」
怪訝そうに首を傾げる小十郎の前に、大儀そうに持ち歩いていた徳利を差し出した。
「酒だ。小十郎にやる」
「小十郎に酒とは…またいきなりどうしたのです?」
「酒は長生きの薬なのだろ?賄いの者たちが云っていた。だから小十郎にやる」
これを飲んで絶対長生きしろ───とは舌が絡んで上手く云えなかったけれど。
「梵天丸さま……」
どうやら想いは伝わったらしい。
小十郎の表情を見れば判る。梵天丸は急に面映ゆくなってしまって、顔を顰めるやプイとそっぽを向いた。
「…ありがとうございます」
「お、おう」
小十郎が大切に胸に抱えるのを横目で盗み見て、梵天丸は小さく頷いた。



お題配布元:color seasonさま





秋のお題をお借りしているんですが、「長寿を願う」というと…これは敬老の日ですか(苦笑)?
酒は百薬の長と申します。
長生きの薬ということで、小さな主は傅役に長生きしてもらいたいんですね。
尤も、小十郎としてはこの頃からずっと苦労と心配が絶えないので(苦笑)。
もう少し自重していただくと云々…とかぼやきそうです。
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