人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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333.空が色を変えて【戦国BASARA:小政】

明けを告げる鳥の声が微かに聞こえる。
まんじりともせずに夜明けを迎えた小十郎はゆるゆると長い溜息をつき、膝上で固く握りしめた拳を解いた。指先が僅かに痺れている。
襖で隔てられた向こう側、主の寝所に感じられる気配はひとつ。小十郎は細心の注意を払って静かに襖戸へ手を掛けた。
「…政宗さま、」
ややあって掠れた声で応えが返ってくる。入れ、という政宗の落ち着いた声にどこか安堵している己がいた。
「政宗様」
辺りに視線を巡らせた小十郎は、寝所に在るのは政宗ひとりだと知っていて敢えて「…帰られたのですか?」とだけ訊ねた。
「ああ…夜が明ける前に、な。夜が明ければ俺達も軍を動かさなきゃならねェ。その前に自陣に戻って出迎えの準備をしておくだとさ」
相手は仮にも大軍を統べる総大将だ。時迫る今、総大将が単身で易々と身動くことはできまい。それを承知のうえで本懐を遂げに忍んできたのである。
「こんな戯れごと如きで本懐を遂げたつもりかどうかは当人のみぞ知ることだがな。まあ、俺達の合流を何喰わぬ顔して出迎えることだろうよ」
たった数年でとんだ喰わせものの狸に化けたもんだ、と政宗は可笑しそうに笑った。
暁光の薄明かりに浮かび上がる白皙の貌は疲労の色が濃い。きっちりと正絹の単衣を纏ってはいるものの、気怠げな表情には隠しきれない色香が滲んでいた。
名残といえばそんな政宗と、寝乱れた褥が生んだ波ぐらいなものだろう。
やや顔を俯けて政宗から逃れた小十郎の、噛みしめた奥歯が軋む。
政宗は小十郎のことを“ズルイ男だ”と詰るが、政宗の方こそ狡いひとだと思う。
狡くて───そして、優しい。
小十郎を己が半身としてその身に深く繋げておきながら、その一方で他者に身を委ねる真似をする。
もちろんそこに誠意があることは小十郎とて理解している。求められてたとえ身を奉げる真似をしても、心までは相手に渡さない。心を渡した相手は現在も過去も未来もただ一人と決めている、と乱れながらも毅然と言い放つ。そういうひとであることを理解している。
そう。
彼の本質はとても優しいのだ。苛烈な猛々しさが際立って、人は目晦ましされるだろうけれど。
「小十郎、」
政宗は小十郎に向けて両腕を伸ばした。
「…よろしいのですか?」
そう静かに問えば、一瞬迷子の子供のような表情をした彼は困ったように笑って。
「お前が…赦してくれるのならな。それとも他の男が触れた俺に触れるのは嫌、か?」
「…いいえ、たとえどのようなお姿であろうと小十郎が欲するは貴方様のみです」
どこまでも狡くて残酷で優しいひとだ。己が決して拒まないと知っていて。
首を横に振った小十郎は両腕を伸ばす政宗の前へと膝を進めると、左手でその手を取り、右手を腰へと回して己の方へと引き寄せた。
「アイツもな、石田との合戦をテメエの中で踏ん切りをつけたいんだとよ。心はくれてやらねェぞって言ってやったんだが…アイツ、笑って『それでもいいんだ』って言いやがった」
そんな風に言われて、そこまで求められたらな…と弱い呟き。
「政宗さま…」
こつんと額を小十郎の胸板に当ててじっとしている政宗の背を労わるように撫でてやる。
ふいに。
俯いた所為で露わになった政宗の白い項。奥州の白雪の上にはらりと緋色の花弁がひとひら落ちたかのような痕。
それは紛れもなく己以外の誰かが竜に触れ、その身に刻印を施した証だった。
目敏く鬱血の痕を見つけた小十郎は、それまで理性で抑えこんでいたどす黒いものが堰を切って溢れ出すのを感じた。
血の気が引いていく。
(あの野郎が………っ、)
そう思うと急に耐えられなくなり、我知らず政宗の首筋に噛みついた。
「こじゅ…っ、」
「あ…」
政宗の喉から小さな悲鳴が零れ落ちる。その頼りない、か細い悲鳴で小十郎は我に返った。
己の所業に激しく狼狽えてしまう。
「そうだ…そうだったな。お前は存外独占欲の強い男だった」
「政宗さ、ま」
「そうと知って尚、俺はお前に甘えている」
それでもお前が赦してくれるのなら。
政宗は小十郎に施された首筋の噛み痕を手で触れ、愛しげに撫で擦った。
「Don’t worry.案ずるな、小十郎。ただ一度限りの約定だ。二度目はねェ」
相手の想いに一度だけという約束で応えてやった。二度目はない。
二度目は許さねェよ、と小十郎の背に腕を回し直して政宗は言う。
「……そう願いたいものです」
総ては政宗の判断に基づいての行為だ。己以外の誰かに身を委ねるとしても、それが政宗の判断に因る以上、小十郎は口を挟める立場にない。冷静にわかっているつもりでも、そう何度も耐えられるものではなかった。伊達軍の軍師として、〈竜の右目〉として理解できても、片倉小十郎としては納得できない。
心を奉げてくれる愛しいひとなのだ。その愛しいひとが己以外の者に身を委ねるのを誰が諾と見守っていられよう。心を平静に保っていられよう。
「二度目はこの小十郎が許しませぬ。重ねて政宗様の御身をと望むなら、その時はこの小十郎が野郎の喉許を噛み切って差し上げる」
「Ha!お前らしい…」
従順を装った獰猛な獣を宿す小十郎を緩く左眼を見開いて見つめた政宗は、どこか満足そうに笑んでみせたのだった。



家政を書くことが続いていたので、ここいらで小政を(苦笑)。
とはいえ、名残でそこはかとなく家康の影があります…。
情人である前に臣であるという立場を弁えているので、こういうことになったらたぶん小十郎は黙って耐えるんだろうなあと思うんですね。襖ひとつ隔てて、不寝番も辞さない感じで。
弁えているように見せかけて、本当は独占欲の塊みたいな人でいいと思います。
きっと綺麗な感情ばかりではないと思うので。
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