人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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28.それで満足しましたか?【戦国BASARA:小政】

「あれー?梵、小十兄は?」
裁可を仰ぐ書状を抱えた成実は、従兄の傍らに常にいる筈の存在の顔が見当たらないことを怪訝に思い、小首を傾げて訊ねた。
戦が終わった直後で伊達軍内は忙しい。領地の仕置や褒美の算段などで政宗も多忙を極めていて、当然のことながらそんな政宗を補佐する右目も同様───否、主の負担をすこしでも軽減しようと政宗以上に多忙であると予想していたのだが。
仕置の関係で検分に出向いているのだろうか。そんな話聞いていないしなあ…と成実は思う。そんなことがあれば、ああ見えて心配性──なにしろ彼等の竜は奔放なので、否が応でもそうなってしまうのだ──な小十郎のことだ。僅かに政宗の許を離れるだけであっても「くれぐれも…」と彼が不在の間のことを成実あたりによくよく言い含めていくに違いない。だが、今回はそれがなかったのだ。
「小十郎?小十郎なら自室で自省の真っ最中だぜ?」
「───は?」
ほら、早く書状を寄越せと催促がましく手を伸ばす政宗に、慌てて書状の束を渡す。
「先の戦で俺の背中を護れなかった…って言いやがって、部屋に閉じこもって猛省してる」
腹を切るとか騒がなくなっただけだいぶマシになったがな、と書状に目通ししながら政宗は苦笑を浮かべた。
「え?でも掠り傷はともかく、梵に大きな怪我とかはなかったじゃん」
「まあな。俺の陣羽織が切られたから…それで悔んでいるらしいぜ」
「切られたって、そうなの?」
「An?切られたって言っても、ほんのちょっぴりだけどな。解れかどうかもわからねェっていうのをよく見つけやがる」
「あー、小十兄だからねえ…そこは」
さらさらと流れるように筆を動かしながら呆れ混じりに言う政宗に向かって、成実も同意した。小十郎は政宗のことに関しては怖ろしいぐらいに目敏いのだ。
筆を置いて、書状を成実に返した政宗は小さく息を吐き、凝ったらしい肩を揉み解す仕種をしつつ、「でもまあ…」と続ける。
「…アイツを休ませるためにはちょうどいいだろう?こうでもしなけりゃア、小十郎は一向に休まねェからな」
「梵?」
暗に含んだような政宗の物言いに何かを覚ったのか、成実は大袈裟に嘆息してみせた。このあたり言葉多くなくとも通じてしまうのは、兄弟同様に切磋琢磨した付き合いの長さゆえかもしれない。
「ねえ、梵。それって───ひょっとして確信犯?」
「さあな、」
目許を緩く撓ませて政宗は嗤った。


燈明皿に火を熾すことなく真っ暗な室内の中央で、小十郎は膝を崩そうともせずに瞑目していた。
空気の流れに変化が生じる。同時に鼻を擽った柔らかな香りは、常日頃主が纏うものだ。
「Hey,小十郎」
静かに障子戸を曳いた政宗は、まるで猫のようにするりと室内に躰を潜り込ませると、後ろ手で開いた時と同様静かに障子戸を閉めた。
「政宗さま、」
躰を捻って声のした方向へ向き直った小十郎は、両目を見開いて政宗を見た。光源のない暗い室内では、彼の表情までは窺い知れない。
「なにゆえ…?」
「いい加減に自省は済んだか?」
心得たように火を熾しながら問う政宗に対して、いいえと小十郎は俯き加減に頭を振った。
この程度の戒めでは全然足りない。許されるならば腹を切りたいぐらいなのだが、これは随分前に政宗から止められていた。厳命である。主の命ならば、臣として背く訳にはいかない。
では己への戒めに何が最も効果的かと考えた時に、辿り着いた先がこうして愛しい竜の許に伺候せず、竜の気配を断って自身が納得するまで部屋に籠ることだった。
竜の右目として常に傍らに在ることを許された小十郎にとって、竜自身から遠ざかることが一番の戒めだった。
だが、此度の蟄居はまだ三日と経っていない。
自身の心の有様を収めるには日が浅すぎる。
「やれやれ、今に始まったことじゃねエが…頑固なヤツだなァ」
まるで駄々を捏ねる小さな子供に向かって言うような口調で政宗は言った。返す言葉もなく、低頭するほかない小十郎である。
「政宗様の背を護るは小十郎の役目。その役目を小十郎が怠ったゆえに、政宗様をみすみすあのような危険に晒してしまい…」
「An?危険…ってほどでもねェだろう?あんなことは戦場に立ちゃア、日常茶飯だ。それに、陣羽織が切られた程度で俺自身怪我をした訳でもねェ」
「なれど…っ、」
「Stop!いい加減に満足しやがれ、この頑固者」
なおも言い募ろうとする小十郎を右手で制する。小言と自虐は耳触りで困る。延々と聞かされる方は堪ったものではない。小十郎はそのどちらも得意だから始末に負えなかった。
「政宗様!」
「数日程度ならお籠りも…まあ構わねェ。伊達の舵取りは成実達にも充分任せられるし、お前は少しくらい休めって言っても、ゼッテェ休まない男だからな。戦働きの褒美だと思えば納得もする。俺もそのつもりだった。だが、放っておけば際限なくいつまでも籠り続けるってのは困る。俺をその間ひとりにさせておくんだからな。人肌恋しくて仕方がねェ」

これは誰に対する戒めなんだか。
───なア、小十郎?

「政宗さ、ま」
鼻先を近づけ、それから掬い取るようにして小十郎の頬を両手で手挟んだ政宗は、啄むような柔らかなくちづけを施した。
「いい加減、そのくらいで満足しておけ。じゃないと、俺も堪え性がないから……慰めてくれる相手を探しちまうぜ?」
「な───っ、」
常ならば「冗談でも然様にはしたないことを口になさるな」ときつく諫めるところだが、政宗の行動力を考えると強ち口先ばかりではないから非常に悩ましい。
愛しい竜が己以外の者に僥倖を与えるなど───そんなことを受容できるほど小十郎は器が大きくないのだ。
「小十郎、」
促すように政宗が優しく───色すらも含んで優しく、囁く。
彼が衣に焚きしめた香りがふわりと舞った。
「…もう、いいだろう?」

───陥落する以外に、小十郎に道はなかった。




ぽん、と思い浮かんだので書き落してみました。
自己都合による反省小十郎と寛容な筆頭話です。
ウチの二人は、大概こうやって自省は強制終了させられるみたいです。

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