人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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227.真ん中には君が居た -1-【戦国BASARA:家政】

ふわりと出そうになる欠伸を幾度も噛み殺す──それでも出てしまうのは、寝起きなのだからもう仕方ない──政宗の手を引いて家康は天守に登った。
遮るものは何ひとつない高楼から見渡す景色は太陽の下でならば壮観だろうが、如何せん夜明け前だ。今時分が一番冷え込む頃合いで、高さも手伝って空気は刺すように冷たい。寒いからと言って家康は政宗に何枚も着物を着込ませたのだが、正直それでも寒かった。
「寒くはないか…って、やはり寒いよな?」
「An?」
生来負けず嫌いな政宗はこんな時でもやっぱり強がってしまって、なんでもない素振りをずっと決め込んでいたのだが、家康は容易に見抜いてしまったらしい。政宗が訝しげに片眉を跳ね上げると、家康はくすりと笑って
「鼻の頭が赤くなっている」
と指先で鼻頭をちょんと突いたのだった。
面白くないと政宗が小さく舌打ちする。そんな彼を見つめ、あははと軽やかに笑う、家康の息も白かった。
「これでどうだ?少しは温くなると思うぞ」
「ちょ…っ、家康テメエ…っ」
いきなり何しやがる、と狼狽える政宗の躰を家康は己の羽織を広げて背後から抱き込んだ。不意打ちに近い行為に最初こそ藻掻いた政宗だったが、冷えた躰にこの温もりはなんとも手放しがたく、結局おとなしく納まることを選んだ。これも家康の意図どおりかと思えば少しばかり腹も立つが、それより今は寒さの方が勝るのだ。
「大事な独眼竜に風邪をひかせてはならんからな。風邪でもひかせようものなら…ワシが右目殿に大目玉だ」
「Ha!小十郎が怖いなら、せいぜい俺を温めるこったな」
家康の羽織に包まるようにして首を竦めた政宗は、そんな憎まれ口を叩いた。すると、ここ数年で憎たらしいくらいに喰わせ者に成長した家康は、許しを得たとばかりに力強く政宗を引き寄せてくる。強引さに負けてちょっと俯いた時には露わになった項に口づけられたので、「調子に乗るんじゃねェ!」と家康の鳩尾に容赦なく肘鉄を喰らわせた。年下に好き勝手されるのは、竜の矜持が許さないのだ。
「相変わらず独眼竜は容赦ない…、」
「うるせェ。こっちは眠気と寒さを我慢してンだ」
イタタタと少しばかり大袈裟に政宗の仕打ちに痛がってみせた家康だったが、実のところそれほど堪えていなかったようだ。その証拠にどこか嬉しそうな口調である。暫く離れている間にそういう嗜好にでも目覚めたのか、と政宗はつい疑ってしまった。
〈魔王〉信長、〈覇王〉秀吉の手を経た乱世は、家康によって漸く終息をみた。長き乱世の果てに残されたのは混乱と荒れた日の本の地だけだったが、人々は逞しいものだ。誰もが笑いあえる泰平の世の扉を開き、家康の下でゆっくりとではあるが穏やかな生活を取り戻しつつある。
家康は政の要となる拠点を自国の三河ではなく、敢えて江戸に置いた。それは真っ更な場所で一から政を行いたい───という家康の心意気で、それを家康の口から聞かされた時は『Coolじゃねェか』と正直なところ政宗の中で家康の評価がぐんと高まったのだが、その直後に実は江戸の方が三河よりも奥州に近いからとケロリと白状されて、二の句が告げぬほど呆れ返ってしまった。惚れ惚れさせられた直後だったから呆れ具合の反動もそれなりに大きい。だが、竜の棲む地への近さで政の要を選ぶ方がよほど政宗の知る〈家康〉らしかった。そう簡単に家康の男っぷりというか、成長を認めたくはないのだ。同じ男として悔しいではないか。
尤も。家康にしてみれば、距離的なものは非常に大切で。
なにしろ政宗は全く自覚していないのだが、彼は人を魅了する能力に長けているのだ。人誑しといっても過言ではない。自覚していないから、無闇に魅了しまくることでヤキモキしている家康の心中など政宗が推し量れる筈もなかった。更には、家康が周囲に対してどれだけ牽制しているかも。
こうして今、寒いながらも誰に邪魔されることなくふたりきりで天守に陣取ることができるのも、実のところ家康が政宗を独り占めできるよう策を弄したからだ。
年が明けて暦が変わると、家康に恭順の意を示した諸将達が慶賀の挨拶に続々と江戸へと集まってくる。形上は政宗も家康に恭順の意を示し臣下の恰好をとっているため、当然慶賀の挨拶に登城することになるのだが、諸将と同様に慶賀の儀に合わせて江戸へ上ると、どうしても政宗の周囲に人垣ができて、たとえ天下の徳川家康であってもなかなか彼を独占できなくなるのだ。
大層人誑しな竜である。焦がれる人間も多い、ということを家康は知っている。更には、隙あらば竜の隣を、と狙っている輩が多いことも知っている。慶賀の挨拶に合わせる日程で上京を促したら、あっという間に彼は諸将に捉まってしまうだろう。こんな時でもなければゆっくり話すこともできないということも手伝って、捉まったら最後、なかなか手放してはくれまい。となれば、公人としてではなく恋人として逢う時間が必然的に削られてしまう。さすがに堪えられない。
(天下人も儘ならんなあ)
そこで家康は先手を打った。早い話が諸将よりも少しばかり早く政宗だけを江戸に呼び寄せればいいのだ。
駄々を捏ねて──これは対政宗仕様である──逢いたい逢いたいと毎日のように文を遣わせば、終いには『しょうがねェな』と呆れながらも上京を早めてくれた。
察するに、家康のこういう態度は政宗の心をいたく擽るらしい。或いは、年下の我儘を御せないのは年上の矜持に係わる───という実に政宗らしい想いが作用しているのかもしれない。なににせよ、家康が年下だからこそ為せる技である。そして、その利点を最大限に活用しているあたり、家康は抜け目ない。
そんな訳で政宗は早々に上京を果たし、年が明けて慶賀の儀が執り行われる日までの数日間、ふたりきりの時間を楽しむことができるのだった。
とは言っても、政宗の傍らには常に〈竜の右目〉がいる。
政宗の両隣、その片方の立ち位置は、家康が政宗と知り合った頃には既に〈右目〉という存在で埋まっていた。残る片方、そこは幸い未だ空席だ。空席であるがゆえにそのポジションを奪わんと、本人の与り知らぬところで熾烈な争いが繰り広げられている訳だが、とりあえず先んじているのは家康だった。
こう見えて『喰えぬ狸』と言われている。競う相手が〈右目〉以外であれば、残されたそれを勝ち取る自信はある。そのために、虎視眈々と彼の隣を狙う連中を日々牽制しているのだ。
本音を言えば、〈右目〉すらも排除して完全に政宗を独占したいところである。だが、喰えぬ狸もまだまだ〈右目〉に取って代わる境地にまでは至っていない。〈右目〉を出し抜くには、今少し経験値が浅い家康だ。あと少しばかり老獪にならねばなるまい。
(まあ…いきなり何もかもを望んでしまうのも足許を掬われかねないからな。今はもう片方の立ち位置を許されているだけ有り難く思わないと)
いずれ全部を独占するにしても、だ。
いずれ我が竜と天下に知らしめるとしても、だ。
今は〈右目〉以外の輩を排除できているだけで良しとしよう。
(ああ、でも……)
無論、今のうちだけ───だが。
喰えぬ狸は昨日より今日、今日より明日と日々成長を遂げているのである。

もともと家政リクの候補作だったお話です。
個人的に納得いかなくてリクの方は結局書き直しましたが、では残った方は…というとこれまたお蔵入りにしてしまうのも忍びなく、365題に焼き直してお披露目することにしました。
ちょっと長くなってしまったので、2回に分けます。

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