人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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260.燈【戦国BASARA:小政】

梵天丸様、という声に小さな頭が揺れる。
振り向いてみれば、小十郎が新雪に足を取られながら此方へ駆け寄ってくるのが見えた。
「小十郎!」
此処から見る雪はとてもきれいだ。
己の傍に漸く参じた小十郎に向かって、眩しそうに梵天丸は左眼を細める。
「斯様な場所におられるとは…ああ、すっかり冷えてしまって。風邪を召されたらなんとするのです」
白い息を吐きながら小言をくれる小十郎は梵天丸の髪に積もった雪を払った後、梵天丸の両手を取って、己の大きな手で包み込んだ。
「小十郎は梵天がどこにいてもすぐに見つけるな」
「この小十郎、梵天丸様の〈右目〉を仰せつかっておりますれば」
そうだな、と言って笑う。
「右目を謀ることはできんな」
「然様にございますれば、小十郎の目を盗んで屋敷を抜け出すなど努々思われませぬよう」
畳み掛けるように小言を決められて、梵天丸は参ったと肩を竦めた。これは藪蛇だったか。
小十郎の大きな手が温みを与えようと冷たくなった梵天丸の手を撫で擦る。
それでもなかなか温かくならないため、小さな手に何度も白い息を吹きかけた。それがとても擽ったい。
「さあ、もうよろしいでしょう?本当に風邪を召されてしまいます」
うん、と元気よく頷いた梵天丸は、伸ばされた小十郎の右手に己の指を絡めた。そうしてぎゅっと握る。
小十郎の手はいつも温かい。
かつて命を賭して梵天丸の死んだ右目を抉り取ったこの手は、何よりも梵天丸を安心させる手となった。
「どうしました?」
さくさくと新雪を踏みしめながら、怪訝そうに見下ろす小十郎の優しい漆黒の瞳を見、梵天丸はほうと息を吐いた。
「小十郎の手は温かいな、」
梵天丸の言葉に一瞬瞠目した小十郎は、すぐに表情を和ませると。
「…それは小十郎がいつも梵天丸様のことを思うているからです」
「梵天のことを?」
ぱちぱちと左眼を忙しく瞬かせる梵天丸に向かって、小十郎はにこりと笑って頷いた。
「小十郎はいつなんどきも梵天丸様のことを思うておりますゆえ」
「そうか。梵天のことを思うてくれているからか」
「小十郎だけではありませぬ。我が異父姉も時宗丸様も虎哉和尚も、そして殿もみな…みな梵天丸様のことを思うております」
「うん、そうだな。父上も喜多も時宗も―――みな、温かい手をしている。梵天を思うてくれているからなのだな」
己を取り巻く者たちがみな優しい感情で以て己を想ってくれている。聡明な梵天丸は小十郎の言葉をきちんと理解していた。そして、それは間違いなく本当のことだ。
ならば、と梵天丸は考える。
「では…」
「梵天丸様?」
「母上の手は…今も温かいのだろうか。母上が梵天の手を握ってくれたのは遠い昔ゆえ…実のところもうよく覚えておらん」
今もそのたおやかな手はこの手を温かく包んでくれるのだろうか。
その手は今も温かいのだろうか。
「梵天丸様…、」
「そんな顔をするな、小十郎。梵天はわかっている。きっと―――」

―――母上のお手も温かい。

そう告げて、梵天丸は繋いだ小十郎の手を殊更強く握ったのだった。



政宗様、と背後からする声に反射的に首を竦めた。
諌められた訳でもないのだが、つい反射的にそういう仕種をしてしまうのは―――幼少時からの習性みたいなものかもしれない。早い話が条件反射、みたいなものだ。
「よう、小十郎」
ゆるりと振り向いて笑いかければ、小十郎は渋い表情を貼りつけて此方へ近付いてきた。大概そういう表情をしている時に続くのは『小言』だ。
「よう、ではありませぬ!」
(ほォら、当たった)
そんな政宗の心中など知らず、懐手で待つ政宗の前に立った小十郎は盛大に顔を顰めてみせる。次にその口から零れるのは、おそらく『斯様な場所で…』だろう。
「斯様な場所で―――、」
「Ha!やっぱり当たりやがった」
「政宗様…一体何が当たったのです?」
「An?お前の行動だよ」
クスクスと笑ってみせれば、小十郎の眉間にますます皺が寄った。政宗がまだ『梵天丸』と呼ばれていた――そして、小十郎はそんな己の傅役だった――時分から厭きることなく繰り返されてきたことだ。どうしたって予測できてしまう。
裏を返せば、それは小十郎にも言えることなのだが。
「本当にお前は俺を見つけるのが上手いなァ。隠れ鬼をやったら、完全に俺が負けるだろうよ」
「この小十郎、畏れながら〈竜の右目〉の名を頂戴しておりますれば」
「ハハ、右目を謀ることはできねェって?」
「それを一番ご存じなのは政宗様にございましょう?ついでに申し上げれば、小十郎は隠れ鬼も得意ですぞ」
暗に『何処に隠れても必ず見つけ出す』という意図を潜ませて。
確かに、政宗の〈右目〉は何処に在ろうと必ずや政宗を見つけ出した。
「Ha!ちがいねェ。お前に隠し事をできた試しもねェしな。見つかっちまったらしょうがねェ。戻るとするか」
ふふ、と口許を綻ばせた政宗は、おもむろに己の手を小十郎の面前に差し出した。当然、小十郎は怪訝そうな表情を浮かべる。
「政宗さま?」
「手ェ繋いで帰ろうぜ、小十郎。ガキの頃、よくそうしただろ?」
ほら、手ェ出せ。
催促するが、小十郎はなかなか言うことをきかない。挙句に「政宗様はもはや和子さまではないでしょう?」と窘められる始末だ。
「なあ、小十郎。すげェ手が冷てェんだよ、ほら」
「斯様なところにいるからです」
ぴしゃりと小十郎に言われたが、手が冷たいというのは意外に響いたらしく、今度は躊躇うことなく政宗の手を取った。自身の手で政宗の手が冷たいことを確かめた小十郎は一層眉間の皺を深く刻ませたのだが、すぐに息を吹きかけて政宗の手を温めようとする。
あの頃と少しも変わらない。
そう思えば、やはりどこか擽ったい感情が胸の裡を満たす。
あの頃に比べればずっと武骨になった小十郎の大きな手が政宗の手を包んだ。その変わらない温もりに、うっとりと息をつく。
「政宗様?」
「……やっぱりお前の手はあったけェなァ」
「貴方様のことを想うておりますれば」
「うん、そうだな」
手を繋ぐ。
何よりも―――誰よりも己を安心させてくれる、温もり。
「なあ、小十郎」
繋いだ手に眼をやって、それからゆっくりと小十郎を見た。
「温かい手は他にも知っているが…やっぱりお前の手が一番あったかいな」
「政宗様…」

誰のものよりも小十郎の手の温もりが政宗は好きなのだ。





貴方のことを想っているからこの手は温かいのです。


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