人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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Twinkle, twinkle【戦国BASARA:家政】

表からわいわいと騒ぐ、男たちの陽気な声が聞こえてくる。笹の葉音も聞こえるから、今夜の七夕の宴の準備をしているのだとわかる。
七夕の宴は伊達軍の恒例行事で、大広間に臨む庭に竹林から切り出した竹を据えて、伊達軍総出で楽しむ。伊達家は代々風流と粋を好む家柄で、そもそもが数代前の棟梁が雅を楽しむために始めたものらしいのだが、代を重ねるうちに趣を変え、今では軍の結束を図るためのひとつとなっている。
風流という名に託けて皆が楽しめるのならばそれでいい、と政宗自身思っていた。
「しかし…、」
小さな溜息をひとつ零す。
目の前の文机の上には、短冊が一枚置かれている。竹に飾るのだと言って、家臣たちから渡されたものだ。ひとり一枚ずつ短冊に願いごとを書き、竹に飾る。これもまた伊達軍の恒例である。
「…願いごと、ねェ………」
腕組みをして、短冊を睨みつける。改めて願いごと…と言われても―――もちろん、天下は竜が呑み込むということこそ、己の願いごとの最終形態であるが、それは他力本願で成就すべきものではない。己の力で掴み取るものだと考えている。また、そんな政宗の決意は〈竜の右目〉である片倉小十郎をはじめとする伊達の家臣たちにもちゃんと伝わっているから、今更書く必要もなかった。
「…もっとこじんまりとしたものか」
民草の安寧も一国の主として願うべきことかもしれない。けれど、これもまた一国の主たる己の資質如何を問うもので、己が彼らの安寧を得るためにしっかり働くという覚悟があればいいことだ。
政宗の願いとは、基本的に総て“他人に叶えてもらう”ようなものではなく、“己が手で掴む”ものだった。
「うーん…」
改めて願いごとと言われても、案外出てこないものである。
頭を抱えた政宗だったが、不意に小十郎に言われた言葉を思い出した。

『〈奥州筆頭〉としてではなく、政宗様ご自身の願いでよいのですよ』

「俺の願い、か―――」
例えば、逢いたくても逢うことも儘ならない、そんな相手に逢いたいと願うこと。
けれど、逢えばそれだけでは満足できなくて、ずっと一緒にいたいとまで願ってしまうこと。
「………逢いてェな」
逢えば、年上の自尊心と意地が邪魔して素直に口にすることができないが、こうしてひとりでいる時は、不思議なくらいスルリと想いが口を衝く。
「…逢い、てェ」
逢いたいと願っても、気軽に逢うことも儘ならない。
まさに天上の牽牛と織女のようだ。
年に一度、七夕の日に逢うことが叶うという天上のふたりに自分たちを準えて、政宗は苦く笑った。


七夕の宴は無礼講で盛り上がっていた。
結局、政宗は短冊に本音を書くことができず――またもや意地やらが邪魔したためだ――、本当の願いは胸の奥底に仕舞い込んで、短冊には当たり障りのないことを書き、他の短冊とともに竹に飾られている。
皆が楽しんでいる様子を肴に政宗も酒を呑んでいる。我らが筆頭にお酌を、という者たちが後を絶たず、それらに応えているものだから政宗もそれなりの酒量を腹の中に収めていた。終いには傍にいる小十郎に見咎められ、酌をしたいと群がる者たちは右目の一喝で散らされてしまう有様だ。
それもまた楽しかった。
その時だった。
遠くの方からずうううんと腹に響くような音が聞こえてきた。異変を察知した小十郎が途端に顔を顰め、すぐさま様子を見に部下を走らせる。
ややあって戻ってきた部下から報告を受けた小十郎は、見る見る眉間にくっきりと深い皺を刻ませた。
「…政宗様、」
「What?」
機嫌よく笑う政宗の耳許で、小十郎がそっと耳打ちをする。
「この騒ぎで―――牽牛が空から落ちた由にございます」
「An?牽牛だと?Ha!空から落ちてきやがるとは、バカな牽牛もいたもんだぜ」
くつくつと喉を震わせる政宗の笑い声を掻き消す騒々しさで、廊下から足音が聞こえてきた。もちろん小十郎の顔つきは、ますます剣呑なものになってゆく。
「独眼竜っ!」
転がるような勢いで大広間に飛び込んできたのは―――家康だった。
「…Oh,」
左眼を緩く見開く。
間違いない。家康だ。
「逢いたかったぞ、独眼竜っ。というか、逢いたくなったから逢いに来てしまったっ」
周囲の者たちのことなど気に留める素振りもみせず――どちらにせよ呑んだくれているので、彼らの目を気にする必要もない――、家康は満面の笑みで政宗に向かって告げた。
「家康…、」
ああ、こんな風に。
なんの衒いもなく「逢いたかった」と言えればいいのに。
けれど、口を衝いて出てきた言葉といえば。

「………とんだ牽牛サマだ」

「はははは。そうか、ワシを牽牛に見立ててくれるか。ならば、独眼竜は織女だな」
「No!!!誰が織女だっ」
「逢いたかったぞ、ワシの織女」
「家康、テメエ…っ」

とりあえず。
―――来年の短冊には『素直になりたい』と書こう、と密かに決心した政宗だった。



今日は七夕ですね。
残念なことに天気がちょっとよろしくないので、もしかしたら今年は彦星織姫は逢えないのかなあ…と思いつつ、七夕ネタを書いてみました。
昨年は小政だったので、今年は家政です。
同じ行事を扱っても、小政と家政ではやっぱり雰囲気が変わりますね。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

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