人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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31.眼鏡の傷【戦国BASARA:家政】

はああああああああ、と、ともすればそのまま地面にめり込みそうなほどに深い溜息をついて、ベッドの端に腰かけた家康は頭を抱えた。
後悔、悔悟―――今の家康の気持ちを表すに相応しい様々な言葉が、頭の中を過っていく。
「まいった、なあ…」
政宗と喧嘩をしてしまった。
喧嘩の理由など、今となっては思い出せない。たぶん思い出せないくらいそれは些細なことだったのだろうと思う。喧嘩の発端なんて、大なり小なりそんなものだ。
もちろん、今まで家康が一度として政宗と喧嘩をしたことがなかったかといえば、そんなことはない。家康と政宗と、同じ〈個〉ではない以上、思いも考え方も其々だ。当然些細なことで喰い違いが生じる。それが日常的な摩擦となってぶつかるのも自然なことだろう。全く喧嘩をしないでいられる、という方がおかしいと家康は思う。その方が不自然だし、気持ちが悪い。
まして、政宗は情が強いのだ。
あの時ああすれば良かっただろうか。こうすれば良かったのだろうか。
ふり返って、分岐点になりそうなところで別の選択肢を取っていたらどうだっただろうと今になっては詮無いことを考えた。それが『後悔』というものなのだが、どんなにふり返ろうと現実は変わらないし、仮に別の選択肢を選んだとしても、あくまでもそれは〈推測〉の域を出ない。彼の気質を考えれば、或いは辿る道は結局のところ同じだったかもしれない。
とにかく。
政宗と喧嘩してしまった事実は事実。そして、激昂した彼がふたりの巣と定めたこの部屋を飛び出してしまったのも―――また、事実。
(独眼竜…、)
政宗が逃げ込む先はわかっている。だが、わかっていても連れ戻しに向かう気にはなれなかった。
仮に今連れ戻しに向かったとしても、依怙地になった彼が素直に応じてくれるとは思えない。また、彼を庇護する者が家康を彼の許へすんなり通してくれるとも思わない。むしろ門前払いにされるのがオチだ。
ならば、互いに頭を冷やす―――いわゆる冷却期間を置いた方がいいのかもしれない。
はあ、ともう一度溜息をつく。我ながら鬱陶しいと思った。
「―――?」
少し離れたところに眼鏡が転がっていた。それは家康が日頃掛けている――といっても家康は視力が良いので伊達だが――もので、おそらく政宗と口喧嘩をした際にヒートアップした政宗が手を出して頬を張った際に飛んでしまったのだろう。
そういえばカシャンと音がしたなあ、とその時の状況をぼんやりと思い出した。派手な音だったから、もしかしたら壊れてしまったかもしれない。気に入っていたのに。
こんな風に、或いは自分たちも壊れてしまうのだろうか。
「独眼竜…、」
ぽつりと零れた呟き。
のろのろと立ち上がり、眼鏡を取りに向かう。
家康の眼鏡は政宗からのプレゼントだった。家康の視力が良いのを承知のうえで政宗が「コイツを掛けてろ!」とそれを半ば押しつけるような形で――それが照れ隠しゆえであることは知っている――家康に渡したのは、彼なりにマーキングの意味があったのかもしれない。
「アンタはいろんな意味で目立つんだよっ」
けれど、言わせてもらうならば。
並んで歩いても十人が十人ふり返るのは、むしろ政宗の方だと家康は思っている。彼の魅力は半端ないということを、不幸なことに彼は全く自覚していないのだ。
魅力的な恋人を持つと苦労すると実感しているのは、むしろ家康の方だ。眼鏡を掛けるなら政宗に掛けて欲しいくらいなのだが、たとえそうしても彼の魅力が薄れる訳がない。小道具程度で垂れ流がされる彼の魅力を隠すことなどできないのだから。
とにかく。
家康が眼鏡を掛ければ、政宗は安心するらしい。彼の安心を買えるならば――可愛い恋人のお願いだ――と極力掛けるようにしていた。おまけに政宗からのプレゼントでもあるのだ。
床に転がった眼鏡は、政宗の気性の激しさを示すようにアームが曲がってしまっていた。そっと拾い上げれば、度なしのレンズ部分にも傷がついてしまっている。
「あーあ、このままでは使えんなあ」
別に眼鏡を使わなくても生活に支障はない。けれど、愛着があるのでこのまま手放したくはなかった。壊れてしまったから要らない、としてしまったら、本格的に自分たちも終わってしまいそうな気がした。
「修理に出さんと駄目か…、」
壊れてしまった眼鏡を撫で、眼鏡を買ったショップへ修理に出そうと丁寧にサイドテーブルに置いたその時。
「…………独眼竜?」
足音にふり返れば、飛び出していったはずの政宗が寝室の戸口のところに立っていた。目が合うと、なんとも気まずそうな表情をする。しかし、決して目を逸らさないあたり彼の気の強さを窺わせた。
独眼竜?と声を掛ける家康を余所に、政宗は大股で家康の許へ歩み寄ってくると、手にしていた紙袋を家康に押しつけた。
「これ、は…?」
「……………壊しちまっただろ、たぶん」
「うん?」
「だから…っ、眼鏡だよっ」
紙袋を確認すると、以前買ったショップのロゴがプリントされている。くるりと目を丸くして、改めて正面の政宗を見遣れば、彼は顔を真っ赤にしていた。
思わず笑みが零れてしまう。
「別に修理に出せば直るだろう?」
「そうだけ、ど…っ」
そこまで言って、政宗はふいっと顔を背けてしまった。こういうところが可愛いのだと思う。年上の彼にそんなことを言ったら、またもや腹を立てられそうだが。
「だが、嬉しいぞ。独眼竜」
「…お、おう」
ニコニコ顔で「掛けてもいいか?」と訊けば、ぎくしゃくと肯く。政宗の許しを得たので、いそいそと彼の前で袋から蒼い眼鏡ケースを取り出した。
蓋を開けると、そこには洗練されたデザインの眼鏡が収まっている。壊れてしまった眼鏡も洒落たデザインだったが、今回もまた見事だった。
政宗の見立ては完璧だ。政宗のセンスで選んだものだから、間違いはない。
「どうだ、似合うか?」
「ああ、」
どれどれと鏡に自分の姿を映してみる。横を向いたり、ぐっと近づいてみたり…と様々な角度から見てみた。
「さすが独眼竜だなあ。うんうん、我ながらよく似合っているじゃないか」
いえやす、と背後から声を掛けられる。
「うん?」
「その…すまなかった、な。勝手に癇癪起こしたりして」
「ワシも大人げなかったかもしれん。こちらこそすまなかった。だから…戻ってきてはくれんか?」
「………、」
少し間を置いた後で。
「A stupid fellow.(バカな奴だな)戻ってきたじゃねェかよ」
「うん、そうだな」
おいでと両手を広げれば、政宗は素直に従って家康の腕に囲われた。
「家康、」
伸び上がった政宗がゆっくりと顔を近づけてくる。心得たように眼を閉じた家康だったが、いつまでたっても柔らかな感触が当たってこない。
訝しく思って薄目を開けてみると、少しばかり不貞腐れた政宗がいた。
「どうした、独眼竜?」
「Shit!やっぱり邪魔だな」
何が?と問い返すよりも早く政宗の手が伸び、掛けたばかりの眼鏡を外されてしまった。
「独眼竜?」
「眼鏡、邪魔。キスができねェ」
「――――――っ、」
凄い殺し文句だ、と家康は息を飲んだ。こういうことを無意識にやってのけてしまうから政宗は困る。
(何度止めを刺したら気が済むんだか、ワシの竜は)
外した眼鏡を静かにサイドテーブルに置いた政宗は、今度こそと唇を重ねてきた。
あとは甘い―――甘い感触に酔って溺れるばかりのふたりだった。

明日が(個人的)家政記念日なので明日更新しようと思ったんですが、早く書き上がってしまったので一日前倒して今日アップしてしまいました。
壊された眼鏡は、やっぱり修理に出します。
だって、独眼竜がくれたものだぞ。勿体ないだろう!とか力説しそうだな、家康(苦笑)。


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