人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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292.雪は全てを隠した【戦国BASARA:家政】

奥州の冬は何処までも白一色に染まった。
人の限界を試しているような、凍てつく寒さに身を竦ませる。家康が育った――と言ってもこれまでの人生の半分ほどは今川と織田での人質生活だったから『育った』と言えるかどうか――三河は温暖な気候で雪など滅多に降らないものだから、奥州の白一色に塗り潰される風景はとても新鮮なものだった。
尤も、容赦ないこの寒さだけは三河人には耐え難い。この寒さだけはどうにも慣れないと泣き言を零すと、鍛え方がなっていないと一様に笑われてしまった。
家康は今、客将という形で伊達軍に身を置いている。
関ヶ原での大戦に終止符を打つまで徳川と伊達は同盟を結んでいたし、あの戦いの折、最後まで家康の一番近くに在ったのは政宗だった。そういうことも手伝って―――という訳ではないが、戦後の仕置もそこそこに政宗の許に身を寄せている。
それを甘えと言われてしまえばそれまでだ。確かに甘えていると思う。東軍総大将として祭り上げられていながら、最後の最後で逃げ出したと謗られても返す言葉はない。
絆を掲げ、絆で世を統べんとこれまで走ってきた。それを友は――友と思っていたのは結局自分だけだったが――偽善と言い、豊臣を裏切った自分を憎み、絆絆と御大層に唱えながらその手で他者の絆を奪ったのだと糾弾した。そして、終には日ノ本を真っ二つに分けて戦うまでに至ってしまった。
どうして分かり合えなかったのか。分かり合うために―――自分は言葉を尽くしたのか。そうする努力をしたのか。
もしあの時、といくつもの分岐点をふり返る度に別の選択をしていれば、或いは現在と異なる未来が待っていたのではないかと思う。別の形の道があったのではないかと思う。あれが自分がとり得る最善の策だったのだと理解しているし、周りの者もそう言ってくれるが、それでもそう思ってしまう。
「わかっているんだがなあ……」
違えてしまったものは戻らないと政宗は言った。家康が信ずる道も三成が信ずる道も―――最初から相容れぬものだったのだと。
政宗はどんな形であれ家康が三成に執着していた――政宗に対するそれとは違う意味でである――ことを知っていたから、その喪失感がどれほど大きなものかを予想していた節がある。それは、彼も同じような感情を味わったからに他ならない。

『動けねェなら無理に動かなくてもいい。その傷が癒えるまで竜の許で―――休ませてやるよ』

だから。
だから甘えさせてくれるのだ。立ち止まって蹲って身動きがとれないだろうとわかっているから。
そして、家康はその優しさに甘えてしまっている。
政宗は厳しい男だ。自らもその喪失感を乗り越えて大きく飛翔したことを考えれば、その優しさで家康に宿木を提供してくれるのも一時のことだろう。いつまでもそれに甘えているのはいけない。
「そろそろ動きださなければいけないということは…わかっているんだ」
白に塗り潰された世界を更に白く塗り潰さんと庭に降り積む雪を見ながら、家康は呟く。ふり仰いだ雪空に向かって吐いた息は真っ白だ。
さくり、と積もった雪を踏みしめて一歩踏み出してみる。
「……冷たいな」
ばたりと仰向けに寝転んでみた。顔に触れた雪が体温の温みで次々に融けてゆく。
足先から指先からじんと冷えて―――このまま雪と同じように融けてしまえれば楽になれるのだろうか。
「Hey,こんな雪の中で何してやがる?アンタ、死にてェのかよ」
「…独眼竜?」
上体を起こすと濡れ縁から此方を見つめている政宗の姿があった。ほんの僅かな時間寝転がったつもりだったのだが―――あっという間に雪塗れという家康の姿に、呆れたように肩を竦められる。
「三河育ちのお前にとっちゃあ雪が珍しいのは仕方ねェかもしれねェが、あまり奥州の雪を舐めるんじゃねェぞ。そんな所で転がってたら…簡単に死ねる」
「あ、うん…そういうつもりではなかったんだが。その、すまん」
「別に謝らなくてもいい。どこのガキでも一度はそういうのやってみたくなるからな」
羽織の懐に手を忍ばせた政宗は肩を竦めて薄く笑った。
「俺もガキの時にやって……小十郎に鬼のように怒られたモンだ」
「独眼竜、」
「そんな所にいつまでもいると本格的に凍えるぜ?早く上がってこい」
ああ、きっと。
これも政宗の優しさだ。
左しか嵌まっていない竜の瞳は―――ひとつきりでも易々と自身の弱さを見透かしているのだろう。見透かしているからこそ、こうして今もまた包み込んで甘やかす。
(敵わんなあ………、)
立ち上がって雪を払った家康は、濡れ縁に佇む政宗の許へと戻ってきた。
無邪気な子供のように手を伸ばし家康の頬に触れた政宗だったが、すぐに引っ込めてしまう。指先を通して伝わった冷気に、彼は顔を歪めた。
「ったく、躰の芯まで冷えきりやがって。まずは風呂だな。話はそれからだ。いいか、ちゃんと温まるまで出てくんなよ?俺に触るのもナシだ」
「ど…っ、」
「嫌ならとっとと温まってこい!Hurry up!」
竜に追い立てられた家康はわたわたと風呂へ向かう。
背後からは彼独特の小気味良い笑い声が聞こえた。

「家康、」
ふり向いた家康の瞳をまっすぐに見据えて、政宗は笑みを浮かべたまま言った。
「こんな雪深い所にも何れは春が来る。雪は融け、水となって流れてゆく―――アンタだったら…わかるだろう?」
「独眼竜………」


きっと―――いつまでも彼には敵わないのだろう。




新暦に直すと1月31日が家康の誕生日らしいです。
なので、それに合わせて…と思って書き始めてみたんですが、流れ上弾けた話にはなりませんでした(苦笑)。
2年前に書いた「希望通りの結末を」と心持ちリンクしています。

相変わらず小政原稿中なんですが、破廉恥のところで足踏み状態なので(さすがに仕事の合間に書くのは憚られる…)気分転換に家政を書いてみた次第です(苦笑)。
気分転換のわりにはいつものノリの家政じゃなくてアレなんですけど。
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