人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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168.喘ぐように名前を呼んだ【戦国BASARA:小政】

「……………………、」
小十郎が置かれている状況を呑み込むまでに、たっぷりとした間が必要であった。
眼の錯覚、或いは疲れ眼だろうか―――と閉じた瞼を指の腹で軽く揉みながら考える。どちらにしても〈竜の右目〉の二つ名を与る身としてはあってはならぬことに違いない。
「Hey,どうした小十郎?」
「どーした、こじゅうろう?」
どこか笑いを含んだ低い掠れ声と、舌足らずな子供特有の甲高い声が重なって小十郎を呼んだ。
(間違いなく眼の錯覚でも疲れ眼でもねえ………)
加えて挙げれば、夢でも妄想でもない。
ズキズキと痛み出す頭を抱えた小十郎は、反射的に腹の底から長い溜息をついた。それは畳の上を這いずり、廊下へと転がって麗らかな春の陽射しの下へと消えていく。
「………………この小十郎の身も考えず、今度は何をしてくれたので?」
低い―――地獄の扉でも開いたのではなかろうかという低さで『何をしでかした』と問う小十郎の前で主は―――正確に言うなれば主たちは、然して堪えることも怯えることも動じることもなく、片や婀娜花が咲くかの如く嫣然と、片や頬擦りをしたくなるような甘い愛らしさで笑うのだった。
「Ha!何をしてくれたとは…主を前に随分な言い種じゃねェか」
「いいぐさじゃねェか」
まろい子供の声が愛らしい顔とは裏腹に乱暴な口調をなぞる。
「たまにはお前の労を労ってやろうと思ったんだ。まア…ちィとばかし手許が狂っちまったんだけどよ」
手許が狂った?この有様が?
「…政宗様御自らこの小十郎の労を労ってくださるとは………光栄の極み。なれど、この状況で小十郎の労がどう労われると仰せか」
労われるどころか、負担増だと断固小十郎は思う。
何しろ―――

―――小十郎の眼前に坐する政宗はふたり。
〈魔性〉と〈天使〉だったのだ―――。


ああ、また“十年薬”を使いやがった!と直感的に思った。
“十年薬”とは伊達軍の中で呼んでいる通称で、元はと言えば武田軍の忍・猿飛佐助製造の所謂“忍の秘薬”である。
以前、政宗がアクシデントでこれを飲んでしまい、その影響で推定二十九歳の姿に変貌してしまうということがあった。生来好奇心旺盛な――時として迷惑なほどに好奇心の強い――政宗はたとえ人為的であっても普通はあり得ない状況をひどく面白がって、以降度々猿飛から秘薬を買い付けている。伊達家への専売と言ってもいいそれのお蔭で、目下伊達と武田の友好関係は堅持されてはいるが。
政宗が“十年薬”を使ったのは確かだ。度々いろいろな意味で小十郎を悩ませている〈魔性〉の姿であるのだから。
毎回毎回理性と雄の本能の板挟みで、「どれだけ小十郎を試すおつもりか」と推定十年後の彼に対して思う小十郎である。いっそ断崖の端に置かれているような心持ちで、よくもまあここまで耐え切れたものだと我ながら賞賛してもいた。
とにかく、そんな〈魔性〉が降臨したのはわかった。
だが、その隣に侍る愛らしい〈いきもの〉は何だ?かつての梵天丸を髣髴とさせるような―――。
「梵天、」
「おうっ」
ひそひそと政宗に耳打ちをされた子供は満面の笑みで大きく肯くと、上段から降りて、とてとてと頼りない足取りで小十郎の許までやってくると、あろうことか端坐した小十郎の上にちょこんとのっかった。
「―――――――っ?!」
声なき悲鳴、というものはまさしく今のことを言うのだろう。脇息に肘を立て頬杖をついてその様を半ば意地悪く見守りながら政宗は思った。
「こじゅうろう」
狼狽える小十郎の頬を小さな手でペシリと叩いて、にかっと笑う。
「Ah~ちィとばかし手許が狂ったってェのはその…なんだ。分裂しちまったってことだ」
「――――――は?」
政宗さま?と呟き、ぱちりと瞳を瞬かせる。一瞬ではあるが、政宗の発言は小十郎の理解の範疇を超えてしまっていた。
「ったく…忍の秘薬ってのは奥深ェもんだな。偶然かもしれねェが、こんな効能があるとは思わなかったぜ。飲んだ分量が悪かったのか、それとも別の因果が働いたのか―――、」
「政宗様、小十郎にもわかるように説明いただきたく…」
「An?だからな、例のヤツをいつものように飲んでみたら…まァこのとおりという訳で、」
「この、とおり…とは、はて。どのとおりですかな、政宗様」
「Gee,見たままのとおりだ。惚けるんじゃねェよ。お前は俺の〈右目〉なんだ。キッチリ見えてんだろ、俺とお前の膝の上に乗っかっているガキの姿がよ」
「こじゅうろう、はうあーゆー。ぼんてんだ。なつかしいだろう」
「……………くっ、」
間近にあるため、その愛らしさもまた脅威である。愛らしくて堪らず、不覚にも声が出てしまった。現在も小十郎は政宗に対して大概過保護すぎるところがあるが、梵天丸と呼ばれていた頃は更にひどかったのだ。
「あア?何だァ、その『…くっ』ていうのはよ」
「…いえ、その」
「まあいい」
政宗はふ、と朱唇を綻ばせ、甘い吐息を零した。その仕種に膝上に梵天丸を乗せたまま、小十郎の心臓が跳ね上がる。〈魔性〉は小十郎の絡め方、魅せ方をよく心得ている。
「お前的にはどちらも俺。両手に華だろう?なあ、小十郎?」
片や〈魔性〉、片や〈天使〉であっても。
(…………………、)
確かにそうかもしれない―――などと思ってしまったあたり、どうかしている。少なくとも常態の小十郎の思考ではないと自身でも思った。
まるで猫のような足取りでするりと小十郎の許までやってきた政宗は、甘えるように躰を寄せてきた。
「小十郎、」
「まさむねさ、」
鼻先を押し付け、ぺろりと小十郎の唇を舐めていく。誘っているようだ。
「こじゅうろう」
そうかと思えば、膝の上で伸び上がった梵天丸が凶悪な可愛らしさで小十郎の左頬にちゅ、とキスをした。微笑ましく思っていると、更に頬に走る傷痕を桃色の舌先でたどたどしく舐めてくる。
さすがにこれには参った。愛らしくあどけない子供の貌に妖しい「いつもの匂い」を感じ取ってしまったからだ。
「政宗さま…っ、」
思わず声が上擦った。
分裂した、と彼は言ったではないか。
この世の汚いものなどまだ知らぬような清浄で愛らしい幼な顔に迂闊にも惑わされそうになるが、紛れもなく根幹は政宗である。魔性も天使も根っこはどちらも同じ―――小十郎が知る十九の政宗なのだ。
「ま、政宗さ…」
「今日は『両手に華』状態で、とことんお前の労を労ってやるぞ。覚悟しろよ」
「ねぎらってやるぞ。かくごしろよ、こじゅうろう」
全く毛色の違う、それこそ対極の笑みだというのに、感じるものはどちらも同じ。
ごくり、と喉が鳴る。
そもそも労われるのに何故覚悟がいるのだろう。
やれやれ、とふたりに気づかれぬように嘆息する。
やはり、労わってもらうどころか苦労が二倍というところは譲れないようだ。



今日は4月1日。エイプリル・フールということで、そのつもりで書き始めたお話でした。最初はね。
ところが、仕上がってみたら四月馬鹿とは何の関係もない、いつもの小政です(苦笑)。
忍の秘薬ってのはなんでもアリなのです。

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