人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top

120.自称ヒーロー【戦国BASARA:小政】

背後から可愛らしい視線を感じて、小十郎は参考書から目を上げた。
椅子に背を預けるようにしてそーっと背後をふり返れば、ほんの僅か開いたドアの隙間から円らな瞳が此方をじっと窺っている。目が合うと“しまった!”とばかりに小さな体が跳ねて、それが悪戯を見つかった子どもみたいでなんとも可愛らしいと思った。
「政宗さま?」
声をかけても子ども―――政宗はドアの外で躊躇っているようだ。どうやら自分の勉強中は邪魔をしないこと、というこの家の約束事が浸透しているらしい。小十郎は今年大学受験である。
小さく笑った小十郎はシャーペンを置くと、おいでとドアの向こうに向かって手招いた。
「だって…小十郎、勉強中だろ?」
「大丈夫。今日の分は終わりましたよ」
本当はもう少し進めようと思っていたのだが、終わったと答えて参考書を閉じた。するとパッと表情が弾けて、転がるように部屋に飛び込んでくる。
「小十郎!本読んでっ」
「今日はどういう本ですか?」
身を屈めて覗き込む小十郎に向かって、政宗は「今日はこれだ」と言って本を見せた。
政宗は八歳になったばかりだが、それは八歳の小学生が読む本としては聊か難しい内容のものだ。日本古典、軍記物である。ぱらぱらと頁を捲ると少しばかり頭が痛くなった。現代語訳が付されているが、基本は古語だ。
「小十郎?」
「政宗さま、今日は随分と難しい本を持ってきましたね」
聞けば父親――政宗の父は小十郎の担任である――の書斎にあったものだという。なるほど、道理で子供向けではないはずだ。
政宗の父、輝宗は教え子である小十郎が高校を卒業するまで衣食住一切の面倒を見てくれている。
面倒見がいい教師であったがまさかそこまでとは思わなかった小十郎は、輝宗から「いっそウチに来ないか」と提案されたとき、「人を養うには金がかかり、自分は返す当てがない」と答えた。ならば息子の遊び相手をしてもらうという交換条件を付され、その結果――子どもの遊び相手など本来交換条件にもならない。そもそも等価ではないだろう――、小十郎は伊達家の厄介になっていた。
「オレにはまだ難しすぎるだろうって言ったけど、小十郎に読んでもらうからいいって答えたらお父さんが貸してくれた。小十郎が読んでくれるなら、小十郎の勉強にもなるだろうからって」
「…はあ、」
父子のやり取りが目に浮かぶようだ。
大方古典の勉強にもなるだろうと思ったのだろう。小十郎は他の教科に比べると古典が少し弱い。それを見越してのことだ。さすがは教師、抜け目ない。
「こじゅうろう?」
読んでくれる?と小首を傾げて上目遣いにお願いされては、断ることなどできまい。
「この厚さだとさすがに一気には読めませんから…ちょっとずつ読み進めていきましょうか?」
「うんっ」
小さな体を抱き上げてベッドへと移動した小十郎は、政宗を抱きかかえるようにしてベッドの端に腰を下ろした。
政宗を膝に乗せて、改めて本を開く。
さて、今日は一体どんな質問攻撃がくるのやら…。
「なあなあ、小十郎。この“ぎおんしょうじゃ”ってなあに?」
「祇園精舎というのはですね…」
知識欲の深い政宗の質問攻撃に耐えられるようにするため、小十郎も広く知識を身に着けようと余念がない。それが結果として受験勉強の役に立っているのだから、政宗には感謝すべきだろう。
「すごいな、小十郎は。なんでも知ってる」
「…ありがとうございます」
キラキラと目を輝かせて褒めてくれる政宗。なんだか面映ゆい。

「やっぱり小十郎はヒーローだ!」

戦隊もののヒーローを見るように目を輝かせる小さな彼のそのひと言が。
彼にとってずっとそういう存在でありたい―――と小十郎を奮い立たせたのだった。


「どうしたんです、政宗様?」
ソファで寛いでいる小十郎の許に無言で近寄ってくると、政宗は小十郎の膝の上にすとんと腰を下ろした。
「政宗様?」
「たまには、な。本を読んでもらおうと思ってよ」
含むように笑って本を差し出してくる。
どうやら書庫代わりの書斎から拝借してきたものらしい。
「なあ、いいだろう?」
政宗特有の甘え方。
あの頃の純粋な可愛らしさに今は甘い色が加わった。
まるで猫のように頬を摺り寄せる彼に、小十郎は小さく笑みをこぼす。
「甘えたがりで…しようのない人ですね」
甘えたがりという言葉に反応して軽く拗ねたのか、口を尖らせた政宗へキスをして。
「さて、どこから読みましょうか?政宗様」
今も―――貴方にとってのヒーローであるために。
小十郎は恭しく本を開いた。




小十郎は“自称”ヒーローではないですね。
政宗にとって“ヒーロー”な訳ですから。


という訳で、今回は(一応)司書ムネ設定です。
小十郎が高校生、政宗が小学生の時に一時期ふたりは一緒に暮らしています。
そのあたりの話はちょこっとなれそめ編の「物語~」で書いているんですが、今回はその一緒に暮らしていた頃のお話。
ちなみに小十郎がちび政宗にねだられて読み聞かせていたのは、言わずと知れた「平家物語」です。
軍記物にしたのは私の趣味です。
小十郎の受験対策だったら、むしろ「源氏物語」の方が良かったのか…。
「若紫」とかねだられて狼狽えたりとか(苦笑)。



Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://sinners.blog13.fc2.com/tb.php/1622-51a75d4c
プロフィール

安曇

  • Author:安曇
  • 今日も元気に生きてます。
カレンダー(月別)
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ちびギャラリー
 

presented by.●○紅羽のTWぶろぐ○●
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。