人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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124.生【戦国BASARA:小政】

強い夏の陽射しが容赦なく照り付けている。北に位置する奥州といえど、夏の暑さはそう変わらない。
「暑ちィ…」と堪らず呻くように呟いた政宗は、いっそ痛いくらいの陽射しを遮ろうと手庇を作った。
辺りの山々からは短い生を謳歌する蝉の声が時雨のように聞こえてくるが、それは涼を誘うどころか一層暑苦しい。
作物にとって太陽と水は生育に大切なもの。夏の天気が良ければ、秋の収穫が期待できる。今年も奥州もきっと実り豊かだろう。奥州一体を束ねる者、預かる者として豊穣の秋を迎えられるのは喜ばしい。
とはいえ、よくもまあこんな暑いなか畑作業なんざやっていられる…と思うのが正直なところだ。戦ならば文句も言えぬが――そもそも天候を選んで戦っているわけではないのだ――、政宗は夏の暑さに然程強くはなかった。
常に政宗に寄り添う男がこんな炎天下を歩く己の姿を目にしようものならば、すっ飛んできて小言とともに連れ戻そうとするだろうが、その男は刀を鎌に持ち替え現在畑で汗を流している――曰く、「この時期一日でも間を置くと作物は収穫時期を逸するほど大きく成長するし、雑草も蔓延る」そうだ――。政宗はそんな男のために中食を用意し、自ら届けに畑まで足を運んだのだった。
こんな炎天下であっても、農民達は変わらず作業に精を出している。生き生きとした人々の営みに眩しそうに瞳を細めた政宗は、奥州筆頭として彼らの生活を守りたいと強く思った。
目指す畑は目と鼻の先だ。
途中、畑の管理を任せている爺に逢った。政宗のお出ましということで恐縮した爺は慌てて男を呼びに行こうとしたが、それには及ばぬと断った。驚かせてやるつもりだからと悪戯っぽく笑えば、なるほどと得心顔で肯き返された。爺は若者の悪戯心をよくわかってくれているようだ。
更に歩みを進めると、男の畑が見えてくる。慣れぬ手つきの若衆に交じって、男は夏野菜を収穫している最中だった。よほど出来がいいのか、捥いだ野菜を今にも頬ずりせんばかりだ。戦場では鬼の如き働きを見せる男のその落差と言ったら、何度見ても可笑しい。あの野菜に対する情熱は、時として男の政宗に対するそれを凌駕するのではないかと思っている。奥州筆頭ともあろう者が野菜に負けるだなんて、甚だ面白くない話ではあるが。
政宗はすん、と鼻を鳴らした。
土の匂いがする。あとは緑の匂いか。踏み締める足許は柔らかな感触。
(ああ………、)
中食の重箱を包んだ風呂敷を脇に置いて畑の縁にしゃがみ込んだ政宗は、瞳を細めて耕された土に触ってみた。
陽光をいっぱいに浴びた豊饒の大地。男達の汗を吸い、優しさを吸い、そうして豊かな実りを齎してくれる土だ。
「政宗さまっ?!」
畑の土を弄っていた政宗の姿をいつの間に目に留めたのか、文字どおり男がすっ飛んでくる。その姿に思わず苦笑が浮かんだ。
「おう。精が出るな、小十郎。そろそろ腹が減る頃合いだろうと思って、中食を持ってきたぜ」
「それは忝く。ですが、この炎天下。政宗様御自ら足を向けずとも、誰か屋敷にいる野郎に持たせればよろしいでしょうに」
「Nonsense!それじゃあ意味がねェだろ。お前の畑の具合もこの目で見たかったしな。どうだ、今年の野菜の出来は?」
「茄子に胡瓜…お蔭様にて、皆よい具合です」
「そうか、そいつはよかった。お前の育てた野菜は最高に美味いからな」
「ありがたきお言葉。これらが政宗様のお口に入ると思えば、丹精込めて育てた甲斐があるというものです」
そう答えて男臭い笑顔をみせた小十郎だったが、滝のように流れる汗に「これはとんだ不調法を!」と慌てて首にかけた手拭いで拭おうとする。その手拭いを小十郎から奪い取ると、吹き出る汗を丁寧に拭いてあげた。
「ま、政宗さまっ」
「俺の口に入るものを作ってくれているお前を労うのは当然のことだろう?」
「なれど、汚れます」
汚れのうちに入るものかと口の端を持ち上げて言い返せば、即座に男は渋面を作る。まったく固い男め、と続けて逞しい躰に抱きついてやったら、さすがに慌てたのだろう。すぐに渋面が崩れた。政宗様と諌める声を封じてやらんと無邪気に笑い声をあげる。その屈託のなさに呆れたのか、小十郎はやれやれと言わんばかりに肩を竦めた。
「―――お前の育てた野菜は最高に美味い」
さっき口にした言葉を再度舌にのせる。贔屓目でもまして欲目などでもなく、小十郎の育てた野菜はどれも瑞々しくて美味しかった。小十郎の言葉どおり丹精込めて―――きっと手間暇を惜しまず、愛情を込めて育てた成果なのだろう。
小十郎が自らの手で畑を耕し、爺の手解きで野菜を育てるようになったのは、政宗が置かれた環境に起因している。
今でこそ伊達家の当主のみならず、奥州筆頭として奥州を束ねる若き竜だが、小十郎が傅役として上がった当時は隻眼という容姿のためにひどく内向的な性格の持ち主だった。隻眼という武将にとっては致命的な弱点を抱えているにも拘わらず、政宗の父は政宗を嗣子として定めたが、弟を溺愛していた政宗の母はこれを快く思わず、そのために伊達家は家を二分する危険を常に孕んでいた。
いつどこで反政宗派が存在を消そうと暴挙に及ぶかしれない。幼い時分の政宗は生活の全てが危険と隣り合わせだったのだ。特に“食”は最も狙いやすく、ともすれば毒を盛られかねないと危惧した小十郎が自ら携わればその危険も少しは減るのではないかという思いから始まったことだった。
勿論大前提はそこにあるのだが、その他にもうひとつ。子供の頃の政宗は食が細いうえに偏食家で、それを直すためということもあった。確かに功を奏したか、長じた政宗は好き嫌いが殆どない。
(考えてみれば――――――、)
誇張でもなんでもなく、あの頃から政宗は小十郎によって生かされているようなものだった。畑の野菜と同様、小十郎が手をかけてくれたお蔭でこうして成長できたようなものだ。
「政宗様、どうなされました?」
抱きついた体勢で思惟に耽ってしまった政宗を暑さで参ってしまったのかと勘違いしたのか、小十郎が心配そうに覗き込んできた。
政宗の眼は口で物を語るよりも余程饒舌だと言うが、小十郎の目の方がずっと雄弁だと思う。今も覗き込んだ双眸には深い色の中に“心配”の二文字がくっきりと浮かび上がっている。
「No problem!」
小さく笑って目の前にある小十郎の頭を両手でぐしゃぐしゃと掻き乱してやった。陽光を浴びた黒髪に鼻を寄せれば、きっと太陽の匂いがすることだろう。
「まったく…貴方様ときたら。然様な悪戯ができるようでしたらお言葉どおりなのでしょうな」
「Sorry,小十郎。なんだかな、この畑を見ていたら…俺ってつくづくお前に生かされているよなァって思っちまってよ」
「政宗様?」
「考えてもみろよ。お前が育てた野菜を俺が食うってことはさ、お前の野菜が俺の血となり肉となるわけだろう?お前の愛情の賜が文字どおり俺の血肉となるんだ。それってお前が俺を生かしているってことじゃねェか」
「政宗さま…………っ、」
感極まった声。目線を上げると、勿体なきお言葉と言わんばかりの表情をした小十郎がいる。
己を生かしてくれる――――――そんな男が政宗は堪らなく愛しかった。
「なんなら今夜あたり確かめてみるか?お前の愛情がちゃんと俺の血肉となっているか」
艶を含んだ瞳を緩く撓め、ふふと口許を綻ばせる。
「ま――――――っ!?」
珍しく狼狽えた小十郎を見、してやったりと陽気に笑う政宗の笑い声が夏空の下、遠くまで響いた。



学生が夏休み(=学生の夏休みは来月末まで)の今が一番暇なんだよなー。
暇な時間にちょこちょこと書いちゃおうかなー…なんて思って書き始めてみたら3日もかかった(苦笑)。
暇だったはずなのに、そんな時に限って文○省から電話がかかってきたりするし。


小十郎の愛情が政宗の血肉になるというお話でした。
あのふたりはお互いがお互いを生かしている感じですよね。

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