人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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320.薄い膜【戦国BASARA:家政】

(ワシは今まで何を見ていたんだろうなあ―――)
己は今までこの男の一体何を見ていたのだろう。竜を組み敷くという大胆なことをやってのけた家康は間近にある秀麗な貌を見下ろしながら、本当に何を見ていたのかと今更ながらに思った。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
二つある眼が見誤った、とは思えないが、募る想いに眼が眩んで己の都合の良いような像を作り上げてしまったということは十二分にあり得る。
「独眼竜………、」
我ながらなんて切羽詰まった声だろうと思う。余裕がないことがありありとわかる、声。
余裕がないのは当たり前だ。ずっと恋焦がれた相手が目の前にいる。
どくがんりゅう、と再度その二つ名を口にすると、呼応するみたいに組み敷かれた躰が小さく震えた。
戦場ではあんなにも好戦的でギラついている一つ眼が、今は頼りなさげに揺れている。一つ眼を縁どる睫毛がふるふると震えていた。
この男はこんなに細かっただろうか。躰は言うに及ばず、腕も脚も。
触れたら消えてしまいそうなくらいに儚げだっただろうか。
虚と実。
一体、どれが本物の竜の姿なのだろう。
「なあ、独眼竜。お願いだから…声を聞かせてくれんか」
「――――――、」
声が聞きたいと懇願すれば、天邪鬼な竜は“そんな要求など飲んでやるものか”とばかりに薄い唇をぎゅっと引き結んだ。力の加減ができないのか、あまりに強く唇を噛むので、噛み切ってしまうのではないかと心配になる。
「そんなに強く噛んだら…唇を噛み切ってしまうぞ?」
強情だなあ、と思わず苦笑する。
この分だと意地でも声を聞かせてはくれまい。鼓膜を震わせる竜の少し掠れた声が家康は好きなのだけれど。
こんな状況になって言うのもなんだが、竜を―――政宗を傷つけるのは家康の本意ではなかった。
どんな些細なことでも傷つけたくはないし、優しくしたい。
そうして、叶うことならば愛おしみたいのだ。
(ああ、本当にワシは―――)
虚像を追っていた訳ではないと思う。
周囲からはまだまだ心許ない少年武将と認識されていた頃、家康は戦場で初めて猛々しい竜の姿を見た。
蒼い雷光を纏い、閃光の如く戦場を駆け抜けるその姿が―――血濡れてさえも美しく、ひと目で家康の心を奪った。後にも先にもあんなに綺麗なものを家康は目にしたことがない。
常に先を見据えている強い眼差しも、時として傲慢にすら思える表情も、強気な物言いも、全てが魅力的だった。
近づけば近づくほど、家康にとってその存在は大きく――そして比例するように憧憬も強く――なって。
いつか竜に相応しい存在に、竜と肩を並べても遜色のないような大きな器になりたいと思っていた。その想いを糧に、家康は今日まで走ってきたのだ。
強い眼差し、傲慢な表情、物言い。どれも彼を彩るものだろう。それは間違いない。
戦場で眼にする彼もまた実だ。
そうして、今。
己に組み敷かれている姿も――――また実。
「独眼竜、」
ひゅう、と晒された白い喉が鳴った。
青灰の瞳が揺れる。
この腕に囲って優しくしたい。
その胸の裡に抱えているだろう痛みも闇もすべて拭ってあげたい。
ああ、けれど。


(―――今のお前にワシの気持ちが届いているだろうか?)


pixivで“いえまさ週間”なる素敵企画をやっているのを知り、早速参加。
同じものをpixivにもアップしています。
思いついたネタをそのまま文字に落としただけの短いものですが。
9日まで、ということなのであと何本か書きたいです。
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