人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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枕もとにこっそり内緒で【戦国BASARA:小政】

冬に雷―――はそう珍しくもない。日本海側では『雪起こし』や『雪雷』などと言って、雪が降る前兆や激しい雪が降る時の合図と言われている。
だが此処は冬でも比較的雪が少ない土地で、乾燥した晴天の日が続く。だというのに、空を仰げば降っているのは雪どころか雨、である。さながら夏場の雷雨のようだ。
ともすれば季節外れの荒天の原因などわかりきっている。水を司る龍神様の機嫌が悪いのだ。そして、龍神様のご機嫌を損ねた原因といえば小十郎にある。乱暴な言い方をすれば、この荒天の遠因は小十郎にあるというわけだ。
「やれやれ…政宗様の影響が及ぶ範囲にまで戻った途端この天候か。まだ機嫌が直ってねえようだな」
怒りの度合いが推して量れるというものだ。
ステアリングを操りながら、小十郎は小さな溜息をついた。
ちらりとナビシートに視線を投げる。そこには紙袋が鎮座していた。貢物というわけではないのだが、これで少しは機嫌を直してくれるだろうか。さすがにこれ以上龍神様のお怒りのとばっちりを町の人間に喰らわせるわけにもいくまい。
雷鳴が轟き、大きな雨粒がフロントガラスを激しく叩く。これで事故ったら目も当てられないが、とにかく急いで帰らねば。


「What?実家に戻る、だと?」
政宗の声にあからさまに険が籠った。何の用で?と矢継ぎ早に問われたが、小十郎自身満足な答えを持ち合わせてはいない。なにしろ急に実家から『帰ってこい』と電話――社務所兼母屋にある今どき珍しい黒電話である――があったのだ。
田んぼと畑が延々と広がる、人も時間も豪いのんびりとした田舎にある『鳴神神社』の宮司である小十郎の実家は、神社が鎮座する町から少し離れたそこそこ大きい市にある。実家は八幡社で、此方は現在長兄が跡を取っていた。
小十郎が鳴神神社に住むようになったのは年齢的には幼児といっていい頃だ。親許から離され、当時鳴神神社の宮司であった祖父に育てられた。なぜそのようなことが許されたのかといえば、小十郎の家―――片倉家が少しばかり特殊だったからだ。
鳴神神社は別名『竜の宮』とも呼ばれ、文字どおり竜を祭神として祀っていた。この地に竜を降ろし、土地神として祀ったのが小十郎の先祖―――初代〈片倉小十郎〉である。
小十郎という名は、諱として代々鳴神神社の宮司を継ぐ片倉の男子に与えられるものだ。そして、宮司は祭神である竜―――政宗によって選ばれる。政宗に選ばれることで〈小十郎〉となるのだ。
小十郎は幼いうちに政宗に選ばれた。片倉の歴史を辿る限り、政宗が選んだ最年少の〈小十郎〉だった。そんな事情があって親許から離され祖父に育てられた――辛うじてまだ二十代だというのに妙に老成しているのは祖父の影響があるのかもしれない――わけだが、実際は政宗に育てられたと言ってもいい。
それはさておき。
鳴神神社の宮司として竜を護る役目を担う小十郎を呼び出すのだから、どんな大事が起こったとさしもの小十郎も構えたのは確かだ。
「小十郎っ」
焦れた政宗に吼えられたが、「何が何だか……」と答えることしかできず。
「すぐに戻ってきますので…暫し堪えてやってください」
「No!」
「政宗様!」
恨みがましく小十郎を睨んで不貞腐れている。それはそうだろう。竜を護るべき〈小十郎〉が実家を優先して一時的とはいえ竜の傍から離れるのだ。
土地神である政宗は、此処から離れることができない。だから、単純に離れたくないなら連れて行けばいい―――というわけにはいかないのだ。片倉の人間であれば〈政宗〉に選ばれた〈小十郎〉が担う役目が重要かわかっているので実家に長く拘束されることはないだろうし、社自体結界を巡らせて護っているため悪意は及ぶまい。それ以前に、政宗自身が強い竜気を持つ高位の竜であるので余程のことがない限り自身で害を撥ね退けてしまうだろう。
なので、ほんの少し離れることくらい心配ないのだが。
「お前は俺をおいていくのかよっ。俺より実家が大事かっ」
「政宗さまっ、」
俺が此処から動けないことを知っていて…と口惜しそうに唇を噛んで俯く政宗を見ていると、「そうじゃねえと何度言ったらわかるんです!」と言えなくなってしまった。
小さく嘆息する。そっと手を伸ばし、宥めるように頬を撫でてやるが、政宗の躰は怒りに強張ったままだ。
「小十郎………お前、携帯持て」
「―――は?」
「今どき携帯も持ってねェなんてありえねェだろ」
ぶすりと不貞腐れたまま突然何を言い出すのかと思えば。
「必要ありません」
固定電話が今どき黒電話という有様である。そんな小十郎が携帯電話を持っている筈もない。まだ二十代の一応若者でありながら仙人みたいな生活を地でいっている小十郎である。携帯電話など無用の長物だ。
「そもそも圏外でしょう?このあたりは」
「そんなわけあるかよっ!いつの話をしてるんだ、テメエは!とっくの昔に電波が届くようになってる。これだから時流についていけねェヤツは!」
「―――っ。とにかく携帯など俺には必要ありません」
だいたい持ち歩く必要性を感じない。そう告げたら、政宗の全身から怒気が迸った。
「必要性がない、だと?どの口をして抜かしやがるっ。俺をおい、て―――今、がその必要な……」
怒りのあまりだろうか。政宗の左眼に涙が滲んでいるようにも見えた。
「もういいっ!」
「政宗様っ」
どんっと力任せに小十郎を突き飛ばした政宗は、身を翻すと母屋を飛び出して祭殿に閉じ籠ってしまった。


ゴロゴロと雷鳴が鳴り響く。
思い返してみれば、あの諍いの直後から天候が急変したのだ。そして、今も進行中である。竜の機嫌もそれに引きずられた天候も一向に回復しない。帰宅してからのことを考えるだけで頭が痛い。
帰ってこいとの連絡で何事かと――政宗と諍ってまで――実家に戻った小十郎だったが、蓋を開ければたいした話ではなかった。年に一度社殿を清める――早い話が大掃除だ――のだが、今年は父がぎっくり腰をやって身動きが取れないので手伝え、というだけのことだった。つまり、人手が足りないので駆り出されたのだ。そうならそうと電話口で告げてくれたら政宗と拗れることもなかったのに、と心の中で散々身内に恨み言をぶつける。
母はこんな時ぐらいゆっくりしていきなさいと小十郎を引き留めたのだが、そういうわけにはいかない。先代宮司である祖父の「政宗様の“気に入り”をそう長く引き留めるものではない」という口添えがあって漸く解放され、早々に愛車に乗り込んだ。
途中繁華街を通ったが、街並みはすっかりクリスマス仕様で、この時初めて小十郎は
(ああ…そろそろクリスマスなのか)
と思った。政宗の言葉ではないが、時流に乗り遅れるのも甚だしい。
些か特殊な環境で育ったためクリスマスに特別感慨があるわけではないが、やはり“クリスマス”という響きは人の心を浮き立たせる効力がある。見れば街も人もどこか幸せそうだ。知らず、小十郎の口許も柔らかく綻ぶ。
(早く政宗様の許へ帰らねえとな)
不意に小十郎の眼に携帯ショップの看板が留まった。
『小十郎………お前、携帯持て』
携帯を持てと言った政宗の声が脳裏に甦る。あの時は突然何を言い出すのだと思ったが、あれは今のように離れてしまった時に連絡が取れないからという不安の現れだったのではないか。
不遜なところがある龍神様だが、彼は『おいていかれる』ということに対してひどく怯えた部分がある。初代〈小十郎〉との間で何かあったためだと薄々感じているが、今日小十郎が実家に戻るという話に過剰に反応したのもおそらくその所為だ。冷静になって慮ればすぐに気が付くことだったのに。
「携帯、か―――」
口の中で呟いた小十郎は何を思ったか、ステアリングを切った。


ただいま戻りました、と告げても返る言葉はない。母屋は真っ暗で、さてはまだ祭殿に籠っているのかと小十郎は溜息をついた。政宗は一度臍を曲げるとなかなか元に戻らないから厄介だ。
悪天候だが祭殿に出向かなければならないだろう。そう思って踵を返そうとした小十郎は手荷物を持っていたことに気が付いた。
携帯ショップの紙袋である。中には携帯電話が二台。自分と―――政宗に持たせるものだ。携帯ショップの看板を見つけた小十郎は店先の駐車場に車を停めると、その足で携帯を二台購入した。互いの電話番号は店員に登録してもらっている。
「これで機嫌を直してくれりゃあいいが………」
物で吊られるような単純な神さまではないが、少しは助けになってくれればいいと思いつつ寝室へ向かう。せっかく買ってきたのに雨に濡らすわけにはいかないと、とりあえず寝室に置いて来ようと考えたのだ。
「――――――?」
寝室の電気を点けようとした手が思わず止まった。廊下の灯りで薄明るく照らされた寝室のベッド、布団が不自然に盛り上がっているのを見つけたのだ。
小十郎は苦笑を浮かべて小さく肩を竦めてみせた。どうやら祭殿には出向かずに済みそうだ。
「まさむねさま」
布団を被って不貞寝を決め込んでいる。絹の如き手触りの黒髪が少しばかり覗いていて、小十郎の表情が綻んだ。
「……今日は申し訳ありませんでした」
布団越しに唇を寄せる。そして枕許にそっと紙袋を置いた。

明日、愛しい竜はどんなカオをするだろう?


お題配布元:love is a moment さま


昨年もやりました「クリスマスお題」に挑戦。
「クリスマスのための二十四題」ということで文字どおり24あるんですけど、昨年はこのお題を見つけたのが12/7で挑戦し始めたのが12/10という出遅れ。お蔭さまで24題消化できませんでした。
そんな昨年の反省を踏まえたうえで、今年は24題に挑戦です。アドベントもどきではなく、本気でアドベントカレンダーやる気ですよ(苦笑)!

そんな訳で、初日の今日は小政。宮司小十郎×竜神政宗です。
今年のお誕生日月間で書かせていただいた設定ですが、設定自体が気に入っているのと書きやすいのとで以降何本か書いています。
とうとう最新テクノロジーかぶれな竜神様は携帯を持たせてもらえました(苦笑)。
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