人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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チキン忘れるべからず【戦国BASARA:小政】

両手にクリスマスケーキの箱と某ファストフード店の袋を持ったサングラス姿の男の図―――というのは明らかに違和感があった。
片倉小十郎。東日本の極道の頂点に立つ伊達組、その直系の若頭補佐である。極道同士の抗争で得た勲章か、顎のあたりから左の目許近くにまで届く刀傷を残した面構えは精悍で、サングラスの下に隠された鋭い双眸は獲物を狙う肉食獣のように獰猛な光を湛えている。上等な黒のスーツに包まれた均整のとれた逞しい肉体は宛ら鋼の如く。
小十郎に惚れてこの世界に入った者も多いという、そんな男惚れをされるような極道者がクリスマスケーキの箱と某ファストフード店の袋――中身は十中八九“チキン”だろう――を持っているのだ。最早似合う、似合わない以前の問題である。
「か、片倉様っ?!」
ミスマッチも極まった若頭補佐の姿を目の当たりにし、目を剥いて素っ頓狂な声を上げたのは舎弟の良直だった。尋常ではない良直の声に他の舎弟もぞろぞろと顔を出し、続いて同じような反応をみせる。
「ど、どどどどうしたんスかっ。その………」
「あア?クリスマスにはケーキとチキンがつきもんだろうが」
「いや、それはそうッスけど…その、もしや片倉様ご自身で買いに行かれたので?」
恐る恐る良直が訊ねる。小十郎は「なに当たり前のことを言っていやがる」とばかりに舎弟の間抜け面を睥睨した。当然のことながら、ケーキもチキンも小十郎が自ら店に出向き並んで――掻き入れ時の店は行列を作っていたのだ――買い求めたものである。
どちらの店の店員も、外見からして如何にもその筋の人間である小十郎が現れても慄くどころか、最後までにこやかに応対をしてみせた。見上げたプロ根性だと密かに感心したものだ。
伊達の竜、或いは伊達の鬼として極道に名を知られた片倉様がそんな一般人みてぇなことを…と良直は嘆いた。その心情がありありと表情に表れ出ている。小十郎にしてみれば、舎弟達は自分に何を夢見ているのだろうと文句の一つも言いたいところだ。小十郎とて何も選ばれた特別な人間ではない。一般人と同じなのだから。
と言っても、こいつらには届かねえんだろうなと思う。慕われることに悪い気はしないが、どうにも小十郎の舎弟達は己に極道者の理想を重ねている節がある。
「そんなこと俺達に言い付けてくれれば良かったんスよ。わざわざ片倉様が出張らずとも……」
「いや、俺が頼まれたことだしな」
伊達組のNo.3であり、公には実子がいないとされている組長の跡を継いでいずれは伊達組を率いていくものと目されている小十郎を顎で使える者は限られている。オヤジである伊達輝宗、その右腕の遠藤、そして―――。
「政宗、さま…ッスか?」
政宗、という言葉に小十郎のポーカーフェイスが崩れた。まるで悪戯を目撃されてしまった子供のようなバツの悪そうな表情で押し黙る。
舎弟達には小十郎にとって政宗が特別な存在であることを割と早い段階で知られてしまっていた。それはそうだろう。逢引用に使っているホテルへの送迎や身辺の警護一切は、彼ら舎弟に任せているのだ。当然、急用が入って情事の最中に迎えに来られることもあるし、蕩けた肌を無防備に晒し――或いは常習性のある甘い毒を撒き散らして――一糸纏わぬ状態でベッドに寝そべる姿を何度も目にしている。硬派を自負する舎弟達には強烈な色香、過ぎた毒に違いない。
一見、擦り寄ってくる女に些か食傷気味になった小十郎が年若い情夫を囲っているようにも映るが、小十郎にとっての政宗は“情夫”などというそんな低俗な括りで片付けられるものではなかった。確かに躰の関係があり、互いの利で以て共存関係を築いている。けれど、互いの利だけでは決して動かされることのない―――もっと深い部分で繋がっている自覚はあった。言葉を換えれば、心を寄り添わせているのだ。
そして。
政宗は本来小十郎が傅くべき相手であった。
彼は最上政宗という。最上義光といえば、小十郎達日陰者と対極の立場にある―――警察組織の中枢に在る人間だ。政宗はその最上義光の妹の子、義光にとっては甥にあたる。自身も小十郎を取り締まる側の人間で組織犯罪対策部、昔でいえばマル暴に属していた。つまりは敵同士、普通であれば絶対に相容れぬ仲だったのだ。
けれど、政宗には隠された秘密があった。最上姓を名乗る彼の実の父こそ、伊達組の頂点に立つ伊達輝宗その人なのである。公には実子がいないとされている輝宗の血を引く唯一の人間。
無論互いに互いの立場があって、名乗り合うことはしていない。おそらくこの先もないのだろう。だが、言葉にはせずとも互いの存在を認めていた。
輝宗の血を引く者に相応しく、政宗は人を惹きつける独特の魅力を有していた。野性味を帯びた鋭い眼差しなど、向けられるだけでゾクゾクする。もし―――など仮定話をしても詮無いことだが、もし彼が小十郎と同じ側の人間であったならば、きっと平伏さずにはいられない、そんな怖ろしい存在となるだろうに。
政宗が輝宗の実子であることを知る者は限られている。一時期に比べて血腥い抗争は鳴りを潜めたが、西日本を拠点とする豊臣組が東に勢力を広げんとしている最中なので、抗争の道具となりかねない、ある意味伊達の弱点となり得るそれを最小限の範囲に留めるために徹底して秘匿しようとするのは当然のことだ。と同時に、それは彼の身を護るためでもある。
何にせよ、政宗が伊達の血を引くという事実を知る者は限られているのだが、どういうわけか小十郎の舎弟達はその事実を知る限られた者のうちに入っていた。まあ、確かにいざという時に政宗の身を護る人間が多いに越したことはないのだが。
「さすが政宗さまッスね。怖いものなしだ」
彼らは小十郎に男惚れしているように、政宗にも惚れている。おそらく――それを政宗は喜びはしないだろうが――彼に何事かあれば、平気で盾になることぐらいはするだろう。
「左馬助、今夜の予定は入っていないな?」
今夜は政宗と過ごすために予定を一切入れていない。スケジュール管理を任せている舎弟の左馬助に再度確認した。お互い忙しい身の上、漸く時間の工面ができたのだ。ここで失態を犯してしまっては怒り狂うだけでは済まない。
「はい。行き先はいつものホテルですか?」
「いいや。マンションに戻る。この荷物を見りゃあわかるだろう?」
今夜の逢瀬の舞台は小十郎のマンションだ。セキュリティも折り紙つきなら個人情報の守秘も徹底している。こんな日にホテルでの逢瀬だと如何にも狙っていたみたいで恰好悪いではないか。尤もそれは単なる小十郎の主観であり、見栄と言ってしまえばそれまでだが。
小十郎的にはケーキやチキンを買うために並ぶことやそれらをテイクアウトしてくることについては恰好悪いとは思わないらしい。政宗のために動いているからだろう。
「しかしこの時期、政宗様はお忙しいんじゃあ………」
年末にかけて夜の繁華街は忘年会などに繰り出す多くの人で賑わう。比例して警察沙汰になるような喧嘩も多く、この時期の警察は大忙しだ。
「テメエらがおとなしくしていてくれりゃあ、今夜は呼び出しがかかることはねえってよ。いいか、今夜は羽目を外して悪さするんじゃねえぞ。政宗様を煩わせるな」
情事の最中であろうと政宗が呼び出されればその時点で夢は醒めてしまう。お互いに次を約束できない身の上だけに、それが何よりも切ないのだ。
逢瀬に水を差してくれるな、と低い声で小十郎は凄む。勿論、舎弟達は首を縦に動かすことしかできなかった。


「Wow!マジで買ってきたのか?」
先にマンションに着いていた政宗は、予め小十郎から渡されていたカードキーを使って室内に入り、夕食のセッティングをしていた。料理好きな彼は、マンションで逢瀬を楽しむ時はこうして料理を作ってくれる。曰く、“運動”すると腹が減るのだそうだ。
ケーキの箱とチキンの入った袋を下げて帰った偉丈夫を見るなり、政宗もまた舎弟達と同じように瞳を丸くした。
「食べたいと仰ったのは貴方でしょう?ちゃんと並んで買いましたよ」
「並んで買ったって………誰が?まさかお前がなんて言わねェよな?」
「俺以外に誰が並んで買うというんです」
「いや、普通舎弟達に買いに行かせるだろうがよ。お前のポジションからすれば」
「貴方と楽しむためのものを余人に買いに行かせるなんざありえねえですよ」
当然のことだと小十郎が断言すると、突然堰を切ったように政宗が笑いだした。
「政宗様!」
「Sorry.な、なんだか可笑しくてよ。お前が……ケーキやらチキンやらを買うためにクリスマス一色の街に出向いて並んでる姿を想像すると…っ」
ごめんと謝っているクセに、尚も笑いが止まらないのか笑い続けている。笑い過ぎて呼吸するのが苦しそうだ。
「政宗さま………まあ、いくら笑ってくれても構いませんがね」
「Oh,my sweet dear.そう拗ねんなよ」
目尻に溜まった涙を指先で拭いながら、政宗が宥める。それでも眉宇を顰めて拗ねた――政宗以外の人間が見たら威圧しているとしか言えない態度でも、政宗の一眼には拗ねていると映っているのだ――フリをしていると、機嫌を直せと困ったように笑って今度は唇を塞いできた。
ぴったりと重ね合わせていた唇を僅かに開けば歯列を縫って舌先が入り込んでくる。性格そのままにその悪戯な舌先を追いかけてしっとりと絡ませた。
料理も買ってきたチキンもケーキも。その存在すら忘れてじゃれ合う。
「…なあ、小十郎。まずはメシにするか?」
「貴方の手料理もソソりますが、先に貴方の方を食べてぇ。明日は非番でしたよね?」
「Ya.お前ンとこの若い連中がやんちゃをしでかさなければ、呼び出されることはねェだろうよ」
「でしたらご心配なく。俺達の邪魔をするんじゃねえと厳しく言い置いてきましたんで」
「Ha-ha.伊達組の鬼小十郎に脅されちゃあビビッてやんちゃなんかできねェな」
政宗は可笑しそうにそう言って口許を緩めた。
「せっかく腕を揮って作った料理だが…そう美味そうに舌舐めずりされちまうと期待に応えてやりたくなる。いいぜ、まずはコッチを満たしてくれても、な」
「またそのように煽って…どうなっても知らねえですよ?覚悟してください」
「Ha,上等だ」
不敵な笑みで極道者を容赦なく挑発する。
最高の男と過ごす最高の熱い夜が幕を上げる―――――。





お題配布元:love is a momentさま








久しぶりに闇を継ぐ者シリーズの二人を書いたような気がします。893小十郎×警官政宗。
伯父の義光氏は警察官僚です。
ゲーム中のジェントルマンではなく、大河で義光を演じた原田さんをイメージしています。

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