人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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賛美歌なんて歌えない【戦国BASARA:小政】

途切れ途切れに主の歌声が聞こえてくる。細い歌声は凍てついた冬の夜空に向かって昇ってゆき、やがて澄んだ空気と混ざり合って端から消えていった。
寒かろうと暖をとるための火鉢を持った小十郎が拾い上げたそれは主の部屋から遠かったゆえに細部までよく聞き取ることができなかったが、今まで耳にしたこともない旋律で、おそらく南蛮渡来のものだろうと思われた。良くも悪くも好奇心旺盛な主は南蛮文化に興味を示している。そんな主だから南蛮の歌など、まるで乾いた土が水を吸収するように覚えてしまうことだろう。
(―――にしても、)
主の部屋から離れた場所にいる――主の許に向かう途中ではあるが――小十郎の耳にまで歌声が届くのだ。障子戸を開けきってのことか、それとも部屋から臨める庭へと出ているのか―――いずれにせよ、おとなしく室内に籠っているとは到底思えない。冬の冷気は身体に障る。風邪でもひいたらどうするつもりか。まずはそのあたりを諌めなければなるまい。
気持ち早足になるのは決して寒さのためだけではない。
眉宇を顰めてやれやれと嘆息した小十郎は、急ぎ主の許へと向かった。


案の定、主はこの寒さのなか障子戸を開け放って夜空を眺めていた。この日は前日まで降っていた雪が止み、珍しく夜になっても晴れていて、空気が澄んでいる所為か夜空には無数の星々が散らばっていた。
「―――政宗様、」
火鉢を抱えた顰め面で主の名を口にすれば、小十郎の心中など与り知らぬといった体で主の瞳が向けられる。その一眼は今宵の空よりも美しく澄んでいて、思わず魅入られる。
「よお、小十郎」
「お寒いかと思いまして火鉢をお持ちしたのですが………」
長く連れ添った者の勘とでもいおうか、続く言葉を素早く察知した主―――政宗はそれらを飲み込ませるために機先を制して艶やかな笑みを向ける。最近はこうした手管を覚えてしまったものだから頭が痛い。
「いい夜だ。閉じ籠るのが勿体ねェだろ」
傍らには徳利が転がっている。内側から温めるつもりで酒を飲んでいたのだろう。一応の“防寒対策”は頭にあったようだ。
「斯様な寒い夜に……風邪でも召したら如何なさるおつもりか」
「Ha!この程度でダウンするほど竜は鈍っちゃいねェよ」
また根拠のないことを、と小十郎はこれ見よがしに溜息をついた。
「そういう者に限って風邪をひいて寝床でうんうん唸るのです。風邪は万病の元と申します。ひいてからでは遅いのですぞ!」
「All right,all right」
小十郎の忠告を聞いているのかいないのか、肩を竦めて小さく笑う。小言を繰られても不貞腐れないところをみると、酒が入って気分がいいのだろう。
困ったお方だ。小十郎は政宗の傍に持参した火鉢を置くと、部屋の奥に仕舞われている厚手の羽織を探し出し、政宗に着せかけた。小十郎が傍にいながら主に風邪をひかせては、それこそ竜の右目の名折れである。
ふわふわと微笑む政宗を横目に小十郎は「先ほどの…」と切り出した。
「What?」
「先ほど政宗様の歌声が聞こえましたが、あれはどのような歌なのですか?」
「ああ、あれか。あれはな、外つ国の神を讃える歌だ。賛美歌っていうらしいぜ」
ふふ、と口許綻ばせて政宗が答える。
「日ノ本で言えば…祝詞みてェなもんか」
「はあ、然様にございますか」
国が変われば、なるほど神を讃える歌も異なるものだ。小十郎が耳にしたそれは節回しも全く違っていた。
「お前も本を辿れば神職の家の出だ。興味はあるんじゃねェ?」
どうだ、お前も覚えてみるか?と言われたが、小十郎は「いいえ」と答えて首を横に振った。たとえそれが政宗の命令であったとしても、小十郎は否と答えるだろう。無論、それは日ノ本の神に殉じてのためではない。
政宗が口にしたとおり、小十郎は神職の家の出で武家出身ではない。伊達家は出自にこだわることなく使える者を取り立てる御家であったため、小十郎のような身分でも取り立てられ、政宗が幼少の時分は傅役として、長じてからは竜の右目として片時も傍を離れぬ身となったわけだが、当時としては発展的だった伊達家にあってもやはり武家の出自という、ともすれば選民思想めいたこだわりは保守層――といえば聞こえはいいが、早い話が老臣どもである――を中心に根強く残っていて、小十郎も認められるまでは人知れず泣かされたものだ。
神職の出自ではある。だが、不謹慎なことながら小十郎は神というものを一切信じていなかった。神などこの世にはいないと割と早い時期に見切りをつけてしまっている。それは育ってきた境遇の所為もあるかもしれない。神事に携わることもあるので祝詞はひと通り上げられるが、それは形だけである。
とにかく。そんな小十郎であるので、神を讃美するなどあり得ぬことだった。讃える歌など覚える気もない。
「神など信じていない小十郎に、神を讃美する歌など歌えますまい」
「Ha,お前らしい。だが、神さまってヤツは懐深いから、信心が足りなくとも案外許してくれるかもしれねェぜ」
政宗は気にすることなく上機嫌で手酌酒を進めている。
「いいえ。神を讃美する歌などやはり小十郎には歌えませぬ。小十郎が唯一信じ、讃美するのは貴方様のみでございますれば」
「――――――っ!?」
途端。
それまで旨そうに飲んでいた酒を喉に詰まらせ、政宗がひどく噎せ込んでしまった。





お題配布元:love is a momentさま



戦国小政です。
タイトルを見た時、すぐにこのネタが浮かびました。
賛美歌→神を讃える歌。
小十郎にとっての“神”は政宗ただ一人です。

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