人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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トナカイのストライキ【戦国BASARA:小梵】

資福寺から戻った梵天丸が部屋に閉じ籠ってしまったと輝宗の許を辞して戻ってきたばかりの小十郎の首根っこを引っ掴んで異父姉の喜多が困り顔で訴えた。
聞けば、夕餉も「要らぬっ」と臍を曲げられたらしい。これは南蛮語で言うところの―――すとらいき、というヤツか。
「小十郎。お前、何ぞ梵天丸様の気に障るようなことをしたのではないでしょうね」
そう問い詰められたところで、小十郎に思い当たる節はない。
「然様なことは、とんと覚えがなく―――」
資福寺へは小十郎も同行したが、向こうにいる間はいつもどおり元気だった。あまりに元気が良すぎて、逆に此方が草臥れたくらいだ。確かに屋敷に戻る途上、少し元気のなさそうにも見受けられたが、それはひとつ年下の時宗丸と揃って暴れ回ったために疲れたのだとそれくらいに思っていた。
現に眠たい子供が愚図るのと似たような素振りをしていたから、屋敷に戻ったらまずは寝かしつけねえと、と小十郎は考えていた。ところが屋敷に戻って早々に輝宗に呼ばれ、小十郎は梵天丸の傍から離れざるを得なくなってしまったのだ。
梵天丸の傅役である小十郎の直接の主は、もちろん梵天丸である。しかし伊達軍の頭である十六代当主伊達輝宗は、当然のことながら伊達家の禄を食む小十郎にとって首を垂れるべき主である。その輝宗に呼ばれたのだ。一介の臣―――しかも嫡男の傅役にしか過ぎぬ小十郎が拒否することはできない。
ということは、梵天丸の“すとらいき”は小十郎が彼の傍を離れたことが原因か。
小十郎がそういう立場にあることをわからない梵天丸ではない。だが梵天丸という子供は感情の起伏が激しく、なかなか難しいところがある。頭では理解していても感情の制御が効かぬということはありそうだ。
何れにせよ、夕餉を召し上がらないのは困りものだ。
「天岩戸を抉じ開けるのはそなたの役目ですよ、小十郎」
異父姉の言葉に俺は天細女命じゃねえんだが…と内心長嘆しつつ、小十郎は臍を曲げてしまった小さな主の部屋へと向かった。


(さて、)
天岩戸はなかなか手強そうである。
何者も拒むかのようにぴったりと閉じられた障子戸を前に、小十郎は小さな溜息をついた。
気を取り直した――というより、気合いを入れたという方が正しい――小十郎はその場に跪き、梵天丸を呼んでみた。無論、戸が開く気配は全くない。
(これは相当臍を曲げていやがる)
「梵天丸様。聞こえておるのでございましょう?小十郎にございます」
当然返される答えはない。いい度胸だ。あとで『呼ばれた時はきちんと返事を』と教え諭さねば。こんな時であっても小十郎は傅役の顔を見せる。子供を―――しかも嫡男を教え導くなど、と不安だらけだった拝命当時の己からすれば、大層進歩したものである。
ここで小十郎が退いてしまっては、何の解決にも至らない。小十郎は天照大神が岩戸を開くまでおとなしく待てるほど殊勝ではないし、岩戸へ隠れてしまった小十郎の小さな神もそんな殊勝さを心の底から望んではいまい。
「梵天丸様、」
実力行使だとばかりに障子戸を開け放つ。
不貞腐れていた梵天丸は小十郎と目が合うや、ふいっとそっぽを向いた。口も利きたくないと言わんばかりの頑なな態度である。
「なにゆえ臍を曲げておられるのです。夕餉も要らぬとは一体如何したのですか」
「フン。小十郎自身の胸に問うてみろ」
傲然と言い放たれても、小十郎の胸に答えは宿ってはいない。なので「わかりませぬな」と平然と答えると、利発な面差しがむっと歪んだ。
小さな口がへの字に曲がる。癇癪が爆発する一歩手前、今にも地団駄を踏みそうだ。
「こじゅうろうが……っ」
「小十郎が如何しました?」
怖気ずに睨んでくる大きな左目の縁にいつの間にか水膜が張っている。零さぬように堪えているのが手に取るようにわかった。彼は負けず嫌いなのだ。
「小十郎が悪いんだっ。小十郎の主は梵天なのに、時宗や父上の言うことなんか聞きやがって」
「―――は?」
ぽかぽかと叩いてくる梵天丸の拳を受けながら、小十郎は些か間の抜けた声を発してしまった。
「梵天丸様?」
「小十郎なんか知らぬっ。知らぬ、知らぬ、知らぬっ!」
―――思い当たった。
小十郎は梵天丸の一つ下の従弟である時宗丸にも懐かれていた。梵天丸が疲れて昼寝をしてしまっても、時宗丸は元気玉で小十郎にやれ剣の稽古だ、やれ相撲の相手だと暇なくねだってくる。梵天丸にとってはそれが面白くないのだ。確か今日もそうではなかったか。
更には屋敷に戻って早々に輝宗に呼び出された。梵天丸にすれば、主は自分なのにという思いだろう。
そんな梵天丸を思い遣れば、立場云々など小十郎の言い訳でしかなかった。
「梵天丸様、」
知らぬ知らぬと頑なになって首を振る梵天丸の許へにじり寄ると両手を小さな肩へ置いて、宥めるように撫でた。
「今更申されるまでもなく、小十郎は他ならぬ梵天丸様のものにございます。輝宗様でも時宗丸殿でもありませぬ」
「そ、そうだ。それなのに―――っ」
「元より梵天丸様のものであるという小十郎の言葉を信じられませぬか?」
「――――――っ、」
「梵天丸様はいずれ伊達家をお継ぎになられるお方。そのお方が小十郎如きで然様な狭量を見せてはなりませぬ。梵天丸様は聡いお子ゆえ、おわかりいただけますね?」
「わかっている。わかっているがでも…」
「小十郎はこの先も梵天丸様のものにございます…なれど、それを案ずるというのであればこの小十郎、何ぞ証立てをいたしましょう」
「証立て?」
「然様にございます。梵天丸様のものであるという証立てを」
そこで暫し考えた梵天丸は、徐に小指を伸ばしてきた。
「指きりだ。嘘をついたら、梵天が針を千本飲ませるからなっ」
「嘘などつきませぬよ」
ふふ、と口許を綻ばせ、梵天丸の小指に自身の小指を絡める。
「ほんとう、本当だからな!」
「ええ」
力強く小十郎が肯くと、漸く安心したのか小さな躰が飛び込んできた。と同時に、ぐるぐると梵天丸の腹の虫が空腹を訴えてくる。
「―――うっ、」
「すとらいきは終いにしましょうか」
バツ悪く顔を真っ赤にした梵天丸の鼻先に自分の鼻先を擦り合わせ、小十郎は優しく微笑んだ。




お題配布元:love is a momentさま



小梵って書いていると「なんだか幸せになるなあ」といつも感じています。
読むだけでも幸せになりますが、自分で書いていても……ほわほわと温かくなるというか。
私の書く話って小政が多いので、たまに小梵を書くと余計に思っちゃいますね。
(小政の場合は、もう落ち着いちゃってる幸せ感ですけど)
これぞ『小梵マジック』なのかも。

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