人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top

あの子が一番欲しい物【戦国BASARA:小政】

そろそろ文机に向かっているのが厭きる頃合いではあった。
それまで単調に走らせていた筆を硯箱に置いた政宗は、大きく伸びをしてそれまで我慢していた欠伸をぶわりと大きくしてみせた。
小十郎は若い衆を連れて畑に出ていて、すっかり緊張の糸が切れてしまった政宗を見咎める者は誰もいない。今ならばいくらでも小十郎の目を盗むことができそうだ。
「さて―――、」
ずっと同じ姿勢だった所為か躰の動きが鈍い。成実を呼びつけて道場で稽古でもしようか。
それとも様子を見に畑へ行ってみようか。否、それだと小十郎の目を盗んだことにならないではないか。かえって藪蛇になりそうな気さえしてならない。
「ひ、ひひひひひ筆頭ぉぉぉぅ」
どうしたものかと政宗が腕を組んだその時、庭先に転がるようにして小十郎と共に畑に出ていた筈の良直が駆け込んできた。リーゼントをばっちり決めてはいるが、如何せん野良着姿である。
「どうした良直。そんな血相を変えやがって」
「か、片倉様が」
「小十郎がどうした」
鷹揚に答えた政宗は立ち上がると縁側に移動した。良直の顔つきは鬼気迫っていて、小十郎に何事かあったのだと知れる。問題は何が起こったのか、だ。奥州筆頭たる者、迂闊に取り乱してはならない。
(何が起こったって言うんだ。まァた畑を荒らしに来た猪を素手で仕留めたとか言うんじゃねェだろうな)
以前、政宗の次に愛している畑――そもそも畑と比べられるのってどうだろう。そのあたり未だに不満が残る――を荒らし回っていた猪を極殺状態の小十郎が素手で仕留めたことがあって、それは今なお村人と伊達の若い衆に語り継がれている小十郎の武勇伝の一つである。仕留めた猪を担いで意気揚々と帰ってきた小十郎の、その時の“ドヤ顔”を政宗は今も鮮明に思い出せた。確かその日の政宗の夕餉は『ぼたん鍋』だった。あれは豊かな食卓だったが―――それにしても、戦場ならばいざ知らず、畑でも小十郎の極殺が発動するとは。
あの勢いなら熊が畑で暴れ回れば、熊を素手で仕留めるような気がする。そうしたら夕餉は熊鍋か。
「良直?」
「か、片倉様が止まっちまいましたっ」
「―――What?」
小十郎が止まった?
意味がわからない。
首を傾げる政宗に良直は己が見た有様をどう伝えればいいかと必死に言葉を探した。探したものの巧い言葉が見つからなかったようである。
「そ、その。か、片倉様が畑で別嬪を見つけたと言ってそのまま…っ」
「別嬪―――だと?」
政宗の表情が強張った。
別嬪とはいわゆる美人のことを言うのではなかったか。女に対しての褒め言葉である。
つまりは女、だ。畑で美しい女を見つけて、それで固まったと―――そういうことか。
「Hey,そいつは聞き捨てならねェな」
政宗の隻眼にゆらりと炎が点る。口許を彩る笑みは美しくも迫力があって、敬愛する奥州筆頭のその変貌を目の当たりにした良直は「ひっ」と喉を引き攣らせた。
美人は怒ると夜叉になる―――政宗はまさに地でいっていた。
般若顔のまま「行くぜ」と良直に鋭い一声を浴びせ、ひらりと縁側から飛び降りる。双竜は互いのこととなると反応が素早すぎるのだ。
「良直!モタモタすんじゃねェっ」
思わぬ竜の一喝を受けた良直は、慌てて政宗の背を追った。


畑へ着いた政宗の目に飛び込んできたのは、良直の言葉どおりに畑の中央で固まっている小十郎の姿だった。まるで雷に打たれたようにその場に凍り付いている。一緒に畑仕事をしていた若い衆は、そんな小十郎の有様を遠巻きにして「どうしよう」とオロオロしていた。彼等は畑に姿を現した政宗の姿を見るなり、一様に泣きそうな目で縋ってくる。
筆頭、筆頭と厳つい野郎どものいつもとは異なる悲愴な大合唱を右手で制し、畑へと降りた。
ぐるりと辺りを見渡すが、別嬪と言われた女らしき者は見当たらない。さては姿を隠したか。
「小十郎!」
一度呼んだくらいでは呪縛は解けぬらしい。俺の声も耳に届かねェほど腑抜けちまってるのか、と政宗は苛立ちを露わにした。
小十郎、と今度はやや強い口調で――しかも非難めいた――呼びかけると、漸く解凍を果たしたらしい小十郎がぎこちない動作で政宗の声がした方向へ躰を向けた。
「まさむね、さ、ま?」
「Hey,一体どういうことだ。あア?」
ズカズカと小十郎の許まで歩み寄る。足許が汚れると通常であれば諌められるところだが、たとえそうなったところで今回ばかりはまるっと無視だ。
「如何為されました」
どうやら政宗が怒っているらしいということは認識したようだが、何故怒っているのか理由までは思い至らないらしい。
「小十郎、テメエがイカレたっていう女は何処だ?」
「女―――?然様な者はおりませんが…そんなことより、」
(そんなことより、だとォ?コイツ、あっさり俺の追及を躱しやがったっ)
「そんなことより、政宗様。これをご覧くださいませ。小十郎の畑にて斯様に美しい葱が」
小十郎は陶然とした面持ちで――恭しく――政宗に葱を差し出してきた。美しいかどうか、政宗には判別できない。葱は葱である。
「この白さ、柔らかさ、瑞々しさ…どれをとりましても正しく“美人”にございます」
「び、じん………だと?」
はい、と実に男臭い笑顔――こんな時ではあるが惚れ惚れする――で小十郎は首肯した。
「そいつは……別嬪、ってことか?」
「然様にございます。小十郎も収穫の際に俄かには信じられず、お恥ずかしながら場を弁えずに『別嬪がいやがるっ!』と叫んでしまいまして………」
「Oh………」
全てが結びついた。今までの焦りも怒りも一気に解けて脱力する。
つまり、別嬪は人ではなくて葱ということか。
小十郎の頭の中ではその構図が成立しているだろうが、他の連中が共有しているわけではないのだ。そこで“別嬪!”という叫びを聞いた周囲が誤解をするのである。
そうして根本から誤解をされたまま政宗の許まで届いてしまった、ということだ。まあ、普通誰が考えても別嬪とは女の褒め言葉であり、それを葱には結びつけないだろう。
(まア…なんだ。誤解した良直達を責める筋合いはねェな)
「政宗様?」
「いや………なんでもねェ。今日の夕餉はその色白美人でネギ汁にしてくれ」
怪訝そうに首を傾げる小十郎を見、政宗は長嘆した。




お題配布元:love is a momentさま



那須には『白美人』というネギがあるんですが(美味しいです)、スーパーで白美人買ってこようかなあ…なんて考えていたら『美人』という言葉で誤解した政宗が嫉妬するネタができました(苦笑)。
政宗様を愛し野菜を愛する小十郎ですから(苦笑)、端からそんな嫉妬する余地もないんですけどね。

Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://sinners.blog13.fc2.com/tb.php/1713-803a403a
プロフィール

安曇

  • Author:安曇
  • 今日も元気に生きてます。
カレンダー(月別)
10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ちびギャラリー
 

presented by.●○紅羽のTWぶろぐ○●
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。