人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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特大サイズの手編みの靴下【戦国BASARA:小梵】

小十郎の膝にちょこんと乗って幼い主―――梵天丸が書物を読んでいる。膝を提供している小十郎はお蔭で全く仕事にならないのだが、一心に書物を読み耽る――この日は南蛮の習慣に関するものらしい――梵天丸の可愛らしい姿を間近で眺めることができるので構わないかと我ながら現金なことを思う小十郎である。
梵天丸は読書が好きだ。右目のことがあって一時期内向的な性格であった頃に慰めてくれるのは書物だけだったということもあるが、元々好奇心旺盛で知識欲に貪欲なところがあるので、健やかな心を取り戻した現在も、稽古に励む一方でこうして書物に親しむことを忘れない。それこそ書庫に籠って一心不乱に読み漁っていたり、若君らしく書見台に向かってということもあるが、たいていの場合はこうして小十郎の膝に乗って読むことが多かった。
「小十郎!」
書物から目を上げた梵天丸に突然名を呼ばれる。仰視してくる幼い主に向かって「どうしました?」と柔らかな笑みを浮かべて問いかけると、梵天丸は弾けんばかりの笑顔を見せて言った。花のように可愛らしい笑顔だ。
「小十郎っ、大きな足袋を用意しろ」
「足袋…ですか?」
「そうだ。うんと大きいヤツだぞ」
突然何を言い出すのかと思えば、足袋など一体何に使うのだろうかと小十郎は首を捻った。しかも大きな足袋、ときた。
梵天丸の足にというのであれば、ちょうどぴったりなものを所望する筈だ。皆目用途がわからない。
「急に“うんと大きいヤツ”と申されましても……困りましたな。一体何にお使いになるのです?」
さり気なく問うてみると、梵天丸はそれまで滑らかだった口を急に噤んでしまった。もどかしげに小さな体を揺らしている。
「サンタがな」
「はあ…三太、ですか」
三太、という言葉は昨年も耳にした。ちょうど今時分の頃ではなかったか。確か天主教で師走の二十五日、神の子が生まれたことを祝う日に、それまでの一年間良い行いをして過ごした子供の許に贈り物を届けてくれるという白髭の爺のことだ。
良い子にしていれば梵天にもプレゼントをくれるだろうかと健気に言う梵天丸を見て、いっそ自分が三太の代わりに彼の望みに副うてやりたいと思ったものだが、彼の傅役でありながら結局梵天丸の欲しいものとやらはわからずじまいで一年が経ってしまったのだった。
昨年は梵天丸の望みを汲み取れなかったが、今年こそはと心なしか気合いが入る。そんな小十郎を些か訝しげに見上げ、梵天丸は手にしていた書物をパタンと閉じた。
「枕許に足袋を置いておくと、サンタがその中にプレゼントを仕込んでくれるらしい」
これに書いてあった、と今しがた閉じたばかりの書物を小十郎に向かって掲げてみせる。
「然様ですか。それでは早速梵天丸様のために足袋を用意いたしましょう」
「ぐっど。普通の足袋じゃだめだぞ?うんと大きなヤツでないと」
梵天丸はやけに“うんと大きな”足袋に拘っているようだ。さて、一体どれくらいのものを欲しているのだろう。憚りながら、上背のある小十郎は鋼の如きその体つきに見合うべく足も大きい。ならば小十郎のものくらいだろうか。物を浪費するのを潔しとはしない小十郎ではあるが、だとすれば真新しい足袋をひと揃え、幼い主のために下ろすのは吝かでない。
「梵天丸様。小十郎は暫しお傍を離れまするが、どうかお許しあれ」
梵天丸の両脇に手を差し込み立たせてやる。今日ばかりはごねずにおとなしく従ってくれた。梵天丸は小十郎の膝に乗っかった恰好で書を読むのが好きなのだ。好きなことを邪魔されてなお機嫌を損ねない者はいないだろう。梵天丸の場合は生来激しい気性の持ち主だからか、その損ね方が些か激しいというだけだ。
許す、と神妙に肯いた幼い主に再度微笑みかけ、頭を垂れると課せられた使命を果たすべく主の前を辞した。
四半刻ののち、真新しい足袋を携えて小十郎は梵天丸の元へ戻った。
廊下の板敷から「梵天丸様、」と声を掛けただけなのに、梵天丸は待ちきれなかったのか自ら障子戸を引いて、勢い小十郎の懐へと飛び込んできた。突然のことに驚いたが、なんとか小さな体を抱き留めることに成功する。まあ、勢い良すぎて尻餅をついてしまったけれど。
「ぼ、梵天丸様!」
「小十郎っ、用意してくれたか?うんと大きな足袋」
「はい。こちらに」
梵天丸の喜ぶ顔を想像するだけで頬が弛む思いをしつつ、小十郎は恭しく真新しい足袋をひと揃え差し出した。
途端。
「のー」
南蛮に興味を持ち始めた梵天丸は会話の端々に南蛮語を散りばめる。小十郎はなかなか意味が掴めずに戸惑うことばかりだが、頻繁に聞く言葉はニュアンスでなんとなく語意を察することができるようになりつつあった。確か「のー」とは「違う」とかいう感じではなかったか。
つまり―――ダメ出しだ。
「梵天は“うんと大きな”と言ったんだぞ。これじゃあちっちゃい」
「な―――っ?!」
ふくれっ面で文句を言われ、小十郎は驚きに目を見開いた。充分大きなものだと思っていたのだが、梵天丸が所望する物はまだ大きいのか。いや、更に大きな足袋、梵天丸の望みに見合う大きさのそれが城内にそもそもあるのか。
むむむと眉宇を寄せて必死に考えを巡らせる小十郎などお構いなしに梵天丸は「違う!」とダメ出し判定を下す。
「………違う、のですか?」
「普通の足袋じゃだめだって言ったじゃないか」
「―――はあ」
「梵天の欲しいものは、こんなちっちゃな足袋じゃ入りきらんっ」
「――――――っ、」
梵天丸の欲しいものとは、どれほど大きなものなのだろう。
(く…っ、わからねえ!傅役失格じゃねえかっ)
今年もまた幼い主の望みを汲み取ることができなかった。
まるで飼い主に怒られた犬のように、小十郎はしゅんと項垂れた。





お題配布元:love is a momentさま


今日の小梵は昨年のアドベントで書いた小梵とビミョーにリンクした話になります。
昨年はサンタになり代わり自分が梵天丸の欲しいものを贈ってやろうと思っていたのに結局わからなかったため、今年はリベンジ!という小十郎のお話。
さすがに手編みの靴下は設定的に用意できないだろうと思って、梵天丸に靴下の代わりに巨大足袋を所望させました(苦笑)。
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