人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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蜂蜜味のリップクリーム【戦国BASARA:小政】

アトベント挑戦も残すところ今日を含めてあと4日となりました。
本日はにょた宗仕様となります。
なので、本編は折り畳みです。お手間をとらせます。

唇フェチなリーマンこじゅと女子高生政宗です。
…小十郎がちょっとオカシイです(苦笑)。

ワイシャツの胸許より少し上―――ちょうど鎖骨のあたりになるだろうか。とにかくそのあたりにベッタリと口紅らしきもの――しかも見事なキスマークだ――が付いているのを、甚だ間抜けなことに出社してから気が付いた小十郎である。
おそらく電車の中で付けられたのだろう。小十郎が乗る時間帯は出勤ラッシュで身動きの取れない満員状態だ。押しつけられた弾みで付いてしまったに違いない。言うなれば、お互いに不可抗力。とはいえ、朝からとんだアクシデントである。
会社のロッカーに替えのワイシャツがあるので着替えれば済むことではあるが、口紅は洗ってもなかなか綺麗には落ちにくいので、このシャツはもう使えないかもしれない。
(それにしても、)
着替えたあとで改めてキスマーク付きのシャツを眺めてみる。
「………いい唇の形をしていやがるじゃねえか」
思わず表情が弛んでしまって、慌てて引き締めた。だが、努力も束の間、すぐにまた弛んでしまう。
実は小十郎、唇にこだわりを持つ男だった。いわゆる“唇フェチ”というヤツである。
シャツに付いた魚拓ならぬ口拓は綺麗な形をしていた。偶然付けられたものなので、当然のことながら誰のものとも知れないのだが、叶うことならば一度この唇の持ち主を見てみたいものだ。
相手もあの時間帯、あの電車を使っているのだろうか。だとすれば、あの電車を使っていれば遭遇するかもしれない。この感覚は―――そう、片想いの相手と毎日同じ電車に乗り合わせる、あの甘酸っぱい感覚と似ている気がする。
「…柄でもねえがな」
そんなシチュエーションにときめくような――青臭い――年頃はとうに過ぎてしまったけれど。
日々憂鬱でしかなかった出勤時の満員電車にちょっとした楽しみを覚えた小十郎だった。


曜日によって確かに程度の差はあるのだが、相変わらずその日も電車は満員だった。小十郎はいつものように降車駅で開く側のドアに凭れて――というより背中を押しつけられて――経済紙を呼んでいた。
沿線に高校があるため、電車通学の高校生も多く利用している。通勤利用のサラリーマンと時間が重なるため、これが満員電車に拍車をかけているのだ。
いつもの駅で女子高生が乗客を押し分けて乗ってくる。パッと目を惹く、ちょっと気の強そうな子だ。スレンダーな体つきといい、例えるなら猫といったところか。
あまりジロジロ見るのも今日日あらぬ疑いをかけられかねないのだが、やはりこだわりの“唇”にどうしても目がいってしまう。
いい形だ。ふっくらとして艶めいた桜色の唇。もう少し育てば好みの範疇に入ってくるが、如何せん高校生である。小十郎は乳臭い子供には全く興味がなかった。
乗客を押し分けて乗り込んだものの、乗客に揉まれてどんどん反対側――小十郎が陣取っている側だ――へ押し流されてくる。可哀想に揉みくちゃになってしまって制服もヨレヨレだ。お洒落に気を遣う年頃には痛い。
「Shit!」
桜色の唇からは頻りに悪態が零れ落ちていた。可愛らしい顔に似合わず辛辣な言葉が容赦なく転がる、そのギャップが面白い子だと思った。
カーブに差し掛かったのだろう。車両が大きく揺れ、揺れた弾みでその女子高生が乗客に押し出されて小十郎に真正面からぶつかった。「うわっ」と声が上がるや、体ごとぎゅうと押し付けられてそのまま身動きが取れなくなってしまった。
「大丈夫か?」
「ご、ごめん―――っ」
余計なお世話だとは思ったが、その体勢は苦しいだろうからと手で支えてやる。腕一本ではあるが、壁の代わりにはなるだろう。
どうにかポジション取りを果たした彼女が、「あっ」と小さな声を上げた。
「どうした?」
「あ、あの……オレ」
狭くなったスペースでどうにか首を巡らせると、申し訳なさげな表情とぶつかった。彼女は小十郎と目を合わせるとすぐに気まずげに視線を泳がせる。
「ごめん、オレ―――シャツに……」
泳いだ視線の先にあったのは、またもやキスマークだった。
たぶんぶつかった時だと消え入りそうな声。だが、小十郎の耳には届いていなかった。なぜなら、小十郎は覚えのあるその形に意識丸ごと釘づけだったからだ。
(こ、この形は―――っ)
天啓である。
この形は以前偶然に付けられてしまったものと同じではないか。いい唇の形をしているとしみじみ思った―――あれ、だ。叶うことなら一度この唇の持ち主を見てみたいと思ったが、まさか。
「こんなところで脱げ、とはさすがに言えねェよな…。でも洗わねェと落ちねェし……どうしよう。えっと、そうだ!弁償、クリーニング代払うから」
顔を真っ赤にして一生懸命に言い募る姿がなんだか可愛いと不覚にもくらりとしてしまったちょうどその時、小十郎が降りる駅に着いた。
車両がホームに滑り込み、ドアが開いて彼女ごと乗客をホームに吐き出すと、定刻どおりに発車してしまった。
「あ………」
元々降車駅なので小十郎はいいとして、彼女の降りる駅はもう一つ二つ先なのだろう。走り去っていく車体をぽかんと見つめている。
「会社に行けば替えのワイシャツくらいあるし、俺は大丈夫だから。次の電車を捉まえねえと学校に遅刻するだろう?」
言い聞かせるように努めて優しく――なにしろ強面の風貌であるので――言ったのだが、尚も逡巡している。小十郎のワイシャツの心配よりも学校に行くことの方が彼女にとっては優先順位が上だろうに。小十郎のワイシャツなどいくらでも替えが効くのだから本当にとうでもいいのだ。
などと鷹揚に小十郎が構えられるのは、彼女の唇の所為だろう。好みの形、好みの唇―――叶うことなら一度見てみたいと求めた相手。
(まさか高校生だったとはな。さすがに予想外だ)
「でも、それじゃあオレの気が済まねェ」
「厚意はありがたいが、こんなことで遅刻をさせちまったら、それこそ俺の方が申し訳ねえだろうが。大人である俺の面目が立たねえ」
「うっ―――」
むうと頬を膨らませる。暫し無言だったので「これはおとなしく引き下がってくれるか」と思ったが、そうはいかなかった。
「じゃあ、名刺くれよ」
「―――は?」
「連絡先。あとで改めてきちんと謝りたいから」
今どき珍しい。
じっと見上げてくる左眼の、眼力の強さに気圧されて名刺を差し出した。
「ふうん、片倉サンっていうんだ?」
小十郎って武将みたいな名前だな、などと無邪気に笑われる。もう一枚、と催促の手を出されて素直にもう一枚あげると、鞄からペンケースを取り出してボールペンを選び、裏面に自分の名前と携帯番号を書いて小十郎の手に戻した。
「オレの連絡先、と名前。一方的なのは失礼だからな。とにかく本当にごめん。今は言葉に甘えちまうけど、改めて謝らせてくれよな」
ぺこりと頭を下げた彼女は、ちょうどホームに入ってきた電車に乗るために身を翻した。
無事に後発に乗り込むことができたようだ。乗降口付近に陣取れたらしい彼女と視線が交錯すると、笑顔で手を振られた。尤も、手を振り返すわけにもいかず――そんな勇気はない――苦笑するだけに留めおく小十郎である。
小十郎の手の中で踊る綺麗な文字。
「伊達、政宗か……」
世の中どう転がるかわからないものである。どんな形で出逢いがあるか、なんてわかったものではない。
「乳臭いガキには興味がなかったんだがな―――」
そういう恋の始まり方があってもいいだろう。





お題配布元:love is a momentさま



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