人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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122.嘲笑って【戦国BASARA:小政+慶次】

気を配っていたつもりではあったが、些か酒杯が進み過ぎたらしい。杯を手にしたまま珍しくうつらうつらと舟を漕ぐ政宗の姿があった。
「政宗様、些か御酒を召し過ぎですぞ。この辺で終わりになさいませ」
手にした杯――まだ底に酒が残っている――をそっと取り上げて小声で言い諭すと、まるで幼子のように小さくむずがった。二人で過ごす時ならばいざ知らず、他人の目がある中でこういう態度をとるのだからかなり酔いが回っているのだろう。少なくとも素面の政宗は他人の前でこんな子供じみた態度をとらない。
くすと笑う気配が対面から流れてくる。
「へえ、こいつはいいものが見れた」
「―――見せモンじゃねえぞ」
ぽすんと軽い音を立てて胸に頭を預けてくる政宗を目の前の好奇な視線から隠すようにして、小十郎は番犬宛らの鋭い気を開放したまま威嚇した。だが、そんな小十郎の牽制も眼前ですっかり寛いでいる男―――風来坊こと前田慶次には届かない。へらへらと笑って「いいねえ、いいねえお二人さん」などと茶々を入れてくる始末だ。
政宗は酒が強い方では決してなかったが、少なくとも自分の限界を知っているので節度のある飲み方をするのが常だ。それがこうして酔い潰れてしまうのだからよほど旨い酒だったのか、酒を酌み交わす時間を楽しんでいたのか、或いは慶次が勧め上手なのか―――少なくとも三番目であったら今この場で刀の錆にしてくれようと小十郎は思う。
「すまねえが今夜はお開きにしてくれ」
「別に俺は独眼竜の寝顔を肴にでも構わないよ?」
「誰がテメエなんぞに政宗様の寝顔を拝ませるか」
寝落ちてしまった政宗を抱えて立ち上がった小十郎は、上機嫌な笑みを見せる慶次に向かってそんな捨て台詞を吐いた。我ながら独占欲が強いものだと思う。
「じゃあさ、独眼竜を寝かしつけたらもう少し付き合ってよ。実を言うと、まだ飲み足りないんだよね」
図体のでかさが酒への耐性に比例しているのだろうか。溜息を吐いた小十郎は、どうしたものかと考えを巡らせた。
一応現在の慶次は客人扱いである。政宗は常日頃客人へのもてなしを重んじていて、飲み足りないという慶次――一応客人――に手酌酒をさせるのは、ある意味主の心に反するというものだ。政宗がこの場を降りる以上、そして客人がまだ満足していない以上、主に代わって小十郎がこの場を引き継ぐしかない。
抱き上げた主の寝顔を見、それから上機嫌な慶次の顔を見、小十郎は小さく舌打ちする。そうして「…少し待ってろ」とだけ言い置いて、政宗を寝所へ連れて行くために一旦その場から離れたのだった。


なんでテメエと飲まなきゃならねえとばかりに口をへの字に曲げて返杯を受ける小十郎の態度など気にもせず、慶次は「一度右目の兄さんとも飲んでみたかったんだよね」と言って陽気に笑った。
確かに慶次は酒の勧め方、飲ませ方が上手いのだろう。これでは政宗の度が過ぎてしまうのもわかるような気がする。
最初こそ憮然とした表情で――それは寝所に政宗を置いてきてしまったからに他ならない――ちびちびと唇を濡らしていただけの小十郎も、時間が経つと杯を傾け、慶次の他愛のない話に乗るようになった。更には話題が政宗のこととなれば、口も滑らかになる。酒の力を借りている所為もあって、聞きようによっては惚気にも等しいものだ。
他人にとっては傍迷惑であろうそれを肴に、慶次は美味そうに酒を飲んだ。
「右目の兄さんって…ほんと独眼竜が総てなんだねえ」
「当たり前だ。俺は政宗様のために生きている」
何の迷いもなく、きっぱりと言い切る。政宗のために生きているとは誇張でもなんでもなく、小十郎の真であった。
無論、傍仕えした当初からそう思っていたわけではない。小十郎は政宗の傅役として彼が九歳の頃傍に上がったのだが、当時の己と言えばお世辞にも素行が良いとは言えず――傅役に就く前に大殿の徒小姓として召されているので、一応の礼儀は押さえたが――、まして子供と接するなど皆無であったし、政宗と言えば置かれた環境もあって子供にしては気難しく卑屈だったので、傅役に抜擢されたと聞かされた時には正直途方にくれたものだった。
嫡男の傅役といえば、ゆくゆくは重臣となる身である。将来の展望が開けたと言ってもいいが、そんなことよりも小十郎は己が嫡男の傅役としてやっていけるか不安で、とてもではないが喜べなかった憶えがある。それで同席していた異父姉に後から殴られたのだ。
大殿も大きな賭けにでたものだと皮肉半分に当時は思ったものだが、今になって思えば不完全な子供同士、共に成長させようという親心だったのかもしれぬ。かちりと歯車が噛み合ったみたいに、己と政宗は互いに欠けた部分を補って今日まで生きてきた。なるほど大殿の大博打は当たったのだ。今頃草葉の陰で満足げに笑んでいるかもしれない。だとすれば、ほんの少しだけ大殿に恩が返せたと自惚れてもいいだろうか。
とにかく紆余曲折、様々なことがあって政宗は小十郎の〈世界〉そのものとなった。これまでの経緯はどうであれ、〈竜の右目〉となった小十郎は政宗の一部であり、もはや彼なしでは生きられぬ。竜本体を失して右目が生きられぬように。
この世が闇と言うならば、小十郎にとって政宗は闇に射す光と言ってよかった。
「……政宗様は俺の〈世界〉だ」
「右目の兄さんをそこまで惚れこませるなんて、独眼竜って凄いねえ。いいね、羨ましいよ。そういうのってさ」
「ふん。羨ましければ、テメエもいつまでもフラフラフラフラ根無し草みてえなことやってねえで、そうと思えるような相手を見つけたらどうだ?」
「げっ、此処でもまつ姉ちゃんみたいな説教を喰らうとは…まいったね、こりゃ」
慶次が陽気に笑う。参ったと言っているが、どうせ右から左へ聞き流しているに違いない。前田の奥方の苦労が忍ばれる。
「独眼竜のために生きているかあ……うん、右目の兄さんはそんな感じだよね。でもそれって怖くないかい?」
「怖い?」
どういう意味だと目を瞬かせる。政宗のために生きているという小十郎はそうあることを誇りに思いこそすれ怖いと思ったことは一度もない。
「まあ、当事者だからわからないか。そういうもんだよね」
「―――前田、」
命短し、人よ恋せよ。そんなことを嘯く男が。
「兄さんは独眼竜と離れるときのことを考えたことはある?」
ズキンと胸が痛んだ。
政宗と離れる―――それは様々なケースが想定できるだろう。生きながら離れ離れになることも考えられるが、それよりも自分達にもっと身近なのは〈死〉だろう。
お互い戦場に立つ武将だ。死を怖れてはいない。そういう覚悟で戦場に立っているし、政宗も同様だろう。
あまりにも身近すぎる〈死〉。小十郎はゆえに二人を別つものがそれであるとの前提で物事を考えていた。
「独眼竜を〈世界〉と言っちゃうくらいの兄さんだ。もしも離れたら生きていけなさそうだなあと思って」
「…そうだな。おそらくあの方のいない世に未練なんざ欠片もねえだろうな」
政宗を喪えば、残った小十郎など抜け殻に等しい。きっと何をすることもできず、無為に時間だけが過ぎていくのだろう。そんなのはご免だ。それくらいならすぐにでも追い腹を切る。彼を一人黄泉路に旅立たせるつもりはない。すぐに追いついて共に逝こう。
(ああ、でも―――)
己が残されたらそれでいい。そういう己に未練はないのだから。寧ろどうしても避けられぬと言うならば、そうであってほしいと思っている。
けれど、運命は常にそうとは限らない。
「…………………、」
「兄さん?」
まるで喉許に刀の切っ先を突き付けられたような気分だ。
小十郎は杯に視線を落とし、苦く笑った。




意図せず暗い話になってしまって書き上げてから「うわ、どうしよう」と思っています(苦笑)。
小十郎は政宗がいないとたぶん生きていけそうにはないよなーと思っていたらこんなことに……。
逆に政宗は、表面上は強く生きそうな気がします。奥州筆頭、とか当主、とかそういう責任を背負っているから。そういう責任に生かされている。
そうした諸々の責任から逃れた時に初めて崩れるのかなーと思います。
本当は書きたいことがあったんですが、そうするとどうしようもなく真っ暗になってしまうのでこのあたりで切り上げてしまいました(苦笑)。
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