人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
    --:-- | Top

幽世の果てまで【戦国BASARA:小政】

真っ白な世界。
白は厳しい奥州の冬を連想させる。音を飲み込み、視界を塗り潰されていっそ恐怖さえ覚えたものだが、同じ色合いであっても目にするたびに感じた怖れを今の政宗は不思議と感じることはなかった。
眩いばかりの光が色を奪っているのかもしれない。だから白く見えてしまうに違いないと思った。辺りは目も眩まんばかりの光に溢れていて、“二度”も右目を失った一眼の政宗には些か酷過ぎる。
けれど足許が覚束ないと思えばそうでもなく、その歩みは性分そのままに力強いものだった。

キョッキョッキョッ。

不如帰の啼く声が聴こえた。ああ、こんな所にまでくっついてきちまったのか、と姿は見えど聞こえる声音を仰いで政宗は静かに微笑んだ。
経ヶ峯で聞いた忍音の主だろうか。
「―――ま、退屈な一人旅だ。連れがいてくれた方が助かるってモンだ」
いつ終わりが見えるかもわからぬ、長い旅路だ。これも縁だというのなら、最後まで付き合ってもらおう。
姿の見えぬ連れに政宗は語りかける。失うものが多すぎた幼い時分のこと。それを補って余りある大切なもの―――己が世界の中心にも等しい存在を得た日のこと。独眼竜と呼ばれ、戦に明け暮れた日々。繰り返された戦の果て、ようよう天下が鎮まって訪れた――激動を過ごした武人の己にとっては些か退屈ではあったけれども――穏やかな毎日。
そして―――己が世界の中心が終わりを迎えた日のことを。
「………小十郎、俺のことわかるかな」
彼を看取ったのは三十年近く前の話だ。それから政宗は空虚に耐えながら一人で過ごしてきた。再び見える奇蹟に恵まれるかどうかは定かでないが、もし再見したとして小十郎以上に歳を重ねた政宗を彼はわかってくれるだろうか。
「Ha!思い煩うまでもねェな。あいつは俺の〈右目〉だ」
たとえどんなに時間を隔てたとしても、あの男のことだ。きっと己を見定めてくれる。それは長い年月連れ添ってきた政宗だからこそ得られる確信。
「ああ、逢いてェな。小十郎に」
再見できたら、年甲斐もなく小十郎に抱きついてしまうだろう。
だって仕方がないだろう。自分達は双竜―――添う竜だったのだ。永に此岸と彼岸とに引き離されていた二人が幽世でやっと巡り逢うことが叶うのだから、年甲斐もなく抱きつくことぐらい大目に見て欲しいものだ。
そして小十郎はそんな己を「童ではないのですから」と言って窘めながら、口に反して愛おしげに抱きしめてくれるに違いない。
そうしたらまずは何を話そうか。
「そうだな。まずは………俺は最期まで俺らしく生きたって誇ってやるか」
ふふふ、と笑う。不思議と気分が晴れ晴れしていた。


何も見えない道をどれだけ歩いただろうか。
「What?」
急に政宗の眼前が拓ける。
眩んだ一眼が漸く慣れてくると、大きな川が見えてきた。それは東から西に向かって流れていて、涼しげな川音も聴こえる。
川岸には渡し用の小舟が停泊していて、列を作った人々がどうやら乗船待ちをしているようだ。
「Hum…ありゃ三途の川ってヤツか?もっと殺伐とした処かと思ったんだが、想像していたものとは随分違うな」
行く先が地獄にしろ、極楽にしろ、あの川を渡らなければ始まらない。政宗は小舟が停泊している其処に向かって悠然と歩き出した。
(そういや…ずっと聴こえていた不如帰の音が聴こえなくなっちまった)
此処まで導いてくれたのだろうか。永の旅路の終わりまで付き合ってくれるだろうとばかり思っていたあの不如帰の鳴き声はいつの間にか消えていた。
「仕方ねェな。此処からは一人で行くさ――――」
次第に渡河場が近づいてくる。三途の川の渡河料だろう―――人々は傍らにいる渡し守に冥銭を渡しているらしい。冥銭は六文が習わしで、六文銭と言えばかつて己が好敵手だった男の家紋だった、などと懐かしく思い出した。
こうやってひとつひとつ現世の思い出を流していくのかもしれない。この胸にたったひとつ残ってくれれば、それ以外の思い出を此処で総て流したとしても構わない。
幽世までも己の一部として連れていきたいものなど、政宗にはたったひとつしかないのだ。
三途の川の渡し守は二人いるようだった。その二人のうち、手前の男に吸い寄せられるように政宗の瞳が向けられる。
それは偶然だったのだろうか。それとも―――?
「―――――っ、」
近づくにつれて左眼が大きく見開かれる。隠しきれない昂揚感を映し込んだ唇には自然に笑みが浮かんだ。
「お待ちしておりましたよ、政宗様」
「Marvelous!三途の川の渡し守とやらがお前だとは思わなかったぜ―――小十郎?」
待っていたと告げる愛しい男の姿。その姿は奥州双竜としてともに戦場を駆け巡った、若かりし頃の姿だった。記憶を辿れば、おそらく三十路手前の頃だろうか。
その姿に政宗が驚いていると、政宗も同様なのだと小十郎が笑う。此処では一番強く思い描いた姿が反映されるのだと笑いながら小十郎が教えてくれた。
「渡し守じゃねえですよ。冥銭を渡しても小十郎は渡河できなかったので、ずっと此処に留まっておりました」
「ずっと留まっていた?」
「ええ。未練のある者を乗せると重みに耐えかねて舟が沈むと申されましてね。まあ、小十郎の“未練”など貴方様をおいて他にはないので、この際政宗様がおいでになるまで待ってみようかと」
「俺が此処に来るまでって…wait,お前が先に逝ってからかれこれ三十年近くなるんだぜ?そんな長い時間一人で………」
「政宗様が思われるほど長い時間ではありませんでしたよ。貴方様のことばかり考えていたらあっという間でした」
政宗をまっすぐに見つめて小十郎が微笑む。
竜の右目は伊達軍一厳しい男だった。その男が唯一蕩けんばかりの優しい双眸を向ける、その先に在るのはいつだって政宗だった。そう、今のように。
その優しい眼差しを喪って久しかったが、漸く政宗は取り戻したのだと実感する。

小十郎。小十郎。小十郎――――。

「………随分待たせちまったな、小十郎」
「いいえ。政宗様―――楽しかったですか?」
「ああ、俺は俺らしく生き抜いたぜ。でも再び右目を欠いちまった残りの三十年は、楽しみも半分だったがな」
「それは………小十郎の不徳の致すところ。申し訳ありませぬ」
小十郎の掌が労わるように頬を撫でてくる。
忘れかけていた男の温もりを感じ、不覚にも涙が零れそうになった。
「小十郎………」
舟が出るぞ、と渡し守が朗々とした声で告げた。その声でハッと我に返った小十郎が慌てたように「二名乗る!」と叫んで政宗の手を取る。
訝しげに小十郎を見遣った渡し守に向かって、彼は「舟は沈まねえよ」と自信満々に告げた。
舟は沈まない―――自分にも小十郎にも“未練”など何もないのだから。
「政宗様。さあ、参りましょう」
「ああ」
手に手を取って。


――――――来世はともに楽しむと致しましょう――――――


5月24日がまー様の旧暦御命日で、それに合わせてツイッターで御命日話をつぶやいてみたものの…つぶやきではとても終わりそうになかったので、処々修正してみたり追加してみたりの末に完全版として支部に投下したのが昨日の話。
そういえば最近こっちの更新ができていないんだよなーということで、こちらにも投下してみました。
三途の川ネタは設定上死ネタを免れないんですけど、実は春ぐらいから小十郎が三途の川の河岸でまー様を待って待って待ちぼうけている話を書きたかったんですね。
今回そんなシーンが書けたのでスッキリしました。
(ちなみに逆ver.だとまー様が堪え性ないので「迎えにきちゃったvv」か、小十郎の方が「悠長に待てるか!」と追っかけるか…まあ、どっちかになると思います)
Comment







(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
Trackback
http://sinners.blog13.fc2.com/tb.php/1780-84431b6c
プロフィール

安曇

  • Author:安曇
  • 今日も元気に生きてます。
カレンダー(月別)
04 ≪│2017/05│≫ 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ちびギャラリー
 

presented by.●○紅羽のTWぶろぐ○●
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。