人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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出逢いは曖昧【戦国BASARA:小政】

フォルダを整理していたら、以前出した家政本「Fall in」の小政ver.の書きかけが出てきまして。
たぶん小政ver.でもやりたかったんだなーと当時の自分を察しつつ、尻切れトンボ状態で今に至っています(苦笑)。
そのままお蔵入りしてしまうのもアレなので、出来ている部分だけサルベージしてみました。
結構あるんですよね、途中まで書いてそのまま眠らせちゃってるの。


素材をお借りしています。
お題配布元:http://noir.sub.jp/cpr/

あの頃は、己の存在意義すらもひどく曖昧だった。顧みて小十郎はそう思う。
今でこそ〈竜の右目〉として主に必要とされ、伊達軍において揺るぎない確固たる位置に在る小十郎であるが、その当時は生きる意味も生きる価値も―――小十郎にとって何もかもがあやふやで、常に『何のために?』という思いが脳裏にあった。
小十郎の生家、片倉家は八幡神を祀る八幡社の神職で、小十郎は片倉家の次男として生を享けた。家は既に歳の離れた兄が継いでいたため、幼少のうちに継嗣のいない縁戚の家へ養子に出された。
養家の嫡男として大切に育てられた小十郎だったが、数年して養父母に実子が生まれてからは当然のことながらその子へ愛情が移り、結果として実家へと戻された。
今更実家へ戻されても、そこに小十郎の居場所はない。
自身を持て余し、次第に荒んでいった小十郎だったが、それでも完全に道を踏み外さなかったのは、厳しくも優しい異父姉の存在があったから――現在も彼女にだけ頭が上がらないのは、おそらくその所為だろう――である。
異父姉は当時、伊達家の嫡男の乳母として既に伊達家に奉公していた。
尤も、乳母といっても独身の彼女の役回りは乳を与えるのではなく、いわば『養育係』だ。彼女の実父が鬼庭良直だったから、その伝手と思われる。
なににせよ。
その異父姉の薦めもあって、小十郎は伊達家当主である伊達輝宗に徒小姓としてではあるが召し抱えられることとなった。
奥州諸国はまだまだ封建的だったのだが、その中にあって輝宗は先進的な考えの持ち主だった。彼の家臣には武人に限らず、様々な出自の者がいて、近侍である遠藤基信などは修験者である。そして、輝宗が作った流れは現在に至るまで続いていた。
とにかく、伊達輝宗という男は、有能な者であれば出自身分を問わず家臣として迎え、小十郎もまたその一人だったのだ。神職の出自でありながら――更には部屋子の身だ――伊達家の家臣として取り立てられたのだから、破格の出世である。
己が身を立てるのはこの道でしかない、と思った。剣の腕を磨き、戦場で手柄を立てる。単純だが、身を立てるには一番確実な方法だ。
逸る心とは裏腹に、徒小姓の小十郎は伊達家においては初陣も終えていない若輩者だった。
そんなある日のことだった。
異父姉が嫡男である若君の傅役の話を持ってきた。大抜擢といっていい話だ。
「ちょ、ちょっと待ってください、異父姉上。傅役って……俺が、ですか?」
「お前以外に今此処に誰がいるというのです?」
柄にもなく狼狽える小十郎に、異父姉はぴしゃりとそう言い放つ。
「殿と遠藤様のご推挙によるもの。有難くお受けなさい」
「なれど、傅役とは若君の引導役でしょう?俺には若君を導くなど………然様な大役、とても果たせるとは思えません。傅役に相応しい者は他にもいる筈です。それに―――」
「小十郎、」
「幼子の扱いは正直…その、」
得手ではないとみなまで言わぬうちに、異父姉に笑い飛ばされてしまった。
子供など今まで相手にしたこともない。だから、どう接していいのかもわからない。そんな小十郎に伊達家の嫡男の相手など荷が重すぎると言っているのに、この異父姉ときたら一笑に付したのだ。異父弟の性分をよくわかっているだろうに。
駄目なものは駄目と評価にはひと一倍厳しい彼女であるから、肉親の贔屓目というのはとても考えられないが、なんの意図があって己を傅役に据えようとしているのか。
そんな思いを抱えた小十郎は、つい探るような眼差しを異父姉に向けてしまった。
「なんと然様な些末なこと。よいですか、小十郎。確かに梵天丸様は幼きお子かもしれませぬ。なれど………置かれた境遇のためか早熟の気があるお方ゆえ、子供と思わぬ方がよい。私としては年相応に子供らしゅうしていただきたいのですが………」
「異父姉上…」
「お前も伊達家に身を置く者として、梵天丸様が置かれている状況をよく存じておりましょう?」
異父姉の言葉に小十郎は肯く。それは伊達家に身を置く者ならば、誰しも知っていることだ。
いずれは伊達家を継ぐ――武家にとっては大切な――子供でありながら、嫡男の梵天丸は非常に難しい立場に置かれていた。
数年前に疱瘡を患って彼岸を見た代償に右眼を失って以降、それまでの活発さから一転して内向きに世界を閉じ、人前に姿を晒さなくなってしまった。内向的な性格も隻眼も武人としては致命的で、それゆえに嫡男の器にあらず、と家中からは廃嫡の動きまで出ていた。加えて、梵天丸の生母であるお東の方が次子となる男子を産み、これを溺愛していたことも梵天丸の立場を危うくする原因となっている。
異父姉はまっすぐに小十郎の瞳を見つめ、今は一人でも多く味方が欲しいのだと言い諭した。梵天丸を護る盾となり、刃となる者が欲しいと。
彼女の願いはわかった。そして、それは梵天丸を取り巻くすべての者―――輝宗の願いであることも。
けれど、それでも小十郎は躊躇っていた。
「小十郎、」
すぐに首肯できない。
どうして?と瞳で訴える異父姉に向かって頭を垂れた小十郎は、「暫し考えさせていただきたい」とだけ答えた。


黄昏刻は逢魔ヶ刻という。逢魔、というくらいだ。最も魔に逢いやすく、また魅入られやすい刻限といわれている。
「―――ん?」
輝宗の遣いで屋敷外へ出ていた小十郎は、遣いの内容に思いのほか手間取り、屋敷へ戻るのが遅くなってしまった。少しばかり焦りが生じていることもあって、帰途を辿る足の運びも速い。
そんな小十郎の足を止めるものがあった。
子供である。
道端に背を向けて子供が立っていた。否、立ち尽くしていたと言おうか。
(よくよく子供づいていやがるな、俺も)
たまたま目に留まっただけだ。素知らぬ振りをして通り過ぎることもできた。おそらく、これまでの小十郎であればそうしていただろう。
しかし、足を止めてしまった。或いはその小さな背に惹かれる〈何か〉があったのかもしれない。
「おい。そんな所に突っ立っていると、魔に魅入られちまうぞ?」
「…………、」
小十郎の声に反応してか、亡羊とした眼が此方を向いた。
隻眼だった。子供らしくふくふくとして丸い、小作りな顔の右半分には包帯が巻かれている。容姿は愛らしい子供でありながら、向けられたその眼のなんと闇深いことか。
「今は逢魔ヶ刻だ。子供は早く家へ帰れ。魔に攫われるぞ?」
だが、子供はふるりと首を横に振った。
「攫われるならそれでもいい。どうせ…梵は要らぬ子だ」
「要らぬ、子?」
闇深い瞳。
(ああ――――――そうだ、この眼は………)
深淵の闇を写し取ったその眼は諦めを知った眼、だった。かつては小十郎自身もしていた眼だ。
「母上は梵を要らぬと言うた。ならば、魔にでも攫われた方が母上のお心も安かろう」
呟くように言った子供は、一度は小十郎を見上げ、それからすぐに逃れるように瞳を逸らして俯いた。
「ガキがテメエの口で未来を断つんじゃねえよ」
「―――?」
「要るか要らぬかなんて…そんなのお前の歳じゃあ、まだわからねえだろう?この先お前を必要とする奴が現れるかもしれねえ。目先の短絡でそんな未来まで断つ気か?」
(己の存在意義すら見い出せねえ俺が…こんな御大層なことを言っても全然説得力がないかもしれねえけどな)
手を伸ばし、俯く小さな頭をぐしゃぐしゃと掻き撫でてやる。
己を必要とする者が現れる―――それは寧ろ己に言い聞かせるために吐いた言葉かもしれなかった。


「小十郎?」
どうした?と敷布の上にしなやかな肢体を横たえ、頬杖をついた政宗が怪訝そうな表情で此方を見上げている。
剝き出しの背にいっそ艶めかしささえ感じて双眸を細めた小十郎は、そっとその背に唇を押し当てた。
擽ってェ、と政宗が小さく笑う。
小十郎の瞳に映っていた頼りなく小さな背は、時を経て大きく逞しくなった。
「政宗様に初めてお逢いした日を思い出しておりました」
「初めて逢った?Ah~,傅役として目通った日のことか」
「あの日が初めてではありませんよ。それより以前に小十郎は貴方様にお逢いしております」
憶えていないかもしれない。そんな一瞬の邂逅だったのだ。
「Oh,really?そりゃア、いつの話だ」
左眼を緩く瞬かせる。
伊達の若君と合致する符号は、あの時点で幾らでもあった。よくよく注視すればあの時点で気付いただろう。だが、小十郎がそうと気付いたのはずっと後のことで。
結局、小十郎が傅役の話を受諾したのは、それから一年近く経ってのことだった。本当に己でいいのかと逡巡した末のことだ。今振り返れば、随分と長く躊躇っていたものだと思う。もし現在の小十郎があの時に戻れるのならば、その場で即決してやるのに。
とにかく。晴れて傅役として傍に上がった小十郎は、己の主となる子供を目にし、息を呑んだのだ。
その時も彼はまだ深淵を見るような昏い瞳をしていたけれど。
「政宗様、」
「An?」
「小十郎には政宗様が必要です」
突然の告白に政宗の眼が大きく見開かれた。だが、それはすぐに緩く撓む。
「Ha!改めて何を言うのかと思えば…」
そんなわかりきったこと、と政宗はカラリと笑った。双竜の間では確かにわかりきったことであったが、それでも改めて口にしておきたかったのだ。いずれは天翔ける竜に成長する―――けれど、まだ小さな竜との出逢いを思い出したがゆえかもしれない。
「お前が俺を必要とするように、俺にもまたお前が必要だ。You see?」
躰を仰向けに反転させた政宗は、小十郎に向かって両手を伸ばした。心得たように小十郎が躰を傾げれば、するりと背に両手が回される。
慰撫の手。
「政宗さま、」
心地よい温もりだった。
心地よい温もりも、身を灼き焦がさんばかりの熱情も。互いが互いを必要とするからこそ知ったことだ。
濡れた吐息が零れる唇を塞ぎ、瞳を閉じる。
交わされる情に、躰の奥底で燻っている熱が容易に煽られる。ともに身を投じるなら、昇り詰め果てるまで。
「政宗さま………」
情慾に絡め取られた本能を剝き出すことなど容易いことだ。
(思えば竜に堕ちる瞬間なんて―――)
あの時既に決まっていたのかもしれない。
「小十郎、」
ひっそりと嗤った小十郎は、甘く啼いては乞い願う若い竜の熱い裡へと再び躰を沈めていった。
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