人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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264.紅茶【幻水Ⅱ:赤青】

二人で暮らす部屋にもう一人の気配が消えたこの数日、カレンダーに目を遣るのが日課となりつつある。無意識に壁に掛けられたそれに目を遣っては<あと何日>などと数えている自分は、実は相当に女々しいのではないかとマイクロトフは思った。
(ほら、まただ)
いかんいかん、と首を振る。今日何度それに視線を投げている?何度見ようと変わることはない。1日は24時間だ。時間を早回しできる訳ではないのだから、そう簡単に日付が変わるものか。
判ってはいる。判っているけれど───でも。
「参ったな。カミューが出張に出掛けたくらいでこの有様か」
急な出張話をカミューの口から聞かされたのが、ちょうど4日前のこと。本社から支社の営業部に出向している人間──カミューの先輩だと聞いた──が過労で倒れ、急遽カミューが応援に行くことになったのだという。
当該支社は業績も上々で、過労で倒れたというカミューの先輩もなかなか遣り手の営業マンだというから、彼が倒れたその穴埋めに支社の営業部は四苦八苦しているようだった。幸い大事に至らず、1週間程度の休養で復帰できる見込みだそうだが、されどその1週間の穴は大きい。そこで、本社営業部でも頭角を現していて、且つ後輩でもあるカミューに白羽の矢が立ったのだ。
カミューの出張は先輩が職場復帰するまでの1週間である。急遽決まった出張に慌しく準備をし、慌しく出掛けていった。
妙に広く感じる部屋に残されたのはマイクロトフ。二人でいることに慣れてしまっていたから、一人だと却って広く感じるものなのかもしれなかった。
けれど。淋しい、と素直に口にするのは業腹だった。カミューの部署柄これまでだって出張は多かった。日帰りの時もあれば、研修のようにまとまった日にちでの出張だってあるのだ。何も今回が特別という訳ではない。
たかが1週間だ。その間、自分には自分の仕事がある。忙しく立ち動いていれば、淋しいだの何だのと云っている暇もあるまい。
判っているのだ、と自分自身に云い訳しながら嘆息する。
応援の初日の夜遅くに電話があった。思った以上に忙しい、と電話口の向こうでカミューは苦笑交じりに初日の感想を述べていた。他愛もない話をした最後に「あまり無理はするなよ」と告げて電話を切ったのだが、それ以降彼からの電話はない。おそらく、電話も出来ないほど忙しいのだろう。くれぐれも無理はするなと電話越しに伝えたが、あれで自分のことは無頓着なところがあるから──人のことは口喧しく云うクセに、だ──本当に無理をしていないか心配だ。この先無事に応援が終わる日まで、彼の身を案じてやきもきしなければならないのかと思うと益々溜息も深くなった。
「全く…ロクな考えに至らんな」
そういえば、とふと思い至って立ち上がったマイクロトフは、そのままキッチンへと向かった。会社帰りに気紛れに買い求めた紅茶を袋に入れっぱなしのままダイニングテーブルの上に放置していたのを思い出したからだ。
その店は紅茶党のカミューがよく訪れる店で、マイクロトフも彼に連れられて何度か立ち寄ったことがある。紅茶に疎いマイクロトフでさえ知っている銘柄もあれば、滅多に手に入らないような稀少な銘柄もあって、とにかく品数だけは豊富だった。しまった、茶葉が切れそうだと出張前にカミューが洩らしていたのを思い出し、会社帰りに立ち寄ったのである。いつも買っている茶葉は流石に覚えているので、迷わずに買える。とりあえず100g注文したマイクロトフの顔を覚えていたらしい──男二人で来る客がどれほど奇異なのか判らないが、とにかく自分達の与り知らぬうちに顔を覚えられてしまったようだ──店員が、「今日入ったばかりの茶葉ですよ。こちらも如何ですか?」などと云って講釈付きで別の銘柄も薦めてくれたのだった。
とはいっても、素人のマイクロトフにはその銘柄の価値が判らない。まあそんなに薦めるのなら…と実に安易な形でそれも買い求めてしまったのだが。
そうやって買ってきた紅茶をとりあえず飲んでみようと思った。
紅茶を淹れるのは紅茶党であるカミューの役目である。紅茶好きなので、どうすれば美味しく飲めるかをカミューは良く知っている。実際、そんな彼の淹れる紅茶は絶品だった。喫茶店でも開けるのではないか?と冗談交じりに云ってやったくらいだ。
だが、そのカミューは今いない。だから、当然淹れるのはマイクロトフ自身だ。
いつも自分に紅茶を淹れてくれる時と同じように準備をし、その仕種を思い出しながら見よう見真似で用意した自分のカップに紅茶を淹れてみた。熱々の白い湯気がカップから立ち昇っている。水色もカミューが淹れてくれる時のものと遜色ない。
だが。口に運んだ瞬間、マイクロトフは顔を顰めた。
「…美味しくない」
いつも飲んでいるものと味が違う。天と地ほどの差だ。
せっかく淹れてみたのだが、マイクロトフは再度口をつけることなくそのまま捨ててしまった。
「こんなことでも思い知らされるなんてな」
やれやれ、と肩を竦める。
「早く美味い紅茶が飲みたいなぁ…」
別に紅茶ばかりが飲みたいとか…そういう訳ではないのだけれど。
「…カミュー」
あと何日こんな状態でいるのだ?



早く帰って来い。


365題 お題配布元:capriccio




リーマチverです。
久しぶりにリーマチを書いた気がしますね。
ウチのカミューは紅茶党、或いは紅茶奉行。茶葉から何から拘るので、それを飲んでいるマイクも自然と舌が肥えている模様。
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