人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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327.どんな恐怖よりも鮮明に【幻水Ⅴ:カイ王】

この手で貴方を護れるように、と。
そう誓ったのではなかったか。この身を盾にしても護らなければ。そのために強くならなければと誓ったのではなかったか。
なのに、なんてザマだ。カイルは己の失態に項垂れた。
「カイル。いい加減、反省会はそれっくらいにしとけ」
「ですが…ッ」
尚も云い募ろうとしたカイルの口を塞ぐためかヌッと伸ばされた手は、だがカイルの口を封じ込めるものではなく、グシャグシャと彼の頭を乱暴に掻き撫ぜるに終始している。
「イサは無事だった。まずはそれでいい」
カイルが己の無力を呪う以上に。腹を立てているのは、おそらく眼前のこの美丈夫だろう。ファミリー筆頭幹部であるこの男は裏社会に於いて刀を握らせれば鬼の如き太刀捌きで畏れられる存在だが、常日頃から「宝物は俺の可愛い子供達」と臆面もなく云い張るほどの親バカでもあるのだ。その宝物とまで云わしめる彼の子供の命が脅かされたとなれば、どうしたって穏やかではいられまい。
「ですが、フェリド様。今回は俺の不手際でイサギ様を危ない目に遭わせてしまったのは事実です」
「それで?償うために如何様にも罰を受けるとでも云うか?まァ、云うのは勝手だがな。お前の生殺与奪権は生憎俺じゃなくてイサにあるんでな。俺がどうこうする筋合いじゃあない。第一、仮に今俺がお前の処分を決めて、俺がイサに嫌われようもんなら、お前どう責任を取ってくれる?」
「…はァ」
こちらは護るべき主を護りきれなかったという己の失態に深刻になっているというのに、フェリドの受け答えは拍子抜けするほど的外れなものだった。だが、怖ろしいのは彼の双眸が決して笑っていないことだ。
「反省会はもう充分だろう?イサの所へ行ってやれ」
フェリドの言葉に促されて、カイルは部屋を辞去しようとした。その背中越しに。
「なァに、やられっぱなしのままにしておくつもりはない。よりにもよって俺の可愛い息子に怪我を負わせたんだからな。きっちりお礼はしてやるさ。フェイタス河に沈めてやろう」
その手配は済んでいる、と低く唸るように告げるフェリドはやはり。
己以上に腹を立てているのだろう。

裏社会で最も名の知れたファレナ・ファミリーの現首領と筆頭幹部の息子であるイサギは、その正統な血筋ゆえに命を狙われることが多かった。その度に護衛役であるカイルが窮地を救ってきた訳だが、今回は不覚にも後れをとってしまったがゆえに彼にさせなくてもよい怪我を負わせてしまった。
反応が遅れたことに対して今更云い訳をするつもりはない。だがそこは、護衛役であるカイル自身のもう一つの顔、元々刺客であったカイルの本務である<殺し>を迂闊に見せられるような場ではなかったのだ。
イサギが狙われたのは、よりにもよってカイル達のガードが一番薄くなる学校内だった。学校はイサギが普通の子として在るべき領域だ。だから、カイルのような者が護衛として校内に入ることは余程危急の事態がない限りない。学校にいる間は、カイルの代わりにイサギと歳の近いリオンがさり気なくその任を負っている。
ガードが手薄になるその学校内で彼は狙われ、連れ去られた。
リオンからすぐに報せを受けたカイルは、ありとあらゆる手段を駆使してイサギと彼を連れ去った者達の所在を突き止め、応援部隊と共にアジトへと乗り込んだ。そして激しい銃撃戦の末、なんとかイサギを救出したのだったが。
ツンと微かに消毒の香りが漂うイサギの部屋に入ると、すっかり憔悴しきったリオンが出迎えてくれた。カイルが護りきれなかったと悔やんでいるように、彼女もまた己の不甲斐なさを悔やんでいた。何しろ彼女の目の前でイサギが狙われた挙げ句に連れ去られたのだ。相当ショックを受けたことは間違いない。
「カイルさん…」
ベッドの傍らでまんじりともしなかったリオンがのろのろと顔を上げ、カイルを見つめた。愛らしい少女の面には疲労が色濃く浮かんでいる。
「リオンちゃん、少し休んだ方がいい」
いいえ、とリオンは頑なに首を横にふった。
「リオンちゃんの方が倒れてしまうよ?」
「私なら大丈夫です。イサギ様のことが…」
イサギの身が心配なのは、誰しも同じだ。
「うん、でもね。イサギ様が目を覚ました時、そんなリオンちゃんのことを見たらどう思うかな?」
心優しい彼のことだ。きっと自分のことよりも憔悴している彼女のことを心配するだろう。彼はそういう子供だ。そして彼女もそんなイサギの性格を良く判っている。
カイルに指摘されてハッとなったリオンは、ごめんなさいと小さな声で謝った。
「あとは俺が引き受けるから。リオンちゃんは少し休んでおいで」
「イサギ様が目を覚ましたら呼んでくださいね?」
リオンの願いを勿論と受けて、カイルは微笑んだ。絶対ですよ?と何度も何度も念を押して漸く納得したか、部屋を出て行くリオンを見送ってから深い溜息を一つ吐き、主の入れ替わった椅子に腰を下ろす。
報せを受けた時は本当に心臓が止まるかと思った。何のための護衛役か、何のために自分が生かされているのか肝心な時に護れなくてどうするのだと後悔ばかりした。
そして、何よりも罷り間違えば永遠に喪われたかもしれないことに心底ゾッとした。
「…良かった」
医師に処方された薬が効いているのだろうか。イサギは昏々と眠り続けている。その寝顔に血の気は薄く、あちこち巻かれた包帯が痛々しく映った。
それでも、とカイルは思う。それでも命を繋ぎとめてくれて良かった。やっと探し当てた光を喪わなくて良かった。
「イサギ様…」
生殺与奪権は彼にあるとフェリドは云った。確かにフェリドの云うとおりだ。イサギの存在によって自分は生かされているのだとカイルははっきりと認識している。それはつまり、彼がいなければ生きることも儘ならないということだ。
今はただ。
この光を、この手を喪うことがどんなことよりも怖ろしい。


365題 お題配布元:capriccio


久しぶりに「夜明け~」シリーズで。
本当はこれにギゼルが絡んでくる予定だったんですが、そちらはまた別の話で。
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