人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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112.外国語が歌う【幻水Ⅱ:赤青】

何の前触れもなく唐突に目が覚めた。いつもなら深い眠りに落ちて目覚めれば朝だというのに、況して血肉を交わらせる行為の後は意識すらもドロドロに溶けきって、深く深くそれこそ奈落の底まで落ちてしまうのではないかというそんな眠りに陥るのに。目が覚めてしまえば、神経が昂っている所為だろうか。おかしなもので逆に意識が冴えてしまう。マイクロトフはそっと寝返りを打った。
室内は未だ暗い。だが、そんな暗闇を遮るように仄かな月明かりが室内に射し込んでいるのは、きっとカミューがカーテンを完全に閉めなかった所為だ。表情が見えないのは心許無いとかなんとか云っていたから。
布団を肩まで引き上げて小さく身動いだマイクロトフの耳に微かな歌声か聴こえてきた。
(カミュー?)
歌声の主はカミューだ。ゆったりとした、けれどどこか物悲しい旋律に乗って異国の言葉が舞う。それはマイクロトフが一度として聴いたことのない曲だった。
ロックアックスではない、異国の言葉───カミューの故郷グラスランドの言葉だろうか。そうであるとして、彼は何を想い口ずさんでいるのだろう。遠く離れた故郷に想いを馳せているのだろうか。
考えてみれば、自分はどれだけカミューのことを知っているのだろう。普段気にも留めなかったことだが、カミューについてマイクロトフが知っていることは存外少ない。時間的にも距離的にも彼の一番傍近くにいるのは自分で、だから勿論他の連中よりも知り得る情報が多いことも確かだ。それだってどんぐりの背比べに等しいだろうに、他者に擢んでて知っているのだと錯覚している自分がどこか滑稽で可笑しい。
カミューについてマイクロトフが知っていることといえば、故郷がグラスランドであること、両親は既に他界していること、父親の血を辿れば代々騎士団長を輩出するロックアックスの名門でありながら、母がグラスランド人ゆえに父方の一族から異端視されていること、またその所為か肉親の情が薄いこと。
誰にでも踏み込まれたくない領域というものはあるだろう。マイクロトフとてそれが如何に心を許したカミューであっても、踏み込まれたくない一線がある。相手の何もかもを知りたいと願うのは、人として自然な感情なのかもしれない。けれど、その一方でそうした踏み込まれたくない領域を抱えているのも確かなのだ。
歌声はまだ続いている。
その声を聴いていると次第に切なくなる。何を想い、何を考えているのか。マイクロトフは布団の中で己の胸許をぎゅっと掴んだ。
「マイク?」
不意に歌声が止む。マイクロトフが身動いだから、起こしてしまったのではないかと思ったのだろう。小声で窺うように名を呼ばれた。だが、マイクロトフは背中越しにじっと寝たふりを決め込んだ。するとカミューはホッと安堵したように「良かった」と呟いて、再び異国の言葉を紡ぎ始める。
(カミュー…)
お前が今何を想い、何を考えているのか。触れてみたいと思うけれど。
その歌声に耳を傾けつつ、マイクロトフは冴えた意識を遮断しようときつく瞳を閉じたのだった。





365題 お題配布元:capriccio


参加中です。→赤青連続更新企画

赤青連続更新企画冬の陣。
冬は切なめと甘めのお話だそうで。初日のカテゴリーは、私的に切なめ。
今回の連続更新は、どちらかというとカミューの生い立ちっぽいものが絡んでいます。
どうにもそういうのが好きな模様です。
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