人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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269.老人と僕【幻水Ⅱ:赤青】

「お待たせして申し訳ありません」
どんな理由があるにせよ、マイクロトフはまず年長の者を待たせてしまった非礼を詫びた。こういうところにもマイクロトフの育ちの良さが滲み出ている。たとえ苦手な相手であっても礼儀は礼儀だ。対するジュリアス卿は厳しい面持ちで「いや」と答えただけだった。
とりあえず対面に腰を下ろす。どうにも和やかな会談になりそうな雰囲気ではなかった。運ばれてきたお茶に口をつけて、改めてマイクロトフが水を向けた。
「本日はどのようなご用件で足をお運びなのでしょう?」
まさか孫息子に逢いに来た訳でもあるまい。さもなくば、マイクロトフが屋敷に乗り込んだあの一件に対する意趣返しか。
「単刀直入に訊く。貴殿のような者が何故<あれ>に肩入れする?<あれ>に誑かされでもしたか」
「誑かされるとは…如何に卿のお言葉といえど聞き捨てなりません」
「では何故だ?貴殿ほどの人物であれば、あのような小物に入れ揚げる必要もあるまい?血統も申し分ないというのに」
「卿は…血を重んじますか」
血などよりも遥かに誇れるものが彼にはある、というのに。それに目を向けようともせず、ただ血の濃さのみで異端扱いをする。
「彼は…カミューは好ましい人物です。俺はカミューの父君がどのような方だったのか残念ながら知りませんが、きっと彼のような好人物だったのだろうと思います」
「それは盲目ゆえの弁ではないか。<あれ>が好ましい人物だと?世迷言を云いおって」
そう切り返されたマイクロトフは。いいえと静かに首を振った。
「俺だけではない。騎士団の者は皆そう思っている筈です。だからこそ、彼は赤騎士団長なのだ」
彼が現在の地位にあるのは、そこに推し上げられ得るべき『何か』があったからだ。そうでなければ、人は動かない。そのことを何故この老人は判らないのだろう。頑なになり過ぎて、何も見えないのだ。それはとても残念なこと。
「卿は…お可哀想な方だ」
「黙れ!」
愚弄されたと激昂する老人を怯みもせずに見つめる。
「何を云おうと俺の言葉は卿の耳には届かないでしょうが。俺は血だの家柄だの…そんなことはどうでもいいんです。寧ろ些末だ。俺は、カミューだからこそ彼を選んだ。<彼>という存在に触れて、<彼>という一個の人間を選んだ。そのことを恥ずべきとは思っていない」
そう。一度たりとも思ったことはない。
「彼は。カミューは俺の総てだ。それが───俺の答えです」
単身屋敷に乗り込んだあの時と同じように。
マイクロトフは凛とした声音でそう告げたのだった。

嵐が去った後、マイクロトフはぐったりとソファに凭れて暫く動けずにいた。今日一日分の精神力を使い果たしてしまったような気分だ。まだ朝なのに、である。
「お疲れ様でした」
そこへリュウイが換えの茶を持って入ってきた。疲労困憊といった体の上官を労わって気を鎮める効果のあるお茶を淹れてきたというリュウイは、苦笑を浮かべながらマイクロトフを労った。
「あのジュリアス卿を前に少しも怯まないとは、流石は我等の団長と感心しておりました」
「ただの強がりに過ぎん。お蔭でもうクタクタだ。まだ一日の始まりに等しい時間帯だというのにな」
やれやれと溜息を吐く。しかし、クタクタだから今日の執務は止めにするという訳にもいかない。騎士団長の職務は一個人の我儘が許されるほど軽いものではないのだ。執務室に戻れば、裁可を待つ書類が積まれていることだろう。
「さて、せっかく淹れてくれた茶だ。ありがたくご馳走になってから今日の執務を始めよう」
「そうしていただけると助かります…と云いたいところでしたが。もう少しお休みいただいても宜しいですよ」
「リュウイ?」
訝しげに首を傾げたマイクロトフに彼は。
「どうやらカミュー様がお見えになったようです。何処からか今朝の一件を聞きつけたのかもしれませんね」
もう一人分のお茶を用意して参りましょうと云って出て行くリュウイと入れ替わるようにして、彼の言どおりカミューが───こちらは慌てた様子で入ってきた。
「マイク!」
ぐったりとソファに身を沈ませたマイクロトフに目を留めるや、カミューは顔色を変えた。
「あの爺が殴り込みに来たって…」
殊、反目し合っている実の祖父についてカミューは口汚い。あのカミューの口から『爺』である。常ならば、たとえ反目し合う仲とはいっても敬意を払うべきだと窘めるところだが、今は流石にそんな気力もない。
「大丈夫か?何か酷いことは云われなかった?」
「ああ…大丈夫だ」
「あいつ…マイクにダメージを与えれば俺にそれ以上のダメージが与えられるからって、今度はマイクに揺さぶりを掛けてきたな」
狡猾な奴だ!と口汚く罵ると、ぎゅうとマイクロトフを抱きしめてきた。何か仕掛けられたのか、余程心配したのだろう。大丈夫だと何度云って聞かせても離れようとしない。
「本当に大丈夫だと云っているだろう?ただ、朝からジュリアス卿と一対一という重圧に流石に疲れただけだ。だから、そんな表情をしてくれるな」
「でも…ッ」
「考えてみれば俺も卿の屋敷に単身乗り込んで行っている訳だし、ある意味お相子かもしれん」
「マイク!」
冗談じゃない!と眦を吊り上げたカミューだったが、疲れを残したマイクロトフの表情が予想外に穏やかだったので怒りを向ける先を失ってしまったらしい。深い深い溜息を吐いて、肩を落とした。
「お前ってヤツは…」
「俺に揺さぶりを掛けてくるというなら、この先何度だって追い返してやるさ」
だから心配するな、と笑って依然として抱きしめる腕を解こうとしないカミューの頭を軽く叩いた。
「…マイクには本当に敵わないなあ」
それで?今回は何と云って追い返したんだい?と訊ねてくるカミューの顔を見上げ、マイクロトフは。
「秘密だ」
小さく笑って、そう答えた。




365題 お題配布元:capriccio


参加中です。→赤青連続更新企画
冬の陣3日目。
ちょっとズルいけど続きものを完結させて、一応3日間の更新クリア(苦笑)。

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