人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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165.あなたは、【戦国BASARA2:小梵+小政】

どうにも自分で自分を御せないほどに気が昂っている。戦場の気に中てられたのだ。戦場から戻るといつもそうで、なかなか元には戻らない。敢えて鏡を見て確認する気にもならないが、この分だとおそらく顔つきも鬼相そのものだろう。ただでさえ強面なのに、更に拍車が掛かるので始末におえない。戦場に立って縦横無尽に刀を振るう己を自軍の誰かが『鬼』のようだと評したが、なるほど確かに『鬼』なのだろう、と小十郎は思った。
片倉小十郎。二十歳を過ぎたばかりだが、初陣は二年前と武将としては遅かった。遅い初陣の理由は彼の出自のためだが、二年という月日を経る間に小十郎は伊達軍内でも勇の者として怖れられる武将に成長していた。その様を一番頼もしく思っていたのは、彼を取り立てた伊達家の当主輝宗だろう。当時の小十郎のどこに見どころがあったのかは知る由もないが、輝宗は小十郎を己が嫡男である梵天丸の傅役に据えたのである。その傅役が戦場において立派な働きをしているのだ。数年後に迎える梵天丸の初陣の際には導き手として頼もしい存在となるに違いない。
おそらく輝宗の狙いはそこにあったのだろう。傅役は傍にいて身の回りの世話や遊び相手、或いは学友を務めるばかりではない。総ての面において優れた導き手でなければならないのだ。まして一国を背負う主の嫡男となれば尚更である。そして小十郎もそれを正しく汲み取ったからこそ、合戦と聞けば率先して輝宗の陣に加わり、経験値を積んだのだった。
幼い主は子供にしては気難しい性格に加え、その境遇の所為か傅役として傍に上がった当初はそれこそ警戒心の強い猫のようで、なかなか小十郎に懐こうとはしなかった。だが、今では心を開いてくれている。
『小十郎!』
『梵天丸様』
此度の合戦、出陣前夜の慌しい折にも梵天丸は小十郎の異父姉であり己の乳母である喜多に手を引かれて小十郎の許へ見舞いに赴いてくれた。
『小十郎、こたびも励めよ。梵天はまだ幼いゆえ、父上とともに戦場には立てん。梵天に代わって、父上を護ってくれ』
『御意に。必ずや殿をお護りします。小十郎は暫し梵天丸様のお傍を離れますがくれぐれも…』
『わかった、わかった。いい子にしておる。なあ、喜多?』
出陣前のこの期に及んで説教なんてごめんだぞ。
屈託なく笑った梵天丸は、喜多の手を離れ、パタパタと小十郎の許に走り寄った。そして、小十郎に抱きつく。
『だから、小十郎。必ず生きて梵天の許へもどれ。毎日不動明王様にお前の無事を祈るから…』
『梵天丸様…』
小十郎。生きて必ず戻って来い。
幼い梵天丸の戦勝祈願を不動明王が聞き届けてくれたのか。此度の合戦は結果的に伊達勢の勝利で幕を下ろした。そして、凱旋。
疲れた身体を休めるためにと理由をつけて、小十郎は帰城してすぐに部屋へ籠った。戦場の気に中てられた状態の己は<人>よりもむしろ<鬼>に近い。合戦の習いとはいえ、多くの者を屠っているのだから当然だ。
このような己の姿を梵天丸に晒したくはなかった。幼い主に<鬼>の本性を知られたくないのかもしれない。だから、いつも帰城直後は何かと理由をつけて梵天丸を遠ざけていた。尤も、異父姉にはそんな小十郎の心情など容易く看破されていたのだが。
今回も同じである。
けれど。
唐突にバタバタと騒々しい足音が聴こえてきたと思えば、スパーンと勢いをつけて障子戸が開かれた。
「小十郎!もどっているのになぜ梵天に逢いにこない!」
「ぼ、梵天丸様?!」
無事に帰還しながらいつものように部屋に籠ってしまった小十郎に対し、流石に業を煮やしたのだろう。小十郎が来ないというなら、梵天丸自らが小十郎の許へ赴いてやるという手段に出たらしい。
「小十郎!」
一時期はおとなしい印象の方が強かった梵天丸だが、生来気性の激しい性質なのだろう。尤も、梵天丸は見目からして生母の義姫譲りという。きっと性格も母譲りに違いない。とにかく、彼は小十郎が己に逢いに来ないということにひどく憤っていた。
「なぜ梵天に逢いにこない!」
「それ以上小十郎に近づいてはなりませぬ!」
一歩踏み出そうとする梵天丸を小十郎は咄嗟に厳しい声で制した。その声のあまりの鋭さに梵天丸の小さな躰がビクリと震える。小十郎は強い視線から逃れるように顔を背けた。
「近づいてはならぬ?どういうことだ?」
「戦帰りの小十郎は未だ怖ろしき<鬼>にございますれば。ここに在るは…梵天丸様の知る小十郎ではありませぬ。<人>に戻るまでどうかお目通りはご容赦を」
「…だから今までもそうだったのか?帰城してもお前はすぐには梵天の許へ来てくれなんだ。梵天が<鬼>をおそれると…そう思ったからか?」
「梵天丸様…」
ムッと顔を顰めた梵天丸はズカズカと小十郎の許へ歩み寄ると、小さな両手を一杯に広げてパシッと小十郎の頬を手挟んだ。
「ばかにするな!梵天は<竜>だぞ!<竜>が<鬼>などおそれるものか。それに<鬼>以上におそろしいものを梵天は知っておる」
だから、小十郎など少しも怖くはないぞ。
そう告げて梵天丸は笑った。


パチパチと本陣を照らす篝火が爆ぜる。
陣幕が捲られ、小十郎が姿を現すと、政宗は瞳を眇めてヒュウと口笛を吹いた。
「Hey、小十郎。イイ面構えしてるじゃねェか」
戦場の気に中てられて<鬼>に変化したままの小十郎を見上げ、政宗は不敵に笑ってみせた。
幼かった主は今では立派な武将として成長し、<独眼竜>の二つ名を世に轟かせている。いずれそう遠くない未来、この若き竜が天下を呑み込むだろう。竜の<右目>として初陣以来、片時も離れず彼の傍に在ってその背を護ることは、小十郎にとって最早『生きる意味』に等しい。
「いいねェ、最っ高にcoolでwildだ。合戦続きで気が昂ってんだろ?Ha、俺だって同じだ。どうにも熱が収まんねェ」
「政宗様…あまり小十郎を煽らないでいただきたい。ただでさえ今の小十郎は政宗様の仰るとおり気が昂り、己を御するのが困難なのです」
未だ<鬼>なのである。
気の昂りを遣り過ごすまでいっそ昔のように引籠もれれば良いのだが、流石にそうもいかない。第一、主君がそれを許さない。小十郎自身が今でもひた隠したいと思っている<鬼>の一面をも彼は気に入っているから。
「上等じゃねェか。<竜>が<鬼>如きを怖れるとでも?」

『ばかにするな!梵天は<竜>だぞ!<竜>が<鬼>などおそれるものか』

過去何度も繰り返された遣り取り。その度に彼は小十郎の<鬼>の部分を肯定した。
「第一、<竜>のために<鬼>に変化しているんだろうがよ。そうさせているのは俺、だろう。その俺が怖れてどうする?」
「政宗様…」
怖れず。揺るがず。狼狽えず。
小十郎の<鬼>の部分すらも平然と受け入れる。
貴方という人は。






「俺にとっちゃあ、今も昔も愛しい<鬼>だ。…You see?」




10周年カウントダウン3日目。
本日のおしながきは小梵+小政です。
小十郎の初陣が遅かったという小十郎本を読んで、その設定を使わせて貰いました。傅役となるためにひと通りの通過儀礼を済ます、というのがステキ。

小十郎は己の本性が『鬼』であることを知っています。だから、梵天丸を遠ざけようとします。『鬼』の気に触れて大切な若君まで『鬼』にしてはいけないから。そういう葛藤がいつでもあります。
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