人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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276.いつ、貴方に、届くんだろう【幻想水滸伝Ⅱ:赤青】

もうずっと長いこと恋をしている。それは出口の見えない、絶望的な恋だ。
ほんの少し前までは、まさか己が際限ない想いに藻掻き苦しむなどとは思ってもいなかった。大概想われるのは己の方だったから、こんな風に誰かを想って悶々とすることに慣れていなかったのだ。
それもまた恋の醍醐味なのだ、と最近知り合った女は笑って云った。そうして相手に想いを伝える<過程>も楽しいものよ、と。
「そんなものかな?」
「貴方は恋愛を駆け引きばかりの<ゲーム>と考えているから。そうね、相手もそう割り切っていれば<ゲーム>として成立するわね。例えば私のように」
フフと紅を刷いた唇が蠱惑的な笑みを形作った。しな垂れかかる丸みを帯びた女の躰を緩やかに受け止め、カミューは女の首筋に柔らかくくちづける。
女は先年夫に先立たれた未亡人で、家に束縛されるのを余程嫌っているのか、未だ若い身──とはいっても、カミューよりは年上であるが──であるのに次の伴侶を求めようともせず自由気ままな生活を送っていた。奔放な性分であるらしく、女には特定の相手がいない。数多の花の周りをヒラヒラ飛ぶ蝶の如く、女が夜会に連れ歩く相手はいつも異なっていた。その中にあってカミューは比較的相手としての指名が多い。顔、地位、振る舞いなどカミューを相手として連れ歩くに不足はないと判断しているからだろう。
無論、それはカミューにとっても同じこと。
女は決して自分に入れ込まない。溺れない。あくまでも互いの関係を遊戯として捉えている。だから、恋愛に運命を求めるような初心な女性とは違って後腐れはないし、互いの立場を守って楽しむことができる。
女にとっては連れ歩いて見せびらかす価値のある相手、自分にとっては行き場を失って爆発しそうな想いを受け止めてくれる相手。
ただ、それだけであっても。
どうしようもなく関係は構築されているのだ。
「可哀想に。貴方の教科書に本気の恋は載っていないのね」
尤も、だからこそ貴方は貴方でいられるのでしょうけど。女は年下の自分へ云い聞かせるかの如き口調で云う。それに対して、「どうして?」と問えば。
女はクスクスと笑って、そしてやけに自信たっぷりに答えたのだ。
だって、本気の恋を知ったら貴方身を滅ぼしそうだもの─────と。



「…随分と遅かったな」
闇の中瞳を凝らしてみれば、部屋へと続く扉の前でマイクロトフが仁王立ちして待ち構えていた。細かい表情まではカミューの位置から窺い知れないが、おそらく苦々しい貌をしているのだろう。
「ああ…夜会があってね。レディのお相手を。お前はそうした席に出るのは苦手だろう?」
非難がましいマイクロトフの目を軽く往なして、カミューは自室へ入ろうとした。正直に云えば、今はマイクロトフと顔を合わせたい気分ではなかった。だが、彼はそんなカミューの気分など知ったことではなく。
「カミュー」
引き留めようとしたマイクロトフに腕を掴まれる。
「今夜も相手が違うな」
色恋沙汰にはとことん鈍いとされるマイクロトフだったが、こういうところは妙に鋭い。フワリと微かに鼻腔を擽った女の残り香で察したのだ。
指摘されるまでもなく。
カミューは特定の女性を相手にはしない。来る者拒まず的な部分があって、いつも連れている女性が違っていた。それで女性が嫉妬しないのかといえば、そんなカミューの性格を承知の上で、つまりは割り切った関係だから構わないのだという。マイクロトフの目には『不誠実』に映るが、カミューは女性に対して非常に細やかな配慮ができる男であったし、彼女達の尊厳を著しく傷つけるような真似は決してしない、基本的にフェミニストであったから、そうしたドライな付き合いでも上手くいっているのだ。
「カミュー!」
マイクロトフが咎めるのをカミューが素直に聞き入れようとしない所為か、苛立ったのだろう。彼にしては珍しく声を荒げた。
「なに、心配してくれているの?大丈夫だよ、レディ達を泣かせるような真似はしないって。これでも上手く立ち回ってるんだからね」
「そういう問題ではないだろう!」
「少しばかり声が大きいよ、マイク」
カミューにそう指摘されてハッと我に返ったマイクロトフは口を噤んだ。懸命に感情を制御しようとしているのか、下唇をきつく噛み締めている。
「今のお前は…俺の眼から見ても余りある」
これが心底己に向けられている想いならどんなにかいいだろう。嫉妬心でもなんでもいいのだ。彼の瞳が己の方だけに向き、彼の想いが己だけに真っ直ぐに向けられたなら。
(マイク…)
もうずっと長いこと、数えるのも馬鹿らしいくらい長いこと恋をしている─────絶望的な恋の、相手。
想っても想っても、決して届かない。これほどまでに近くにいるのに、想いを伝えられない相手。
伝えられないから、溜め込んで、苦しくて、気が狂いそうに苦しくて。吐き出そうと足掻いて、吐き出す想いの依代として相手をすり替えていたのだ。割り切った関係で数多の女性と関わっているのは、己の想いを捌け口を求めたに過ぎない。本当はいつだって目の前の、この色恋にはとことん鈍い彼を描きながら、想いを吐き出すつもりで彼女達を抱いていたに過ぎない。
なんと不実なのだろう。彼女達に対しても、そしてマイクロトフに対しても。
けれど。
「…少し、その…自重した方がいい…と思う」
愛しいのだ。
絶望的な恋と判っているのに。どうしようもなく愛しいのだ。
「マイク…」
「やはり、心配なんだ。お前のことが。友として」
友として、とマイクロトフは云った。
「カ、カミュー?」
戸惑うような声をマイクロトフが発したのは、カミューが彼を抱き寄せたから。だが、きっと彼はスキンシップか何かの延長だと思っているのかもしれない。抱きしめても抗わなかった。だから、それに甘えてしまう。
「カミュー?」
「ごめん…」
「謝る相手は俺ではないだろうに」
「…ごめん」
出口など一生見つからないだろう。
マイクロトフには届かない。
そんな、絶望的な、恋だった。



サイト10周年カウントダウン4日目。ということは、あと3日…。
本日のおしながきは、久々の赤青です。
カミューがマイクへの片恋に悶々としている頃のお話。
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