人生楽ありゃ苦もあるさ

日々のつれづれや大好きなものを力いっぱい叫ぶ代わりに書き綴っています。サイト更新情報や、時々BASARA二次創作(小政、家政メイン)も。 

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136.粛清【戦国BASARA2:小政】

(Sorry , I'm late──────)





医師の処置を受け布団に寝かされた政宗が次に目覚めた時。
昼夜を問わず、寝食すらも忘れて、ただ傍近くで回復することだけを祈り続けてきた小十郎は、一様にやつれた表情を安堵に歪ませて喜んでくれた。
俄かに寝所が慌しくなる。
その様子をどこかぼんやりと見つめて、「ああ、そうか…」と政宗は重い吐息を零した。
母からのもてなしで出された料理をひと口飲み下した瞬間に、異変を感じたのは憶えている。
毒を盛られたのだと悟ると同時に、ははうえ?と縋るように目にした眼前の彼女の表情には、氷の微笑が貼りついていた。
ぐふと胃から食道を逆流してくる〈何か〉を堪えようと口に手を当て、躰をくの字に折り曲げる。ギリギリと絞られるような激痛と灼けるような熱さとに苛まれ、そこで政宗は意識を失ったのだ。
母の手、で。
「どうやら…彼岸への道行きはまだ赦されてねェらしい…」
「政宗様…っ」
つくづく嫌われているみてェだな…と弱々しく笑って苦く吐き出した言葉は、果たして彼岸と此岸とどちらを指してのものだっただろう。
「どうして母上は──────、」
交差させた両手で瞳を隠したまま、呻くように政宗は呟いた。
「こんな回りくどい姑息な手段に訴えなくても…その手でこの位置…心の臓に刃を突き立てればいいだろうに。いっそひと思いに、な…」
幼い時分に惜しみなく得られる筈だった母の愛。その母自らが幼き彼の手から取り上げたことが見えぬ傷となって、政宗の心根に今もなお大きく翳を落としているのだろう。彼の母に対する思慕の念は強い。
決して届かぬものに焦がれるのは虚しいだけだと聡い政宗はもちろん理解している。
今更母と己の前に横たわる深い、深い溝を前に分かり合おうなどという甘い考えも持ち合わせてはいない。
しかし、同時に相反する想いをずっと抱き続けているのもまた確かで。
要らねェというなら、どうして。
見えぬ傷口から血を流し続ける、声にならない叫び。
「いっそひと思いにその手で止めてくれれば俺は───、」
非情にならずとも済んだかもしれないのに。
これ以上この身を千々に千切らせ、己が掌を肉親の血に染めずとも。
これ以上罪の畳まりとならずとも。
「政宗様のお心は、この小十郎がよく存じております。なれど、此度はお家を揺るがしかねない大事。伊達の頭領たる政宗様を害そうとするは、即ち伊達家を害そうとするに等しい行為にございます」
判っている、と苦い思いとともに吐き出す。
父から家督を譲られて僅か一年足らずで奥州を平らげ、名実ともに〈奥州筆頭〉となった政宗であるが、内に目を転じれば実弟である小次郎を伊達の頭領に擁立せんとする一派──無論、政宗が棟梁であることを快く思っていない生母・義姫、更にはその実家である最上家が後盾になっているのは周知の事実だ──が依然と存在していて、伊達家は決して磐石ではない。
そんな中で政宗の毒殺を企てたなどと知られては、お家が混乱に陥る。反政宗派がここぞとばかりに攻勢に転じるに違いない。
加えて、せっかく伊達の下に纏まった奥州であるとはいえ、〈奥州筆頭〉を名乗る伊達が混乱に陥ったとなれば、その隙に乗じて筆頭位を覆そうとする将も出かねず、そうなれば一度は統一を見た奥州は再び混沌たる有様となるだろう。
「お前の云いたいことは…よく判っているつもりだぜ、小十郎。俺は───」
強き竜であるために、去来する苦いものを己が裡に総て呑み込んで。
不可視の傷口からどくどくと血を流し、犯す罪の数々に掌を黒く爛れさせても。
それでも俺は…と政宗は視線をどこか遠くに彷徨わせて、苦く笑った。
「───奥州筆頭だからな」
「政宗様…」
節ばった大きな小十郎の手が政宗の手を包み込む。
その非情なまでの決断を政宗に下させるのはこの俺なのだ、と小十郎の表情にはそう書いてあった。
伊達家のために、否、政宗のために。
この男もまた〈竜の右目〉として政宗以上に罪を犯そうとしているのだ。
或いはそれは小十郎ばかりではなく、政宗を護ろうとする総ての者達も同様なのかもしれない。
(Sorry , I'm late──────)
最早、賽は投げられてしまったのだ。
「小十郎、俺に母上は斬れねェ。父上を殺したも同然な俺だが…母まで手にかけるなどという不孝はできねェ。だが、その存在が後々伊達に仇成すのだろう?」
ならば。
再びの罪を犯す、覚悟を。
修羅となる、覚悟を。
「母上は斬れねェ。けれど、この落とし前はつけさせる」


小次郎を──────


ただそれだけを呟いて、政宗は瞳を閉じた。



小次郎粛清話がリテイクを喰らっているうちに削ぎ落とされていった残骸(苦笑)。
「Sorry, I'm late(遅くなってごめん…)」という言葉をどうしても入れたかったみたいです。
その前にボツにした話にも「Sorry,…」がありました。
その名残がタイトル、という訳でもないんですけどね。
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